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地上波テレビの字幕を全文書き起こします

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セリフ書き起こし 土曜ドラマ スクラップ・アンド・ビルド 2016.12.17

 

 

あらいいわね〜。
優しいお孫さんがいて羨ましいわ。
(昭一)健斗じいちゃん歩けるけん。
(健斗)大丈夫だよこれくらい。
じいちゃんには楽してもらいたいから。
俺は今毎日のようにじいちゃんの介護をしている。
こうしていると祖父思いの立派な孫に見えるだろうけど実は違う
俺の本当の目的は…
じいちゃんに安らかに死んでもらう事だ

新薬開発のために行う治験。

 

 

 


病院に缶詰めの生活が4日目を迎えた
会社を辞めた俺にとっては貴重な収入源だ。
病院が参加者に求めるのは血中クレアチン何とかの濃度を上げないよう何もしない事。
白い天井を見つめ時が過ぎるのを待つ。
ただ時間をやり過ごす生活に俺はもう慣れてしまっていた
(亜美)10万円?えっすご〜い!就活なんかしないでずっと治験だけしてればいいのに。
そんな頻繁にできるかよ。
勉強もしなきゃいけないし。
何だっけ?タッケン?いややっぱ行政書士にした。
宅建より強い気がするから。
そうなんだ。
まあいい会社あったら面接受けてみるつもりだけど。
焦ってよくないとこ就職してもしょうがないし。
カーディーラー何で辞めちゃったの?ああいうのはね俺にとって一生の仕事じゃないの。
まっいい経験できたけどね。
ふ〜ん…。

(物音)何?誰?いやうちのじいちゃん。
大抵この時間寝てんだけどな。
いやいるなら言ってよ。
私さっき結構声出しちゃったじゃん。
耳遠いから大丈夫だって。
フフッちょっと…。
フフフッ。

