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セリフ書き起こし 連続テレビ小説「とと姉ちゃん」総集編(前編) 2016.12.31

 

 

(常子)ただいま。
行ってらっしゃい。
行ってらっしゃい。
行ってらっしゃい。
はい行ってらっしゃい。
よろしくお願いしますね。
はい行ってらっしゃい。
戦後すぐに創刊され日本中の多くの家庭で読まれた生活総合雑誌がありました。
この雑誌を作り始めたのはある三姉妹と一人の編集長。
この物語は「あなたの暮し」を創刊した常子が父親代わりに妹たちを育てながら昭和をたくましく懸命に駆け抜けていくお話です
常子は生まれ育った静岡県浜松市で両親と2人の妹と暮らしていました

 

 

 


(美子)つん姉ちゃん…。
よっちゃん!大丈夫?うん。

このころはまだ「つん姉ちゃん」と呼ばれている常子。
家族を守るため父親代わりに奮闘し始める頃には2人の妹からこう呼ばれる事になるのです。
「とと姉ちゃん」
・「普段から」・「メイクしない君が」・「薄化粧した朝」・「始まりと終わりの狭間で」・「忘れぬ約束した」・「花束を君に贈ろう」・「愛しい人愛しい人」・「どんな言葉並べても」・「真実にはならないから」・「今日は贈ろう」・「涙色の」・「花束を君に」・「花束を君に贈ろう」・「愛しい人愛しい人」・「どんな言葉並べても」・「君を讃えるには足りないから」・「今日は贈ろう」・「涙色の」・「花束を君に」
浜松の特産品綿織物の染色をする遠州浜松染工。
その営業部長が常子の父竹蔵です
(山田)大変だに!小橋さん大変です!常子ちゃんがそこで!
(竹蔵)今度は何を?ほれ手離しっせい!怖い怖い!高い高い!常子!とと!常子!どうしてこんな事を?つづり方の宿題のために。
つづり方?「きれいなもの」という題で宿題が出たんです。
それでここの景色を書こうと思った時に上から見た方がきれいだと思って。
いけないと言ったはずですよ。
人に迷惑をかける事や危ない行いは。
ごめんなさい。
でもどうしようと自分で考え自分で行動した事はすばらしいと思います。
フフ…。
小橋家には父竹蔵が決めている3つの家訓があります
(一同)頂きます。
一つ。
朝食は家族皆でとること。
一つ。
月に一度家族皆でお出掛けすること
ととかか早く!
一つ。
自分の服は自分でたたむこと
(君子)お出掛けになるんですか?はい。
残務がまだあってね工場に戻ってやらないと。
(君子)大丈夫なんですか?
(竹蔵)今行かないと明日の朝早く行く事になるからね。
そうしたら「皆で朝食を」という家訓を破ってしまう事になるから。
(君子)家族で過ごす事はいつでもできるじゃないですか。
僕はそうは思いません。
当たり前にある毎日でもそれはとっても大切な一瞬の積み重ねだと思っています。
そしてそれはいつ失う事になるか分からない。
明日かもしれないし1年後かもしれない。
そんな…。
大げさかもしれませんが両親を突然失った僕には何だかそう思えるんです。
だから無理をしてでも一緒にいる時間を大事にしたい。
当たり前にある日常は掛けがえのないものですから。
では行ってまいります。
はいお気を付けて。
行ってらっしゃい。
竹蔵はこの年の暮れ結核にかかりました

(竹蔵)頂きます。
(一同)頂きます。
翌年の春病状が悪化し外出もできない竹蔵のために常子はある事を計画します
(杉野)やっとかぶりに持つとやっぱり重いやぁ。
ありがとう。
ありがとうございます。
事務所までお借りしちゃって。
気にする事ないにぃ。
こんな事ぐらいでよかったらいっくらでも手伝うで。
ヘヘヘヘ…。
(鞠子)叔父さん。
え?雑!何!?何があるんです?
(竹蔵)皆さんどうして?お願いします!
(一同)せ〜の!とと!とと!
(シャッター音)
そしてその夜
常子に…お願いしたい事があるんです。
お願いしたい事ですか?常子にととの代わりになってほしいんだ。
ととの代わりなんていません。
どうしてそんな事を言うんですか?それじゃあまるで…。

