・「きつねもがちょうも丸ごとペロリ」
(新藤)サンキュー。
(塔子)ヨハン。
(ヨハン)トウコ。
いよいよドイツから到着しますね。
ドイツと日本にとって今日はまさに歴史的な一日です。
ええ。
私どもの美術館で飾れる事になりとても光栄です。
文科省のお力添えのおかげです。
ありがとうございました。
何言ってんですか。
館長の熱意ですよ。
そんな事…。
裸婦クロエ展ドイツ大使館も全面的にバックアップしますから。
ありがとうございます。
華岡さん。
(華岡)あっハハハハッ…。
どうも。
本物のクロエが見れるんですね。
ええ。
主催してる新聞社の社長にコネがありましてね。
私見直しちゃいました。
華岡さんすごい!ハハハハハッ。
(小声で)意外と単純だな。
あっこれどうぞ。
(由紀)はい。
ありがとうございます。
死んでる。
ええ。
でしょうね。
えっ?いや…。
この人じゃなくて色がですよ。
色?アクリル絵の具はアクリルエマルジョンに顔料を混ぜて作るんですがそれがほかの匂いを消し絵の独自性を奪うんです。
へえ〜面白い鑑賞法。
その点油絵の具は個性があって好きです。
へえ〜。
(志村)あんた方ユニークだね。
(志村)匂いで絵を鑑賞する。
初めて。
偉大な画家の絵は匂いがいいんだ。
天才の香りがする。
天才の香りか。
・それでは皆様お待たせしました。
さあ。
いよいよお出ましだ。
ドイツが第2次世界大戦中にフランスから押収した中に眠っていた日本が誇る画家佐伯雲天の作品が友好の証しとして日本に返還される事となりました。
今回はマスコミの皆様へのプレオープンですが一人でも多くの方に日本が誇る本物の天才本物のアートをじかにご覧頂ければ幸いです。
(小声で)いいから早く布を外せ。
子どもみたい。
ではお待たせ致しました。
佐伯雲天幻の一作「裸婦クロエ」です。
皆様別室に軽食をご用意しておりますのでしばしご歓談のあと取材の時間へと移らせて頂きます。
どうぞこちらへ。
別室にご案内致します。
この中で真に芸術を理解しているのは僕らだけですよ。
ええ本当。
ブームに終わらなきゃいいですけどね。
近く行きましょう。
ええ。
あれ?どうかしました?これ…偽物ですよ。
え!?これがん作だ。
何言ってるの!?あなた!下がって。
いや…これがん作ですよ。
偽物だと言ってるんです。
(達郎)もういい?
(昌子)駄目!独身最後の絵なんだからね。
じっとしてて。
あのね独身だろうが既婚だろうが俺の顔変わらないし。
それにまだ結婚決まってないし!な〜に言ってんの。
華の警視庁勤務だよ?出世した男を女はほっとかないよ。
大丈夫大丈夫。
は〜い笑って。
ほらにっこり。
はい…。
(メールの着信音)ちょっと待って。
「日独文化交流90周年を記念してドイツから返還された絵が物議を醸しています。
今日警視庁の人間を名乗る人物が『この絵が偽物だ』とカメラの前で発言しました」。
「あれは偽物です」。
あいつ!「あの絵からアクリルの匂いがした。
アクリルは1940年代後半に開発された絵の具なんだ。
佐伯雲天はアクリルなど使ってなかった!」。
しかも…何で先生と!?「今後国際問題に発展する可能性も出てきました」。
(上辺)しゃれになんないよ小向さん!ドイツ大使館および日本の文科省から厳重な抗議だ!警視総監を通して…ね!どうしてくれんの?せっかく立ち上げたここも僕のキャリアも何もかもおしまいだよ!もちろん君のキャリアもね!あの…早急にやつと連絡を取りまして…。
「やつ」って誰?は?僕知らない。
えっ誰?何?君雇ってんの?個人的に?ちょ…ちょっと待って下さい。
とにかくね僕無関係。
君ね早くなんとかしないとその華岡さんだっけ?自称警視庁のコンサル。
その人もろとも最果ての地に飛ばされる事になるんじゃないかな。
怒ってたから〜警視総監。
うん。
(黒野)きたよいつもの…。
(細井)ひどすぎる。
(早見)最低。
え〜…。
警察の方…。
会場は?どうなってんだよ。
