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書き起こし 上方落語の会▽「時うどん」桂弥太郎、「算段の平兵衛」桂米團治 2016.11.11

落語

「上方落語の会」本日のゲストは女優の三倉茉奈さんです。
三倉茉奈です。
よろしくお願いします。
舞台で落語家の皆さんと共演してから落語が大好きになりました。
今日も楽しみにしてきました。
よろしくお願いします。
見に行ってるらしい落語会にね。
はい。
私一応落語作家ですのでもし分からん事があったらいつでも聞いて頂いたらお答えできると思います。
よろしくお願いします。
じゃあ早速いいですか。
もうすぐかいな。
今日は落語会トップの出演は桂弥太郎さんですけれどもこういった落語会に出演できるようになるには弟子入りして何年ぐらいかかるものなんですか?

 

 

 

 

個人差があるんですけどねまあとりあえず内弟子というか一応師匠について回るのが2年。
師匠によっては3年というのが決まってんですけど。
この時は独り立ちしてないんですわ。
そっから自由になって自分で出てくるんやけどもまあまあ弥太郎君で7年かな?だからこのぐらいやってくるとやっぱり一人前になったという事でではトップでやりましょうとこうなってくる訳です。
弥太郎さんってこの弥の字のとおり吉弥さんのお弟子さんなんですね。
そらそう。
吉弥相談員の弟子です。
大体ねこれ郡上八幡の出身でしてね顔も見てもろて分かるとおりまことに穏やかなええ男でして。
でね古典落語と古典芸能好きかと思たら一方でパソコンが好きなんですこれが。
え〜意外ですね。
だから私も時々パソコンの相談したりしてます。
本当ですか。
それ古いような新しい…分からん人でして。
まあこの会するのには今回2度目の出演なんですけどもなんと今度放送に初めて乗ります。
おめでとうございます。
ねえ。
私も「生活笑百科」で吉弥相談員にすごくお世話になってるのでお弟子さんの落語楽しみにしてます。
ではその吉弥さんの一番弟子です。
弥太郎さんの「時うどん」です。
ではどうぞ。

(拍手)
(拍手)え〜ただいまより開演でございまして出て参りました私桂弥太郎と申します。
よろしくお願いを致します。
ありがとうございます。
私ですね…。
(拍手)ありがとうございます。
すいませんすいません。
何か強要したみたいですいませんが。
私ですね米朝一門の噺家でございまして正確に申しますとですね米朝の弟子の吉朝の弟子の吉弥の弟子の弥太郎と申しましてですね。
米朝師匠からひ孫弟子な噺家でございまして。
入門7年目なんですが最近ですねよく名前を間違えられまして私弥太郎という名前なんですが最近よくですね「あなた与太郎さんですか?」と言われる事がありまして落語で「与太郎」と言ったらアホの名前ですからね。
「あんたアホですか?」と言うてるもんかなと思いますが。
あまりに間違えられますのでプロフィールに振り仮名を打ちまして「かつらやたろう」と。
もうこれで間違う事ないやろと思いまして司会者の方にですね「これで紹介をお願い致します」と言いましたらその方が「お待たせ致しました。
かつらやたろうさんで〜す」。
ねえ吉弥の弥の字を頂いて弥太郎と申します。
顔と名前と覚えて頂ければうれしいですが。
まあNHKさんでございますので私の持ってる着物の中で一番いい着物というのを着てまいりましてですねええ。
もう一年に1回着るか着ないかというぐらいいい着物でございます。
分かりますか?この光沢というのがねええ。
これを私たちの方ではポリエステル100%と申しましてですねええ。
化繊でございます。
化繊でございますが一番いい化繊でございます。
化繊の中では一番いい化繊でございましてこれを一級化繊
(河川)というふうに言っておりましてですね。
まあ淀川と一緒でございますので覚えて頂ければなと思いますが。
え〜まあこんな適当な事を言っておりますがこれからどんどんどんどんと涼しくなってまいりまして温かいものが恋しい季節になってまいります。
昔はガスとか電気とかなかったので温かいものというのが一番のごちそうやったそうでございます。
そのころはですねうどん屋さんの声聞いただけでうどん好きな方はもう「喉が鳴った」ってな事を申しまして。
「そ〜や〜う〜!そ〜や〜う〜!」。
「あ〜寒っ!あ〜寒いな。
おいうどん屋」。
「へえお越しやす」。
「熱いの一杯頼むわ」。
「へえへえありがとさんで。
少々お待ちを」。
「は〜…ああけど今日はえらい冷えるな」。
「だいぶ寒いこってございますな」。
「ほんまやで。
こういう寒い晩は熱いうどん食うて腹の底からぬくもろうと思てな。
お前の『そ〜や〜う〜』ちゅうええ声が聞こえたもんやさかい明るみ目がけて走ってきたんや。
早い事してや。
はあ…。
でお前とこ商売の方はどないや?ええ。
あんまりええ事…ないてか?あ〜しゃあない。
お前とこだけやあれへん世間皆やさかいな。
だけど心配せんでもええで。
商売ちゅうのは波があるさかいな。
悪いあとはええてなもんや。
『商い』ちゅうぐらいやさかい飽きんように辛抱強うやるこっちゃ。
ハハハハハッ。
こんな事商売人やったら百も承知やな。
ああいらん事言うてもうた。