(せきこみ)とと!いけません。
(せきこみ)君たち3人とかかを残していかねばならないのが…無念でね。
心配なんだ。
この世の中で女4人で生きていく困難を思うと…。
・だから…。
・約束してくれないかい?ととの代わりを務めると。
はい約束します。
ありがとう。
常子。

3日後竹蔵は息を引き取りました
それから4年後常子は高等女学校の四年生鞠子は三年生美子は尋常小学校の四年生になりました
できた。
ありがと。
おはようございますかか。
おはよう。

(一同)頂きます。
常子たちは竹蔵が大切にしていた家訓をしっかりと守って暮らしていました
あれ?これ美子の…。
(栄子)常ちゃん?美子〜!
父の代わりに家族を守る。
常子は竹蔵との約束を果たすため「とと姉ちゃん」として懸命に走り回っていました
ある日常子は学校で孤立する美子の姿を見かけます
聖徳太子〜。
常子は美子のよいところを級友たちに分かってもらおうと張り切るのですが…
でねでねでね私がお風呂入ってる時に「ああおなかすいた」ってつぶやいたら美子がこっちにお尻向けてこう言ったの。
「ほら桃があるよ」って。
あれ?
(幹雄)おめえそんな事したんかよ?恥ずかしくねえのけぇ。
女のくせして。
そうだで。
何やってんだ。
女のくせに何してんだ。
そういう事が伝えたかったんじゃ…。
(豆腐屋の笛の音)
(子ども)ねえねえお父ちゃん。
仕事中だで邪魔すんない。
帰ったら遊んでやるからよ。
(子ども)きっとだに。
ああ。
回想
(竹蔵)やはり行きましょうか。
どこに?紅葉狩りです。
明日ならまだ紅葉もきれいでしょうから。
でもお仕事は?なんとかします。
みんなで行きましょう。
やった〜!わ〜い!
(笑い声)とと!よっちゃん!偶然ね。
一緒に帰ろう。
だからそっとしとこうよ。
今日ね学校で面白い事があったの。
先生がね静かな中でグ〜っておなかが鳴ったの。
そしたら顔が真っ赤になっちゃって。
その先生のあだ名が「消防自動車」だったからおっかしくって。
消防車が真っ赤!アハハハ。
ハハハハ…。
つまらない。
(茂雄)お〜い!とと姉ちゃ〜ん!何なの?もう…。
(正雄)何でとと姉が制服なんて着てるでぇ?学校帰りだから当然でしょ。
「とと」とか言っときながら仕事してねえのけぇ!
(正雄)稼ぎもねえくせに何がととだよ!
(茂雄)のんきなもんだなあ!俺らは仕事で大変だってのに。
(正雄)本当本当。
何やってんだ!どかんけぇ〜!いい加減にしろよ!おめえは所詮女なんだよ。
ととの代わりとして認めてもらいたい常子。
しかしそれは簡単な事ではありませんでした
あ〜っ!町内運動会?ととみたいに1位になれたら美子喜んでくれるかな。
(君子)当たり前じゃない。
よ〜し!
(君子)すみません。
美子。
あっちで常子たち練習してるから見に行かない?いい。
勝てっこないよ。
やってみなきゃ分かんないじゃない。
とと姉ちゃん諦めが悪いよ。
ととがいればなあ…。
(茂雄)おいおいお前ら結局出んのけぇ。
何つぶやいてんでぇ?さぁな。
(2人)ふじさんふじさんふじさんふじさん…。
常子鞠子!しっかり〜!位置に着いて…。
よ〜い。
ふじさんふじさん…。
ドン!
(茂雄正雄)いちにいちに…。
行け〜!
(君子)頑張って!
(茂雄正雄)いちにいちにいちに。
(2人)ふじさんふじさんふじさんふじさん…。
(君子)ほら!ほら!いちにいちにいちにいちに…。
行け〜!
(2人)ふじさんふじさんふじさんふじさん…。
やった!抜いた!頑張って〜!
(2人)ふじさんふじさんふじさんふじさん…。
楽勝だな兄ちゃ!ああ!
(観客)いいぞ!頑張りっせ〜!ちょっ…兄ちゃ!
(2人)ふじさんふじさんふじさんふじさん。
正雄!
(2人)ふじさんふじさんふじさんふじさん…。
とと!頑張れ〜!とと!とと!頑張れ〜!とと!頑張れ〜!回想私小橋常子は皆さんのととになります。
じゃあとと姉ちゃんだ!よっちゃんにはかかも鞠ちゃんも私もいるでしょ?それに私とと姉ちゃんだよ。
頑張れ…。
頑張れ!とと姉ちゃん!
(歓声)
小橋家にまた新たな問題が起こります
実は援助を…打ち切らせてもらいてぇんだ。
申し訳ねえ。
せ〜の。
竹蔵の死後会社から受け取っていた援助金を打ち切られ学費の工面もできなくなった小橋家。
東京にいる祖母を頼って浜松を出ていく事になりました
もうお別れだね。
うん。

