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セリフ書き起こし 連続テレビ小説「べっぴんさん」総集編(前編) 2016.12.29

 

 

(はな)
今から70年ほど前。
戦後の日本は全てがゼロからの出発でした
神戸の焼け跡である思いを抱いた女性たちがいました
(潔)彼女たちはただただお母さんと赤ちゃんたちを思い一針一針縫い続けました。
その心が多くの人たちを幸せに導いたのです。
(拍手)回想すみれ。
クローバーの4つの葉にはなそれぞれ意味があるんよ。
「勇気」「愛情」「信頼」「希望」。
それが全部そろうと幸せになれるの。
忘れんとってなぁ。
大人になっても。
(すみれ)はい。
お母様。
このお話の中心にいるのは坂東すみれ。
私の自慢の娘です

舞台は戦前の神戸。
すみれの父五十八は坂東営業部という繊維会社を営んでいました
おはようゆり。
似合う?この前お父様が仕立てて下さったお洋服。

 

 

 

 


(五十八)よう似合うとるなぁ。
(喜代)すみれお嬢様!
(五十八)すみれおはよう!おはようございます。
フフフ…どや?その服は。
気に入ったか?何かな…何かな…。
(五十八)何や気に入らんのかいな!特別に作らせたべっぴんやいうのに!すみれお嬢様は先ほど襟の刺繍がすてきやて…。
そないきつうおっしゃらんといてあげて下さい。
ああすまんかったな。
明日お母さんのお見舞いに行こか。
はい!
(ゆり)ほんまに?
すみれは自分の気持ちを言葉にするのが苦手でおっとりとした性格の女の子でした
(忠一郎)すみれお嬢様はこの景色がお好きでございますなぁ。
学校行きましょか。
ねっはい。
すみれは入院中の母を元気づけようとハンカチに刺繍を入れお見舞いに持っていったのですが…
(五十八)何や?これ。
(忠一郎)何でっしゃろな?
(ゆり)初めてなんやからしょうがないわ。
すみれが作ってくれたんやもん。
お母さんうれしい…すみれ!すみれ!あれはゆりとすみれやったよ。
もっとうまくなりたいと思ったすみれは刺繍の練習を続けます
イタッ!イタッ…。
ある日近所の子どもたちが坂東家にやって来ます。
その中に使用人の娘明美もいました
(明美)きれい…。
何しとるんや!これはお嬢様方のおやつや!泥棒か!?
(マツ)すんません。
マツさん。
うちの子なんです。
ほんますんません。
気ぃ付けや!うち泥棒なんてせぇへん!何で謝らなあかんの?堪忍な…。
そんな明美を気の毒に思ったすみれですが…
(ゆり)くすぐったいわぁ。
ゆりお嬢様も来年は女学校ご入学。
奥様もさぞかし楽しみにされてますやろなぁ。
そのころにはお母様も退院して家に戻ってるやろうしな。
うん。
(ゆり)それでこのあとどうするんですか?針と糸で縫い合わせて…。
針と糸!?針と糸を使うんや。
喜代さん靴屋に行きたいねん…。
あきません!町場は怖い所なんです。
しかしすみれは無断で麻田の店を訪れます
麻田さん…?わあ…。
わあ…。
はっ…どないしよ!
(ドアが開く音)ん?
(ミシンの音)すみれお嬢様!いい匂い…。
シナモンティーいうんです。
ゆりお嬢様の足は甲が低いんです。
奥様とおんなじです。
一番最初に坂東の奥様にお作りした時えらい気に入って下さって奥様からゆりお嬢様とすみれお嬢様がご結婚なさる時作ってほしい頼まれてます。
何でそないに見たかったんです?靴作るとこ。
お見舞いに刺繍を作ったんやけど下手くそで渡せなかった。
誰かて最初からうまくいきませんわ。
そやけど想いをこめたら伝わるんです。
誰がどんな想いをこめて作るのか。
それが一番大事なんです。
何でお前はあかん言われた事をすんねや!もし人さらいに遭うたらどないすんねや!旦那様。
ゆりお嬢様のお靴でございます。
うちの娘があんたとこ行った時何で「すぐ帰れ」て言うてくれなんだ?申し訳ありません。
その靴持って帰ってくれ。
えっ?
(五十八)あさやさんとはこれきりにさせてもらう。
これはゆりお嬢様のために作った靴です。
これだけはどうかお納め下さい!要らん言うたら要らんのや!お父様!すみれ!子どもはええ。
部屋戻ってなさい。
何や?何か言いたいんやったら言いなさい。
お前はいっつもそうやないか!結局何も言わんのやろ?堪忍して下さい!私があかんのにみんなを怒るのはやめて下さい!麻田さんは帰りなさいって言うたんやけどどうしても見たくて…。
麻田さんが履く人の事思うて作ってくれる靴。
女学校あがる時もお嫁さん行く時もお母様が頼んでくれた靴を履きたい!そやからずっとあさやさんで靴を作って下さい!
(五十八)そうか…。
そうやな。
どんだけ心配した思てんねん。
お前になんぞの事があったらお母さんに合わせる顔ないやろ!ごめんなさい。
回想
(麻田)どんな想いをこめて作るのか。
それが一番大事なんです。
すみれははなのために想いをこめて刺繍をしました
やっぱり下手やね。
すみれが作ってくれたんでしょ?お母さんのために。
うん。
一生の宝物や。
べっぴんやな。
もっとうまくなりたい。
刺繍教えてくれる?ええよ。
針はまっすぐ刺してまっすぐ引くのよ。
はい。
(医師)残念ですけどもういくばくもないかと…。
覚えてる?四つ葉のクローバーの意味。
覚えとるよ。
「勇気」「愛情」「信頼」「希望」。
全部そろうと幸せになる。
忘れへんよ。
お母さんと約束したんやもん。
ゆりすみれ。
お母様。
私なもろうた人がうれしい思うてくれるような想いを伝えられるようなべっぴんを作る人になりたい!なれるよ絶対。
女学生になったすみれは亡くなった母との約束を胸に刺繍を続けていました
行ってきます。
(君枝)おはよう。
おはよう君ちゃん。
出来たよ。
2人の分。
(良子)かわいい!クローバーやね。
明日からもんぺはくのも楽しみやわ。
おそろい。
すみれちゃんありがとう。
ありがとう。
あっ…。
(君枝)すみれちゃんの知り合い?幼なじみいうか…。
へえ〜。
すてきやない…。
こじょうちゃん!こないなとこで何してんねや!来てもうてな。
召集令状や。
いつ何が自分に降りかかるか分からん時代や。