怒らんといてや。
堪忍してや。
ああ…。
でお前とこ店の名前は何ちゅうねや?えっあんどんに書いてます。
何や絵が描いてあるな。
的に矢が当たったるけどあら何ちゅうねや?えっ?当たり矢。
当たり屋ちゅうの!ほう〜ええ名前やな。
ものに当たる大当たり!…てな事言うてな。
いやわし実はなこれからサイコロ転がして『勝負!』言うてな悪さしに行こかいなと思てたとこや。
そこで当たり屋なんて気持ちがええでなあ。
わし今晩向こうで思いっきり当たってくるで」。
「へえへえそらお楽しみなこって。
へえへえおまっとうさんで」。
「もうでけた?もうでけた!早いなお前。
職人や。
気が短いがな。
言うたもんが出てこないとなったら食いたいもん食いとうなくなるでなあ。
さあさあ。
こっち貸してもらおう。
おっ!ハハハッお前とこ割り箸使うてんの。
いつでも?ほう〜感心なもんや。
いやこの辺の箸いうたらな皆先割ったるやろ。
気色悪いがなええ。
これやったらわいが一番や。
気持ちように食える。
きれいな鉢やな。
丼鉢1つだけ?皆そろてんの?感心なもんや。
いやこの辺の鉢いうたらな縁が欠けてたりヒビが入ったったりしててもう汚らしいもんやけどもな。
食いもんはまず器で食わしてもらいたい。
ああ結構結構。
フフッ」。
「あ〜ええ匂いやな。
いやわいな毎晩でもうどん食うねや。
匂い嗅いだだけでうまいかどうかちゅうのがいっぺんに分かるわ。
こらええわ。
フフッ」。
(つゆをすする音のまねで)ズズズズズッ…。
「あ〜…」。
(つゆをすする音のまねで)ズズズズズッ…。
「あ〜!ハハハッええだし使てんな!かつお節張り込んでる。
分からいでかい。
日に2〜3度はうどん食うのや。
一口飲むだけでな何のだしかちゅうのがいっぺんに分かるわええ。
こらええわ。
フフッ」。
(うどんをすする音のまねで)ズズズズズッ…。
「うんうんうんうん」。
(うどんをすする音のまねで)ズズズズズッ…。
「うどんもしっかりしてる。
このごろちょいちょいやわらかいとこのあるやろ。
あんなんどんならんで。
うどんでもそばでも腰が肝心や。
しこしこ〜っとこうな!こらええわ。
ハハハッ。
こらまた分厚うに切ってくれてんなカマボコ。
こんな分厚うて引き合うか?この辺のカマボコちゅうたらな皆薄っぺらぁて見るからに痛々
(板々)しいってなもんや。
こんな分厚かったら食いでも違うねんな。
うんうん。
ほんまもんやな。
いやこのごろちょいちょいカマボコの格好した麩使てるとこあるやろ。
あんなんどんならんで。
こっちは病人やないさかいな。
う〜んお前とこは至れり尽くせりのうどん屋やな。
これからもひいきにしたるで。
ほんまやて。
こりゃええわ!」。
(つゆをすする音のまねで)ズズズズズッ…ズズズズズッ…ズズズズズッ…。
(つゆをすする音のまねで)ズルッズルッズルッズルッ…。
(つゆをすする音のまねで)ズズズズズッズルッズルッ。
(つゆをすする音のまねで)ズズズズズッ…ズルッズルッズズズズッ…。
「あ〜うまかった。
もう一杯!と言いたいとこやけど今日この辺で堪忍してもらお。
なんぼや?」。
「16文頂きます」。
「ああそうか。
ちょっと銭が細かい。
手で受けてもらおうか」。
「へえへえその方がお釣り助かりますんで結構で」。
「ほないくで。
1つ2つ3つ4つ5つ6つ7つ8つうどん屋今何どきや?」。
「へえへえ確か9つでおますな」。
「10111213141516と」。
「へえ確かに」。
「また来て食たるよってな」。
「どうぞごひいきに」。
「さいならごめん」。
シュ〜ッとこの男は行ってしまいます。
この様子をば寒いにもかかわりませず横手の塀の方からジ〜ッと見ておりましたのが毎度我々同様というぼ〜っとした世の中ついでに生きてるみたいな男でございまして。
「ハハハハハッおもろいやっちゃなええ。
あんだけベラベラべんちゃら言うてるさかい『ちょっとぐらい負けてえな』言うんかな思たけどせやあらへん。
ちゃんと払てたで。
けどおかしなところで時尋ねてたな。
あんなややこしい勘定してる時に時なんか尋ねたら間違うで。
『うどん1杯なんぼや?』。
16文に決まってはるがな。
『銭が細かい。
手で受けてもらおか』やて。
嫌みなやっちゃねん。
1つ2つ3つ4つ5つ6つ7つ8つと聞きよったんやな。
『うどん屋今何どきや?』。
『へえ9つで』。
1011121314…あれ?何やおかしな具合やな。
モヤモヤ〜っとしたもんが残るな。
ちょっと待ちや。
1つ2つ3つ4つ5つ6つ7つ8つ『うどん屋何どきや?』『へえ9つで』10。
あれ?これはおかしいでこれは。
寺子屋で習うたけど10の時は手がパーにならなあけんのや。
えっ?1つ2つ3つ4つ…『うどん屋何どきや?』『へえ9つで』10!ハハッえらいやっちゃでこれ。
『9つで』言うてうどん屋のおやっさんに1つ言わせてんねやがな。
こらうまい事1文もうけよったな。
こらええ手や。
よしわいもやったろ。
こんな時に限って細かいのがあらへんのや。
よし明日やったろ。
明日からこうやって一文ずつためて家建てたんで〜!」。
大層な決心でございますが。
明くる日たもとを小銭でパンパンに致しましてうどん屋探して歩いとります。
「どこぞにうどん屋おらんかいな〜?うどん屋うどん屋。