(物音)
(せきばらい)てか健斗ってお母さんと2人暮らしって言ってなかった?じいちゃんとはほとんど話した事ないから。
3年くらい前にうちが引き取ったんだけど俺忙しかったし。
ふ〜ん。
あっちょっとコンビニ寄っていい?ああ。
もしもし。
はい田中です。
あっはい!ああいえこちらこそ採用面接ありがとうございました。
はい。
あっそうですか…。
いえ…はい。
ありがとうございました。
(ため息)ダイエット?うわっびっくりした〜。
フフフッ。
あっ私が最近太ってきたとか思ってるんでしょ。
え?ああ…思ってないよ。
私だって気にしてんだよ。
あっもう仕事遅刻しちゃうから行くね。
ああまたメールする。
今日も絶望的に退屈な時間をやり過ごさなければならない。
まさに生き地獄そのものだ
回想我々は即戦力の人材を求めています。
残念ながら田中さんはそれに当てはまるとは言えません。
すぐに戦力になれるよう頑張ります。
あなたはこの会社のために何ができる人ですか?ああもう…。
(春子)はい。
じゃあ来週の火曜日に。
はいお願いします。
もう!どうして私の休みの日に来てくんないのよ。
誰?ケアマネの人。
ケアマネ?ケアマネージャー。
お父さんの介護認定の更新なの。
本当面倒くさい。
へえ〜。
へえ〜ってへえ〜じゃないでしょへえ〜じゃ!ひと事じゃないんだから。
明日のお父さんの病院の付き添いあんたがしなさい。
え?私一人で仕事と家事と介護やってんのよ。
あんたもうちにいるならちょっとは手伝いなさいよ。
ねえ。
ちょっと。
ねえ!おお健斗。
明日病院行くでしょ。
俺一緒に行くから。
あっそう。
いや〜ゆうべもよく眠れんでね。
え?ようやく眠れた頃におかあさんに朝ごはんだって起こされたでしょ。
結局寝た気がせんと。
昼寝してるからじゃないの?昼間も寝ちょらんよ。
(小声で)いびきかいて寝てんだろ。
体中の痛かけん寝るどこじゃなか。
はよお迎え来てくれるごとじいちゃん毎日祈っとると。
じゃあ明日午後ね。
え?病院明日!ああはいはい。
いや〜耳も聞こえんで健斗にもおかあさんにも迷惑ばかけて本当に情けなか。
悪うなるばっかでよか事なんか一つもなか。
もう死んだ方がまし。
じいちゃんなんかさっさと死んだらいい。
回想あなたはこの会社のために何ができる人ですか?「よか事なんて一つもなか。
もう死んだ方がまし」。
健斗。
ん?車椅子ば借りてきてくれんね。
えっ?歩いた方がいいんでしょ。
お母さん言ってたよ。
おかあさんにはないしょで。
ねっお願い。
もう足の痛かけん。
まあ別にいいけど。
ゆっくりでいいから歩いて体力つけようね。
筋肉も関節もどんどん弱っちゃうから。
先生右目がかすんでよう見えんとばってん。
白内障の影響だからある程度はしかたないですよ。
引き続き同じ薬出しときます。
お大事に。
はい。
血圧を下げる薬がこれとこれでこちらは一日朝1回。
こちらは神経痛の痛み止めで一日朝夕2回になります。
え〜っと…。
それぞれ用法用量書いてありますので見てあげて頂けますか?はい。
ああ疲れた。
病院嫌い。
みんな嫌いだよ。
薬いっぱいあるでしょ。
もうのむだけでおなかいっぱいになると。
嫌な事ばっかね。
もう死んだ方がまし。
閉めるよ。
また夢に仲間が出てきたと。
え?戦争でねみんな桜花に乗って散っていった。
オウカ?特攻機たい。
乗る前に終わったけんじいちゃんはこげんして生きとるばってん今でもあん時の事は夢に見っと。
出すよ。
ベルトして。
夜眠ると朝が来るでしょ。
またつまらん一日が始まるかと思うとなかなか眠れんと。
特攻行きそびれのおまけの人生が随分遠かとこまで来たもんたい。
もう十分はよ死にたか。
突然その言葉が祖父の魂の叫びに聞こえた
87歳という年齢からすれば祖父は至って健康体だと医者は言う。
だが目がかすみ耳もよく聞こえず原因不明の神経痛が治まらない
健斗。
ん?録画してくれた番組はどげんして見っと?え?そっちのリモコン使うんだよ。
録画一覧出して。
まあいいや俺がやる。
何が見たいの?やっぱりよか。
目んチカチカしてきた。
また今度にす。
本人にしか分からない主観的な苦痛や不快感はとんでもなく大きいのだ。
理解力も衰え体も思うように動かせず外に出れば邪険な扱いをされる。
祖父は自分が何のために生きているのか分からないのかもしれない
俺も同じだ
この人生をどうすればいいのか見当もつかない。
昼も夜もない白い地獄の中をさまよっているような日々。
こんな毎日が続けば死にたくもなるだろう
大輔ってさ何で介護福祉士になったの?
(大輔)何?今更。
いや…。
お前が介護の仕事してるってのがいまだに信じられないから。
続いてるって事は意外に向いてんじゃね?健斗もどうせ資格取るなら介護福祉士にすれば?いいよ俺は。
(大輔)年寄りにモテんのも悪くないぜ。
老人ホームがホストクラブだったら俺ナンバーワンだわ。
でもマジで老人は増える一方でヤバいよ。
お前さっさと亜美ちゃんとデキ婚でもして少子高齢化止めろよ。
無職でできるかよ。
ちなみにさ…「死にたい」とかしょっちゅう言ってる年寄りっている?
(大輔)いっぱいいるよ。
俺95歳のばあちゃんに毎日「殺してくれ!」ってどなられてるもん。
それが?いやうちのじいちゃんの口癖なんだけど。
何かかわいそうでさ。
うちの母親は全部自分でやれって感じで冷たいし外出たらボケ老人扱いされて…。
あれじゃ死にたくもなるよなって。
でもお前の母親が本当は正解なんだよ。
老人に優しくし過ぎたら駄目。
冷たくして自立促すぐらいがちょうどいいの。
じゃないと死に一直線だから。
どういう意味?老人は使わない機能は衰える一方なの。
筋肉も脳も動かしてないとあっという間に駄目になる。
動かさないと駄目になる。
その先に待つのは…。
穏やかな自然死かな?まあそれか寝たきりだな。
(大輔)何マジで考えてんだよ。
別に。