せやからちゃんとやりたい事見つけて悔いのないように生きようや。
聞いたで。
(ゆり)失礼します。
私も入れて下さい。
会社の事はお前が考える事やない。
お前にはもっと大事な事があるやろ。
(ゆり)私の人生は私のものです。
自分の愛する人と結婚したいと思うてます。
愛する人?ええ。
誰や?そいつは。
潔さんです。
(正蔵)潔お前…。
(五十八)許さん…許さんぞ!
(正蔵)堪忍して下さい!潔さんとは何にもありません!全くの片思いで潔さんをお慕い申し上げてるんです。
私の正直な気持ちを潔さんに受け止めてほしいんです!
(五十八)何をふざけた事を…!ふざけてないです!今すぐ潔君連れて帰ってくれ。
(正蔵)はい!
(潔)こじょうちゃん。
わしはゆりさんに惚れた。
そやけどゆりお嬢様とはないな。
結婚はない。
ゆりさんに諦めてくれって言うてくれ。
何でやろ…。
潔君養子やからな。
野上夫婦は親戚に頼み込んで赤ん坊やった潔君を養子にしたんや。
実の子のようにいやそれ以上に跡取りとして大事に育ててきたんや。
そんな潔君を何で婿に出さなあかんのや。
しかし数日後
(正蔵)ゆりお嬢様と潔を結婚させて頂きたくお願いに上がりました。
坂東家あっての我々いう事を忘れたらあかん思うてます。
潔に我が子になってもらった事はとてつもない幸せや思うてます。
これからも親子である事は変わりません。
そやったら結婚して坂東の家にと。
潔君はどう思てんねや。
ゆりさんに惚れてます。
こないな人と一緒におったら幸せや思います。
ゆり。
はい。
お前が嫁に行け。
お父様…。
潔君。
どないな事があっても必ず生きてゆりのもとに帰ってこい!娘を…よろしく頼む。
はい!
(トク子)けど五十八はよう長女を嫁にやる気になったなぁ。
すみれのお父さんはな次男坊やっただけに理不尽な思いしてな一人で頑張ってきたんや。
商売に向いてたんかなあ?あっという間に兄を抜いてしもたんやけど…。
傾いてる本家を助けるために得意先を泣く泣く譲ったんや。
そんな事があってうちを飛び出しよった。
あんたのお母さんも体も弱いのに身を粉にして働いて…。
はなさんが近江から送ってくれた品を五十八が大阪で売る。
そんな2人の頑張りがこの家の始まりやった。
そうやったの…。
夫婦二人で築いたものを引き継いでもらいたいという気持ちは人一倍強かったと思うで。
そしてすみれにも縁談の話が持ち上がります
昔からうちの婿にどうやて言われてる話や。
私…その人と結婚します。
ええんか?お父様とお母様が築いてきたこの家を絶やしたくないんです。
お父様とお母様のためだけやなく自分のためにもこの家を継ぎたい思うてます。
おおきに。
彼なんや。
縁談の相手は幼なじみの紀夫でした
奥様の形見です。
お似合いになると思います。
回想すみれこのお母さんのドレスすみれも着てな。
すみれのウエディング姿が楽しみやわ。
(喜代)お支度できました。
(紀夫)き…きれいです。
それから数か月後
赤ちゃんができました。
あああ〜!どうしたの?僕は…喜んでいるのです!
ところが…
坂東紀夫さんはおられますか?召集令状です。
女の子やったらさくらという名前にして下さい。
さくら…。
学生時代すみれの事を見かけた事がある。
子どもの頃から君を思っていたけれど大人になって桜の花びらが舞う中を歩く君に心を奪われた。
母であるすみれのようにそしてすみれのお母さんのように花を咲かす人生を送ってほしい。
僕とすみれの子をしっかり頼みます。
はい。
こうして紀夫は戦地へと赴きました
(産婆)もうじきですよ!頑張って!・
(赤ちゃんの産声)ハハハッ!
(産婆)元気なお嬢様ですよ。
さくらちゃん…こんにちは。
しかし米軍による本土への無差別爆撃が始まりすみれたちは五十八の実家へ疎開する事になります
他人のうちやないんやからゆっくり過ごし。
(節子)ゆりさんすみれさん。
初めましてやなぁ。
こちらは嫁の静子。
孫の慶一や。
よろしくお願いします。
困った時に頼れる場所があってよかったな。
それからしばらくして…
お父様!忠さん!神戸で空襲があったんや!えっ?
大切な家はもうそこには存在しませんでした。
ですがすみれには守るべきさくらがいるのです
紀夫さんは絶対に帰ってくる!
本当に大変なのはここからなのです。
それでもすみれは母として前に進んでゆくのです
大阪の会社はどうやった?
(ゆり)全部焼けて…野上のお義父さんが…。
(五十八)野上がどないしたんや?どないしたんや!亡くなってました。
その数日後
(ゆり)お呼びでしょうか?出てってもらいたいんや。
一生甘えられても困るんや。
うちにはうちの家族がおるんやから。
家だけやない。
大阪の会社も焼けたんです!そんな私らに出てけ言うんですね?もういいです!出ていきます!分かった!お姉ちゃん!今出てってどうするの?
そんなゆりたちのもとへ戦地から潔が帰ってきました
潔さん!ゆり!どれだけ心配した思てんの!大阪に戻る。
えっ?一旗揚げるんや!これで終わりやない。
うん…。
すみれは?神戸で紀夫さんを待ちます。
すみれは庭の片隅にバラック小屋を建てゆりと潔は大阪の闇市で商売をしながら暮らし始めました
(玉井)場銭払えんのやったらとっとと出ていけ!そんなむちゃな!痛い痛い痛い…!何してるんですか!大丈夫ですか?潔とかいうやつの女ですわ。
何様や?
(栄輔)ちょっと待て!何しとるんや!何やオラッ!おい行くぞ。
は…はい!おお〜っ!アニキ!わあ〜!ハハハッ!わし岩佐栄輔いいます。
復員列車で知り合うてすっかり意気投合したんや!なあ!
夫紀夫が戦地から帰らない中食べるものにも困ったすみれは…
売りたいんやけど…。
わしが現金に換えてきたる。
でもな厳しい事言うようやけど働くしかない。
自分の手ぇで仕事して自分の足で生きるんや。
こじょうちゃんのままではおられへんねんで。
しかし働いた事などなかったすみれは…
麻田さん。
ほかに手だてが見つけられず…
この靴を売ってもらえないでしょうか?すみれお嬢様のためだけにあつらえたもんや。
売るやなんて堪忍して下さい。
お金が必要なんです。
さくらを食べさせるために…。