おったおった。
これから1文ごまかされるとも知らんとかわいそうなうどん屋や。
ヘヘッ。
おいうどん屋」。
「へえお越しやす」。
「熱いの一杯頼むわ」。
「へえへえありがとさんで。
少々お待ちを」。
「は〜フフフフフフッは〜フフフフフフフッは〜フフフフフフフッ。
うどん屋今日はえらい冷えるなおい」。
「今日はだいぶぬくおますけど」。
「ほんまやな。
今日はだいぶぬくいな。
わい走ってきたもんやさかいえらい汗かいてるわ。
そんな事どうでもええねんけどな。
お前とこ商売の方はどないや?あんまりええ事ないねやろ?えっ?ようもうかってます。
そうか…けどな商売っちゅうのは波があるで。
ええあとは悪いてなもんや」。
「けどまあ『商い』ちゅうぐらいやさかい飽きんとやっとります」。
「何でもよう知ってんなぁ。
それだけ言われたら言う事ないねんけどな。
でお前とこ店の名前は何ちゅうねや?えっ?あんどんに書いてます。
おっ何や絵は…描いてないな。
何や字が書いてあるけどあれは何ちゅうねや?えっ?かたぎ屋?かたぎ屋っちゅうの?けったいな名前やな。
よ〜し実はこれからサイコロ転がして『勝負!』言うてな悪さしに行こかいなと思てたとこや。
そこで『かたぎ屋』なんてお前ヘヘヘッ嫌みかおい。
真面目に働きなさいちゅう謎か。
ほんな事言うてる間にな『へいおまっとうさんで。
へいどうぞ。
へいどうぞ』まだでけへんのかいな?だいぶ待ってんねんけどな」。
「ちょっと湯が冷めとりましたんでもう少々待って頂けますか?」。
「景気の悪い!職人や気が短いがな。
言うたもんが出てこな食いたいもん食いとうなくなるで。
でけた?でけました?割と早かったがな。
もっとゆっくりしてもろてもよかったんやで。
わいな職人でも気の長〜い方の職人やさかいな。
さっさっこっち貸してもらお。
おっ箸や箸!知ってるか?この辺の箸いうたらな皆先割ってるやろ。
気色悪いがな。
お前とこもこらまた…割ったるな。
スパッと割れてんな。
いや〜構へん構へん。
いちいち割る手間も省けてこれでええねやな。
ハハハハハハハッ。
先がぬれてるけどな。
誰ぞ使うたあとと違う?よう洗てます?洗たればええねんけどな。
ハハハハハハハッ…ネギが付いてるで。
いや構へん構へん。
拭いといたら汚い事ないねやな。
鉢知ってるか?この辺の鉢言うたらな縁が欠けてたりヒビが入ったったりして汚らしいもんやけどもなお前とこもこれまた…汚すぎるなおい。
何や?これ。
まんべんの縁欠けてるわ。
こんなギザギザでどっから汁飲むのや?これ。
いや構へんけど。
なにも丼食う訳やない。
中身がうまかったらそれでええがななあ。
これもよう考えたらうどんの鉢にも使えるしまたのこぎりにも使える。
便利なもんやな。
ハハハッ」。
「あ〜…ええ匂いやな。
わいな毎晩でもうどん食うねや。
匂い嗅いだだけでうまいかどうかちゅうんがいっぺんに分かるわ。
えっこらええわ」。
(つゆをすする音のまねで)ズズズズズッ…。
「辛〜!辛すぎるでお前ちょっと湯入れて。
そうザ〜ッと入れといて。
これもな湯で薄めたら2人前のだしが取れるで。
それを人に出してやろうやなんて勉強してるな。
このごろちょいちょいやわらかいところあるやろ。
あんなんどんならんで。
腰が肝心やな腰が。
フフッ」。
(うどんをすする音のまねで)ズズズズズッ…。
「うん!うん…」。
「ベチャベチャやな。
ゆで過ぎとちゃうか?お前。
何やこれ。
箸で強う挟んだらブチッと切れるでこれ。
食べるの難しいなこれ。
いや食べるけどな。
う〜ん…」。
(うどんをすする音のまねで)ズルッ…ズルッ…ズルッ…。
「茶漬け食てるみたいやな。
お前とこあれは入ってんのかいなカマボコは。
入れた?ほんまに?いや見当たらへんけどな。
ちょっと探してみるわ。
うどんの下敷きになってるか分からへんからな。
ハハハッ…あった〜!分からんはずや。
丼の縁にペチャ!へばりついてるがな。
わしまたこれ丼の模様かと思たわ。
こらまた薄っぺら〜に切ってくれてんなぁ。
これやっぱりカンナで削んの?包丁で?名人芸やなハハッ。
こない薄うは切れんもんやで。
わあ〜月が透けて見えてある。
風流なうどん屋やな。
ふ〜!ハハッ吹いたらピ〜いうてるで。
笛みたいなカマボコや。
このごろちょいちょいカマボコの格好した麩使うてるとこあるやろ。
あんなんどんならんで。
こっちは病人やないさかいな。
う〜ん…ほんまもんの麩!とろっととろける。
構へん構へん。
わい病人やさかいな。
これ皆食わないかんのかいな?ほんまにもう…」。
(つゆをすする音のまねで)ズズズズズッ…ズズズズズッ…ズズズズズッ…。
(つゆをすする音のまねで)ズズッズズッズズッズズッ…ズズズズズッ…。
「あ〜まずかった〜。
もう一杯と言いたいとこやけど今日この辺で堪忍してもらおう。
なんぼや?」。
「へえへえ16文頂きます」。
「ここだけ一緒やなうどん屋。
ほな出すでうどん屋。
数えるで。
ここが一番肝心やさかいにな。
出すで数えるで。
フフフフッアハハハハハッ!」。
「何ぞおもろい事がございますか?」。
「こっちの話ほっといて。
いくで。
1つ2つ3つ4つ5つ6つ7つ8つうどん屋今何どきや?」。
「確か5つでございますな」。