(ノック)はいお茶。
持ってきてくれたとね?あいがとう。
洗濯物畳もうか?健斗は優しかねえ。
おかあさんは自分で畳めって言うけど関節の痛かけん腕がよう動かんと。
寝たきりにならんごといつも家の中ばぐるっと歩いとっけど足の痛かけんねえ。
えっこれは?その大きさはおかあさんのじゃなかと?2人に迷惑ばっかりかけてすまないと思っと。
じいちゃん早くお迎え来てくれる事毎日祈っとると。
じいちゃん。
もう歩かなくていいんじゃない?十分頑張ったよ。
そうかねえ。
十分頑張ったよ。
苦痛や恐怖心のない穏やかな死。
祖父が求めているのはそれだ。
自分にその手助けができるだろうか?
でもそれは本当に正しい事なのか?
「限りある生を美しく昇華」。
回想特攻行きそびれのおまけの人生が随分遠かとこまで来たもんたい。
もう十分はよお迎え来てくれるごとじいちゃん毎日祈っとると。

人生に疲れたじいちゃんが尊厳ある穏やかな死を求めている。
それに協力できるのは俺しかいない

限りある生を美しく昇華
じいちゃんの残り少ない人生を美しく昇華させてあげるんだ
それが俺の人生に課せられた使命だ
しゃ〜っ!うわ〜っ!うお〜っ!うん。
よし。
よっ!じいちゃん。
これ乗って。
これどげんしたと?買ったんだよじいちゃんのために。
ほら乗って。
でも先生に怒られるけん。
じいちゃんに楽してもらいたいんだよ。
じいちゃん駄目だよこんな疲れる事しちゃ!ボケんように頭の運動も必要だっておかあさんに言われたけん。
じいちゃん目の病気になったんだろ。
こんな細かい文字見たら目に悪いよ!健斗大丈夫?大丈夫だよじいちゃん担ぐぐらい…。
大丈夫大丈夫…。
この枠の中の薬を順にのんでいけばいいから。
俺が声かけるし何も心配いらないからね。
助かるよ。
ああ…。
何?何が必要?いや薬ば塗ろうかと…。
はいどうぞ。
ありがと。
よいしょ…。
何何?何が必要?いや〜ちょっと暑かけん。
オーケー。
じゃあエアコンつけるね。
さあ座ってて座ってて。
何やってんの?あんた。
いやこういうのよけたりすると余計な筋肉使うから。
はあ?ああじゃなくて…。
ほら危ないからさ。
あっこれじいちゃんの洗濯物。
よいしょ。
ちょっと!自分で畳むって約束なんだから余計な事しないでよ。
まあまあそうおっしゃらずに。
ちょ…畳んでんだから!もう!ちゃんとつかまっててね。
ああ上がる上がる。
はあ…もうリクライニングベッドなんて何考えてるの健斗。
俺が金出すから文句ないだろ。
そういう問題じゃない!もう楽させ過ぎてもお父さんのためにならないって言ってるの!これがじいちゃんのためなんだよ!
俺の生活は今とても充実している
はい。
1週間もするとじいちゃんは自分から何もしなくなった
また健斗そういう事してたら…。
健斗お茶くれんね。
はい。
じいちゃんは都合の悪い事は聞こえない便利な耳を持っている
計画は順調だ
やっとつながった。
ねえ何してんの?メールも返してくれないしさ。
今じいちゃんデイサービスに送ってきたとこだから。
何かあった?
(亜美)いや何って今日休みだからどっか行こうって言ってたよね。
あっそっか。
最近ちょっと忙しくてさ。
何?忙しいって…。
じいちゃんの面倒見てんだよ。
介護してんの介護。
(亜美)介護?健斗が?何だよ。
別にいいんだけどそれより今日どうすんの?ああ…。
まあじいちゃん預けちゃったし会ってもいいけど。
(亜美)会ってもいい?何その言い方ひどくない?何怒ってんの?ええですね。
いつもお孫さんが送り迎えしてくれはって。
ええ。
お疲れでしょ。
車椅子使わはります?ちょっと歩いてもよかですか?最近運動不足なもんで。
はい。
でも無理せんといて下さいね。
はいはい。
気にしなくていいよ。
たまにはこういう事もあるんじゃない?うん…。
でも珍しいよね。
疲れてんじゃないの?う〜ん…。
じいちゃんの介護に力を注ぎ始めてから唯一の楽しみだったこの行為に何の快楽も感じなくなっていた
おじいちゃんが原因?え?介護で夜中に起こされてるとか言ってたでしょ。
寝不足なんじゃないの?でも毎日って訳じゃないし。
勉強大丈夫なの?勉強?ギョーセイショシ?取るんでしょ。
ああ…。
(亜美)もうすぐ時間だけどどうする?あっ見たい映画あるって言ってなかった?今日はじいちゃん迎えに行かないといけないから。
え〜本気で言ってる?
ついでに亜美に対しても次第に興味を持てなくなっていった
今の俺にはもっと大事なものがあるんだ
