クリスマス。
パリの街はまばゆい光で埋め尽くされます。
しかしきらびやかな街を後に人々は家路を急ぎます。
なぜならビッシュ・ド・ノエルクリスマスの薪という名の特別なケーキがお待ちかねだからです。
この日は離れて暮らす家族も集まって食卓を囲みます。
その締めくくりに欠かせないのがビッシュ・ド・ノエルなのです。
このケーキは思いやりの心の象徴でもあります。
薪をかたどったユニークなケーキに託された思いとは?ビッシュ・ド・ノエルと一緒に幸せのお裾分けです。
光る石をたどれば行き着く不思議な家にあのお菓子の家のヘンゼルとグレーテルの末裔が暮らしています。
彼らが振る舞うおいしいお菓子の物語をご賞味あれ。
あ〜重い。
なんて重いんだ!え〜何?かまど。
うわ〜っ!よいしょ!あ〜疲れたもう。
え〜っ!?やっぱり薪割りってのは大変ですね。
どうしてそんな薪割りなんかしたの?ちょっと姉ちゃんが…。
えっグレがどうしたの?あれ見てあれ。
だからね薪を用意したって訳なんだけどさ暖炉にくべようと思ったけどかまどにくべようかな?もう。
ちょっと近いから…。
よしなさい!そんなの。
何で?あのねかまどは暖をとるためのものではありません!いや分かってるよ。
それは冗談なんだけどさやっぱさかまど薪といえばさあのスイーツでしょ。
あのスイーツだね。
じゃあいってみます?いってみましょうかねっ。
いきましょう早速。
どんどんいっちゃおう。
という事で今宵ひもとくのは…。
いっちゃえいっちゃえ!聖夜のビッシュ・ド・ノエル。
それですそれです。
セーヌ川の南岸。
昔ながらのビッシュ・ド・ノエルを作っているパティスリーを訪ねました。
店主のリシャールさん。
毎年クリスマスイブには300個ものビッシュ・ド・ノエルを作っています。
こちらはメレンゲのキノコ。
繁栄のシンボルとして欠かせない飾りなんだとか。
思いのままに飾りつければビッシュ・ド・ノエルの完成です。
12月に入ると店頭には続々とビッシュが並び始めます。
形こそ薪を模していますが芸術的なお国柄を反映してか色や味もさまざま。
ムースやアイスクリームで出来たものまであるんです。
それに飽き足らずオリジナルのビッシュ・ド・ノエルを手作りする人も。
こちらのパリジェンヌクラリスさんもその一人です。
自分なりに工夫しながら新しい味に挑戦するのが楽しみなのだとか。
幼い頃からクリスマスならではのこのケーキが楽しみで5歳の頃にはもうお手伝いを始めていました。
家族が離れて暮らす今もビッシュ作りを欠かしません。
父と母それぞれに作ります。
今年予定しているのはなんとティラミスで出来たビッシュ。
事前に試作する念の入れようです。
そして翌日。
試作品を携えて郊外の町に出かけました。
ここは父のクリスチャンさんが暮らす町。
味にうるさい父に喜んでもらえるように要望を聞いておこうというのです。
家族で過ごすクリスマス。
思い入れの程が伝わってきますね。
へえ〜パリにはいろんなビッシュ・ド・ノエルがあるんですね。
ねえ。
へえ〜。
俺たちもさクリエーティブなビッシュ・ド・ノエルちょっと作ってみない?作ってみたいね。
任せて下さい。
じゃあここでキメテどうぞ!はい!…を目指します!なるほど。
雪がズズズンと積もったような真っ白なビッシュね。
うん。
じゃあ早速いきますか?いこういこう!よし!やった〜!さてさていきますか。
よしかまど何からいきますか?じゃあスポンジ生地からでしょう。
あ〜もうかまどこれはね何回も作ってますから任せておいて下さい。
どうぞ〜。
は〜い。
あっ!お〜。
いい感じにほら。
すぐにプレートから外して乾燥しないように紙か布巾をかけて冷ましている間にですよ上に飾るキノコを作りたいんですけどここでオキテ!はい!どういう事?これ。
キノコはねメレンゲそれで作りますから。
はいはいはいはい。