さくら?なんとまあかいらしい…。
この写真入れよろしいな。
私が作ったんです。
いろんなもん作ってここで売ったらどないですやろ?売る…?
すみれは手持ちの洋服を材料に手芸品を作り売る事にしました
(戸が開く音)
(ジョン)すいません。
これは?楽しい趣味ですね。
いえ違います。
これを売ってなんとか生活していきたい思うてます。
これワイフにプレゼント。
あ…はい!
それから何も売れないまま1週間が過ぎ…
明美さん…?ここで何しとんの?手作りの雑貨売ってるんやで。
誰が買うねんこないなもん。
みんな生きていくだけで必死やのに誰がこんなぜいたく品買うん?
(戸が開く音)
(ジョン)こんにちは。
ワイフ喜んでました。
うれしいわぁ!もうすぐ子どもが生まれます。
私も1歳の娘がいるんです。
そう。
何か作ってお持ちしましょうか?おしめとか。
それは助かります!そのおしめ買わせて下さい。
はい!一針一針想いをこめて縫わな。
約束のおしめを作ってきたすみれですが…
(英語で)でも日本のおしめは…。
(ジョン)申し訳ないけど今日は帰って下さい。
(時子)外国に便利なおしめがあるって聞いたよ。
一回1枚でかさが半分なんやて。
ワンツー。
クリスティーナさんのとこでそのおしめ見られたんですよね?明美さんいう人でね母一人子一人で暮らしてたらしいんやけど…。
あの明美ちゃんやろか?女中のマツさんの娘さんの…。
あの子確か看護婦さんやってるって聞きましたけど。
すみれは神戸中の病院で明美を捜し回りました
明美さん。
やっと会えた。
お願いがあるんです。
明美さんの言うようにぜいたく品が売れると思うてた自分は甘いと思う。
そやから私必要とされてるものを必要としてる人のために作りたい思うてます。
明美さんがいつか作ってたおしめ…。
作り方教えてもらえないでしょうか?もちろんお礼はします。
嫌や。
あんたほんまお嬢さんなんやな。
苦労した事ないからそんなふうに思えるんや。
ほんまに甘いわ。
明美さん。
私が思うてる事間違ってますか?あんたうちのお母ちゃん知ってる?はい。
楽させてやりたいと思うてたのに…。
あんたの家クビになってからもっと酷な仕事しかのうて…。
お母ちゃんは死んだんや。
あんたのせいとは思わへん。
けどあんたたちのせいや思うてしまうんや。
一緒になんて無理や。
材料もあらへん。
外国のおしめいうんは肌触りがようて柔らかくて水をよう吸う生地があらへんと…。
そんなん簡単には手に入らんやろ。
そんな中すみれは女学校時代の同級生である良子そして君枝との再会を果たします
これからの事を考えるとやっぱり不安で…。
健太郎。
ミシンや。
これだけはどうしても手放せなくて…。
実は自分で作ったものを売って生活したいって考えてるの。
どんなもの?子どものもの。
私らも自分のは買おうと思わなくても子どものものやったら…。
そうね。
3人で何かできないかな?私は商売なんて…。
すみれちゃんが頑張ろうと思ってるのは分かる。
けど頑張れば報われる訳でもないし…。
(栄輔)すみれさん!
ある日突然栄輔がやって来て…
おしめやで。
おしめ?これ…外国で使うおしめの生地で間違いないです?そうやけど…。
知り合いが手に入れてくれたんです。
明美さんも使うて下さい。
自分でも世間知らずで無知やったと思う。
知らないうちに傷つけてしまってごめんなさい。
でも…今の私はあのころとは違うんです。
娘と生き抜くために何でもしないと…。
すみれはエイミーの赤ちゃんのために外国式のおしめを縫い上げその使い方を教えてもらうため明美をエイミーのもとへ連れていきました
(明美)ワンツー。
それは今まですみれが見た事もないおしめでした
よかったね〜。
(エイミー)スミレ。
(明美)赤ちゃんがいつかお母さんになって娘が生まれたらその子も着られるような一生大事にできるようなそんなお洋服を作ってほしい言うてる。
やらせて下さい!赤ちゃんの洋服の注文を受けたの。
それで考えたんやけど…。
これ…お母様の形見やない。
エイミーさんが娘に残したい思いはこのドレスを残してくれたお母様とおんなじ思いやと思う。
この焼け残ったドレスで…あの赤ちゃんの宝物を作れると思うたら…。
2人に協力してもらえたらって思ってるんやけど…。
いいよ。
そうね。
すみれたちは特別な想いをこめ赤ちゃんのドレスを縫い上げました
天使のドレスやわ…。
母のウエディングドレスです。
そんなに大切なもので…?
(ジョン)本当にありがとう。
お礼です。
昔あさやさんに教えてもらったんです。
使う人の事を考えて作る事がどれだけすてきな事か。
明美さんのおかげであの時とおんなじ思いを味わえた。
君ちゃん良子ちゃん。
私一緒にやりたい。
不安から抜け出そうと思ったら自分が変わるしかないんやないかなって。
(麻田)明美ちゃん…。
お嬢さん3人でドレスでも作って売るつもり?思いだけでうまくいく世の中やないよ。
ほんでも思いがあらへんかったらそれはそれでうまくいかんのやろな。
手伝うわ。
すみれたちは赤ちゃんにとって本当に心地よい肌着を作ろうと4人で試行錯誤を重ねていきます
あれ?
(良子)裏返し?そう!最初から裏返して作ったらどうかなと思って…。
(明美)確かに縫い目が表にあった方が赤ちゃんの敏感な肌を刺激せぇへんわな。
これでいこか。
はい!ポスターにマーク入れたいと思うんやけど…。
四つ葉のクローバーはどう?「勇気」「愛情」「信頼」「希望」。
4人でずっと忘れないでやっていけたらって思うんやけど…。
こうしてすみれたち4人はベビーショップを開く事になりました
お客さん第1号やで!
(一同)いらっしゃいませ!あ〜!すみれ元気やったか?お父様!
そのころ…
・警察や!
大阪の闇市では…
栄輔逃げろ!離せ!離さんかい!きっちり縫製もできとる。
生地もええもんや。
この肌着手触りええわぁ。
(綾子)こんな柔らかいのうちの子どもに着せたいわぁ。
1枚なんぼ?
(五十八)そういうたらこれ値札がついてへんな。
値段つけな始まらへんやろ!
(栄輔)アニキ!潔さん…。
警察で取り調べを受けていた潔が釈放され店に戻ると…
誰がこんな事を…。