竹蔵との思い出の詰まった浜松に常子は別れを告げたのです

君子が実家に帰るのは18年ぶり。
母親が決めた縁談を断って仲たがいをし家を出て以来でした
だったら出ていきな。
(隈井)何か御用ですかい?あっあの私たち…。
お嬢さん?君子お嬢さんじゃありませんか!ご無沙汰しております。
いや〜お懐かしい〜。
番頭の隈井さん。
生まれた時からずっとお世話になっている方。
(三姉妹)へぇ〜。
(滝子)お上げなさい。
(滝子)よく来たね。
お帰り。
君子。
ただいま帰りました。
(隈井の泣き声)
(滝子)およしよ。
…ったく。
(泣き声)
(滝子)君子は浜松で何をやって食ってたんだい?染め物工場で女工を。
(滝子)給金は?十分もらえてたのかい?いえ…。
(赤ちゃんの泣き声)一歩間違えばあんたら親子も路頭に迷っていた訳だね。
はい。
(滝子)ごくごく普通の暮らしすらままならない。
普通の暮らし…。
私はねその普通の暮らしを守る事が自分たちの仕事だとも思ってるのさ。
だからいい木を売って何があっても壊れないような家を造る。
それが私らの仕事のやりがいというかね意地みたいなもんなんだ。
すてきなお仕事ですね。
やめとくれ。
そんな事を言わせようとして言ったんじゃないよ。
いや心からそう思ったんです。
父も日常が何より大切でいとおしいと言っていました。
そうかい。
はい。
・お入り。
はい。
失礼します。
悪かったね。
急に呼び出して。
いえ。
どういった御用でしょう?常子の事さ。
常子が何か?
(滝子)あの子はいい子だね。
頭もいいし機転も利く。
(君子)ええ…。
はっきり言うよ。
常子を清の嫁に迎え入れこの店を任せたいと思ってる。
清は滝子の養子で青柳商店の跡取り息子です
いや思ってた以上にきれいだったから。
(君子)そういう事だったんですね。
浜松にいる私から連絡を受けた時から娘たちの誰かを清さんの嫁にしようとしてこっちへ呼び寄せたんですね。
違う!私はあの子たちには親の決めた生き方ではなく自分で選んだ生き方を歩んでほしいんです。
だから常子にお母様の思い描くような人生を歩ませる訳にはいきません!だったら出ていきな!お世話に…なりました。