「アハハハハハハッ6つ7つ8つ…」。
逆に3文損を致しました。
(拍手)桂弥太郎さんの「時うどん」でございました。
いかがでございました?いや〜うどんがおいしそうでしたね。
本当に客席から見ていてだしの香りが本当にするんじゃないかっていうぐらいおいしそうで。
いやこれやっぱりうどんを食べるしぐさっていうのはこれ初めの方に教わるものなんですか?このネタ自体がね前座の時にやるもんやからまあ…そうなんですよ。
だからこれは本当難しいんですわ。
食べたくなります。
これを食べながら研究した事もあるらしいよ昔は。
へえ〜!お汁をすする音が本当にリアルで。
見ながらちょっと自分でもできるのかまねをしたくなりました。
でもできまへんやろ?はいできないです。
できないでしょ。
こういうちょっとしたテクニックもあるいは出噺のリアルさを増すという事なんですよ。
さすがです。
これ実は東京ではね「時そば」いうてねうどんがそばになるんです。
えっ?そうなんですよ。
本当ですか!?東京ではそばで食う方が普通なんです。
う〜ん…大阪と東京の食べ物の違い文化の違い習慣の違いで落語の内容も変わってくるっていうのはすごく興味深いですね。
こういうふうに面白いとこもあります。
面白いです。
続きましては後半の桂米團治さんの登場でございます。
今度はね「算段の平兵衛」というちょっと変わった噺なんですよ。
ほう!いわゆる落語はお笑いなんですけどもちょっとミステリーな感じもするというお噺です。
ミステリー。
では米團治さんの「算段の平兵衛」です。
どうぞ。

(拍手)
(拍手)お運びでまことにありがたく御礼を申し上げます。
え〜代わり合いましては御曹司でよろしくおつきあいを願います。
ありがとうございます。
米朝の家におぎゃあと生まれました。
人間国宝の長男でございます。
はいすごいですよねえ。
歌舞伎役者やったらすごいですよ。
歌舞伎役者でそこの家生まれて長男やったらもう若旦那ぼんぼんて呼ばれるんですよ。
噺家の家生まれて跡継いだらぼんぼんとは呼ばれませんねん。
大概アホぼんって呼ばれるんでございますけれどもね。
まあその米朝の家でずっと暮らしておりましたが。
しかしまあ年とともに時代が早く早く変わります。
今年も始まったばっかりやな思たらもう10月でしょ。
もうどうかしたら年賀状の準備やとかお歳暮の用意せなあかん。
あっという間でしたけど皆さん今年振り返って下さい。
まあ今年は男と女のゴシップに明け暮れた1年やったと思いません?まず年明け「ゲスの極み」ですよねえ。
そのあと上方落語協会の大先輩が…。
(笑い)楽しい話題を提供してくれはりましてですね。
ああ本当にあれでほっと致しましたですね。
東京の方の噺家のあにいさんも手つないでるところパシャッて追わえられましてね。
文筆家から歌舞伎役者までねえやり玉に挙げられまして。
明日は我が身かなと思てる訳でございますけど。
皆何かありますわな1つぐらい。
ありますでしょ?あるでしょ?ありませんか?あるでしょ?ええっ。
あっ今男の人が2人だけ「うんうん」てやりはりましたけど。
まあ亡くなった米朝もね死ぬ3年ほど前にこんな事言うてましたわ。
「あのな〜」。
「何ですか?」。
「あのこのごろ不倫ドラマ不倫ドラマ言うてるけどあれおかしい」。
「そうですか」。
「あらなぁ昔はメロドラマと言うてたんや。
その前はなよろめきドラマと言うてたんや」。
「あっそうですか」。
「心ちょっとよろめくだけやねや。
不倫というのはな漢字で書いたら『倫ならず』と書くやろ。
どういう事か言うたら兄弟で間違いを犯したり親子で怪しい関係になる事こそ倫ならずで不倫やねや。
そんなもん人の嫁はんちょっといくぐらい何ともないがな」。
米朝が言うてた訳でございますから。
あの人が言うと何か納得する訳でございますがね。
昔は「遊びをせんとや生まれけむ」なんて言葉があったようにもっと鷹揚でございまして。
ちょんまげ時代でもそうですわ。
大坂でも町なか外れたら田んぼやとか畑がザ〜ッと広がっておりまして各村がいっぱいございました。
村には必ずお庄屋はんというのがおりましてな年貢取り立てる時にも大名とパイプ役になったり田地田畑持ってて借家も持ってるさかいに収入につながる訳ですな。
金がたまるというともう一人持ちはる訳でございますな。
これをお妾はんとかお手かけはんとか言いまして東京の方ではお妾さんとこう言うたんですな。
関西の方ではお手かけはんと言うたんですな。
めかけるかてかけるかの違いでございますけれども。
あんまり変わりまへんがな。
これでは露骨やさかいに隠語が生まれましてこれが二号さん。
正妻の方を第一号に対して2人目やさかいに二号さんと言うたんですが。
第二号。
しかしこれももう通り一遍の言葉になってしまいましたんでそのころまた別の隠し言葉が出来ましてね。
これが何かと言いますと小半と言うんやそうでございますな。
小半。
これはご存じやございませんか?小半。
一升枡の半分の五合枡。
お米を量るのに便利な枡。
一升の半ほどの枡やさかいにこれを半枡と呼んだんやそうでございますな。
それのまた半分やさかい小さな半と書いて小半。
二合半…二号はんでございます。
(笑い)我とは思わん方は使って頂いて結構でございますけれども。