何であんな事言ったの!?俺の鼻は間違えない。
俺は事実を言ったまでだ。
匂いでがん作って…だってあれ絵画だよ!?本当なの!?絵画の偽造は犯罪だ。
ほっといていいのか。
本当だったら大問題だけどさ…。
あんた俺の鼻を疑うのか?最低だな。
勝手にしろ!国際問題ですよこれは!こんなまんじゅう一個で解決できるような問題じゃないんです。
分かってます!?いやまあとにかく気は心っていいますか…。
これおいしいんですよ。
一日30個限定です!とにかく我々文科省としてはこれ以上話が大きくなる前に火消しをしなきゃいけないんで。
これどうするんですか!?この絵は返還直前のドイツでも科学鑑定を終え本物と証明されてます。
ですが改めてもう一度日本でも文科省の下科学鑑定をしてもらいます。
結果は分かりきってますが鑑定が出次第あのコンサルの方を名誉毀損で訴えるつもりでいます。
この絵のために何年費やしてきたか…。
それがあんな理不尽な言いがかりをつけられるなんて…。
お気持ち察します。
私あの…警視庁の小向と申します。
私も常々あの自称コンサルには手を焼いてました。
もう一緒に闘いましょう!あの…ちなみにこれ一日30個限定品です。
ではこちらへどうぞ。
この間はどうもすいませんでした。
いや騒動のお詫びといってはなんですが…。
これグラスゴーまた一緒にどうですか?華岡さん。
はい?ニュース見てないんですか?ニュース?すごい騒動になってますよ。
文科省が行った科学鑑定の結果筆運び使われている絵の具の成分更に表面の経年劣化も調査した結果あの絵がおよそ90年前に描かれたものと判明致しました。
あの絵は紛れもなく佐伯雲天の絵です。
我々は「がん作である」と発言した人物を名誉毀損でこの度東京地裁に提訴する事も併せて報告致します。
つまり発言したあの方こそ偽物です。
何逆切れしてんだよ。
第3の機関がはっきりと結果出したんだよ。
あんたやっぱり間違えたんだよ。
ありえない。
じゃああの鑑定が嘘だっていうの?もっとありえないよ。
確かに俺の嗅いだあの絵は偽物だったんだ。
しかし騒ぎになったんで慌ててまた本物とすり替えたのか。
何のためなんだよ。
そんな面倒くさい事さ。
駄目だよ!入っちゃ駄目だよ!離せ!いいから確認させろ!あんたどの面下げて…!いいだろ!あんたも一緒に来たら分かるよ!何言ってんだ!どんな匂いか教えてやる!
(志村)どうかしましたか?
(志村)どうぞ。
う〜ん…スモーキーな中に柑橘系の香りキリマンジャロちょうどいい焙煎ですよ。
さすが。
私はコーヒーも本物志向でしてね。
ならあなたから見てもあの絵は本物に見えましたか?そう見えましたが。
まあでも私も間違えてるかもしれない。
絵画なんてのはねレゾネすなわち目録さえついていればほとんどの人に見分けつきませんからね。
確かに。
世界中の有名美術館でさえがん作に気付かないところはよくある。
あなたも匂いで判断されたという事ですけれど…。
目だけだったらどうです?さあ…分からなかったかもしれませんね。
本物の定義って何でしょうね。
レンブラントは弟子たちに徹底的に模写をさせたんです。
それ故本物とがん作の区別がつかなくなった絵もたくさんある。
力のあるがん作は本物を超えるんじゃないですか。
それはないな。
がん作はあくまでがん作です。
そして私が見た絵は間違いなくあの瞬間がん作だった。
あなたの鼻だけは本物だって事ですか。
そうです。
(恵美)有名人の仲間入りおめでとう。
何が?ネット見てないの!?有名になるのは勝手だけどね美里が学校でいじめられて大変なんですけど。
何だと?そりゃあそうよねお父さんがねほら吹きの鼻男だもんね。
言っときますけどね家族構成や経歴まで全部アップされてますから!私のとこにまで取材が来て迷惑なんですけど!すまない。
とにかくねなんとかして!美里今日もスマホ切って行方不明なのよ。
分かったよ。
分かった!?そのうち戻るよ。
じゃあな。
もしもし!もしもし!
