「『雨上がりの空に七色の虹が架かる』」・「ってそんなに単純じゃない」・「この夢想家でもそれくらい理解ってる」
（大島）うちからの話を蹴ったと聞きましたが…。
（すみれ）蹴った訳ではありません。
あなた少し前にうちの百貨店の店舗に来てましたね。
そこで何か思ったんじゃないですか？そうです。
売り場から売れ残りと言って商品が処分されていくのを見て悲しくなりました。
それだけではありません。
大急さんにはお任せできないと思う事があったからです。
聞かせてほしい。
（小山）ちょっと手間かかり過ぎですねぇ。
一工程二工程減らしましょう。
工程を減らすなんて…。
それでも品質は変わらへんでしょう。
理解して頂けない人にお任せする事はできないと思ったからです。
無駄なく合理的に。
そんなふうに仕事をしているうちに一番大事な事を忘れてしまったみたいだなぁ。
すまなかった。
こうしませんか？１０日間委託販売で売ってみませんか？百貨店の力を試してみませんか？どれだけ大勢のお客様にあなた方を知ってもらえるか。
（君枝）委託？
（明美）それって大急側やなくて自分らで責任を持つっていう事やな。
そう。
（良子）いいねぇ。
やってみたいわ。
（昭一）特選マークがついとったら全部大急が買い取ってくれる。
それは確実な売り上げや。
委託は全部自分らで売らなあかん。
売れへんかったら損害を全部自分らでかぶるんやぞ。
（君枝）分かってるて言うてるでしょ。
いや…。
売り子はどないする？悦子さん。
ああ！私もいいと思う。
そうねあの人なら。
（勝二）何の計算もせんとそんな簡単に…。
ほんまに全部自分らだけでやれると思うてるのか？やれるいうよりもやるしかないと思うてるわ。
（大島）百貨店は今生まれ変わろうとしています。
大勢の人に来てもらうためには目玉になるもの。
そしてお客様が心から喜んでまた欲しいと思ってくれるようないいものを置きたい。
皆さんと力を合わせてやっていきたいんだ。
はい。
どうですか？売り上げ予測の数は？間に合いそうですか？間に合うと思います。
でも全体の割合から言うて肌着が足りない気がします。
え？おしめも。
ああそうねぇ。
大丈夫です。
このとおりして下さい。
大島社長もおっしゃってましたけどうちにはうちで目玉になるものがあってもええんやないかなと思うんですけど…。
では何か考えといて下さい。
（悦子）女学校時代のお友達の富士子さんと順子さん。
（富士子）初めまして。
（順子）よろしくお願いします。
（一同）よろしくお願いします。
君枝の家の２階を作業場として出店の準備を始めたすみれたちですが…
お義母様お言葉に甘えて今日から…。
（琴子）何してるの？こないだこの場所を貸して下さいと…。
何の話？聞いてないわ。
勝手にやめてちょうだい！１０日間だけ大急百貨店にお店を出す事になったんです。
大急に？お義母様お願いします。
（時子）お願いします。
（一同）お願いします！もう…１か月だけですよ！あっねえ目玉って何か思いついた？どんなものがええのかなぁ？自分がお客さんの立場で欲しいもんでええんやない？欲しいもの…？龍ちゃん？龍ちゃん駄目じゃ！龍ちゃんこんな事したらお母さん悲しむよ。
（龍一）悲しまへんよ。
何で？
（龍一）何でも！ただいま。
何…？どうしたの？いや…龍ちゃんが…。
まずこんな事したらあかんって言わな。
言うてるよ。
通じてへんやない。
ちゃんと教えな。
明美さんは子どもがおらんから分からんのよ。
良子ちゃん…。
ごめん。
（紀夫）大急に出す目玉は決まったのか？まだよ。
んっ…。
もう時間あらへんやないか。
うん…。
ず〜っと考えてはいるんやけど…。
（さくら）喜代さんさくらのお弁当出来た？
（喜代）はい。
今日はほらっ薄焼き卵ですよ〜。
本当にきれいなお花ねぇ。
お弁当箱が殺風景やから開けたら楽しいのがええと思いまして。
楽しいよ。
お弁当開けたら楽しい！
（君枝）子どものお弁当箱よね？この蓋に絵を描いたらどうかと思うて。
おそろいの箸と袋もつけてセットにしてキアリス大急店での限定やったらどうかな？絶対欲しいわ！確かにええねぇ。
良子ちゃんどうしたんやろね？言い過ぎてもうたかなぁ…。
龍ちゃん座って。
（龍一）嫌や。
嫌やないでしょ。
（龍一）嫌や。
龍ちゃん怒るよ。
（龍一）ええよ〜。
・こんにちは。
良子ちゃんいますか？
（はな）
良子ちゃんがどんなに追い詰められているかこの時のすみれは気付いていませんでした
これを目玉商品にしたいと思うてるんですけど…。
ええと思います。
あっよかった…。
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ありがとうございます。
おはよう。
