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字幕書き起こし NHKスペシャル「“トランプ大統領”の衝撃」 2016.11.12

生字幕放送でお伝えします世界を揺るがしたアメリカ大統領選挙から3日。
トランプ次期大統領への抗議デモは一部が暴徒化し分断が収束する兆しは見えていません。
一方、トランプ氏は異例の早さでオバマ大統領と会談。
過激な発言を繰り返した姿を一変させていました。
しかし、記者団に優先する政策を問われると…。
トランプ氏が一貫して訴えてきたのは自国の利益を最優先するアメリカ第一主義でした。
まずは自国を優先してほしいという内向きの「チェンジ」の声がトランプ氏を勝利に導いたのです。
アメリカと対立してきたロシアはトランプ氏の勝利を歓迎。
ヨーロッパでは排外主義を掲げる政党が拡大の勢いを見せています。
アメリカが主導してきた世界が大きく変貌する中私たちはどう向き合っていくべきなのか。
緊急報告です。
アメリカ・ファースト。
アメリカにとって大事なのはほかの国のことではなくて第一にアメリカ自身の利益なのだというトランプ次期大統領の主張です。
これまで負担を背負い時に犠牲を払ってでも世界のリーダーであり続けることに大きな価値を置いてきたアメリカ。
そのアメリカはトランプ氏を大統領に選んだことによって今、進路を内向きの方向へと大きく転換しようとしています。
アメリカという世界のおもしが失われるのではないかという予感に国際社会はトランプ氏が打つ次の一手を息をのんで見守っています。
そして、何よりアメリカ国民自身が分断され今度の選挙結果を受け入れきれずにいます。
トランプ氏を次期大統領にまで押し上げた原動力つまり現状に不満を強める怒りのマグマの大きさを既存の大手メディアの多くがその予測を見誤りました。
開票の当日。

 

 

 


テレビの選挙速報番組では開票から1時間がたってもクリントン氏が圧倒的に有利だと伝え続けていました。
ところが…。
開票から5時間後正反対の予測に差し替えるという異例の事態となったのです。
この番組でコメンテーターを務めたクッキー・ロバーツ記者。
エミー賞などを受賞してきたベテランジャーナリストです。
50年に及ぶ記者生活でも経験したことのない事態だったといいます。
なぜチェンジを求める声をつかめなかったのか。
その理由の一つは、トランプ氏が既存のメディアだけではなく直接、支持者に訴えたことだったといいます。
その手段がツイッターでした。
トランプ氏は過激な発言を繰り返し支持者に訴えました。
それを受け取った支持者が差別的な発言などを次々と掲載。
人々の不満や怒りがインターネット上であおられ支持が集まっていったのです。
既存のメディアはそれを取り上げさらに拡散させました。
しかし、過激な発言は限られた人のもので、それほど多くには浸透していないとみていたといいます。
ツイッターを通じて、直接有権者に発信し続けたトランプ氏。
既存のメディアは既得権益側であり信用できないと繰り返し攻撃しました。
トランプ氏のことばに反応した支持者たちはメディアを敵視するようになります。
既存のメディアと、有権者との溝が広がる中、世論調査に本音を明かさなかった有権者も少なくなかったとみられています。
チェンジを求めるトランプ支持者の広がりを把握できなかった既存のメディア。
選挙で初めて気付いた世論の大きさに動揺を隠せないでいます。
大手メディアも衝撃を受けています。
このアメリカという超大国が変質をしていくとすれば世界のパワーバランスが変わる。
そして、経済の姿も変わっていく可能性があります。
当然、私たち日本もさまざまな可能性場合によってはさまざまなリスクと向き合っていく必要があります。
今夜は、そのためのヒントをゲストの方々とともに探っていきます。
外交評論家の岡本行夫さん。
そして、東京大学大学院教授のロバート・キャンベルさんです。
まず、キャンベルさん開票日当日東京のアメリカ大使館でケネディー大使とともに開票の行方を見守られたというふうに伺ってますがそのときの空気そして大勢が判明しつつあるときのキャンベルさんご自身の印象はどうでしたか?
