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書き起こし クローズアップ現代+「“白いダイヤ”ウナギ密輸ルートを追え」 2016.12.01

ウナギの値上がりが止まりません。
このお店では、10年前に比べて、うな丼の並みが1400円値上がりして、3300円に。
なんでこんなに高くなったんでしょうか?
私たちがふだん頂いているウナギちゃんの、99%は養殖のウナギなんですね。
シラスウナギと呼ばれる稚魚を育てています。
ところが今、このシラスウナギ、とっても値段が高くなってしまって、白いダイヤとも呼ばれています。
ウナギの値段がここまで上がっている最大の原因は、そもそもウナギの数が激減していることなんですよね。
私たちが口にしてきたウナギのうち、ヨーロッパウナギは2009年から輸出が段階的に禁止され、今、東アジアに生息しているニホンウナギにその需要が集中して、その結果、値段が上がっているんですね。
ぎょぎょっ!
さらに、そこに拍車をかける事態も起きているんです。
このニホンウナギに関しては、稚魚であるシラスウナギを高値で取り引きする不透明な流通ルートが存在すると指摘されているんです。
今、国際社会も注目する、シラスウナギの不透明な国際取り引きの実態を、NHKが徹底追跡しました。
三重県松阪市にあるウナギ養殖場です。
経営者の野口茂司さんが頭を悩ませているのは養殖に使うウナギの稚魚シラスウナギの値上がりです。
11月から12月にかけて主に仕入れているのは香港からのシラスウナギ。
この5年間で3倍以上になっているのです。
不透明な取り引きの実態とはどのようなものなのか。
まず香港で取材を始めました。
香港有数の漁港ではこの時期、さまざまな魚介類が水揚げされています。
しかし、シラスウナギの姿はどこにもありません。
香港近海では取れないといいます。
取材を進めると、市街地から車で40分ほどの郊外にシラスウナギの輸出を行っている施設があることが分かりました。
詳しい場所を明かさないことを条件に内部に入ることができました。
敷地内に並ぶのは大型の水槽。
取材に訪れた日は中国へ送られるというウナギの稚魚が大量に泳いでいました。
日本向けのものも近いうちに届くといいます。
香港で取れないはずのシラスウナギをどうやって入手しているのか業者に尋ねました。
シラスウナギはどこから来ているのか。
その手がかりが日本の貿易統計にありました。
9年連続で2000キロ以上の輸出が続く香港。
しかし2007年以前はほとんど輸出を行っていません。
一方、このころ大量に輸出していたのは台湾でした。
輸出量が入れ代わった2007年。
この年に起きたのは台湾が資源保護のために行った輸出の禁止です。
この数字の入れ代わりに意味があるのではないか。
確認のために台湾に向かいました。
台湾北東部にある漁港です。
11月にシラスウナギ漁が解禁され漁師たちでにぎわっていました。
この日の取り引き価格はこの1袋でおよそ10万円。
10年で相場が7倍に高騰しているといいます。
水揚げされたシラスウナギ。
輸出は禁止されているため台湾内で育てて流通させます。
♪〜仲買人が歌っているのは古くから伝わるシラスウナギの数え歌。
数え間違いを防ぐためだといいます。
買い集めたシラスウナギはどこに行くのか尋ねました。
買い手が誰かを探りましたが確かめることができませんでした。
そこで取材班は台湾のウナギ業界に詳しい人物を訪ねました。
ウナギの養殖業者や流通業者で作る団体の元代表郭瓊英さんです。
郭さんは驚くべき事実を教えてくれました。
本来、台湾の中で流通しているはずのシラスウナギの大部分が行方不明になっているというのです。
示されたのは、業界団体で調査した2012年のデータ。
漁獲されたシラスウナギが3.2トンあるのに対し台湾で養殖に使われた量は僅か0.8トン。
郭さんは消えたシラスウナギの多くは海外に密輸されていると見ています。
さらに取材を進め密輸に関わっている人物にようやくたどりつきました。
匿名を条件に取材に応じた男性。
台湾からの輸出が禁じられているにもかかわらずシラスウナギを求めてくるのは日本人だと明かしました。
男性は複数あるという密輸ルートの一つについて具体的に話しました。
台湾、金門。
金門島。
中国大陸の近くにある台湾の離島です。
アモイに運んだものは陸路で香港へ。
そこから日本へ輸出していると証言しました。
男性の証言を検証するため金門島へ向かいました。
中国大陸まで僅か2キロ。
かつては軍事対立の最前線だった金門島。
最近は交流が盛んになり大陸側から年間30万人以上が訪れるようになりました。
男性の証言どおり船を使って荷物を運ぶ際チェックを受けることはないのか確かめることにしました。
用意したのはシラスウナギに見立てた樹脂製の疑似餌。
少量の水を加えて袋に入れます。
乗船のルールに反しない方法で台湾のスタッフが運びます。
ターミナルには、預け入れ荷物に生き物を入れることを禁止するという表示がありました。