（時子）すみれちゃんおはよう。
（綾子）アルマイトのお弁当箱セットすてきやなぁ。
（文）ほんま！えっ？
（君枝）「１日３０個限定！」。
どうしよう…。
お弁当箱３００個っちどげんしち手に入れるんですか？
（潔）アルマイトの弁当箱？うん。
大至急３００欲しいんやけどどこか手に入る所知ってる？アルマイトの弁当箱の卸は知らんなぁ。
（明美）どうやった？商店街のいろんな人に声かけてみたけど…。
私も…。
（健太郎）お母さん上手！ありがとう。
ほんで何個作るんや？
（君枝）３００個。
（昭一）３００個？
（健太郎）僕も欲しい。
（君枝）ごめんね。
これは健ちゃんのやないの。
いつか作ってあげるからね。
（健太郎）うん！健ちゃんはほんまにええ子やね！ただいま。
ある晩の事です
お客さんも一緒や。
（喜代）あらまあ。
良子さんのご主人やないですか。
（勝二）夜分遅くにすんません。
良子ちゃんどうかしたんですか？
（勝二）子育てで悩んでるようで…。
龍一はやんちゃな男の子いうひと言や済まないんです。
保育所も断られたとか。
追い詰められているようでこのままでは…。
手のかかる子は…人の何倍も手のかかる子はおるんです。
どないしたらよろしいやろか？何倍も手をかけてあげたらええんです。
誰が親ややなくてみんなで育てるんです。
（龍一）タケちゃ〜ん！
（君枝）良子ちゃん…。
タケちゃん。
はい。
龍ちゃん元気すぎて良子ちゃん一人やと大変やと思う。
だからみんなで手をかけていこう。
そういう子はきっと人の何倍も幸せになるんやないかなぁ。
ごめんね良子ちゃん。
つらい思いしてるの気付かなくて…。
そうやね。
責めるような事言って堪忍な。
私こそひどい事言うてしまってごめんなさい。
お互いわだかまりなしでいこや。
うん。
はい！
（君枝）すごいねぇ健ちゃん。
字が書けるの？うん！お義母様。
私…働いていてなかなか家で相手ができないのに健太郎があんなにええ子なのはお義母様のおかげです。
健太郎を…あんなに優しい子にして下さって本当にありがとうございます。
君枝さん。
はい。
ちょっと来て。
（君枝）これ…。
（琴子）昔父がお世話した工場があってね。
３０１個目に健ちゃんのを作ってあげて。
あの子はもともと優しい子。
安心して。
はい。
あっ龍ちゃん！龍ちゃん。
あかん言うてるやろさっきから。
そのかわりかわいいお弁当箱１個くれるって。
ほんま？そしたら龍ちゃん。
健ちゃんとさくらと一緒にお弁当持って遊びに行こか？うん！それまでええ子にできる？できる。
龍ちゃんええ子！そうよ龍ちゃんええ子よ。
ええ子ええ子。
（足立）フフフッ！
そしていよいよ大急百貨店出店の初日
（出口）何でこれ初めからショーケース２つもありますのやろねぇ。
そう言われたからです。
（青木）大急に？はい。
（馬場）ハハッ！聞いた？鳴り物入りとはこの事やなぁ。
おはようございます。
（富士子順子）おはようございます。
今日から１０日間どうぞよろしくお願い致します。
（悦子）こんなふうにお店に立つなんて…。
人生って分からんもんやわ。
（開店のチャイム）
（館内放送）「間もなく開店です」。
（３人）いらっしゃいませ。
君ちゃん…君ちゃん！
（明美）どやった？まだ何も売れてないよ。
お弁当箱は…？えっ初日客が一人も来んかったって？はい。
そんな事ってあるんか？天下の大急やぞ！？
（勝二）そやからやめとけ言うたのに…。
このまま１０日が終わったらどんだけの損を抱える事になるんや。
特選マークやったらなぁ！
（ため息）お客さん来はりませんなぁ。
明日は大丈夫ですよ！このまま言われっ放しやったら悔しいわ。
まず原因を考えよう。
昨日も今日も周り見て思ったけど年配のお客さんが多いよねぇ。
お母さん世代のお客さんが少ないとしたら…。
呼ぶしかない。
そこで急きょ宣伝用のポスターを作る事になり…
その節はお世話になりました。
（シスター）いいえ。
これ貼らせて頂きたいんですけど…。
（シスター）お弁当箱セット…。
母親たちの目につく場所や町なかにポスターを貼った結果…
（客）お弁当箱１つ下さい。
大変申し訳ありません。
今日の３０個分が終わってしまって…。
お子様はおいくつですか？３歳です。
簡単に付け替えができるよう縫製しているんです。
（良子）どやった？お客さん…たっくさんいたよ！ほんまに！？ほんまに？
（２人）よかった〜！出産祝を頼まれたんやけど…。
ありがとうございました。
大盛況やな。
もう商品も足りないくらい。
ほう…すごいなぁすみれは。
今日は私どもの会社とこの条件やったらご一緒させてもらえるんやないかいう提案を持ってまいりました。
（ゆり）今回提案させて頂くのは洋裁と服地のセット販売という新しい試みです。