大使の思いでアメリカ民主主義の一番の見せ場である選挙の行方を東京にいる各国の大使であるとか日本のリーダーたちであったり私のような者を招いて彼女が暮らしている公邸でみんなで見ようということをやったんですけども朝の10時半ぐらいから民主党確実といわれていた州が次から次へとひっくり返っていくにしたがってなんともいえない張り詰めたような空気が充満していたんですね。
私は政策うんぬん以前にクリントン氏が負けたことで初の女性大統領を見る機会を失ったっていうこととトランプ氏が勝ったことで暴力であるとか、差別を正当化させるアメリカ社会の一番暗い部分がぐっと壮大化させるんじゃないかなというような。
先ほど、ことばがありましたけどおびえを感じたということが正直、感じました。
そういう姿にショックでしたか?
大変の大きな驚がくを覚えたんですね。
岡本さんはこの結果がありえると予測していましたか?
予測してませんでした。
いくつか理由があります。
一つは今、完全に開票が終わっていませんけども総得票でいくとクリントンさんのほうがトランプさんを上回ってるんですね。
しかし、トランプさんが結局、選挙人が多い大事な接戦州を全部、制していったフロリダ、ペンシルベニアオハイオ、ウィスコンシン。
それぐらいトランプ陣営の選挙戦略がうまかったというのを見誤ってました。
それから、より基本的なアメリカの怒りのマグマというものを過小評価していました。
今度、出口調査を見ますと共和党の人は90%が共和党のトランプ候補に。
民主党は90%同じくクリントン候補に。
ところが、中間層、無党派層がたくさん投票所に行ったんです。
恐らく、今までにないほどの人が前回に比べると1000万人近く投票所に足を運んでる。
その過半数がトランプ候補に入れたということですね。
やはり、大手メディアもその怒りまでは読みきれなかったということかもしれませんね。
もう一つ、女性票ですね。
白人の女性票53%があれだけトランプ候補が女性を貶めるような発言をしたにもかかわらず投票してるんですね。
そこのところをメディアももちろん、私も読みきれてませんでした。
これが、どうしてかというとやっぱりアメリカ戦争が長く続いて奥さん方あるいはシニアな女性たちがどこかに…親類のどこかに、自分の友人にみんな、軍務に就いている人を持っているんですね。
そうすると、その人たちのことを考えてくれるのはクリントンよりもトランプだというふうになっちゃったんですね。
そういった有権者の心理も含めてこれから、さらに議論を深めていきたいと思います。
アメリカ・ファーストアメリカ第一主義を支持した人たちはグローバル化の中で置き去りにされた労働者たち今もお話にありました。
そして世界の警察官であることに疲れを感じ、不信を抱く退役軍人の人たちとさまざまな人たちに及んでいきました。
しかし、そうした人たちに寄り添おうとするあまりアメリカが内向きになっていけば世界の力の空白というものが広がってその分リスクが多くなることは避けられません。
アメリカの利益を最優先にするアメリカ第一主義を掲げたトランプ氏の勝利。
直後の演説でトランプ氏が特別に感謝を伝えた人たちがいました。
全米で2000万人を数え政治に一定の影響力を持つ退役軍人です。
国のために戦ってきた功績をたたえるパレードがきのう行われました。
元海軍のジョシュア・マシアスさんです。
アメリカ第一主義に心を動かされトランプ氏に投票しました。
トランプ氏のアメリカ第一主義が支持された理由の一つが15年に及ぶテロとの戦いです。
2001年の同時多発テロ以降アフガニスタンやイラクで戦闘を続けてきたアメリカ。
最大で20万人近くの部隊を派遣し合計177兆円の戦費を投じてきたとされています。
死者は7000人近くに達しました。
みずからも中東に派遣された経験のあるマシアスさん。
自由と民主主義のために戦い多くの戦友を亡くしたにもかかわらず情勢がさらに悪化していることに無力感を抱えています。
テロとの戦いで疲弊するアメリカ。
トランプ氏はアメリカの利益にならないなら軍を派遣すべきではないと主張してきました。