あっ!健斗どげんしたと?何でもない…。
何で来ないんだよ。
せっかくの看護師との飲み会なのに。
腰痛?介護で?いやじいちゃん持ち上げたり下ろしてたりしてたら腰やっちまってさ。
(大輔)腰痛なんて介護には付き物だよ。
てか介護ってお前そんなキャラだった?まあいいけど…たまには息抜きしろよ。
ああじゃあ。
(ため息)う〜んイタタタタッ…。
じゃあ会員規約読んでこちらに記入をお願いします。
はい。
ああ…あ〜頑張った…。
あの…。
(楓)いいですか?え?あっはい!もちろん。
あっすいません。
すいません。
どうぞ。
「破壊と再構築」?
筋力トレーニングとは筋肉繊維の破壊である。
それにより筋肉痛が起こり回復する事により筋肉は成長する
痛みのない筋肉に成長はない。
まさに使わない機能は衰えるのだ
限界を超すと筋肉が悲鳴を上げ地獄のような苦痛が襲ってくる。
だがこのトレーニングが俺の中に眠っていた何かをよみがえらせた
筋力トレーニングのあとは肉体と精神に活力がみなぎる。
総動員される脳のシナプス同士の結び付きは更に強固なものへと鍛え上げられていく
使わない機能は衰える。
その逆をいけば全ての能力は向上し人生も前進する。
再構築のため徹底的に破壊しろ
よいしょ。
ふっふっ…。
健斗力ついたねえ。
ああ。
じいちゃんそろそろ上がる?あっそうね。
うん。
同時にじいちゃんと一緒にいる事で俺は気付いた。
じいちゃんに比べたら俺は何でもできる
地獄のような苦痛がもたらす恐怖心に耐えろ。
そこを通過すればこの上ない快楽を感じられる
じいちゃんには絶対できない事が俺にはできる。
再就職の面接に落ちたくらいでめげる必要はない。
俺は生きている。
この価値ある健全な肉体を謳歌するんだ
この任務は俺の人生を破壊し再構築するため俺に課せられた使命だ
破壊して再構築しろ。
破壊して再構築しろ
この任務を成功させたとして他者から理解されるか分からない。
しかし俺が植え付けた希望の芽はどこかで花開くはずだ
だがどんなにあらがってもいつかは自分も老いる。
じいちゃんを尊厳死させる任務を負った自分にも白い壁や天井を眺めるしかできなくなる日が来る。
その時は若い世代よこの革命戦士たる自分を穏やかに殺しに来てくれ
あっ!あっイテテテテテッ…!痛い!痛い痛い!
(楓)大丈夫ですか?え?あっちょっとつっちゃって…。
どこですか?いえいえいえ!あのすいません大丈夫ですんで。
筋肉を伸ばした方がいいですよ。
あっはい。
あの…。
試合されるんですよね。
ジムのホームページで見て…頑張って下さい。
ありがとうございます。
(楓)スポーツされてるんですか?え?よくいらっしゃってるので。
あの…スポーツとかじゃないんですけど鍛えないと務まらない事をしているので。
そうなんですか。
勝てそうですか?
(楓)え?試合今度は勝てそうですか?今度は…ですか。
あっいや…。
(手をたたく音)はい集中!勝ちます。
健斗何かあった?怖い顔してる。
そう?優先席の誰か代わってよ。
私一日立ち仕事でフラフラなの。
あの人は生きたいのかな。
は?席を譲るのが優しさなのか足を鍛えさせるのが本当の優しさなのか。
どうやって判断できる?何言ってんの?健斗も代わりたくないだけじゃん。
お前と一緒にすんな。
何?その言い方。
最近冷たくなったよね。
私の事なんかもうどうでもいいんじゃないの?そうかもな。
おい!健斗変わったね。
だから?お前に関係ねえだろ。
・ああ…。
ううっ!ああっ!く〜っ!うっ!はあっ!ああ…はあ…。
ようやるね。
あっまあね。
じいちゃんはそいを昔急降下って言ってやらされとったと。
きゅうこうか?ああ。
予科練にいた頃仲間と並んでやったもんたい。
ふ〜ん…。
健斗は頑張り屋だね。
別にこれくらい。
じいちゃんの面倒もよ〜く見てくれるしね。
本当に助かっとる。
健斗はボクシングに興味あると?ああまあちょっとね。
29歳?そげん年でまだやっとっとか。
はよ引退せんば。
そうそう健斗に少し手伝ってもらいたか事のあっと。
衣がえ?もう夏服は要らんけん。
でもやってるうちにどげんしたらよかか分からんごとになってしもて。
どげんした?じいちゃん来年の夏まで生きる気満々じゃない。
なかなかお迎え来てくれんけんね。
まっいいや。
俺がやるよ。
じいちゃん寝てな。
じいちゃんも少しやるけん。
いいから!じいちゃん引っ込んでなよ。
はいはい。
じいちゃんは邪魔やけんね引っ込んでます。