きめの細かいツヤのあるメレンゲにするためにはグラニュー糖をしっかり溶かさないと駄目なんです!だから湯煎で50℃まで温めればしっかり溶けるからそれをやってもらいたいですね。
はいはいはい。
じゃあまずね卵白とグラニュー糖を混ぜるでしょ。
よいしょ!はいそして湯煎50℃です。
これでしっかりしっかり溶けてくると…。
50℃ですね?うん。
…なった!なった?うん。
よしよしじゃしっかり泡立てましょう。
じゃあそろそろ様子を見てみます。
はい。
持ち上げちゃってみちゃって下さい。
大丈夫だにょ。
大丈夫?オーケー!じゃあねそのメレンゲを半分に分けます。
キノコのカサ用と軸用ですよ。
更にカサ用のメレンゲは半分をピンクに色づけしたわよ。
はいはい。
よいしょ。
じゃあ丸く絞って下さいよ。
大体直径2センチから3センチくらいですかね。
2センチから3センチ。
はい。
上手。
あ〜あっと!その上に白のメレンゲで模様入れたいの。
水玉模様みたいなね。
それやっちゃおう。
あ〜っ。
かわいいねこれね。
うん。
キノコ君いいですね。
ありがとうございます。
どう?じゃあ今度さ白の方のメレンゲでやってみる?これも2〜3センチかな?そうそうそうそう。
やった〜!その上にねフランボワーズのパウダーです。
これをちょっと振ってみちゃったらどうかしら?すごいね茶こしで振るんだね。
そうそうそう。
おっいいじゃないの?いい感じだね。
クリスマスの薪を意味するビッシュ・ド・ノエル。
なぜケーキが薪の形をしているのでしょうか。
その由来の一つが北欧のお祭りユール。
冬至の日盛大に薪を燃やし健康や豊じょうを願って太陽に祈りをささげます。
寒さ厳しく日照時間が短い土地に暮らす人々の思い。
それがフランスにも伝わりクリスマス暖炉の前に家族が集まり薪を燃やす風習が生まれたのです。
ただの燃料としての薪木というよりも何か聖なるものをそこに感じている。
そういうところが見られます。
クリスマスの時には暖炉に薪を必ず置いてそして家族みんながお祈りをささげる中で火をつけるという木に対する信仰というもの…特別な信仰というものがあるかと思います。
聖なる薪はなんとスイーツに姿を変えます。
フランス菓子の歴史を書き残したピエール・ラカンの著書にも薪の形をしたケーキの図案が!ビッシュ・ド・ノエルは誕生から1世紀余りでフランス中に広まったのです。
もはやフランスのクリスマスの象徴となったビッシュ・ド・ノエル。
そこには人々が薪に託した思いが脈々と受け継がれていたのですね。
う〜んそうか。
薪にはさ寒いヨーロッパならではの人々の願いっていうのがね込められてたんだね。
本当だよね。
薪を大事にしてたって事ですね。
神様みたいにね。
そうだね。
面白い。
さてじゃあいきますか。
いきましょうか。
続きいきますか。
よし!あれ?かまど。
はい〜。
生地が3つに分かれてるんだけど。
そうなんですよ。
そこにかまぼこみたいな形の型があるでしょ?これ何?今回はそのトヨ型っていうのを使います。
そこに合わせてカットしたの。
じゃあそのカットした生地にシロップをまず塗りますか。
焼け目のある方に塗ります。
はい。
そしたら今度型それにフィルムを敷きましょうか。
サイドいっちゃいましょうか。
ペタリと。
そしたらそこに生地ですね。
そうそうそう。
よしいきました。
じゃあそれ置いといて中に入れるクリーム作りましょうか。
分かりました。
今回は2層仕立てでいきますから。
ゴージャスですね。
ゴージャスでしょうよ。
じゃあまずホワイトチョコレートのクリームからいきますよ。
はい!生クリームを沸騰させる。
そしたらボウルに刻んだホワイトチョコレートが入っております。
チョコレートを溶かしますよ。
いいですよいいですよ。
あっ溶けてきたね。
すごくいい。
すごくよくできました。