大坂の近郊の農村。
ここにございますお庄屋はんにはお花という二号さんがおりましてたちまち本妻の目に捕まりましてお定まりのもめ事がございまして手切れのお金を払て別れたんでございますが。
まあそれぐらいでは本妻さんはなかなか納得しまへんわ。
「ちょっとあんた!ちょっとあんた!」。
「何やねん?」。
「お花どうしましたんや?」。
「お花どうしたやあらへんがな。
お前がゴチャゴチャ言うさかい別れたやないかい」。
「別れた言うたかてまだこの村に住んでまっしゃないかいな」。
「そらまあ村には住んでるわいな」。
「放り出しなはれ!」。
「放り出せる訳ないやろ」。
「あんた庄屋やろ?」。
「いやいやなんぼ庄屋でも罪科のない人そんな事でけへんがな」。
「ほんなら誰かにな縁づけて添わしなはれ」。
「もう一旦はわしの持ちもんやったという事皆知ってんねん。
縁づかすちゅうのもなかなか難しい」。
「ほんならもう村放り出しなはれ!」。
「そんな事…」。
「縁づかしなはれもう。
どっちかしてもらわなんだら私もう…ひぃ〜!」。
なにもうちの家のもめ事言うてる訳やございませんけれどもな。
「困ったもんやわもう。
年取るとじきに癇症病みになるがな。
ひとつ算段の平兵衛にでも相談しょうかいな。
そうじゃ!あの平兵衛まだ独り者や。
やもめやないかいな。
平兵衛お花もろてくれへんやろか」。
相談に行ったのがこの算段の平兵衛。
これがこの噺の主人公でございましてねやりくり算段がうまいところから算段の平兵衛という異名を取った男でございまして。
定職は持ってへんのですけど「ちょっとこれ頼むわ」言うたら「へいよろしおすわ」言うてうまい事話まとめて利鞘を稼ぐのがなりわいという。
その男に言いますと願うたり叶うたりの話でございまして。
お花はんべっぴんさんでございますし持参金まで付くんやったらもうありがたいこってございます。
平兵衛の方にしたらこれはもうカモがネギしょってきたところの話やございませんな。
カモがネギの上豆腐と糸コンニャク載してやって来たようなもんでございまして。
お庄屋はんが仲人になりまして夫婦が仲人して縁談が調います。
さあそうなると金が懐にあるんでたちまち仕事なんていよいよせえしまへんな。
「おいお花ちょっと芝居見物行こか。
温泉巡り行こうやないか。
ちょっとこの辺またず〜っと見物しよ」ちゅう訳でたちまち金が無くなったある日の事。
「あんたどうしまんの?」。
「どうしまんのやあらへん。
ちょっと酒出して」。
「いつまでそんな事言うてんの。
神棚のお灯明なあそこの横にお神酒徳利あるやろ。
そこにもう半分残ってあるだけや」。
「ああそう。
飯あるか?」。
「下櫃の中のお米ももうあらへんねや。
もう米切れてるし」。
「ああそう。
醤油は?」。
「切れてる」。
「味噌は?」。
「切れてる」。
「砂糖は?」。
「切れてる」。
「切れてへんのないんかいな?」。
「台所の包丁切れてへんわ」。
「切れなあかんもんだけ切れてへんねやな。
ほんならひとつ忍ぼか」。
「あんたまたおかしな事考えんといてや」。
「いやいや実はな美人局ちゅうのをやろうと思てんのや」。
「美人局て何ですのん?」。
「庄屋のはげちゃんまだお前に未練たっぷりやろ。
実はな今朝この家の前をず〜っと通り過ぎて隣村まで行きよったんやうん。
まだ帰ってきてへん。
ぼちぼち日が暮れるやろ。
もうじき帰る時分や。
わし隣の部屋にな割り木か何か持って隠れてるさかいなお前うまい事言うて中へくわえ込め。
でな色気仕掛けでなほんで手の一つも握ったところわしがパ〜ン飛び出して『間男見つけた。
そこを動くな。
命が惜しくば7両2分耳をそろえて出しやがれ』とこないやろう思てんねん」。
「嫌やがなそんな事。
やめてえな」。
「背に腹は代えられへんちゅうねや。
実はなあそこの辰のとこもやりよったんや」。
「えっ?辰っつぁんやったんかいな」。
「向こうの女房のお美和はん渋皮のむけたええおなごやろ。
お美和がな通うてる小料理屋へちょいちょい客で来んのや。
その男が鼻の下伸ばして入ってきよったんや」。
「うまい事いったんかいな?」。
「手握らすとこまではうまい事いったんや。
ところが辰のガキ慌てとったんやろなぁ。
『間男見つけた』言わなあかんところ『美人局見つけた』」。
「白状してるようなもんやがな」。
「なんぼか金積んで謝って帰ってもろたらしいけどもな。
わしはそんなアホなまねはせえへんねや。
来よった来よった。
そこのな酒下ろして徳利…そうそう置いて。
おうやれやれ。
わしこっち隠れてるさかい」。
お花はんもそんな悪いおなごやないんですが何しろ連れ添う亭主が亭主でございますさかいにな。
「まあしゃあないなぁ。
一時は世話になったお人やさかいちょっとぐらいたまに小遣いもらうのもええかもしれへんなぁ」てなもんでお酒を前に置いて給仕場でおしろいこうはたいて待っておりますところへやって参りましたお庄屋はん。
暗剣殺に向こうたようなもんでございましてな。
「お庄屋はん…お庄屋はん」。
「おうお花やないかいな。
ご機嫌さん」。
「ちょっと上がっとくんなはれ」。
「ブルルルルルルあかんあかん。
おまはんとこへ上がってそれが平兵衛にでも見られてみいな。
どえらい目に遭うがな。