(大輔)それ冗談だよな。
(亜美)それっておじいちゃんを殺そうとしてるって事?殺しじゃないよ。
俺はじいちゃんに協力してるだけ。
何だよ…。
悩みでもあるのかってお前らがしつこく聞くから正直に答えただけだろ。
死にたいなんておじいちゃんただ言ってるだけでしょ。
どうしてそんなの本気にするの?俺には分かるんだよ。
何も知らないやつが語んな。
お前自分がやってる事分かってんのか?寝たきりになるリスクがある事は承知の上だよ。
素早く短期間でやり遂げてやる。
俺にはその覚悟がある。
ふざけるな!自分の自己満足にお前のおじいちゃん巻き込むな!違うんだよなあ…。
俺はじいちゃんのためにこの身を犠牲にしてる。
まっお前がどう思おうが関係ない。
偽善の仕事して安月給もらってろ。
どうかしてるぞお前。
痛え…。
最低。
ちょっといいかな?見学ならもうちょっと離れてもらえる?楓さんに用があって。
楓の知り合い?ええ。
違うだろ。
彼女目当てで会員になったのならそういうのは困るんだ。
出てってくれるかな。
試合が近いんだよ。
僕はただ…。
僕はただ楓さんの応援がしたいだけです。
帰ってくれ。
(ブザー)おい!楓さん!おい!あっ気にしないで。
おいやめろ!楓さん試合頑張って下さい。
勝てますよ。
おい!あなたなら絶対に勝てます。
だって…何にもしませんって!ただ楓さんにお礼が言いたいだけです!だって俺楓さんから勇気をもらったんです。
破壊と再構築そうですよね!?追い出せ。
俺諦めませんから!だから楓さんも頑張って下さい!
俺は間違ってない。
誰にも分かってもらえなくても構わない
俺の破壊と再構築を成し遂げるんだ。
決して諦めない。
じいちゃんに安らかな死を与えるまで