(玉井)おい!お前らこの辺で見ぃひん顔やなぁ。
こいつらの仕業や…!栄輔!やめとけ。
何でや?警察からのお帰りでっか。
場銭払わん店は片づけても片づけてもちょっと留守にしたらこないなふうになるらしいで。
ハハハハッ。
なんぼや?場銭は。
300円頂きまひょか。
300円!?おおきに。
院長!どういう事ですか?
(院長)もともとここにおった医者や看護婦が外地から戻ってくる事になったんです。
だから何人かに辞めてもらわなあかんのです。
君は独り身やろ?なんとかなるんやないかなあ。
(ゆり)やっぱり私には分からないわ!何でここで商売をするのにあの人たちに場所代を払わないといけないんですか?相手に正しい事を主張すべきです。
伝えられる自信はあるんやな?えっ?お前が表に出て話してこい。
どうして闇市の場所代をあなたが取るんですか?声が小そうてよう聞こえへんわ!
(根本)かわいそうに…。
ねえちゃん震えとるやないか。
(笑い声)
(五十八)ゆりもうええやろ。
今日はこれで失礼します。
それからしばらくして…
こんにちは。
ちょうどよかった。
みんな出かけるぞ。
負けっ放しはわしの性分に合わんねや。
(五十八)そちらさんがやってらっしゃる事は日本の未来のためにはならんちゅう事は分かってはりますよね?未来って何や!?何もないやないか。
(五十八)それでも何かを信じて生きなあかん。
何かて何や?それは自分で作るんです。
女が堂々と来れるように健全な市場にせな未来はない!30年後40年後は孫の世代が生きとるんや。
そんな子らが生きる未来を作るんは今を生きるわしらなんや!あなたがここのリーダーです!昔のお父様に戻ったみたいやったわ。
生き生きしてたの。
もううちの子夜全然寝てくれへんようになってしもて…。
(綾子)あらっ夜泣き?そう。
いつから?3〜4日前からやろか。
ちょっと来て。
これ持ってって。
近所のよしみよ。
ありがとう。
(麻田)気付いた事があるんですがお客さんが少ないいう事は問題や思いますよ。
要するに店の存在を知ってもろうて継続的にお客さんに来てもらうためには何をしたらええかいう事やな?いい品物を作って売ってるっていう自信はあるの。
それが一番大切な事や。
あとは自分たちならではの何かいうのを見つけられるかどうかや。
はい。
(時子)こんにちは。
あの肌着着せたらうちの子いっぺんも泣かへんかった。
やっぱりな暑かったんや。
子どもは大人より随分と体温高いからな。
まるでベビー相談室ですね。
それよ!明美さんの知識を使ってベビー相談室を開こうかって…。
一人で悩みを抱えてるお母さんたちはたくさんいると思うの。
そういう人たちが気軽に遊びに来る事ができて相談ができたり子育て仲間のお母さんができたり…。
なんちゅうええ考えや!ほんまにそう思いますか!?ああ!すぐにでも始めたらええ。
はい!うちの子ものすごう背中を反らせるんです。
大丈夫やろか思て…。
(明美)赤ちゃんはお母さんのおなかの中で丸まってます。
生まれたと同時にその姿勢から解放されます。
そやけど首や背中に力を入れ込んでしまって反り返ってしまうんです。
そうなんや。
このおしめは横から漏れません。
1枚で済むので洗濯も楽なんですよ。
隣の隣のお店が店じまいする事になりました。
ベビーショップ開いたらどないでしょう?向こうはここより広い。
夢も大きゅうなると思いますよ。
夢…。
広いわ。
ベビーだけやなくて子ども服もできるんやない?子ども服…。
すてきやねぇ。
すみれたちは自分たちの子どもをモデルにして子ども服を作り始めました
そして大阪の闇市では…
(根本)お忙しいとこすんまへんなぁ。
(男)すんまへんやて!今後…場銭は取りません!
(どよめき)
(根本)買いやすい値段にしてほしいんや。
女子どもが安心して買い物できる商店街になったらどうやろ?そないなたわけた話聞いとらんわ!文句のあるやつは出てってもろても構へん。
安心できる場所やと言われるように自警団を作ろうと思うてるんや!
(一同)自警団?それで女が安心して堂々と来られるようになったらいつかここは闇市ではなくなると思います!またお前か!女が来ない市場に未来はありません!
(玉井)何を…!時代は変わるんや。
いや…変えなあかんのや!
(一同)そやそや!賛同できんやつは…。
出てったらぁ…。
これで終わりや思うなよ!ああ〜っ!アニキ〜!ただいま戻りました。
すみれさん。
お帰りなさい。
栄輔さんいつもすみません。
(栄輔)いやいや…。
栄輔さんにすっかり懐いてしもて。
何かあったらいつでも言いつけてや。
ありがとう。
さくらちゃん見といてな。
・「六つ村々鎮守様」・ごめんください。
どなたです?私はあの〜ええ…。
お義父様お義母様!ちょっと話がしたくて…。
紀夫の事なんだけど…もう諦めてもらえないだろうか。
ここまで何の便りも知らせもないという事。
紀夫は…戦死した可能性もあるという事です。
紀夫に縛られないで下さい。
あなたには未来があるのよ。
そんですみれ。
お前自身は?分かりません。
そう言われたからって私も諦めますとは言えないわ。
苦しいやろうけど待ちなさい。
ほらっ!うわぁ〜。
いつもようしてもらってほんまにありがとうございます。
いやいや。
さくらちゃんは天使やわ。
さくら。
さよならしよか。
(さくら)いや〜。
また遊んでもらおね。
(さくら)いや!
(喜代)こんなん初めてですねぇ。
栄輔さん。
よかったら泊まっていってもらえませんやろか?喜代さんそんなお願い…。
はい。
すみれさん。
紀夫さんはどないな人なんや?
(栄輔)幸せそうな顔や。
さくらちゃんは会うた事は?ないの。
そうか…。
さくら?どないしたんや?さくらちゃん。
(さくら)お父さん。
ごめんなさい。
ええなぁって思ったわ今。
家族ってええなぁって…。
さくらちゃんは桜の花が咲いてるとこ見た事は?ないの。
桜の花がパ〜ッと咲いてきれいなとこ3人で一緒に見ような。
(さくら)うん。
それでも紀夫を待ち続けるすみれですが…
(五十八)紀夫君は戻ってくるかもしれへんけど戻ってこおへんかもしれん。
紀夫君がおらへん人生を考える事も必要やないかと思うてる。
前を見るんや。
紀夫さんの事を考える事は後ろを見ている事やとそうおっしゃるんですか?そうや。
すみれ!すみれさん!待ってやすみれさん!
(栄輔)すみれさん…。
心配しとった…。
一人でどんだけつらい思いしてるんやろって。
栄輔さん…。
わしでよかったら…。
(扉が開く音)坂東すみれさん宛ての手紙です。
ありがとうございます。
(紀夫)「すみれが無事でいる事を信じています。
桜の咲く頃帰ります」。
紀夫さん…。
新しいお店の名前なんやけど…。
(良子)キアリス?
(明美)どないな意味なん?君ちゃんの「キ」明美さんの「ア」。
良子ちゃんの「リ」。
(良子君枝)すみれちゃんの「ス」。
マークは…リスはどう?クローバーとリス?ええやない!
この年に咲いた桜を栄輔君もすみれも一生涯忘れる事はないでしょう
紀夫さん…?さくら…。
あ…。
ただいま。
お帰りなさい。
生還祝いの会盛大にやらなな。
新しい方のお店でやったらどうかな?
(ゆり)ええねぇ!あの…店って?赤ちゃんのための手作りの品を扱うお店をやってるの。
すみれが?まさかお商売をする事になるなんて思いもしなかったんやけど…。
僕が帰ってきたんやからもう大丈夫や。
(紀夫)坂東営業部は今どないなっていますか?統合されてのうなってしもたんや。
僕が坂東営業部を復活させます。
紀夫君うれしいよ!今は潔君とゆりが復活に向けて動いてくれてる。
(潔)ええ土台を渡して紀夫君の力になれたらと思うてる。
高い高〜い!
紀夫の生還祝いの日
(昭一)驚かれたんやないですか?まさか女房たちがね…。
女ばかりでこないな所を借りて本格的な商売をやるなんて…。
それを男が笑って見てるなんて…。
あんなええ場所家賃かて高いのやろうし。
家賃は相場よりだいぶ安いのよ。
何でや?商店街の皆さんが大家さんに交渉してくれたの。
簡単に人を信用したらあかん。
僕が働く。
何か仕事を探さんとな。
仕事を探すってどういう事?坂東営業部は潔さんに任せた方がええと思うてるのや。
紀夫さんが坂東の家の後継者やないの。
潔さんとゆりさんかて立派な後継者や。
僕の出る幕はない。
すみれが働いてると聞いた時はほんまに驚いた。
つらい思いをさせたな。
悪い事ばっかりやなかったのよ。
助けてくれる人もいたもの。
他人を信じるな。
そんなさみしい事言わないでよ。
紀夫さん前はそんな人やなかったやない。
収容所であんな思いをして変わらん人間がいてたら知りたいぐらいや。
自分の命が助かるためには他人なんかどうでもええ。
そういうもんやで人間て。
そんな中すみれたちの新しい店キアリスがオープンしました
うちの子よだれが多いような気がするんです。
まだ上手に飲み込む事ができない時期なのでこまめにぬれたよだれ掛けは替えてあげて下さい。
みんなよう頑張った!ありがとう。
型紙が大人気でしたね。
型紙のええところはね楽しい時間までついてくるところやと思うんです。
ものを作る時誰かの事を考える。
この型紙はお母さんが子どものためを思う時間。
それもついてくるんです。
少しでもみんなが希望を持ってくれたらええなぁ。
そして潔は坂東営業部再生に向け事務所を立ち上げました
わしはこれからは婦人服や思うてるんや。
女たちはもっと気軽におしゃれしたい思うてる。
いずれ需要は高まる。
そこで注目を集めるためにファッションショーを開く事になりました
それでショー用のドレスだけ縫製をお願いできないかな?やってみたいわぁ!私もとっても勉強になると思う。
ありがとう。
(喜代)近江にお帰りに?兄ちゃんのお手伝いしようかなと思うとる。
(五十八)紀夫君。
はい。
(五十八)ゆりと潔に力貸したってくれんか?紀夫君がおったら…。
やめて下さい。
何を勘違いしとる!?わしが近江に引っ込むっちゅう事は君にほんまに坂東家を託すという意味やねんぞ!はい。
家族のためにも一刻も早う働きたいです。
坂東紀夫君が我が社に戻ってきてくれました。
少しでもお役に立てるように…頑張ります。
謙虚すぎるやろ!
(笑い声)もう働かなくてええ。
商売は甘いもんやない。
ファッションショーが終わったら仕事を辞めて家に戻ってくれ。
何や?すみれさんどないしました?仕事を辞めてほしいって言われたの。
それはなこの仕事がすみれさんにとってどんだけのもんなんかを紀夫さんが知らんからや思うで。
自分の言葉で伝える努力をせなあかんで。
栄輔さん…。
どうやったら伝わるんかよ〜く考えるんや。
いよいよファッションショーの日がやって来ました