退役軍人たちは世界の警察官であるよりもまず国内を立て直すべきだというトランプ氏の主張に次々と賛同したのです。
高まっていくアメリカ第一主義を求める声。
経済政策でも、アメリカを優先しグローバル化に歯止めをかけるという主張が予想以上に支持を集めました。
アメリカの製造業を支えてきた中西部オハイオ州。
接戦とみられていましたが40万票以上の大差がついたのです。
製鉄所で40年以上働いてきたリック・パップさんです。
勤めていた製鉄所は経済のグローバル化で安い中国産などの鉄鋼に押され4年前、閉鎖されました。
妻とは離婚。
3人の娘は皆、仕事がないからと町を離れました。
アメリカを豊かにするはずだったグローバル化に疑問を抱いたパップさん。
アメリカを最優先すると訴えたトランプ氏に投票しました。
選挙のあと、トランプ支持を表明していなかった友人まで次々と票を投じていたことを知りました。
経済でも外交でもアメリカの利益を最優先してほしいという声を受け止め勝利したトランプ氏。
しかし今、選挙で勝利したトランプ氏に抗議するデモが全米で発生。
アメリカ社会は分断を深めています。
この国の行方に不安を感じるパップさん。
それでも、トランプ氏がアメリカを変えてくれることにかけるしかないと考えています。
トランプ氏が掲げるアメリカ第一主義によって世界は、どこへ向かうのか。
国際政治学者のイアン・ブレマー氏です。
トランプ大統領の誕生は国際秩序を一変させる歴史的な転換点だと指摘します。
ブレマー氏がアメリカ第一主義で最も利益を得るとしているのがロシアのプーチン大統領です。
国際社会の批判にもかかわらずウクライナからクリミアを併合したロシア。
トランプ氏はロシアとも共通の利益を見いだすべきだとしておりプーチン大統領は歓迎の意向を表明しています。
さらにブレマー氏は、今後各国のアメリカ離れの動きも加速するとみています。
フィリピンのドゥテルテ大統領のように中国とアメリカを天秤にかける国々が増えるというのです。
アメリカの人々のうっ屈した感情が世界情勢まで変えようとしているのかもしれません。
それでは現在の最新情勢を見ていきたいと思います。
ワシントン支局の田中正良支局長です。
アメリカの大統領選挙いつも国を二分する戦いになりますけども戦いが済めばノーサイドというのはこれまでそうだったと思うんです。
しかし今回はこの分断の根深さ今までにない、何か不気味なものを感じるんですがいかがでしょうか?
選挙の翌日から選ばれたばかりの次期大統領に対する抗議のデモが連日、続くという異例の事態となっています。
抗議のデモはこの週末も行われまして分かっているだけで少なくとも全米50か所に広がっているんです。
参加者の多くが若者で差別的で女性をさげすむような発言を繰り返してきたトランプ氏は大統領にふさわしくないと抗議しているんです。
この動き、今後も続きそうです。
激震は教育の現場にも広がっています。
選挙戦の過程で見られました人を攻撃し傷つける言動はよくないと教えてきたトランプ氏が大統領に選ばれてしまったことを子どもにどう説明すればいいのか相談に駆け込む親が相次いでいます。
またインターネット上には選挙をきっかけに人種や宗教への差別をむき出しにした発言が著しく増えているという指摘もありトランプ氏が選ばれたことでアメリカ社会の分断は一層鮮明になっているという印象です。
キャンベルさんこれだけ怒りがうっせきをしてこうした事態になっているというのは今までのアメリカの政治がそうした不満とか痛みというものを放置してきた、距離ができてしまったということがあるのでは?と感じたんですが、いかがですか。
日本の識者の中にオバマ外交が弱腰であるということをかなり批判している側面があると思うんですけどそれはアメリカのメディアをかなり反映させた立場であってもっと強く紛争を未然に防ぐあるいは介入するということを期待するということ自体がもうアメリカにとってはそれはできない。
先ほど、岡本さんがおっしゃったように2200万人の退役軍人がアメリカにいて死者がイラク戦争から7000人、少なく見えるかもしれませんけどもそれを何十倍も上回る負傷者たち、障害者たちがアメリカ各地に住んでる。