(美里)ねえ本当に偽物だったの?何が?あの絵。
ほかにもいっぱい絵飾ってあったんでしょ?匂いがごっちゃになったんじゃないの?お前さ今日は戻れ。
送っていくから。
おっ来たぞ!鼻男さん!鼻男さんですね!近々文科省が裁判を起こすようですが!あんたどっから入った!あんたらここは敷地内だぞ!娘さん?お父さんの嗅覚は本物ですか?娘に聞くな!いい加減にしろ!どうすんの!?すいません。
終わりだよ!すいません。
本当どうすんの!?すいません!あっ!華岡とは室長あれですよね?正式な雇用契約結んでませんよね?それが?って事はですよあの発言は警視庁とは全く無関係と言い逃れできますよね。
なるほど…。
はい。
その方向で先方と調整していこうかなって思ってるんですけどこれは大丈夫ですよね。
なかなかやりますね小向さんも!オッケー?それでいいよ。
オッケー。
あ〜あ〜あ〜あ〜悪い顔してんなおい。
(早見)ダークサイドに落ちたなあの2人。
落ちましたな。
写真撮ってやろう。
(シャッター音)
(ブザー)とにかくさ謝罪しようよ。
ねっ?そしたら先方も提訴取り下げてくれるかもしれないでしょ。
それで室長と話つけてきたんだから。
俺は間違ってない。
間違ってないのに謝罪はできない。
だからそれ証明のしようがないんだって。
もう諦めようよ!このままだったらさ俺飛ばされちゃうんだよ最果ての地に!別にいいだろ。
やる仕事は一緒なんだし。
いい加減にしろよ!あんたはいいよ!そりゃ特別な能力があるんだから!でもねコツコツコツコツやるしか能のない人間だっているんだよ!それでやっと今のポジションに来てんだよ!何が感情の匂いの研究だよ!あんたが一番人の感情に疎いじゃない!ちょっとは人の気持ち考えろよ!だからだよ。
何?あのがん作の出来はすばらしかったんだ。
簡単に描けるもんじゃない。
そこまでしてがん作に打ち込む情熱がどこから来てるのか俺はそれが知りたいんだ。
何言ってるか分からない。
知らない!闇のマーケットだ。
え?美術の世界にはな闇の巨大マーケットがある。
いいか?佐伯雲天の絵なら20億は下らない。
本物を売却しようとしてるんだ。
そのためにがん作があるの?そうだ。
その隠蔽のためにがん作が必要なんだ。
それ…本当?売却といいがん作づくりといい大がかりな組織が裏で関わってるのは間違いない。
あんたようやく役に立つチャンスが来たな。
ああ。
ちは〜。
ああどうもこんにちは。
お世話になります。
佐伯雲天の匂いがします。
(笑い声)では改めましてオープン行事の説明を行います。
皆様こちらへどうぞ。
美人だな…。
しかも独身だ。
何の話だ。
…でどう?間違いない。
がん作だ。
でも経年劣化のひび割れがちゃんとある。
ちょっといいか?どこ行くの?絵の具研究の第一人者の先生にお聞きします。
絵の具の経年劣化つまり古くなった事によって生じる絵の表面の劣化は偽造できるもんですか?