(拍手)
(歓声)
(小声で)明美さん笑って。
そんなんできへん。
(拍手)戦争が終わって苦しい中何ができるだろうと考えて今のお店を始める事になりました。
やっと夫が帰ってきてくれました。
生活に対する不安も少なくなりました。
だからこそ気が付いた事があります。
それは…お店が私の人生の喜びになっているという事です。
仲間がいれば大きな力が生まれる事。
一人ではできない事も仲間と一緒ならできる事。
女の人もそんな夢を見る事のできる世の中になればと思っております。
人を信じる事の豊かさと夢をかなえていく姿を私は…娘に見せてやりたいです。
(拍手)おう何してんねや。
アニキのおかげで生きる希望が持てた。
栄輔…。
いつかアニキのおかげで今があると言えるようになりたいわ。
どないしたんや。
伝えとうなってな。
この日を最後に栄輔は姿を消しました
すみれの気持ちよう分かった。
自分だけ浦島太郎のような気になってたけど…それではあかんのやな。
終戦から3年このころ第1次ベビーブームが到来しすみれたちのお店も評判を呼んでいました
(いつ子)どうして一番上のボタンホールだけが横向きなの?襟元がずれにくいんです。
(いつ子)へぇ〜。
いい買い物させて頂きました。
あっそうそう。
これなんやけど…。
2年前のファッションショー見に来て下さったんですか?主人と一緒に。
それにしてもすてきなお店ねぇ。
潔たちは五十八の時代に取り引きをしていた大急百貨店の大島社長と会う事になり…
なんとかもう一度大急特選マークを取り戻す事が坂東営業部の今一番の目標なんです。
婦人服で勝負がしたいんです。
紳士服より断然面白いはずです。
(大島)売れる仕掛けを考えて持ってきてくれ。
どこもやってないような新しい仕掛けをね。
はい。
正直今大急の方から取り引きしたい思うてる店はあるんですか?1軒だけあるんだよ。
どうしてもうちに来てほしい店がね。
えっ?えっ?え…。
女房が言うんだよ。
間違いなくいい店だってね。
わしらが間をつなぎます!なあ紀夫君。
はい!
人気の店となったキアリスは新聞社の取材を受けていました
(田)ぎょうさんのお客さんがキアリスに来るようになったきっかけというのは?ベビー相談室…よね?明美さんの知識があったからできた事なんです。
よしっ決まった!見出しは「ベビー・子供服キアリス産みの親はお母さんたち」。
うちはちゃいます。
(田)え?うちは独身なんです。
ああ…。
ニコッニコッ!ニコッ…。
(シャッター音)はあ…緊張したわ〜。
本当…。
忙しいとこすまんのやけど折り入って話があってな。
(明美)何や?改まって…。
百貨店の大急は知ってるやろ?うん知ってます。
その大急が…キアリスの商品を扱いたいと言うてるのです!はあ…。
えっ?急に百貨店なんて言われても…。
うん。
やっぱり分かっとらんのやなぁ。
まあ確かに何が何やらという感じでしょう。
経理の方はどないなってるんですかね?これだけよ。
(紀夫)えっ?商品の在庫数とか材料の在庫とか仕入れ値とか。
それは大体分かってます。
うん。
大体…。
こんな事やったら本格的な商売として百貨店に入るなんて無理や。
それやったらそこまでしなくても…。
断るんか?はい。
(良子)はぁ〜いろいろ疲れた。
(足立)あっこれどなたかの忘れ物です。
それ…。
(明美)いつかもろたやつ。
お母ちゃん喜ぶやろなぁ。
うちが新聞に載るなんて…。
うん。
あっおはよう。
しかしその翌朝
1人独身が交じってるよりも全員母親言うた方がよかったんやろな。
うちはこれっぽっちも気にならんからあんたらも気にせんとってな。
明美さん…。
えっ?やらんて?ええ。
(秋山)会社の今後の事考えると今大急に恩売っといた方がええ。
私が話してみようか?
(紀夫)いや僕がやります。
大急の担当者に会うて時間が欲しい言うてきた。
もっとたくさんの人に使うてもろうたり知ってもろうたり…。
いろんな可能性が広がるんやないかなぁ…。
可能性…?うん。
大急にお店を出せたらなと思うんやけど。
どうして?新聞記事に4人のお店だって事がちゃんと書かれてなくて…悔しかった。
4人のお店を知ってもらいたいってそう思ったの。
うん。
やるとなったらちゃんと準備をせなな。
生産ラインの構築が必要やな。
生地や材料の安定した仕入れにあと縫い子さんも必要になるやろし。
私たちだけやったら無理…?ここ足す大急やで。
時子さんたちは?素人やないか…。
でも教えたらなんとかなるんやない?何人もいてるし筋もええしな。
時子さんたちがやってくれるんなら安心できるわ。
なっ。
私うれしかったんよ。
将来は自活せなあかんて考えてた。
子どものためにもね。
手に職をつけて女一人でもちゃんと生きていけるように頑張りたい。
よしっ!まずキアリスさんの商品には大急特選のマークをつけさせてもらお思うてます。
それはすごい!お預かりした見本についてですがちょっと手間かかり過ぎですねぇ。
一工程二工程減らしましょう。
修正提案箇所が20項目くらいありますので…。
ちょっと待って下さい。
工程を減らすなんて…。
(小山)それでも品質は変わらへんでしょう。
そんな事をしたら私たちの作るキアリスのものやなくなります。
私たちが作った肌着やお洋服がキアリスのものやなくなるなら…この話は全部なかった事にして下さい。
ほんまに申し訳ありませんでした。
うち大急ですよ?ええ。
何で先方の前で突然あんな事を…。
少し考えてからでもよかったんや…。
考えても変わらないと思ったの。
ところが数日後
小山さんお世話になってます。
大島社長が…。
直接すみれさんにお会いしたいと申しております!うちからの話を蹴ったと聞きましたが…。
大急さんにはお任せできないと思う事があったからです。
理解して頂けない人にお任せする事はできないと思ったからです。
無駄なく合理的に。
そんなふうに仕事をしているうちに一番大事な事を忘れてしまったみたいだなぁ。
すまなかった。
10日間委託販売で売ってみませんか?
(君枝)委託?大急側やなくて自分らで責任を持つっていう事やな。
そう。
(良子)いいねぇ。
やってみたいわ。
何の計算もせんとそんな簡単に…。
全部自分らだけでやれると思うてるのか?やれるいうよりもやるしかないと思うてるわ。
まっ掛けて。
(4人)失礼します。
大勢の人に来てもらうためには目玉になるもの。
また欲しいと思ってくれるようないいものを置きたい。
どんなものがええのかなぁ?服?帽子?自分がお客さんの立場で欲しいもんでええんやない?欲しいもの…。
喜代さんさくらのお弁当出来た?はい。
今日はほらっお弁当箱が殺風景やから開けたら楽しいのがええと思いまして。
この蓋に絵を描いたらどうかと思うて。
おそろいの箸と袋もつけてセットにしてキアリス大急店での限定やったらどうかな?絶対欲しいわ!そしたら君ちゃん。
見本描いてくれる?いいよ。
これを目玉商品にしたいと思うてるんですけど…。
ええと思います。
あっよかった…。
今度の広告にすぐに載せます。
ありがとうございます。
(時子)すみれちゃんおはよう。
アルマイトのお弁当箱セットすてきやなぁ。
(君枝)「1日30個限定!」。
どうしよう…。
大急の小山さんが数決めたんやな。
すみれたちは大急ぎで300個の弁当箱を準備し大急百貨店への出店初日を迎えました
(出口)何でこれ初めからショーケース2つもありますのやろねぇ。
そう言われたからです。
(青木)大急に?はい。
(馬場)ハハッ!聞いた?鳴り物入りとはこの事やなぁ。
おはようございます。
どうぞよろしくお願い致します。
(開店のチャイム)
(小山)間もなく開店です。
(3人)いらっしゃいませ。
ところが…
(富士子)誰もお客さん来ないの。
これが続いたらどうしよう?なんとかせな…。
年配のお客さんが多いよねぇ。
お母さん世代のお客さんが少ないとしたら…。
呼ぶしかない。
そこで急きょ宣伝用のポスターを作る事になり…
その節はお世話になりました。
これ貼らせて頂きたいんですけど…。
(シスター)楽しそうですねぇ。
母親たちの目につく場所や町じゅうにポスターを貼った結果…
(客)お弁当箱1つ下さい。
今日の30個分が終わってしまって…。
(順子)お子様はおいくつですか?3歳です。
簡単に付け替えができるよう縫製しているんです。
(良子)どやった?お客さん…たっくさんいたよ!ほんまに!?ほんまに?
(2人)よかった〜!今日は私どもの会社とご一緒させてもらえるんやないかいう提案を持ってまいりました。
洋裁と服地のセット販売という新しい試みです。
百貨店の一角に教室を作らせて頂きます。
教室に参加した人たちにはカタログを見てもらいます。
そこに載っている気に入った洋服を手作りできるんです。
なるほど。
服地はナイロンなどの新しい素材を積極的に使います。
新素材を?もし乗って下さらないならこの足でほかの百貨店へ行こうと思います。
いかがですか?ありがとうございます!
(2人)ありがとうございます。
(良子)商品が足りないの?もうショーケースがスカスカやって。
ここにあるものをいくつか持っていく?そうやね。
うん。
ほんまに困るんですよ!何がですか?商品はちゃんと補充してもらわな!「せっかく来たのに品切ればっかりや」て苦情がたくさん入ってます。
そしたら今日は徹夜?そんな無理なお願い…。
(綾子)楽しそうやない?
(千代子)誰かのために何かを作るって楽しいよなぁ。
ありがとう!
とにかくもう作れるだけのものを作りました
こうしてる合間にも作ってくれてるの?ええ。
(悦子)よかった〜。
ありがとうございました。
彼女たちを突き動かすのはお客さんに対する思いとほんのちょっぴり芽生え始めた商売人としてのプライドなのでした
いらっしゃいませ。
どういったものをお探しですか?この子に…。
あ…。
全部の売り上げが12万円や。
えっ!初めの目標って…。
4万円よ。
3倍も…。
(良子)早う主人に言いたいわ。
紀夫は洋裁教室の説明会を任せられましたが…
(鼓動)紀夫さん…?うっ…。
(ゆり)紀夫さん紀夫さん!
(潔)紀夫君!紀夫君紀夫君紀夫君!こんにちは。
(すみれ良子)いらっしゃいませ。
(いつ子)今日は主人も連れてきたの。
やあ。
社長…。
君たちに話があって来たんだ。
はい。
正式に出店をしてみないか?何日間ですか?ず〜っとだ。
大急百貨店にキアリスの支店を出さないか?少し話せます?大急百貨店にキアリスの支店を出さないかと…。
え?え…大丈夫ですか?少しなら。
それで?お受けしようと思います。
よかったなぁ。
やりたい事とやるべき事が一致している。
奇跡のような事やなぁ。
お受けしたいと思うてます。
あっそう!11月開店を目指してもらいます。
あと3か月。
いっぱい作らないと。
頼みますよ。
はい!すみれ。
大急にキアリスの支店を出す事になって…。
ほんまか!?それで生地の仕入れについてご相談したくて。
あっこれ…。
主人がお休みして…。
あの…ご迷惑おかけしてませんか?奥さんにも言うた方がええんちゃいますか?洋裁教室の運営を任せる事になって緊張し過ぎて倒れてしまったのよ。
(笹井)奥さんやり手やのに旦那ときたらぶっさいくなこっちゃ。
(長谷川)笹井!笹井君。
すんまへん。
すみれは紀夫が苦しんでいる事に気付きました
紀夫さん。
ん?あの…。
(喜代)あ…うっ!えっ喜代さん大丈夫?喜代さん?こ…腰が腰が…。
こんな事になってしもて…申し訳ありません。
大丈夫よ。
家の事も仕事もさくらの事も私がやります。
さくらの好きなサツマイモ。
生まれて初めて喜代がいない生活が始まりました
こういったカーテンをお願いしたいなと…。
すみれは仕事に加えて家の事やさくらの世話まで一人で抱える事になります
そんなんやったら体壊してしまうんやないか?紀夫さんこそ。
そして開店の前日
ああ…。
(明美)どうしたん?直してもいいかな?ええよ。
すみれちゃんの気の済むようにしたら?ありがとう。
(君枝)さくらちゃん今日はうちに泊めよか?お願いしてもいい?
すみれはついつい売り場作りに夢中になってしまい…
ただいま。