ブルルルルル堪忍して」。
「うちの人今家にいてしまへんの」。
「何じゃ平兵衛いてへんのんかいな。
どこ行ったんや?」。
「どこに行ったか。
出たら鉄砲玉。
いつ戻ってくるや分からしまへん」。
「平兵衛留守かいな。
あっそうか。
ほなまあこんな玄関先で立ち話してるのを村の者に見られてまたおかしい思われても何やし上げてもらおうか」。
「どうぞ上がっとくんなはれ」。
「何じゃい何じゃいこんな時分からお前酒飲んでんのかいな?」。
「お酒も飲みとうなりますがなお庄屋はん」。
「何じゃい平兵衛仕事してへんのか?」。
「仕事てあの人何が仕事ですのん?ブラブラブラブラ遊んでばっかりではあ…たまにな仕事に行く言うて行くとこばくち場でっしゃないかいな。
もうけて帰ってきた試しおまへんのやがな。
お庄屋はんに用立ててもろた着物から帯からかんざしからす〜っくり質屋に入っとるんだっせ」。
「そういうたらこの家何にもない。
ほいでお前酒飲んでんのか」。
「クサクサクサクサして酒でも飲まなやってられしまへん。
お庄屋はんもよかったらおひとつどうだす?」。
「そうか…ついでもらおか。
おまはんに酌してもらうの何年ぶりや?ああおおきにおおきに。
よばれるわ」。
(お酒を飲む音のまねで)ゴクッゴクッゴクッゴクッ。
「あ〜ええ酒やええ。
お前についでもろたらどんな酒でもおいしいなるわ。
結構結構。
いやいや心配する事あらへんがなええ。
うちのばばどんももうそう長い事ないと思うんやああ。
あいつにもしもの事があったらな平兵衛の方はこれでどないでもなる男やさかいまたわしとこ戻ってきたらええやないかい」。
「お庄屋はんその言葉当てにしてよろしおまんの?」。
「当てにしてくれしてくれ。
わしゃな実はなおまはんの事考えなんだ晩な一晩もないんや」。
「まあうれしゅうございます。
けど私もうえらいやつれてしもて…私もうあかしまへん」。
「何を言うかいな。
お前ほどのおなご紅さしてええべべ着たらどこへ行たかて恥ずかしないがな。
しかしそう言うたらちょっと痩せたなぁ。
苦労したんやろなぁ。
もうちょっとこっちおいでえな。
もうちょっとこっちおいでえな。
もっとおいでえな」。
隣の部屋では平兵衛が割れ木持って「お前からドンと行かんかい。
行かんかい。
今や!間男見つけた!そこを動くな。
バ〜ン!」。
「ウ〜…」。
「こらお庄屋はん!あんまりえげつない事してくれはったらあきまへんで。
以前は確かにあんたのおなごか知らんけれど今はわしのれっきとした私の女房やえっ。
それに何やこんな事しやがって。
ちょっと金払てもらおか。
なあ7両2分出してもらおか!お庄屋はん!お庄屋はん!お庄屋はん?逝ってもうた」。
「逝ってもうたやあらへん。
あんた」。
「いやちょっとドンとやっただけや」。
「打ち所ちゅうのがあるがなええ。
息してへん。
脈も止まってるがなあんた。
殺めてどないしまんねや」。
「ギャーギャー吠えなぁ。
わしも算段の平兵衛と異名を取ってんねん。
こんな事ぐらいで逃げ隠れするかい。
その屏風の裏へ隠しとけ」。
日が暮れになるのを待ちましてお庄屋はんの死骸をせたらいますというと家の陰から物陰塀の陰から木の陰。
分からんようにお庄屋はんの家にやって参りましてね。
息子夫婦が母屋に住んでおりまして年寄り夫婦は離れに住んでおります。
離れというのは便利なもんですな。
縁側から自由に出入りできます。
しかしもう夜になるとピシャッと雨戸が閉まってはる。
その雨戸へお庄屋はんの死骸をこう立てかけて…。
(戸をたたく音のまねで)トントン!トントンとたたいてガラッと開いたらそのはずみで後ろへひっくり返って頭打って死んだという事にしようという算段で。
(戸をたたく音のまねで)トントン!トントン!ところがお内儀の方もなかなか開けてくれへん。
しゃあないさかい平兵衛鼻つまんでお庄屋はんの声色使うて。
(戸をたたく音のまねで)トントン!「今戻った」。
(戸をたたく音のまねで)トントン!「今戻った」。
「どなただす?」「わしや」。
「わしでは分からん。
あんたこんな時間までどこウロウロしてたんや」。
「隣村へ行った帰りにな平兵衛のとこへいてた」。
「平兵衛?あんた平兵衛に何の用事がおまんの?ははあさてはあんたお花と逢い戻りができてまんねやな。
ああそないお花がええんやったら平兵衛のとこ行って泊めてもらいなはれ」。
「そんな事言ぃないなええ。
庄屋が締め出しくうてんの村の者に見られたら恥ずかしい」。
「ようそんな事言うなあんた恥ずかしいて。
今までにもっと恥ずかしい事なんぼでもしてきはったやないかいな。
見てもらいなはれ見てもらい…」。
「そんな事言いないな。
また人が通るがな。
面目ない。
ああ生きてられへん。
こうなったらもう首でも吊って死ななしゃあない」。
「安い首やなあんた。
そんな事ぐらいで首吊りまんの?はあ。
昔から『死ぬ死ぬ』言うて死んだ試しのある人いてまへんのやへえ。
首でも何でも吊んなはれ〜!」。
このひと言を言わしたらもう用事はございません。
お庄屋はんのこの帯を解くというと庭の松の木の枝へこう輪をこしらえましてお庄屋はんの死骸をよいとと吊るしてシュ〜ッと逃げてしもた。