(緒川)できますよ。
やろうと思えば…ね。
やっぱり…。
油絵の具の弱点って分かります?いえそういうのはちょっと僕…。
乾燥するまでに時間がかかり過ぎる事だ。
そのとおり!10年ちょっと前かな…。
絵の修復会社から依頼されて速乾性があって早く固まる絵の具を開発した事があるんですよ。
すぐに乾く油絵の具が完成すれば世界的ヒット商品になる事は間違いない。
カルボン酸エステルをアクリル酸に混ぜて絵の具に加えてみたら見事速乾性絵の具が完成しました!いや〜すばらしい。
(拍手)だけど乾くのが早すぎましてね絵の具がこれすぐひび割れてしまう。
結局失敗に終わりました。
ひび割れた?つまり経年劣化と同じ現象だ。
経年劣化は偽造できる。
その修復会社の名前は覚えてませんか?確か…イーゼル社っていったかな。
ちゃんと調べろよ。
あの美人館長も。
分かってるよ。
あんな美人なのになあ…。
華岡さん。
はい。
うっ!あっ…。
その鼻邪魔なんだよ。
独身の彼女が時価5億は下らない豪邸に一人住まい。
いいじゃないか。
逆玉だよ俺が。
ブログ見たら海外旅行に美食三昧!ひがむなよ。
実家が金持ちとか貯金してたとか…。
実家はごく普通な会社勤め!とてもそんなお金はない!前いた会社もただの絵の修復会社!で今は潰れてるよ。
絵を横流しして金稼いでるって考えるのが妥当だと思うけど。
そんな訳ないって…。
監視システムは完璧でも館長自らスイッチ切れば何とでもなるし。
(2人)うん。
だってこんな美人なのにさ…。
ちょっと待って。
その絵の修復会社ってのは…。
イーゼル社ってとこだけど。
すいません。
速度緩めて。
鼻に響くから。
もう少しで到着しますんで。
痛い痛い…痛いって!ああっイタッ!華岡さん。
ああ先生…。
すいませんこんなぶざまな姿をお見せして。
かなり痛みますね。
はい。
僕の大事な鼻が…。
ええ。
これで先生の香りも嗅げなくなってしまった。
行って下さい。
大丈夫か?何も匂わない。
回復には当分かかると思います。
回復…しますか?これ前みたいに。
それは…何とも。
ぶち当たったな闇のシンジケートに。
だから俺が言っただろ。
あんた邪魔なだけだからなあ。
ご自分でも絵を描かれるんですね。
単なる趣味ですよ今は。
鼻どうしました?ああこれ…。
これはちょっと…ケガしまして。
それよりイーゼル社ってご存じですよね。
(志村)前に勤めていた会社ですね。
そうか。
イーゼル社は普通より早く乾く油絵の具を開発しようとした。
しかし結果は失敗。
経年劣化のようなひび割れが残った。
だけどそれを逆に利用する事を思いついた。
がん作…づくりにね。
何の話やら…。
初めて「裸婦クロエ」の匂いを嗅いだ時アクリル絵の具の匂いに混じってかすかにある匂いが混じってた。
その時はアクリルの匂いに気を取られて分からなかったんだがこの間あなたに会った時はっきり分かったんだ。
あなたのその指からアクリルのほかにインスタントコーヒーの匂いがしたんだ。
それが?いやコーヒーにはこだわりのあるあなたからインスタントコーヒーの匂いがして妙だと思ったんですよ。
時間がない時はそれで済ます事もありますよ。
あっそうか。
なるほど。
キャンバスを古く見せるためにコーヒーをかける。
これがん作画家がよくやる手法らしいですね。
あっ聞いた事がある。
よく考えるもんですね。
それで?私が佐伯雲天のがん作を作ったとでも?何か匂いますか?がん作の匂いが。
あっそうですか。
じゃあちょっと失礼します。
いや何も匂わないな。
あなたからは何も匂わない。
ああ…あいにく私今ほら鼻がきかないんで。
お気の毒…。
おいしいコーヒー飲みますか?どうぞ。
ああどうも。
ああ匂わないな…。
私10歳の時ですよ画家になろうと決めたのは。
以来25年間毎日描きましたね。
本当に毎日。