生クリームに砂糖入れて泡立ててそしたらそこに溶かしたチョコレートそのチョコレートを加えて混ぜましょう。
すくい上げるように混ぜて下さい。
うわっもうすごいプロっぽい。
ウハハハ…その…ハハハ…。
今度流す。
型に?はい。
入れますからね。
頼んまっさ。
それでちょっと平らにして下さい。
ウフフフそれでオーケーです。
はい!じゃあフランボワーズを埋め込みたいんですが断面の部分あるでしょ?これか?こういう事でしょ?そそそ断面それを見えたい。
きれいでしょう?見た目きれい。
ねっ目立つね。
味のアクセントにもなりますから。
すばらしいよ。
じゃあもう一種類いきますよ。
はい!フランボワーズのクリームを作ります。
オーケー!うんここでオキテ!はい!どういう事?フランボワーズのクリームを作るにはフランボワーズピュレあるでしょ?そこに。
ありますよ。
赤いやつね。
それとゼラチンを湯煎にかけて溶かしてそこに生クリームを入れて作る訳。
だけど熱すぎると生クリームが分離しちゃうの。
なるほど。
駄目でしょ?だからフランボワーズピュレの一部だけそれを取り出して湯煎にかけると。
このだからちょっとずつやるって事が大事だって事よ。
プロセスとして。
一気に最初から全体を混ぜちゃうと分離しちゃう訳。
生クリーム入れた時に。
だから今これはちょっとだけやってまた残りのピュレを合わせる訳ねそれにね。
手早く混ぜた…。
じゃあそこで生クリームオーケーになる訳ですよね。
一気に入れるとゼラチンのダマが出来やすくなりますからまず一部を混ぜて下さい。
うお〜すごい一気に溶けた。
ねえ。
じゃあそれを生クリームの方に移しますか。
お〜きたきた。
うわ〜。
すごい色。
そしたらこれ型に流したいんだけどその前にオキテ!はい!何?仕切りって。
3枚分けててさ2枚置いといてって言ったやつ。
残ってますよ。
ねっ残ってるでしょ?その仕切りがないとさどうなると思う?一層ごとに冷蔵庫で冷やしたりしなきゃいけないって事でしょ?そうよね。
でこの仕切りをして時短って事ね。
いい言葉知ってるじゃない?・「時短時短〜」仕切りをきっちりさしといてフランボワーズのクリームを…。
入れてくよ。
アハハハ…。
そこでじゃあ底ぶたをすると。
どうだ?あっぴったり!で?冷蔵庫に入れて冷やし固めます。
オーケー。
大体2時間ぐらいです。
・「時短時短〜」2時間か。
ちょっと一息TeaBreak!トップパティシエによる2016年ビッシュ・ド・ノエルコレクション!まずは1903年創業の老舗のパティシエクリストフ・アペールの自信作。
永遠の美を意味する白いクジャクをモチーフにホワイトチョコレートで真っ白に仕上げています。
とっても優雅ね。
続いてはパリで活躍する日本人代表青木定治の作品。
ヨーロッパ伝統の黒い森のケーキにヒントを得て生命力あふれる緑の森を表現。
抹茶を使ったところに日本人らしさを感じるわね。
そしてこちらはパリの最高級ホテルのサロンから。
幼い息子さんのミニカーからインスピレーションを得てミニバンを薪に見立てたんですって。
なんとも独創的な発想ね。
芸術的なビッシュ・ド・ノエルはどんなふうに生まれるのかしら?新進気鋭のトップパティシエのカップルのところにお邪魔してみました。
ディディエとナタリーどんな事をイメージしてビッシュを作るの?こちらは秋冬の森をイメージした栗のビッシュ。
ほかにも夏の太陽や春の息吹などを表現したビッシュが!さまざまな季節が連想されて楽しいわね。
そろそろ固まったんじゃないかな?よし!よしかまど。
はいはい。
仕上げです。
仕上げですね。
ケーキを型から外しますよ。
はい。
あれ?このフィルムを…。
はい。
それ持ち上げると簡単に取り出せますから。
キュキュキュキュキュキュキュキュキュ。
これはあとお皿に?じゃひっくり返したいんだけどできるかな〜?できます。
緊張の一瞬です。