お内儀の方は急に静かになったもんやさかい『ひょっとしたらあの人ほんまに平兵衛の家行ったんかいな』と思て雨戸をガタガタガタガタと開けたら目の前に「あ〜!ほんまに首吊ってはる。
ほんまに首吊ってはる。
あんたあんた。
こんな正直な人やとは思わなんだがな。
ちょっとちょっと…ああ落ちてきた落ちてきた。
しっかりしなはれあんたしっかりしなはれええ。
息が止まってる。
脈も打ってへんがな。
えらい事になったぁ。
こんなもん若夫婦に言われへん。
年寄り夫婦が痴話げんかで首くくったってな事言うたらえらいこっちゃ。
首吊りは変死じゃ。
お上に届けんならんでぇ。
えらい事になった。
役人が来たらもう村中に知れ渡る。
困った。
どないしょう?どないしょう?算段の平兵衛にでも相談せなしゃあないがな」。
(笑い)
(戸をたたく音のまねで)トントン…!「平兵衛はん平兵衛はん!」「へえ。
ああお庄屋はんとこのお内儀でんがな。
何でんねん?」。
「あんたに男と見込んで折り入って算段してもらいたい事があって来ましたんじゃ。
最前うちの人家へ戻ってまいりまして」。
「へえお庄屋はんやったらね夕方ず〜っと歩いてはったさかい『久しぶりでんな。
一杯どうです?』言うて飲んでもうて機嫌よう帰りはりました」。
「そんな事やった。
そんな事やった。
けどなお花はん気ぃ悪してもうたらあかんが以前が以前じゃによって私が『へんねし』起こして戸を開けなんだ。
ほんならな『村の者に見られたら恥ずかしい。
首でも吊って死ななしゃあない』と言いますさかい『昔から死ぬ死ぬ言うて死んだ試しのある人はいてまへんねん。
首でも何でも吊んなはれ』と言うたらうちの人な…ほんなにな…首吊ってしまいました」。
「え〜!?」。
「こんな事がもう村に知れたら家の恥村の恥。
なんとかあんたにな内々に片づくように算段してもらおうと思て」。
「それは堪忍しとくんなはれ。
それはあきまへんがな。
お庄屋はんが首吊ったちゅうの私がかくもうてそれがバレたらところに住めへんようになりまっせ」。
「無理は承知無理は承知。
はあ…門跡さんにあげようと思て取ってた25両一包みこれ私の葬式代やと思て取ってました。
これあんたにあげますでこれで算段してもらえまへんかいなぁ」。
「金の顔見て言う事変えたらえらい薄情なようなんか知らんけれどもなるほどなぁ考えたら首吊りは変死や。
代々家の恥になったらあんたも気まずいもんでっしゃろな。
よし!この25両は確かに頂きまして一世一代の算段さしてもらいますわ。
その死骸は…まだ?ほったらかしにしてはる。
そらあかん。
取って返そう取って返そう」。
家へ帰りまして死骸をこう中へ入れます。
着物を脱がせますというと派手な浴衣に着替えさせまして平兵衛も同じ派手な浴衣に着替えます。
ほおかぶりをお庄屋はんにしますと平兵衛も頭にほおかぶりを致します。
お庄屋はんの背中にうちわをスッと差しますというと再び「よいしょ」っとこう背たらいまして今度は隣村の方へ歩いてまいりました。
隣村ではちょうど盆踊りの稽古の真っ最中。
そこへさしてサ〜クサクやって来よった。
「なあお庄屋はん今度はあんた踊り子になってもらわなあかんねやで」。
当時の盆踊り電気がなかった時代かがり火だけが頼りでございます。
ぼうっと明るうなってるほかは真っ暗。
やぐらの上では音頭取りがええ声で音頭を取ってる。
それに合わしてみんなこう下で輪を作って踊ってる。
その輪の中へそ〜っと忍び込みますというと死骸をぐっと今度前回してぐっと体をつかんでね両手をぼちぼち動かしにかかりだしよった。
「さあ踊り子さんしっかり踊んなはれや」。
踊らしながら前の人のほっぺたを冷たい手でヒョイヒョイ。
「あっ冷た!何や冷たいな」。
「お前も触られたんか。
わしも首すっと触られたんや」。
「さてはどこぞからこの踊りの輪を潰しにかかってきてるヤツがいてるに違いない。
今度なすっと来たらその手ぐっとつかんでな皆でボコボコにどついてしまえ」。
「そうするわ」。
「この手や!どつけ!」。
平兵衛死骸ほったらかしてシュ〜ッと逃げてしまいよった。
「待て待て待て待て。
あまりにも手応えないやないか。
ちょっと待て待て。
動けへんやないかい。
息止まっとるでおい。
死んでるでおい。
誰が殺したんや?」。
「さあ?皆でどつけ言うさかいどついたんや」。
「わい蹴ったで」。
「何をすんねん?ほおかぶり取ってみいほおかぶり取ってみい…おっ…隣村のお庄屋はんやで!えらい事になったなぁ。
あのお庄屋はん酒飲んだらてんごすんの好きやったけどなにも殺す事ないやろええ。
いやこうなったらうちの村から下手人3人ぐらい出さなあかんで。
村同士が末代までいがみ合うで。
どないする?」。
「どないするてしゃあないがな。
算段の平兵衛にでも相談せなしゃあない」。
(笑い)「平兵衛ここのお庄屋はんの村の男やで」。
「あいつはこれでどないでもなんねんや」。
「お年寄りちょっと黙っといてくんなはれ。
若い者でなんとかできますさかいな。
あっお前がちょっと家帰ってな25両一包み持ってきて。
後で村の金で返そやないかい。
すぐに出せるのはお前の家だけや。
それからがん首そろえよ。
お前とお前とお前ちょっと来いちょっと来いちょっと来い」。
(戸をたたく音のまねで)トントン…!「こんばんは!平兵衛はん!開けとくんなはれ!こんばんは」。