青柳を出た常子たちはすぐ裏手にある弁当屋の森田屋に住み込みを申し出る事にしました
ねえ。
はい。
ここでごやっかいになりましょう。
(まつ)4人家族ねえ…。
ほかに行く所がないんです。
お願い致します!
(3人)お願いします。
分かったよ。
(一同)ありがとうございます!この子らの食事も賄いから出すんだったら給金から天引きさしてもらうよ。
どっこいしょっと。
はい。
ああそれから具合悪くて働けない日や弁当落としたり台なしにしたらそれも引かしてもらうからね。
(そろばんをはじく音)
なんとか住む所は見つけた常子たちですが…
(鍋をたたく音)
(まつ)起きた起きた起きた!いつまで寝てんだ!いつまで寝てんだ!
弁当屋の仕事は大変でした。
まず朝4時に起きてすぐに火をおこしごはんを炊き始めます。
前日に下ごしらえをした野菜をだしで煮込んでいきます。
その間焼き台では卵焼きや焼き魚が次々に調理されていきます。
冷ましたおかずを並べた弁当箱に一気に盛りつけていきます。
慣れない仕事に戸惑いながらも奮闘する常子たちですが…
何か悩みがあるという事ですよね?女学校の学費の事ですか?おばあ様の家を出たという事はもう援助は…。
私がなんとかします。
でも森田屋さんのお給金だけでは…。
平気よ。
内職を見つけて夜も働けば。
ではかかはいつ寝るんですか?美子が卒業するまでの辛抱です。
それまでにかかの体が壊れてしまいます。
(隈井)そのとおりでさぁ!お姿が見えたもんでついね…。
あの…今女学校の学費がどうのこうのって…。
ねえそのお金あっしに出させてもらえませんか?お願いします。
でしたら…お借りするという事にさせて下さい。
うんそうしよう。
ねっ。
ありがとうございます。
何年かかっても必ずお返しします。
ありがとうございます隈井さん。
いいえ。
そ〜れ!ちょ…ちょっと待ってちょっと待って。
鞠ちゃん力入れて押してる?押してるわよ。
とと姉こそ力抜いてるでしょ。
抜く訳ないでしょ。
(2人)じゃんけんぽい!やった〜!とと姉そろそろ交代しようよ。
フフフ。
あと10歩ね。
あれ?うん?見てよあの人。
病気かな?えっ?具合悪くて倒れちゃったんじゃない?あ…大丈夫ですか?
(星野)えっ?どこかお加減悪いですか?歩けます?一緒に病院に…。
あっいや日陰に…。
日陰?日陰での成長を…。
あっポリゴヌム!あっ!この植物はポリゴヌムといいます。
このポリゴヌムを日陰に植え替えてどう成長するかを観察しようとしていたんです。
へえ〜面白い。
はい。
へえ〜…面白い…。
・ふざけんじゃねえぞ!謝りゃいいってもんじゃねえんだよ!全く冗談じゃねえ!
(宗吉)おわびのしようもございません。
お代はそっくりお返し致しますので。
当たりめえだろ!フンッ!こんな店二度と使わねえからな!高い金払って安い弁当つかまされりゃ怒るのも無理ねえよ。
…ったく。
どうせ新米のお前らがよ…。
(長谷川)あっ!「あっ」て何だ?
(長谷川)何も言ってやせん。
今言っただろうが!その…。
ひょっとしたらなんですけど…弁当の上に載っかってた紙落としちまいましてね…。
その時に松と竹入れ代わっちゃったのかな〜なんて…。
(富江)じゃあリヤカーの時点で入れ違えたって事?…かも。
てめえ〜!長谷川この野郎!
(長谷川)すいませんすいません!長谷川オラ!お許し下さい!
常子たちは弁当を取り違えてしまった全ての配達先に謝りに行く事に
バカ野郎!何考えてんだ!やっぱりどやされた…。
てめえは黙ってろ!すいません…。
常子。
どうして松を配った人にも謝りに行ったんだい?そういう心意気が大事なんじゃないかなと思ったんです。
たとえこちらが損な目に遭うような事があっても間違った筋は通しちゃいけないっていうか…。
長くお店を続けていく上でそういう事が大事なんじゃないかなと思ったんです…。
気に入った!あんた分かってるじゃないか。
はぁ…。
店をやるって事はそういう事が大事なんだ。
目先のもうけにとらわれていたらいずれ足すくわれる。
フフフフ。
明日からもみんなよろしく頼むよ。
はい!頑張ります!
9月常子たちは新しい学校に編入しました
浜松から来ました小橋常子です。
よろしくお願いします。
ねえ見て。
やぼったいセーラー服。
何であんなの着てるのかしら。
あの服おかしいわよね。
恥ずかしくないのかしら。
スカートもしわだらけだし。
あっちょっと君!はい?どこかでお会いしましたか?はい?会った事ありますよね?あ…はぁ。