百貨店の一角に教室を作らせて頂きます。
教室に参加した人たちにはカタログを見てもらいます。
そこに載っている気に入った洋服を手作りできるんです。
なるほど。
服地はナイロンなどの新しい素材を積極的に使います。
新素材を？もし乗って下さらないならこの足でほかの百貨店へ行こうと思います。
いかがですか？ありがとうございます！
（潔）ありがとうございます。
（秋山）ありがとうございます。
ありがとうございます。
（良子）えっ商品が足りないの？そうなのよ。
もうショーケースがスカスカやって。
うれしい悲鳴よねぇ。
のんきやなぁ。
悦子さんたちも困っとうやろ。
悦子さん。
わっ補充分？助かったわぁ！ほんまに困るんですよ！何がですか？商品はちゃんと補充してもらわな！「せっかく来たのに品切ればっかりや」て苦情がたくさん入ってます。
（明美）ちょっと待って下さいよ。
売り上げ予測を出したのはそちらやないですか。
私らはそれに合わせて商品を用意しとったんです。
予測はあくまでも予測です。
今更そないな事言います？あっ…。
何？ショーケース１つ返したらどうかな？ああええね。
そしたら一つにまとめれるから見栄えはようなるよね。
うん！そうしよ。
あの〜。
はい。
何してはるんですか？ショーケース１つお返ししようと思って。
聞いた？聞いた…。
みんなショーケースが欲しいてたまらんのに…。
せ〜の…。
とりあえずこれでええかな。
（小山）勝手にショーケースを整理するなんてほんまに信じられへん事を…。
ショーケースを減らすんじゃなく商品を増やしてみてはどうかな。
あと３日でもわざわざここに出店をしなければ出会うはずのないお客様と商品との出会いがある。
これはとてもすてきな事じゃないか。
確かにそうね。
できる限りの事をやりたいと思うて。
そしたら今日は徹夜？そんな無理なお願い…。
（綾子）楽しそうやない？
（文）なあ！
（千代子）誰かのために何かを作るって楽しいよなぁ。
ありがとう！
とにかくもう作れるだけのものを作りました
こうしてる合間にも作ってくれてるの？ええ。
（悦子）よかった〜。
ありがとうございました。
彼女たちを突き動かすのはお客さんに対する思いとほんのちょっぴり芽生え始めた商売人としてのプライドなのでした
いらっしゃいませ。
どういったものをお探しですか？全部の売り上げが１２万円や。
えっ！そんなに！？初めの目標って…。
４万円よ。
３倍も…。
早う主人に言いたいわ。
私も。
（良子）びっくりするやろね。
一方紀夫は…
毎月初めに学校らしく入学式をしたらいいと思うてます。
入学式か。
ええなぁ。
（秋山）よろしなぁ。
ほなこの入学式と説明会は紀夫君が仕切るんやで。
いらっしゃいませ。
いらっしゃいませ。
たくさん集まってるわ。
（潔）婦人服売り場で告知しとったんやて？はい。
（ゆり）さすが紀夫さん。
計算どおりね。
（いつ子）こんにちは。
（すみれ良子）いらっしゃいませ。
こないだお買い上げ下さったお洋服お孫さんは…？フフッ。
とっても喜んでくれたのよ。
よかったです！
（いつ子）今日は主人も連れてきたの。
紀夫君時間や。
紀夫さん…？うっううっ…。
（ゆり）紀夫さん！
（潔）紀夫君！紀夫君…紀夫君紀夫君紀夫君！いらっしゃいませ。
やあ。
社長…。
今日は君たちに話があって来たんだ。
はい。
正式に出店をしてみないか？何日間ですか？ず〜っとだ。
何年も何十年も。
大急百貨店にキアリスの支店を出さないか？
そのお誘いがどんなものなのかすぐにはピンと来ないすみれたちなのでした
2016/12/11(日) 11:00〜11:20
ＮＨＫ総合１・神戸
べっぴんさん 一週間 第１０週「商いの聖地へ」[字]
大急百貨店への出店を断ったすみれ（芳根京子）に、社長の大島（伊武雅刀）は期間限定の大急百貨店での委託販売を提案。引き受けたすみれは出店準備を進めていくが…
詳細情報
番組内容
大急百貨店へのキアリスの出店を断ったすみれ（芳根京子）は、社長の大島（伊武雅刀）に事情を説明する。それを聞いた大島は試しに１０日間だけ大急百貨店で委託販売をすることを提案。夫の紀夫（永山絢斗）は心配するものの、キアリスを広めるチャンスだと引き受けたすみれは、仲間の明美（谷村美月）・良子（百田夏菜子）・君枝（土村芳）と一緒に、百貨店への出店準備を進めていく。ところが出店の初日、客は一人も訪れず…
出演者
【出演】芳根京子，菅野美穂，高良健吾，蓮佛美沙子，谷村美月，百田夏菜子，土村芳，名倉潤，永山絢斗，田中要次，平岡祐太，渡邉このみ，宮田圭子
原作・脚本
【作】渡辺千穂
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