(足立)はいはい!すみれは?すみれや。
どこにおるんや!
(足立)おられません…。
わぁ〜…。
えっ?もうこんな時間。
帰らないと。
すみません!あの〜。
すみれが戻らないまま夜が明けてしまいました
紀夫さん…。
ごめんなさい。
(小山)皆さん間もなく開店です。
そんな中キアリスの大急支店の営業も始まり…
ずっと楽しみにしてたんよ。
ありがとうございます。
これがうわさの店か。
すごい…!今日の売り上げ。
よだれ掛けが予想よりもたくさん売れたって。
(良子)意外やね。
あとね悦子さんたちが書いてくれた日報よ。
これも目を通して私たちの意見を書き込んで渡すようにしよう。
(勝二)あとは明日でええんちゃうか?夢中になって時間を忘れてしまうのは悪い癖やで。
(良子)そうね。
行きましょか。
(君枝)行きましょう。
(良子)うん。
さくらお靴履けた?うん。
うんそしたら行こね。
お母さんお仕事行ってくるね。
うん!うん。
あ…。
(ゆり)すみれ。
お姉ちゃん。
ちょっ…すみれ!?よかった…。
(ゆり)もう働き過ぎやって。
ここ何日も寝てないんやろ?お医者様が3日は安静にするよう言うてたわ。
そんなに…?お母さん。
お父さんのどこが好き?お父さんは?お母さんのどこが好き?
(シスター)さくらちゃん最近外遊びをしないんです。
お靴小さくなってしまったんやないかと思うんです。
お母さん忙しいから言えなかったんやと思うんです。
新しいお靴買うてきたよ。
大きくなってたのね。
ごめんねお母さん気付かなくて。
ありがとう。
潔さん。
報告があるんやけど。
子どもができました。
わしの子が生まれるんか?はい。
ゆり!ありがとう!ウウッ…。
3日間の休暇を終え久しぶりに出勤したすみれは…
(明美)どないした?お願いがあるの。
キアリスを…辞めさせて下さい。
お願いします。
ちょっと待ってよ。
(明美)どういう事?紀夫さんとさくらに迷惑かけてる。
だから…許してほしい。
私がいなくてもみんななら絶対に大丈夫やと思う!だから自分勝手な事やけどお願いします。
お仕事辞めるの?そう。
わっさくら!さくら…フフフッ!お母さん。
うん。
ほんまにええんか?ええ。
そっか…。
4人でしてた事をこれからは3人でするんか…。
(君枝)あとは何かある?ずっと前から考えてた事なんやけど明美さんのベビー相談室の話をまとめてお客さんに配ったらどうかな?
(良子)ええねぇ!そういうものがあったら大助かりよ。
うん。
みんな悩みながら子育てしてるんやもんね。
店を辞めてからもすみれは原稿を書き進めていきました