これをコトンと。
グアッ意外に簡単にできた。
うわっきれい!でもその上に生クリームを塗っていきますから色が変わります。
でも全面を覆うようにススッと先に基本ラインを作っておいて下さい。
どう?どんな感じ?これは。
いい感じいい感じ。
そしたらへらを置いていく感じで模様をつけてってほしいのね。
はい。
薪らしく。
うんうんそうそうそういう事そういう事。
それですそれです。
どう?すごくいいんじゃない?何かワイルドな感じがあって。
そしたら最終飾りつけですよ。
さあこれどうしましょうかね?どうしますか?アーティスティックな感覚でやってみちゃってちょうだいよ。
そうだね。
インスピレーション。
降りてこい降りてこい。
面白いね面白い。
かわいいな〜かわいい。
お皿の色といいめっちゃくちゃ合ってる。
オーケー!オーケー出ました!やった〜!出来ました!よっしゃ〜!すてきすてき。
本当おいしそう。
やったね。
オリジナルのねうん。
(チャイム)あっ!姉ちゃん帰ってきた。
びっくりした。
姉ちゃんお帰り!お帰りなさい。
白い雪のようなクリスマスの薪作ったよ。
雪が降り積もる薪をイメージした真っ白なビッシュ・ド・ノエル。
フランボワーズのさわやかさとホワイトチョコレートのまろやかさが絶妙にマッチ。
口に入れたらすっと溶けてまるで淡い雪のよう。
優しい気持ちで味わって。
毎年ビッシュ・ド・ノエルを手作りしているクラリスさん。
実は両親のほかにもケーキを届ける相手がいます。
それは路上生活をしている人たち。
長年ボランティア活動をする中で思い立った事でした。
8年前に始めて以来毎年欠かさず届けています。
今年のクリスマスもみんなの幸せを祈ってビッシュ・ド・ノエルを焼くというクラリスさん。
ビッシュ・ド・ノエルはクリスマスの分かち合いの心を思い出させてくれる特別なスイーツなんですね。
今日の「グレーテルのかまど」いかがでしたか?自分なりに思い描いたビッシュ・ド・ノエルが少しずつ形になっていく様子にワクワクしました。
この喜びをみんなで分かち合えるのがクリスマスのよいところですよね。
皆さんもすてきなクリスマスを。
それじゃちょっと失礼して。
よし!頂きます。
どうぞ。
見てもうこの断面。
何かとってもその風景がすてきよ今。
ナイフを入れるのがすごくもったいないというか…。
頂きます。
う〜ん。
ちょっと待って。
めちゃめちゃおいしいなこれ。
ホホホホ…。
ふわふわしてる。
ねえ。
うん。
でもこれちょっと1人で食べてんのはさみしいな。
大勢の友達と食べたいよね。
うん。
ご近所さんとかね友達とかいっぱい呼びたいね。
そう何か世界中にいるかまどの仲間も呼んでいいかな?いやかまどの仲間呼んだらそりゃもうおうちに入りきらなくなるでしょ?入りきれないよ。
長〜いビッシュ作ってくれる?じゃあ。
作りますよ。
みんなのためなら僕は。
やった!すごい。
何日かかるのかしら?フフフフ。
民族学者レヴィ=ストロースは2016/12/19(月) 22:00〜22:25
NHKEテレ1大阪
グレーテルのかまど「聖夜のビッシュ・ド・ノエル」[字]
フランスのクリスマス・イブを彩る、ビッシュ・ド・ノエル。特徴的な薪(まき)の形に込められた願いをひもときながら、ヘンゼルが雪をイメージしたビッシュに挑戦!
詳細情報
番組内容
フランスを代表するクリスマス・スイーツといえば、ビッシュ・ド・ノエル!クリスマス・イブのディナーを彩るこのケーキ、色合いもフレーバーもバリエーション豊かですが、特徴的な薪(まき)の形だけは、譲れないポイント。実はこの形には、長く厳しい冬を乗り切り、太陽の恵みを待ち望む人々の願いが込められているのだとか。家族愛、助け合いの季節でもあるクリスマス。その精神を託した薪のケーキを、ヘンゼルが手作りします。
出演者
【出演】瀬戸康史,【声】キムラ緑子