ですよね!でも…思い出せないんですよ。
はぁ…。
一度会った人は絶対に忘れない自信があったのに悔しい…。
全然思い出せないなんて生まれて初めてだ。
ごめんなさいね印象の薄い女で。
悪くもないのに謝らないで下さい。
はい…。
君は悪くないんだから堂々としていればいいんです。
そう…このヒマワリみたいに。
ヒマワリは常に太陽の方を向いている花だと思われていますがそうではありません。
太陽を向いているのはまだ成長途中のもので花をつけたあとは堂々と東を向いて動かなくなる。
つまり自分が悪くないと思う事に対して卑屈になる必要はまるで…。
あれ…?僕は何を…。
フフッ。
ごめんなさい何だかおかしくて。
あの…僕が何か?いやいや。
ありがとうございます。
少し気分が晴れました。
星野の言葉に励まされ常子は新しい学校でも友達をつくる事ができました
ねえあれは何をなさってるの?丸太を組んで木材を仕入れるとこ。
(清)どうだ?組み終わったか?へい。
おばあ様のお店の若旦那さん。
お若いのね。
この端の1本替えてくれ。
へい。
(職人)旦那…。
よく見ろ。
ここんとこ虫食ってるぞ。
(職人)すいません。
おい組み替えるぞ。
(一同)へい。
しっかり頼むぞ〜!
(一同)へい!今の方…。
若いのに遠慮なく指図して立派だわ。
そうねえ…。
あの方は?常子さんお好きではなくて?義理だけど一応叔父にあたる方だし。
血がつながってないなら結婚だって可能なはずよ。
あ…あ〜そんな事考えた事もなかった。
えっ!本当なの?隈井さんがはっきり…。
忘れる訳あるはずねえ。
学費だって全部…本当は女将さんが全部払ってるってのに。
言いたいやつには言わせときな。
かかに打ち明けるべきなのかなあ。
言わない方がいい。
おばあ様の手助けなしでやってる事うれしそうに話してたでしょ。
援助を受けてたって知ったら…。
嫌よねきっと。
ところが…
常子。
はい。
何か知ってるの?隈井さんからお借りしている学費の事。
どうして…?このお金はきっちり女将さんにお戻しします。
女将さん?そうですよ女将さんですよ。
いつから知ってたの?ずっと私に隠してたの?違うんです。
先日偶然耳にしただけなんです。
かか!あの日…青柳の家を出た日かかとおばあ様の間には何があったんですか?回想常子にお母様の思い描くような人生を歩ませる訳にはいきません!だったら出ていきな!おばあ様は私たちを気遣って下さっているんです。
私たちを気遣う?そうでなければ援助して下さる理由がありません。
かか!・
(君子)失礼します。
何の用だい?一体どうしたんだい?学費をお受け取りする事はできません。
学費を出して常子の青柳への嫁入りを拒めないようにしむけたんじゃありませんか?もう関わらないで下さい!かか。
かか。
おばあ様と話をしてきました。
学費の話はお断りしました。
どうしてですか?おばあ様に頼る訳にはいかないの。
どうしてかかはそんなにおばあ様にかたくななんですか?常子を清の嫁に迎え入れこの店を任せたいと思ってる。
どうしても援助を受け入れる事はできないの。
東京に来た頃はあんなにうれしそうだったのに。
親子だからじゃない?うん?親子だから意地張っちゃうのよきっと。
どうしたもんじゃろのぉ…。
あっすいません。
(杉野)あれまあ〜!申し訳…。
社長さん!やぁ〜久しぶりやのう!お久しぶりです!えっ…どうされたんですか?たまたま東京へ出張だったもんでここに来たら会えるかと思うてやぁ。
ああ…。
浜松から突然訪れた杉野社長から常子は意外な事実を聞きます
実はのう小橋君に口止めされてたでぇ…。
えっ?駆け落ち同然で結婚したらぁ?小橋君としても引っ掛かってたんだの〜。
ととが…。
小橋君が必死に君子さんと仲直りをしてほしい旨を伝えたんだがおばあ様にそっけなく追い返されてしまったんだに。
…んでも小橋君はね急に許してもらえるはずないと浜松に帰ってから月に一度おばあ様に手紙を出してたんだ。
亡くなるまで10年の間ずっと続けていたようだに。
用件を早くお言い。
もう一度かかと話し合ってほしいんです。
どうしても話し合う事ができないというのなら致し方ありません。
ですが…。
勝手なお願いですが今までどおり妹たちの分の学費だけは援助頂けないでしょうか?ととの代わりになると決めた時私は目標を立てました。
妹たちを女学校に入れ嫁に出す。
でも…今の私の力ではどうする事もできません。
どうか妹たちの分の学費だけお貸し頂けないでしょうか?お願いします。