(長谷川)ゆりさんが?・
(笹井)おめでとうございます!
(潔)ありがとう。
それやったらこれからの事はゆりさん抜きっちゅう事で考え直さなあかんのやろか?ゆりは子ども産んでもすぐ仕事に戻る思うで。
今なぁ子守してくれるお手伝いさん探してるんや。
私この子を預けたりしないわよ。
そしたら働かれへんぞ。
心配せんとわしに任せとけ。
なっ?さくらちょっと来て。
あ…お袖がつんつるてん。
お母さんが直してあげる。
うん!
その翌朝
ゆり!ゆりはいてるか?いいえ。
(紀夫)どうされたんですか?家出した。
何かあったんですか?何もない。
家出って何?何もないのに家出なんて…。
近江やと思います。
近江や!
(紀夫)あっ…。
潔さん!この辺に刺繍しよか?おリボンがいい!いいねぇ。
もうすぐクリスマスやもんねぇ。
お客さんに合わせて好きな柄を入れるいうのはどうかなと思て。
龍ちゃんは汽車が好きやから…。
ここに汽車の刺繍。
フフッ。
今ね大急からクリスマス商戦の目玉商品を考えるように言われてるのよ。
もっとこう…「うわぁ〜!」なるようなもの考えて下さい。
「キアリスガイド」書きながら考えるわ。
(良子)ありがとう!それ…。
(笹井)くず入れ…ですか?さくらへのクリスマスプレゼントや。
ああ…。
ちょっと待っといて!どうかな?おお〜!ええなぁ。
わぁ〜。
(紀夫)出来た…。
喜んでくれるやろか?喜びます!
すみれの中に残るべっぴん作りへの思いを感じた紀夫でした
お母さんこれ何?あっ見つかったかぁ。
誰が作ったの?お父さんよ。
お父さん!ああ。
ありがとう!さくらうれしい!ああそれはよかった。
(君枝良子)うわぁ〜!「うわぁ〜」ってなるようなものってこういうもんを言うんやな。
すみれちゃんありがとう。
またね。
何やかんや言うて…。
やっぱりすみれちゃんなのよね。
うん。
ゆり。
近江には潔が家出したゆりを迎えに来ていました
(潔)ゆりは社会で活躍したい言うてたやないか。
潔さんは何にも間違ってない。
でもきっと変わったんです。
私にとって大事なものが…。
おやじ…。
潔。
無念やったな。
(正蔵)ああ無念やった。
そやけどなぁ命というのは継がれていくもんなんや思うたらスッとなったわ。
わしに孫ができるらしいやないか。
そうや。
孫かぁ。
フッフッフッフ…。
フッフッフッフ…。
潔君どないしたんや?おやじが出てきました。
ああ…。
(潔)夢やと思うんですけど…。
野上がか。
(潔)わしは「坂東営業部を頼む」そう言われると思うてました。
そやのにおやじは孫ができた事をただ喜んで…。
みんな生きていれば変わる。
変わる事が生きるという事なんやておやじの喜ぶ顔見てそう思うたわ。
わしはゆりとちゃんと家族になりたい。
ゆりはどんなふうに考えてる?この子をしっかり育てたいと思うてます!家を建てよう。
わしらの家や!ありがとう。
うん。
きっといいクリスマスになるわね。
うん。
ありがとうございます。
はい。
紀夫君?ご相談があります。
(良子)出来たね。
(君枝)最高のクリスマスプレゼントや。
ねっ。
(明美)ありがとう。
ううん。
遅うなりました。
こんばんは。
すみれ話がある。
皆さんにも聞いてもらえたらと思います。
坂東営業部を辞める事にした。
えっ?辞めてこれからどないするんですか?キアリスの経理をしようと思うてます。
えっ?すみれの仕事と家庭がうまくいくように間に立ちたいんや。
君はここで好きな仕事をするんや。
僕らは大事な時間を戦争に奪われた。
そやけどもっと大事なのはこれからや。
一番自分らしくいられる場所で輝くすみれを僕とさくらに見せてくれ。
はい。
メリークリスマ〜ス!
(一同)わぁ〜!お父さん。
どうしたの?お母さんのどこが好き?愛にあふれているところ。
お母さんはお父さんのどこが好き?ちゃんと見てくれてるところ。
優しいところ。
意外に男らしいところ。
それから…計算が正確なところ。
もうええ。