(鼻歌)
(鼻歌)じいちゃん?早かったね。
友達とごはんじゃなかったと?え?ああ…うん。
さてと…じいちゃんはもう寝ようかね。
ピザ?え?じいちゃんが?
疑惑を必死に胸の奥にしまい込んだ。
さっき俺が見たのは一体何だ?まさか俺はだまされているのか
しかしなぜ?
健斗車椅子は?車椅子。
じいちゃん昨日…。
いや何でもない。
健斗最近勉強はかどっとると?え?健斗ならきっと合格するっちゃろね。
「アメリカ軍が沖縄上陸後鹵獲した桜花。
全長6メートルほどの胴体に幅5メートルほどの…」。
あんた何でこんなの見てんの?いやじいちゃんが乗るはずだった特攻専用機ってどんなんだったのかなと思って。
特攻?あの人は飛行機なんか乗ってないよ。
適性で落ちて水戸の高射砲で敵機を隠れて撃ってたらしいけど。
は?それじいちゃんから直接聞いた?ううん。
おばあちゃんとか親戚から。
あの人は戦争の事はな〜んにも話さないから。
特攻の仲間が夢に出てくるって話は?知らない。
まあ当時の親戚とか戦友とかみんな死んじゃってるから何が本当かなんて確かめようがないけどね。
田中さんお迎え早いですね。
・うおっとっと…。
・大丈夫ですか?やめて下さいね。
困るね。
体が言う事ば聞かんちゃけん。
はい。
じゃあ手はこっち。
こっちつかまりましょう。
じいちゃん!ああ健斗!早かね。
ヘヘヘヘヘッ…。
健斗行きたいとこがあると。
え?ちょっとだけたい。
お願い。
健斗が試験合格しますように。
家族がみんな健康でありますように。
いい気持ち。
じいちゃん。
うん?何考えてんだよ。
一体何が本当で何が嘘なんだよ。
何が?生きててよかったねえ。
70年も前にじいちゃんの仲間たちは空ば飛んで命ば散らしてしもた。
じいちゃんだけ生き延びて何もよか事なかっと思っとったけど。
健斗っちゅう孫に会えた。
こげんじいちゃんでも幸せな思いできっと健斗が教えてくれた。
健斗も生きてればよか事あっとよ。
何言ってんだよ。
違うだろ!早く死にたいってじいちゃんいつも言ってただろ。
つまんない一日が始まるのが嫌で朝が来るのが憂鬱だってそう言ってただろ。
だから俺は…。
こんな世の中…生きててどうすんだよ。
生きてたってしょうがねえだろ!健斗の幸せば祈っとる。
健斗はじいちゃんの死んだらどげんすると。
どげんすっと。

(鈴江)おじいちゃんお誕生日おめでとう。
はいプレゼント。
今日誕生日か。
(吾郎)何言ってんだよ親父ついにボケちゃったの?私孫よ。
健斗の姉の鈴江。
吾郎叔父さんはおじいちゃんの子ども。
分かる?分かっちょるよ冗談。
やめてよ。
ほら拓海大きくなったでしょう。
拓海おいで。
行政書士って実際仕事になるのか?まあ…。
普通の会社受けるにしても見栄えがいいから。
少し焦った方がいいぞ。
30越えたら再就職更に厳しいからな。
(鈴江)でもおじいちゃんの事いろいろやってるんでしょ。
偉いじゃん健斗。
健斗はお父さんに甘いから困るのよ。
もう少し自分でいろいろやらせないといけないのに。
ごちそうさま。
吾郎お皿お願いします。
言ってるそばから…。
今日は何で吾郎なのよ。
息子ならそいくらいしてもよかたい。
駄目。
自分でやりなさい。
お母さん誕生日だし今日だけいいんじゃないの?いいよはい貸して。
はい下げますよ。
もう…。
ねえ健斗叔父さんに何か仕事紹介してもらったら?まずは自分で必死にやってからだな。
中途半端に辞められると俺が困る。
どうして下げたんですか?皿。
母さんがじいちゃんにやらせるって言ってたのに。
別にいいだろ少し親父に楽させてやっても。
簡単なんですよ楽させるの。
母さんはあえて面倒な道を選んでじいちゃんが寝たきりになるのを防ごうとしてる。
何も知らない人間が手を出すべきじゃない。
(鈴江)ちょっと健斗…。
(吾郎)何言ってんだお前。
引きこもり生活で脳が働いてないんじゃないか?もうちょっとやめてよ2人とも。
今日はお父さんの誕生日なのよ。
介護の手伝いしてるぐらいで調子に乗るな。
お前はそれを働かない言い訳にしてるだけだろ。
その年で親に食わせてもらってるくせに偉そうな口をたたくな。
吾郎…。
(机をたたく音)せからしか!このボケナスが!健斗は自分の人生の事ば真剣に考えとると。
じいちゃんの事だって一番に考えてくれとるのは健斗やけん。
何も知らんお前は黙っとれ!あいがと。
気持ちよか。
今日は楽しか一日だった。
…うん。
回想健斗はじいちゃんの死んだらどげんすると。
健斗は自分の人生の事ば真剣に考えとると。
じいちゃんの事だって一番に考えてくれとるのは健斗やけん。
じいちゃんいい?・
(水の音)じいちゃん?じいちゃん!じいちゃん!じいちゃん!じいちゃん!死んじゃ駄目だよじいちゃん!じいちゃん!
(せきこみ)助かった…。
死ぬとこだった。
あいがとう。
健斗が助けてくれた!
じいちゃんは生きたかったんだ
健斗…大丈夫たい。
健斗は大丈夫。
大丈夫。
健斗は大丈夫たい。
じいちゃんごめん…。
ごめんなさい!ごめんなさい!
(健斗の泣き声)
俺が死なせたかったのは俺自身だった
でも本当は怖くてしかたがなかった。
怖くて苦しくて誰かに救ってほしかった