「誰だんねん?よう寝てまんねんけどなぁ」。
「隣村から若い者が集まってやって参りました」。
「え〜隣村から?ああおそろいで何だんねん?」。
「あんたを男と見込んで一世一代の算段をしてらいたいと思てやって参りましたんでございます。
え〜実はなず〜っと盆踊りの稽古をやってましてええ。
今度な新しい手を考えよう言うて毎晩こうやってみんなで踊ってまんねや。
あっご存じでございますかいな。
へえへえ。
それでみんなこう踊ってたらな最前この何や知らんけど冷たい手でほっぺたとか首をヒョ〜イヒョイと触るヤツがいてまんねん。
踊りを潰しに来たヤツやと思たさかいなその手つかんで皆でダ〜ッとどついたら打ち所が悪かったんでっしゃろな死んでしまいましたんやがな」。
「えらいこってんなぁ」。
「えらいこってんでんがな。
それでほおかぶりをそ〜っと取ったらなんとここの村のあんたお庄屋はんでんねや」。
「えっ!?」。
「大きな声出さんように。
こんな事が広まったらもううちの村から下手人5〜6人出さんなりまへんがなええ。
村同士は末代までいがみ合いまっしゃろ。
なんとかあんたにな算段してもらいたいと思てやって参りまして」。
「それだけは堪忍しとくんなはれ。
そうでっしゃないかいなええ。
お庄屋はんが死んだ事私が隠してそれが知れたら私がこうなりまんがな。
ブルブルブルブル…そら堪忍して」。
「無理は承知無理は承知。
若い者しかないてへんかったさかいに25両一包みしか出来まへんねん。
これでなんとか算段してもらえまへんやろかな」。
「はあ…金の顔見て言う事変えたらえらい薄情なようなんか知らんけれどもななるほどなぁ。
村同士がいがみ合うというのはええ事ないわ。
お庄屋はんも酒飲んでたさかい悪い事がなかったか言うたらそうとも言えんな。
よろしい!この25両は確かに私が頂きましてな一世一代の算段さしてもらいますけどもなあんさん方にもちょっと手伝うてもらわなあきまへんで」。
「そらもう何でもやらしてもらいます。
どうしたらよろしい?」。
「これから私なお庄屋はんの家行きますわ。
でお内儀に聞いたら『まだ帰ってへん』と言うに違いないさかい『そらおかしい』ちゅうんでお内儀を連れて向こうの提灯を借りてなず〜っと崖端の一本松の下の道歩きますわ。
それまでにあんさん方なその死骸を崖端の一本松の上の方へず〜っと持ち上げて運んどいてもらいたい。
ほいで私がちょうど一本松の下で提灯を2回こう上下に揺すります。
これが合図だっせ。
それでお庄屋はんの死骸をパ〜ンと突いて『えらいこっちゃ今お庄屋はんが崖から滑り落ちた!』と言うてザ〜ッとみんなこう下りてきて歩いてるおばんの目の前へズ〜ッとこう来て『あ〜打ち所が悪かったんやなぁ』という事に致しましょうか?」。
「まあそれぐらいの事やれと言うたらやらしてもらいますけど。
しかしそんな事ぐらいで向こうのおばん納得しますかいなぁ?」。
「おばんは任しとくんなはれ。
おばんは大丈夫!」。
「さよか。
ほんならやらしてもらいまっさ」。
という訳でさあおばあさんをこう連れてくる。
死骸をこう上へ運ぶ。
提灯をこう揺する。
崖から死骸がド〜ン!世の中にこれほどかわいそうな死骸はまたとございませんな。
最初どつかれて次首くくられて今度蹴られてあげくには崖から突き落とされて。
どの傷で死んだんや分からんようになってはる。
ええ加減な医者に診せまして打ち所が悪かったという事で火葬が済みます。
算段の平兵衛の懐には50両という大金が入ったある日の事。
(戸をたたく音のまねで)トントン!「平兵衛はん平兵衛はん」。
「何や徳兵衛かい」。
「あんた潤うてるらしいなぁ。
わし無いねぇ。
ちょっとしのがしてえな」。
「うるさいやっちゃな。
ほんまにもう持っていけ!」。
次の日。
(戸をたたく音のまねで)トントン!「平兵衛はん」。
「また来たか」。
「もう無いようになった。
しのがしてえな」。
「うるさいな!使え!」。
徳の市が算段の平兵衛をゆすりにかけるというこのお噺今日この辺で失礼を致します。
(拍手)桂米團治さんの「算段の平兵衛」でした。
いかがでした?いや何かものすごい事になってましたけどあれはこのあとどうなるんですか?それですわ。
この続きはね「米朝落語全集」の「第4集」をご覧下さいませ。
気になる〜。
というところでまた次回もしっかりおつきあい願います。
よろしくお願いします。
では失礼します。
さようなら。
2016/11/11(金) 15:10〜15:53
NHK総合1・神戸
上方落語の会▽「時うどん」桂弥太郎、「算段の平兵衛」桂米團治[字]

▽「時うどん」桂弥太郎、「算段の平兵衛」桂米團治▽第367回NHK上方落語の会(28年10月6日)から▽ゲスト:三倉茉奈▽ご案内・小佐田定雄

詳細情報
番組内容
「第367回上方落語の会」から桂弥太郎の「時うどん」と桂米團治の「算段の平兵衛」をお届けする。▽時うどん:十五文しか金がない男が、うどん屋を褒めたあげく一杯十六文のうどんを一文安く食べる。それを見た男が同じようにうどんを食べようとするが…。▽算段の平兵衛:庄屋の妾のお花と一緒になった算段の平兵衛、まだ未練のある庄屋を相手にお花が誘惑したところへ割って入り金をゆするつもりだったが…▽ゲスト・三倉茉奈