その人たちがベトナム戦争のとき以上に低所得、それから職業がない地域に住んでいる、それが大変大きな波及効果といいますか人々の憤りっていうものをあおるといいますか定着させる力としてずっと働いていたんですけども大きなメディア、日本もアメリカのメディアはその人たちには目を向けてこなかったということは間違いないと思います。
岡本さん、オバマ政権はあまり強いアメリカというのは打ち出してこなかったはずなんですけどでも実際、アメリカの根底には強いアメリカというのがいつも意識にあってメディアの中にもあったのかもしれないですしそういった思いが、国民の中には決して政権はわれわれのほうを向いてくれていない。
先ほどもあった退役軍人とか家族であるとか、忘れ去られた労働者であるとかそういった思いが積み重なった怒りのマグマというものなんでしょうか。
基本的にはそういうことだと思います。
アメリカの平均的な市民にとっては大体、州の外にも出たことがない。
それで日頃、目にするのは自分の息子がいつまでたっても就職の口がない。
あるいは、自分のいとこが大学の授業料が高すぎて学校へ行けない。
そうして、目の前でいろいろな工場が閉鎖されてる。
そのときにアメリカの利益優先というこれは大変に響きますよね。
彼らにとってみれば、それはメキシコの国境に壁を築こうがイスラム、出ていけとかそれは、インテリの人にとってみれば眉をひそめる発言でも自分にとっては関係ないということですね。
しかしアメリカはやっぱり自由とか民主主義という価値を損得でない価値を持っている国として尊敬を集めてきた面があります。
これが失われるのはアメリカにとってはものすごい大きな損失じゃないでしょうか。
トランプ次期大統領の言動を見て予測できることはリールを切っていく方針ですね。
そうしますと、例えばNATOであるとか貿易協定であるとか気候変動を抑えるパリ協定であるとかそういう大きな国際社会の中で調整されたものっていうものを下支えているのがアメリカの自由であるとか共栄であるとかっていうそのときそのときの損得勘定の中で生まれたものではなくてずっと持続しているものとして基盤としてある。
それが揺らぐとするとたぶん、誰もそれは寄って…。
自分から、損をするような血を流すようなことには組しない世界になっていくだろうと思うんですね。
トランプ氏もそのことに意を持ち出したのかはこのところの言動を見ますとやや慎重かなという感じがします。
再びワシントンの田中支局長に聞いてみたいと思います。
もともとトランプ氏が大統領選挙に当選すると予測する人はほとんどいなかったといっていいと思うんですが本人もひょっとしたらそうだったかもしれません。
実際に、しかし当選をしますと打って変わって慎重な出だしという印象なんですが実際に取材をしていてどのように感じていますか?
そのとおりだと思います。
これまでのところ選挙戦の最中とは180度変わったといっていいほどその言動は変化しています。
トランプ氏は早速、オバマ大統領そして深刻な亀裂が生じました共和党の指導部とも会談しました。
また、安倍総理大臣をはじめ各国の首脳とも電話会談を重ねています。
これまでとは打って変わって穏やかな対応でまずは国内外の不安をふっしょくして融和を図ることを強く意識している様子がみてとれます。
大統領に選ばれてから初めてのメディアとのインタビューでは国の融和を強調するとともに声高に撤廃を主張してきましたオバマケア・医療保険制度改革について一部は存続させる考えを示し柔軟に対応していく姿勢も示しました。
今後の政権運営でトランプ氏はみずから掲げてきた政策を実行できなければ支持者の失望を招き逆に強行すれば亀裂は一層、深まるというジレンマも抱えています。
政権の高官人事が早くも本格化する中トランプ氏は政権運営にあたっては次期副大統領で長年にわたって下院議員を務めた経験を持つマイク・ペンス氏が大きな役割を担うとして政権中枢の顔ぶれがトランプ氏の今後の出方をうかがううえで焦点となっています。
田中支局長でした。
アメリカの進む方向が大きく変化をして世界の秩序も変わる可能性が出てきた中で日本はどう向き合っていくべきなのか。