(健斗の泣き声)ごめん!ごめんなさい!ごめん!
(健斗の泣き声)ごめん…。
うっ!ダウン!コーナー!立て!楓さん!立て立て!立て立て!いけるいける!
敗北する恐怖から逃げては駄目だ。
必死にあらがって今にしがみつくんだ
(亜美)会社どんなとこ?医療機器メーカーの子会社。
社長が何か気に入ってくれてさ。
給料安いけど社宅住まいで金たまりそうだし。
(亜美)おめでと。
何か私と別れて運が向いてきた感じ?いやそんな事ないよ。
より戻そうって言っても遅いからね。
もうほかに好きな人できちゃったし。
え?あっそうなの。
あっ実はショック?別に。
亜美の幸せ祈ってるよ。
今度こそ仕事続けなさいよ。
体に気を付けてたまには連絡しなさい。
分かってるよ。
フフフッ。
寂しくなるね。
そんな遠くに行く訳じゃないしまたすぐに帰ってくるよ。
いや健斗には健斗の時間のあるけん来んでよかよ。
じいちゃんの事は気にせんで頑張れ。
うん。
じゃあ。
はい気ぃ付けて。

自分は30を前にようやく再出発をする。
ひどく不安定な存在だ
もうじいちゃんはそばにいない

あらゆる事が不安だ

しかし少なくとも今の自分には昼も夜もない白い地獄の中で闘い続ける力が備わっている
じいちゃんがそれを教えてくれた。
どんなにつらい状況の中でも闘い続けるしかないのだ
2016/12/17(土) 21:00〜22:15
NHK総合1・神戸
土曜ドラマ スクラップ・アンド・ビルド[解][字]

「早う死にたか…」いつもぼやく祖父の願いをかなえてあげようと孫の健斗(柄本佑)はある計画を思いつく。健斗は未来へ歩み出せるのか? 羽田圭介氏の話題作のドラマ化。

詳細情報
番組内容
失業中の健斗(柄本佑)は「早う死にたか…」といつもこぼす祖父(山谷初男)と同居中。彼はある時ふと祖父のその願いを真面目に受け止め、「望み通りの安らかな死を迎えさせてあげたい」というおかしな決意をする。健斗は祖父の体から筋力や抵抗力を奪うために家を片づけて超バリアフリーにするなど、どこか滑稽で、そして息詰まる祖父との介護の攻防戦(?)を展開し、そして意外な結末が…。羽田圭介氏の話題作のドラマ化。
出演者
【出演】柄本佑,山下リオ,浅香航大,秋元才加,浅茅陽子,山谷初男
原作・脚本
【原作】羽田圭介