 

 

 


手荷物の場合はどんな制限があるのか確認しました。
乗客の手荷物はX線の検査装置を通します。
1時間余り観察を続けましたが乗客の荷物を開けて検査する様子は確認できませんでした。
取材班の荷物も開けられることなく乗船することができました。
密輸業者は1回につきおよそ20キロ数千万円に相当するシラスウナギを持ち込むといいます。
今回の取材では、密輸に関わっている男性の証言どおり厳しいチェックはありませんでした。
先週、シラスウナギの密輸の氷山の一角が明らかになりました。
台湾北部の空港で32万匹、6000万円相当のシラスウナギが摘発されたのです。
当局によると、香港行きの飛行機の預け入れ荷物から発見されました。
一般客に紛れてシラスウナギが密輸されている実態が浮かんできたのです。
さかなクン、こういった不透明な取り引きがあったんですよ。
こんなことが行われていたんですね。
どう感じますか?
いやぁ、本当にシラスウナギが、まさに私たちが、知らず知らずのうちに、こんな事態になってたとは。
まさに白いダイヤですね。
シラスウナギ数え歌が、なんとも本当に一匹一匹、大切にされているんだなと。
だけど、私たちが頂くからこそ、こういったことが行われちゃってるんですね。
取材をしていた黒瀬記者なんですけれども、これ、つまりですよ、私たちが食べているウナギの中に、もしかしてこういう密輸で入ってきてるウナギも、交じってるっていうことですか?
そうですね、どれだけの量が関わっているか、全体像は分からないんですけれども、私たちが口にしている可能性はあります。
あるんですね。
改めて、そのルートですけれども、どういうことなのか。
かつて漁が盛んだった台湾ですけれども、2007年に資源保護を理由に輸出が禁止されました。
そしたら、今度は台湾から香港に、密輸するルートができました。
ここにルートが出来たと。
で、香港を経由して、今度は日本に運びますが、そこは合法になるんです。
香港に入ったとたんに、これはもう合法として、堂々と日本に入ってくる。
これはもう、言ってみれば、ロンダリング?
そういえる状態だと思います。
ここから、だから、たくさん日本にも入ってきているってことですか?
全体の今、輸入されているシラスウナギのおおよそ8割が、香港から来ているといわれています。
8割?さかなクン、それからですよ、私たち、スーパーで国産ウナギっていうふうに見かけますよね。
でも、国産と言っても実は、稚魚自体は海外から買っているものも含まれるんですね?
そうなんです、日本で養殖されますと、もう国産ということになるんですね。
そうなると、ますます私たち、どこから来たウナギなのか、知らずに食べてるっていうことですね?
まさに、シラスウナギちゃんだけに、知らず知らず。
知らず知らずのうちに食べているっていう状況でもあると。
ぎょぎょっと!黒瀬さん、不透明だからこそ、価格にも影響が出ている?
そうですね、今回、取材した密輸に関わっている男性は、きょうは1キロ100万円だったものが、3日後には300万円になっていると。
ぎょぎょっ!ですね。
伝えていました。
3倍に。
そうですね。
闇取引ですから、輸出の際に摘発されるリスクがあるということで、そういった分も少し上乗せされるということがあるようです。
なるほど。
こういった東アジアでの不透明な取り引き、国際社会も注目していまして、ことし10月には、ワシントン条約の国際会議で、イリーガルトレードだとして、実態調査を行うことが決まったんですね。
さかなクン、これ、このまま状況が改善しない場合には、3年後には、ニホンウナギの国際取り引きが、事実上、全面禁止。
全面禁止に!
という規制が行われるかもしれないともいわれているんです。
これ、どれくらい深刻だと考えればいいんですか?
そうですね。
今、ニホンウナギは特にもう、絶滅の危険が迫っているわけですね。
絶滅危惧種ですので、ジャイアントパンダ並みに大切にしないと、もういなくなってしまうといわれているわけですね。
今までは漁師さんが、長年の勘と経験で、取ってきてくださったわけなんですけど、そこから養殖が行われ、ただ、ウナギの養殖というのは、天然資源を取ってこなければいけませんので、そういった資源量をしっかりと把握しないといけないわけですね。
今の時代は科学的な調査によって、どれだけの資源量で、どれだけを守んなければいけないかということが科学的に分かっておりますので、この量をしっかりと定めて、しっかり守るということが。
まさにだからこそ、この闇のルートっていうのは、改善しなきゃいけないわけなんですけれども、なぜ横行しているのか、先ほど、台湾の密輸の業者は、このように言っていた、日本人が欲しいと言うから売っているんです。
すべての業者が関わっているわけではないんですけれども、日本のこの消費、土曜うしの日、ここに大きな関わりがあるんです。
集中しているんですよね。
こんなに!
こちら去年のウナギのかば焼きへの支出金額ですけれども、7月に、こんなに突出して消費が伸びています。