(大島)ほう〜これを無料で?はい。
で君は坂東営業部を辞めてキアリスに入ったんだって?経理を担当します。
ご婦人方は皆経理が苦手なようですので。
これを機にキアリスを法人化してはどうかな?法人化?働いてくれてる人たちを社員にできる。
みんな安定した生活ができるいう事や。
自活せなあかんて考えてた。
女一人でもちゃんと生きていけるように頑張りたい。
働いてくれる人にとっていいなら…どうかな?ええねぇ。
(良子)ええ。
それやったらみんな安心して働けるね。
(昭一)社長は誰が?おった!おったでここに!
(勝二)確かに。
麻田さんぐらいの方がよろしいやろな。
いえいえ!私はただの靴屋です。
すみれたちにとってはそれ以上の存在です。
麻田さんキアリスの社長になって下さい。
(3人)お願いします。
こうして麻田を社長に迎えキアリスは株式会社となりました
今度赤ちゃんも生まれるし肌着やおむつや洋服以外にどんなものをそろえたらいいのか教えてほしいの。
私が知ってる外国人はベビー専用のお布団やベビーベッドベビーダンスも用意しとったな。
そういうものを手に入れようと思ったらどこへ行けばいい?
(明美)布団は布団屋さんに注文してベビーベッドとタンスは大工さんに頼んで…。
そんなに大変なの?一つの所で全部そろえばいいのにねぇ。
キアリスでそういうものをそろえて売ったらどうかな?うん!
(君枝)赤ちゃんのものは全部キアリスに行けばそろうって事よね?そう!籠なんかの雑貨もいいね。
食器は?離乳食用の食器。
かわいい食器やったらごはん食べるのも楽しくなるねぇ!うん!
こうしてすみれたちは大きな夢への第一歩を踏み出したのでした
あ〜大丈夫やろか…。
そして…
何で忠さんが分かるんや!・
(赤ちゃんの産声)
(潔)ゆり〜っ!
(産婆)元気な男の子ですよ。
潔さん。
おめでとう。
ありがとう。
名前は?正太です。
ええ名前やな。
(ゆり)正太…。
(愛子)鷹子さん幸せになってよかったですよね。
2016/12/29(木) 08:00〜09:30
NHK総合1・神戸
連続テレビ小説「べっぴんさん」総集編(前編)[解][字]

10月から放送開始した連続テレビ小説「べっぴんさん」の総集編。第1週「想いをこめた特別な品」から第13週「いつものように」までの内容をダイジェストでお届けする。

詳細情報
番組内容
10月から放送開始した連続テレビ小説「べっぴんさん」の総集編。第1週〜第13週のダイジェスト。物語の始まりの舞台は戦前の神戸。少女時代の坂東すみれ(渡邉このみ)は、靴職人の麻田(市村正親)の教えを受け、入院中の母・はな(菅野美穂)にクローバーの刺繍を贈る。成長したすみれ(芳根京子)は、仲間の明美(谷村美月)、良子(百田夏菜子)、君枝(土村芳)と共に赤ちゃんのための特別な品=別品を作り続けていく。
出演者
【出演】芳根京子,生瀬勝久,菅野美穂,高良健吾,蓮佛美沙子,谷村美月,百田夏菜子,土村芳,名倉潤,永山絢斗,渡邉このみ,曽我廼家文童,宮田圭子,伊武雅刀,市村正親,中村玉緒,本田博太郎,松下優也ほか
原作・脚本
【作】渡辺千穂