主に、これからは経済と安全保障の面で見ていきたいと思います。
まずは経済です。
トランプ次期大統領有権者との契約という表現で大統領就任から100日間のアクションプランつまり実行のプランを発表しています。
その中で目を引くのがアメリカの雇用を守るためとして打ち出したNAFTA・北米自由貿易協定の見直し。
そして、廃棄も含んでいるということですね。
そして、日本もまさに当事者の一人です。
TPP・環太平洋パートナーシップ協定からの離脱です。
自由貿易の推進そしてグローバル経済の旗振り役を務めてきたアメリカが保護主義へと大きく傾いていくとすれば日本の通商政策もまた岐路に立たされることになります。
トランプ氏の予想外の勝利に日経平均株価は、1日に1000円以上の値動きを見せる乱高下となりました。
TPPからの離脱など従来の路線を覆すトランプ氏の主張に先行きへの不透明感が強まったのです。
トランプ氏は実際、どこまで選挙中の発言を実行に移すのか。
ブッシュ政権など共和党政権に多くの高官を送り込んできたシンクタンクのデレク・シザーズ氏に聞きました。
シザーズ氏はトランプ氏がまず力を入れるのはアメリカ国内の経済政策だといいます。
7年にわたって景気の拡大が続いているものの格差は広がり、人々の間に不満が高まっているからです。
就任から100日間で実現するとしている公約の中にも所得が伸び悩む中間層を支えるための大幅な減税や雇用を守るために企業の海外流出を食い止める措置などが盛り込まれています。
内向き志向は資本主義そのものを変えようとしている。
現代を代表するフランスの経済学者ジャック・アタリ氏はそう指摘しています。
ここからはみずほ総合研究所のエコノミスト安井明彦さんにも加わっていただきます。
含蓄のあるインタビューだったと思うんですがこの経済の超大国アメリカが内向きになって保護主義の傾向を強めるとどんな弊害が考えられるんでしょうか。
経済的には、貿易が縮小してしまうということが懸念されます。
これまでの自由貿易体制というのはアメリカがリードしてきたわけですからこれが保護主義にいくということでそれがほかの国にも連鎖していってしまう。
そこが懸念されるところです。
みんな保護主義になってしまえば経済規模が小さくなってアメリカを守るといいながらアメリカ自身の経済規模も縮小するかもしれないということですか。
トランプさんがいっていること政治と経済の間には落差があるということなんだと思います。
有権者の不満をグローバル化というところにもってきているところがトランプさんなわけなんですけど実際にはアメリカもグローバル化の恩恵を受けているわけです。
公約の中にはNAFTAを見直すと言っていましたけどNAFTAっていうのは使っているのはアメリカ企業なんです。
メキシコで作った車をアメリカに持っていく。
これはアメリカ企業が一番使っている制度ですので実際に経済的な悪影響というのはアメリカにも及んでくる。
ですので政治と現実の落差をどう埋めていくのか。
ここがポイントになっていくと思います。
トランプさんの主張は絵に描いた餅になりかねませんよね。
恩恵を受けてるというふうに安井さんがおっしゃって、そのとおりだと思うんですけどもどちらのアメリカに目を向けるかによって、恩恵の比重とか、あるいはそれが被害であったりということがあるような気はするんです。
ワシントン州からカリフォルニアの南部までが全部、ヒラリー・クリントンに投票をして61%の大変高い。
そこはロッキー山脈がほとんど国境のように見えてしまうっていうことは新しい経済に非常に適した非常にうまくまさに恩恵にあずかっている地域の人たちにとってはそのとおりですけれどもそれ以外の内側の人たちが内向きになるということもやっぱり現実として…。
TPPは死んだという衝撃的な発言もありました。
アメリカでは、そうやって受け止められていますよね。
日本は、そうはいってもTPP、自由貿易の恩恵を最大限にするために日本の政府・与党としては関連法案の衆議院通過を行ったりということでそれを旗振り役を務めていくんだという意思を示してますよね。
これは正しいといえますか?