絵っていうのは一日でも描かないと筆が落ちるっていいますよね。
はい。
つまり自分が天才じゃないと気付くのに25年かかった訳ですよ。
それどういう感情ですか?いや私今鼻がきかないんで。
このまま一生きかなかったらどうしようかなと思いましてね。
この鼻がなければただの凡人なんでね私も。
どういう感情かもう忘れましたね。
ただ…ね夢が破れても人は生きていかにゃなりませんからね。
それで変装してるつもり?料金は払って入ってる。
文句を言われる筋合いはない。
今の俺は鼻がきかない。
本物か偽物かもう区別もつかない。
本物でも偽物でも余計なお世話だな。
相談がある。
ああっ!ふう…。
(上辺)持ったね。
はい。
一日30個限定のいちご大福を30個です!よし…行くぞ。
(2人)申し訳ありませんでした!とりあえず頭を上げて下さい。
この度の不祥事まことに遺憾であります。
しかしながらここはこの上司と私に免じてなんとか提訴の方をご勘弁願えないかと…。
そうは言われましても肝心のご本人が…。
そうですよね。
ちょっと失礼。
「がん作騒動渦中の鼻男間もなく緊急謝罪会見です。
あっ来ました!」。
「お話を」。
「この度は日独文化交流90周年を記念しましてドイツから返還された佐伯雲天作『裸婦クロエ』に対しがん作などと騒ぎ立ててまことに申し訳ありませんでした」。
「これは正式な謝罪と受け取っていいんですね?」。
「100%私の勇み足です。
関係者の皆様申し訳ありませんでした」。
これ私がやらせました。
彼の謝罪文もここにあります。
これでなんとか…なんとか穏便に収めて頂けないでしょうか?どうかよろしくお願いします。
しょうがないですなあ…。
ここまでやられちゃ。
事を荒だてるとかえって大人げないかもしれない。
じゃあ…!どうですか?館長。
おかげさまで裸婦クロエ展は大盛況。
かえっていい宣伝になった面もありますから。
ありがとうございます!
(塔子)大丈夫です。
大丈夫。
遅れましたが今晩必ず出荷します。
はい失礼致します。
お待たせ。
さっ運びましょう。
どうしたの?はい動かないで。
(早見)2人ともそのまま。
やっぱりだ。
どうして…。
館長悪いがブラフをかけさせてもらった。
状況証拠はそろってたがどうしても現物がないと逮捕できない。
しかも本物の絵ももう売却されてるかもしれない。
だけどふと思ったんです。
文科省はこの男を提訴しようとしてる。
それがあなたにとって唯一の誤算だったんじゃないかって。
もう一度裁判になったらあの絵が本物かどうか今度こそ裁判所による鑑定になるでしょ。
となるとどうしてもまた本物の絵が必要になる。
つまりそれまでは本物の絵も売却できない。
そうなんです。
それに我々と何より華岡が謝罪すれば文科省も裁判を取りやめるかもしれない。
そうなれば…。
絵の売却に動き出す。
そこで何らかの動きが必ずある。
そこを押さえれば絵も見つかるかもしれない。
そういう事!はい出た出た出たよ〜。
はいよ。
負けたわ…。
さすがね。
あっ…!動くな!ザクッといくぞ!座れ。
志村!お前…。
華岡さん。
布を全部取って下さい。
志村さん…。
これは…。
さあ本物はどれでしょう?当てられたらこの人は解放します。
何だって!?
(志村)あなたなら分かるはずだ。
偽物はどうぞ全部破って下さい。
偽物には一円の価値もないんでねこの世界では。
おい…。
何取ってんの?おいやめろ!おいちょっとやめろよ!本物を破ったら取り返しがつかないわ!さあ早く!お前…まだ鼻きかないんだろ!?だからこそだ。
あっ!でしょ?体の線の描きが微妙に違う。
あれ?…正解。
体の線ってお前…匂いじゃないじゃないかよ!おい。
あっ!肌の色みが違う。
…正解。
あ〜もうやめよう!心臓に悪い。
色も匂いじゃない…おい!やっぱり駄目だな…。
おい。
(早見)まだやんの?もうやめておけよ華岡!おい!これだ!