皆さんがうしの日に食べると。
こちらは、シラスウナギが台湾、中国、日本にやって来る順番ですけれども、台湾では大体11月から12月にたくさん取れて、日本では1月から2月にたくさん取れます。
ただ、うしの日に間に合わせる形での養殖っていうのが、やっぱり日本では盛んなんですけれども、今、盛んなのは、特に半年で育てる方法です。
半年?
半年です。
その場合、7月の出荷に間に合わせるためには、半年前ですから、この1月上旬には遅くとも入れなくちゃいけない。
少しでも早くということで、この香港から仕入れて、半年で間に合わせるという、こういうサイクルが、ここの日を目がけて出来上がってしまっているという構図なんですね。
実は近年、こういった偏った流通の構図に対して、疑問を持つ人も、もちろん出始めていまして、日本国内でウナギを扱ってきた養殖業者や、ウナギ料理店などの現場では、この土用うしの日に合わせた消費サイクル、見直そうという動き、始まっています。
シラスウナギの値段の高騰に頭を悩ませている養殖業者です。
ことしから養殖の開始を一部2月から3月の時期に遅らせました。
このやり方だと土用のうしの日のあとの出荷になるため売値は2割ほど下がりますが採算は取れると見込んでいます。
土用のうしの日にこだわる営業をやめた専門店もあります。
この店では以前は土用のうしの日に普段の3倍の量のウナギを仕入れていました。
しかし3年前から取り扱うウナギの量を増やすことをやめ店内でPRすることも控えています。
土用のうしの日の前後は仕入れ値が2割ほど高くなるにもかかわらず品質が落ちるものが少なくないと感じたためです。
お待たせしました。
今、この店では品質的に納得できるウナギだけを提供することにしています。
やわらかい。
そのためにウナギの仕入れを減らし以前は夜8時までだった営業時間を大幅に短縮しました。
ウナギの資源が減少する中伝統の食文化を守るにはウナギの消費のしかたを見直す必要があると考えたからです。
さかなクン、土曜うしの日にこだわらず、ゆっくり育てようみたいな取り組みもありました。
どう見ましたか?
ウナギというお魚は、非常に長く時間をかけて育つお魚なんですね。
5年から10年ぐらいかけて育つともいわれています。
ですので、半年で一気に大きくさせるというのは、ちょっとウナギちゃんにとっても、かなり負荷をかけちゃってるのかなと思います。
やっぱり長くじっくり育てると、地鶏のようにおいしく育つと思うんですね。
そういうのが逆に売りになってもいいんじゃないかと。
付加価値がつくと、私たちもその分、ありがたく頂きたいと思います。
黒瀬さん、業界はどう考えてるんですか?
業界も土用のうしの日に高まる需要に応える必要があるということは、言ってるんですけれども、不透明な国際取り引きは、このまま放置はできないと認識していて、襟を正さないといけないと話しています。
先ほど、さかなクンからもありました、絶滅危惧種、ジャイアントパンダ、トキに並ぶんですというお話もありましたけれども。
まさに。
このウナギ、やっぱり貴重な魚なんですね。
貴重なお魚で、シラスウナギちゃんも、何千キロメートルも旅してやって来るんですよね、黒瀬さん。
ですので、そんなことにも思いをはせて、1匹のウナギを大切に、そして、晴れの日のような特別な日に頂きたいですね。
なるほど。
そもそもやっぱり、そういうありがたい魚なんだっていう考え方が、もしかしたら必要なのかもしれない。
黒瀬ちゃんは、ウナギを愛して10年間、一緒に暮らしていたんですよね。
そうです。
ウナギちゃんと共に新幹線に乗って。
そうですね。
お2人は、もともとウナギ好き仲間だっていうこともあるんですが、話はですよ、このままいくと、だけれども、国際的な規制がかけられて、ウナギが食べられなくなる事態も、起こりうるかもしれない。
そうならないために、何が必要なのか、お1人ずつ、ご提言を頂きます。
黒瀬さんからは。
透明化です。
国際社会の視線は厳しくなっています。
漁獲や流通を透明化することが何よりも重要だと思います。
そうですよね。
さあ、そして、さかなクンからは?
私もやっぱりウナギちゃんのことを、もっとよく知って、このウナギちゃんの長い姿と同じように、末永く、もうウナギちゃんと、地球の仲間としてもぎょ一緒していきたいなと思います。
みんなで頂きますってありますけれども。
ウナギちゃんから幸せたくさん頂いてますので、もっともっと大切に、感謝して頂きたいと思います。
今夜の「LIFE!」は…
2016/12/01(木) 22:00〜22:25
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代+「“白いダイヤ”ウナギ密輸ルートを追え」[字]

絶滅の危機に瀕(ひん)しているウナギ。その背景には、不透明な国際取引の存在があるとされる。番組では、台湾・香港での独自取材などから、ウナギの密輸ルートに迫る。