正しいと思います。
TPPが仮に死んだとしても可能性は大きいんでしょうけどもTPPっていうのはGDPの4割ですよ、参加国3か国、全部入れますと世界のGDPの4割です。
じゃあ日本はそこで挫折するのか。
例えばRCEPというASEAN、プラス、韓国中国、ニュージーランドやオーストラリア、GDP3割。
あるいは、TPPの先を見据えたエフタープというのもある。
世界のGDPの6割になるんです。
日本は自由貿易の旗を振るべきだと思うんです。
それ以降は日本は後ろを向きすぎていた。
アメリカが今、引いちゃったから日本にとっては自由貿易が必要ですから前に出ていくべきだと思います。
テーマを安全保障に移していきましょう。
アメリカは同盟国との安定とそれらの責任を果たすと誓ってきました。
しかし、トランプ政権も果たして、その方針を引き継ぐのでしょうか。
日本との関係で見ましてもトランプ氏はアメリカ軍の駐留経費をもっと日本が負担するべきだという発言をしています。
そして、日本がみずから核武装することを容認するような発言すらしています。
どこまでが真意なのでしょうか。
日本にアメリカ軍の駐留経費の負担の増額を求め核保有を容認する発言もしてきたトランプ氏。
日米同盟は、どうなるのか。
トランプ氏の安全保障政策のアドバイザージェフリー・ゴードン元海軍中佐が取材に応じました。
こうしたトランプ氏の姿勢に日本は、どう向き合っていくのか。
大統領選挙の翌日安倍総理大臣はトランプ氏と電話で会談。
来週17日にニューヨークで会談を行う方向で一致しました。
過激な発言を繰り返してきたトランプ氏と新たな関係を築くうえでの課題は何か。
防衛大臣の政策参与を務める森本敏元防衛大臣です。
トランプ氏は米軍の駐留経費をもう自分たち日本は日本でやってくれよと全部というくらいの言い方までしている。
日本の核武装を容認するようなにおわすような発言もしている。
もっと自主防衛をしなさいというメッセージを送ってきている。
一方、森本さんは今後日本が向き合っていくうえでトランプ氏ならではの難しさも指摘しました。
日本の外交の正念場ですねこれは。
岡本さん沖縄の基地負担の痛みとかを知りながらも日米両政府はそれでも日米同盟を大事にしてきたわけですよね。
それは変わらないにしても駐留経費の問題もあるとしてかなり高めのボールを投げてくるんじゃないかとトランプ政権はと思うんですけど。
どうでしょうか?
そんな投げられないんじゃないんですかね。
基本的にトランプさんは何も分かってなかったわけですよね。
それから、申し訳ないけどさっき、ビデオに出てきたゴードンさんも彼も分かっていない。
要するに日米の駐留経費というのは地位協定というもので定まっていてこれ以上、出すとアメリカ軍は、日本のよう兵になってしまうというぎりぎりのところでやっているわけですから。
ただ、政治的にもう少しトランプさんの顔を立てるようなことができるような気がしますけど基本は難しいでしょう。
日本は75%を負担している。
米軍が仮に日本を引き揚げて本国に再配置されたらそっちのほうがお金がかかるところまできてるんです。
基本的にトランプさんは日米同盟がアメリカの利益になっているということを分かってない。
ただこれから周りにこれから国防政策の担当者たちアドバイザーでつきますから彼は軌道修正をしていかざるをえないと思います。
しっかり日本も打ち込んでいく必要があるんですね。
一方でディールっていうことばが出てきましたね。
いろいろ経済的な取り引き損得勘定さっきも出てきました。
安全保障の問題まで損得勘定で考える傾向があるんではないかとちょっと心配があるんですがその辺、エコノミストとしてどうご覧になりますか?
ビジネス出身ということですのでどうしても金銭的な部分であったりそのときの最善のことをやっていく取り決めをしていくというふうになりやすいのは事実だと思います。
もちろん、安全保障だったり政治の部分では、お金だけでは図れないところがあるわけですから逆にそこを分かってもらういい機会と考えたほうがいいと思うんですね。
実際にはビジネスの世界でもすべてがお金ということではなくてお互いの信頼関係を考えた中でディールをするということもあるわけですからそこはやはりきちんと説明をしていって何がアメリカにとっても日本のためにとってもいいんだということを話していく、いい機会だと考えたほうがいいんじゃないかと思います。
そのトランプ氏選挙戦の中で明らかにしてきた政治姿勢の中では内向きということばだけでは済まされないものもありました。
それは多様な移民社会という伝統の価値観であったり正面から疑問を呈する発言であったりイスラム教徒の入国を禁止するといって世界を驚かせたこともありました。
そうした排他主義が世界中に波及するのではと懸念を呼んでいます。
ヨーロッパで近く行われる主な選挙や国民投票の予定です。
こうした国々では反移民を声高に訴える勢力がトランプ氏の当選で勢いづいています。