(2人)あっ!
(早見)そんなに…。
正解!正解して当たり前だ!残りの一枚とは全然違う!一つは俺の…最高傑作だよ。
俺の人生全て懸けて描いたんだ。
30年前にな。
30年前?…って事は経年劣化の具合からも分からない。
難しいなこれ。
(志村)さあさあさあさあさあ!やめろよ!おいもうやめろ!華岡!絵を破らせる訳にはいかないぞ。
俺が最果ての地に飛ばされるどころじゃない。
警視総監の首が飛ぶ!
(志村)早くしろ!やめろ!それ以上やるなら…俺がお前の腕を撃つ!ちょっと!分かったね?どっちが本物か。
早くしろ。
やめて!何でこんなバカな事を!あなたのがん作師としての腕は超一流じゃない!うるせえ!それは誰もが認めてる!俺は雲天を超えたんだ!これからは雲天が俺のがん作になるんだよ!私は天才だからね!さあ天才を選べ!やめろ〜!かかかかか…確保!早く!どうして分かった!?やっぱり俺の絵から…天才の香り…。
しませんでした。
連れてけ。
(早見)行くよ。
本当に分かってたの!?え?いや本物はね臭化メチルで厳重に保管されてきたから余計な匂いはほとんどしないんだ。
臭化メチル?防カビ剤だよ。
片やこっちのがん作はこのアトリエの匂いがしっかりついてた。
鼻がきいてたのか!?言ったろ?俺の鼻は間違いないんだ。
ほんの僅かでも嗅げるんだよ。
はあ〜。
あと…インスタントコーヒーじゃなくキリマンジャロの匂いもな。
コーヒー?自分のためだけに好きなコーヒーを片手にこの絵を眺め続けてきたんだろ。
がん作じゃなくて特別な絵か…。
情熱か…。
分からん。
いや〜それにしても室長が打ったあの芝居あの演技っていうんですかあれもう最高でした!だろ?だろ?はい!はい!あれが事件解決の鍵になったといっても過言ではないよね。
はい!もうアカデミー賞ですね!本当に?私びっくりしたんですよ。
うん?ワイドショーで華岡さんいきなり頭下げたから…。
ハハハッ。
「え〜嘘でしょ?華岡さんって謝る人なの?」。
いやいや…僕の鼻は間違えませんよ。
あれはフェークです。
偽物って事ですよね。
そうです。
じゃあ…今日は?え?今日のお誘いも…フェーク?それとも…。
それは…。
フェークだ。
え…。
失礼。
この絵まさにフェークですよ。
これまさにがん作だ!チクショー。
ちょっと失礼。
もしもし俺だ。
何やってる?「母ちゃんとお茶飲んでる」?あのなここにもがん作があった。
いいから出てこい!場所は東京…うっ!もう…。
2016/11/05(土) 22:00〜22:45
NHK総合1・神戸
土曜ドラマ スニッファー嗅覚捜査官(3)[解][字]
この名画はニセ物だ!超人的嗅覚で、絵画の嘘を嗅ぎとった華岡(阿部寛)。彼の衝撃発言に世の中騒然、文科省、美術館は猛反発!さらに真相に迫る華岡は何者かに襲われる!
詳細情報
番組内容
天才画家の名画が、ドイツから返還されることになった。華岡(阿部寛)は由紀(井川遥)を誘い、プレス向けの内覧会に出席するが、絵の匂いからこれがニセ物だと主張する。華岡の発言は文科省を巻き込み、国際問題へと発展。科学鑑定の結果、絵は本物と証明される。ピンチに追い込まれる華岡は、美術館長の塔子(川原亜矢子)がニセ物作りに関わっていると疑い、達郎(香川照之)と捜査する。そんな矢先、華岡は何者かに襲われる。
出演者
【出演】阿部寛,香川照之,井川遥,イッセー尾形,川原亜矢子,板谷由夏,吉行和子,野間口徹,高橋メアリージュン,馬場徹,水谷果穂
原作・脚本
【原作】Film.UA,【脚本】林宏司,山岡潤平