アメリカ大統領選挙の2日後。
イタリアで大規模な集会が開かれていました。
主催したのは、既存の政党を強く批判する新興政党。
抜本的に政治を変えようと呼びかけました。
今、トランプ氏の勝利を機に支持者獲得の動きを加速させています。
私たちは、こうした動きの兆しを大統領選挙のさなかに取材していました。
トランプ氏の盟友として選挙活動を支えてきたジョージ・ロンバルディ氏です。
大統領選挙まで1か月あまりとなった、この日トランプ氏を支持する下院議員と会ったロンバルディ氏。
ヨーロッパの同じ価値観を持つ勢力との連携を模索していました。
実は、ロンバルディ氏のもとには連日、ヨーロッパの政治家などが訪れていました。
この日、やってきたのはイタリアの議会関係者たちです。
トランプ氏が勝利した今内向きで自国の利益を第一に考えるうねりがヨーロッパで広がっています。
ドイツでは難民の受け入れに反対する新興政党が台頭。
過激な主張を繰り広げています。
そして来年大統領選挙を控えたフランス。
立候補を表明している極右政党の党首がトランプ氏の勝利を受け自信を深めています。
フランスの経済学者ジャック・アタリ氏。
自国の利益のみを追求する考え方は国家間の衝突につながりかねないと警鐘を鳴らします。
今のVTRご覧になった方は自国第一主義がともすると危なっかしい方向に走るかもしれないと思う方多いと思うんですね。
それがもし危なっかしい方向だとするとそれをとどめるためには何が必要でしょうか。
アメリカをできるだけ世界中の出来事にエンゲージさせる関与させ続けなければいけないと思いますね。
それは日本の役割だと思いますね。
ただ、そのためには日本自身がもっと世界に関与しなければいけない。
例えば、経済協力予算なんていうのは、ピークが1997年で当初予算ベースで見るともう、そのときの半分になっちゃってるんです。
日本は、もっと積極的にいかなければならないしそれから、先ほど大越さんおっしゃられたようにアメリカが難しいボールを投げてくる可能性がある。
それに対応していかなければいけない。
しかし、悪質なナショナリズムが世界中を席けんしているように見えますけれどもまだ世界の半分以上は良識のある国々、人たち考え方の人たちなんで日本はそこを忘れてはいけないと思います。
キャンベルさんアメリカは今、そういった自国第一主義が危険な兆候を逸しているとすればそれに警戒する人たちとの対立が生まれているわけですよね。
この対立、溝はどうやったら生まれるというふうに感じますか。
私は求心力というよりは遠心力が深まるんじゃないかと感じます。
2008年にオバマ大統領が初当選をしたときに2年後に中間選挙で負けた共和党を解体するようなことを勢いとして入ったわけですけど同じように民主党は、今度来年選挙があるわけですけど下院でイスラム教徒で黒人の議員を強く推す声が出てきてるわけです。
つまり、鮮明に対立軸を作って革新を作っていくまず構図というものが生まれると思うんですね。
その中からそのうえで、どういうふうに融合していくのか折り合っていくのか対立を続けるのか日本はどちらのアメリカに目を向けて比重を置けばよいのかというのを注視しなければいけないと思います。
最後に短くなりましたが歴史の教訓というものを今、生かすべきだと思うんですね。
安井さん、経済が大事ですね。
今こそ経済を強く結び付けていくことが大事ですけれどもだからこそここから取り残されていると思っている人をどうやってすくい上げるのか。
誰でも活躍の期待ができる世界をどうやってつくるのか政策が担う役割は重いと思います。
一定の時間はかかりますね。
きょうは、ここまでお三方とアメリカ、そして世界の行方について議論をしてまいりました。
世界各国はいわゆるトランプ・ショックショックの状態からこれから生まれる事態に対して、どう対処するかそして、どう情報を集めるか。
そして知恵を絞る段階に入っています。
2016/11/12(土) 21:00〜22:00
NHK総合1・神戸
NHKスペシャル「“トランプ大統領”の衝撃」[字]

世界中に衝撃が走った、トランプ氏の大統領選勝利。掲げる「アメリカ第一主義」が世界の秩序をどう変え、日本の安全保障や私たちの暮らしにどう影響を与えるか考える。

詳細情報
番組内容
世界中に衝撃が走った、トランプ氏の大統領選勝利。アメリカ国内での「反グローバル化」の盛り上がりや、テロとの戦いに疲れ、これ以上「世界の警察官」であるのは難しいという思いから国民は「内向き」となり、「アメリカ第一」を掲げるトランプ氏が選ばれた。これから世界の秩序はどうなるのか。日本の安全保障や私たちの暮らしにどう影響が出るのか。トランプ大統領誕生が、世界にもたらす衝撃について、展望する。
出演者
【出演】マサチューセッツ工科大学シニアフェロー…岡本行夫,東京大学大学院教授国文学者…ロバート・キャンベル,みずほ総合研究所ニューヨーク…安井明彦