私は女学校をやめて働きます。
女将さん。
かわいい孫が頭下げてるんですよ。
つまらねえ意地張るのはもうよしやしょう。
君子さんだって誤解してるだけなんですから。
誤解?えっ誤解って何ですか?君子さんは学費の事を女将さんのご厚意だと思っちゃいねえんですよ。
私が…常子を清の嫁にしたいと言ったからさ。
えっ?では…おばあ様が学費を出して下さっていたのは…。
それとこれとは関係がないよ。
(隈井)でも君子さんは常子さんを奪おうとしてると思い込んだままで…。
(泣き声)常子?私どうしておばあ様とかかが仲たがいしているのかずっと分からなくて…。
でも…私のためだったんですね。
ととの手紙…。
それを…君子に届けておくれ。
はい。
(竹蔵の声)「拝啓お母様。
先日は急な訪問大変申し訳ございませんでした。
今回お送りするこの手紙ですが手紙というほどのものではございませんのでお返事は不要です。
一方的に小橋家通信としてこちらの様子をお送りします」。
「一番上の常子は今日も勝手に仕事場の物干し台に上がり職人の方を困らせておりました」。
「もちろん私も叱ったのですがなぜ上がったのか尋ねるとつづり方を書くために美しい風景が見たかったからだそうです。
そうそう常子が物干し台に上がった時の君子さんが傑作でした。
よほど慌てたのか大きなザルを持って駆けつけてきました。
そんなものでは常子を受け止めきれないというのに。
君子さんは時々どこか抜けていて一緒にいるととてもほほ笑ましいです」。
ととの手紙を読んでおばあ様はととやかかや私たちの暮らしを認めるように考えを変えていったそうなんです。
「もう一度きちんと話し合う機会をくれないか」。
「今すぐおみくじを引いたお寺に来てほしい」と。
回想はぁ〜また大凶だった。
(滝子)安心おし君子。
お前に何が起きようが私が守ってあげるから。
はい。
あっ。
美子!
(隈井)美子ちゃん!美子!美子!
(騒ぐ声)美子!常子!とと姉!美子!美子!
(せきこみ)美子…。
かか…。
(泣き声)美子…。
どうして川に…。
一人で遊ぶとこなかったから…。
家はみんな忙しそうだし私どこにもいる所が…。
ごめんねよっちゃん。
お姉ちゃんたち自分たちの事ばっかりでよっちゃんの事構ってあげられなくてごめんね。
ごめんね。
ううん。
ごめんね美子。
ごめんね。
常子よくやったねえ。
いえ。
あの…私…。
話は後だ。
ぬれたままじゃ風邪ひいちまうよ。
2人とも風呂に入ってあったまっといで。
はい。
とってもいいお風呂でした。
本当にありがとうございました。
(隈井)いえいえいえ。
あれ?おばあ様は?あ〜やり残した仕事があると帳場の方に。
あ〜そうですか。
ねえかか。
これ見て下さい。
あら百人一首ね。
懐かしい!どうです?女将さん戻ってくるまで皆さんでやりませんか?いいですね。
ねえ。
あ〜やりたいです。
あっ私の名前の札あった。
そこから一字を取って常子という名にしました。
かかの歌もあった。
かかの名前も百人一首なの?そうよ。
その歌じゃねえんですよ。
そんなはずありません。
いえそれじゃねえんです。
あっ確かもう一首「君」の字が入った歌があったような…。
ええ。
どんな歌?え〜…。
こんな歌よ。
どんな意味だっけ?「あなたのためなら捨てても惜しくはないと思っていた命だけどお会いできた今ではあなたと一緒に少しでも長く生きたいと思うようになりました」。
あのころ君子さんをみごもった女将さんは体を悪くしてしまって医者から子どもを産めば母体が危険だと言われたんです。
それを知った時女将さんは「自分は死んでもいいからこの子を産みたい。
この子と会えるなら自分は死んでもいい」。
そう思ったそうです。
そんな思いで出産に臨みいざ無事に生まれたばかりの我が子を見た時にね「この子のために長生きしたい。
できるだけ長く一緒にいたい」。
そう思うようになったんだそうです。
この歌と一緒だ。

(滝子)常子美子。
2人ともあったまったかい?おや百人一首かい。
ええ。
懐かしいねえ。
昔はよく遊んだもんだ。
うん?お母様。
意地張ってばかりですみませんでした。
(滝子)しかたないさ。
私の娘だもの。
意地っ張りなのはお互いさまだ。
ここらでちょっと意地を張るのも休んでみるかい?君子が受け入れてくれるなら学費の援助をさせてもらえないか?ありがとうございます。
よろしくお願い致します。

そして春になり常子は女学校の最終学年になりました
(鐘の音)起立。
礼。
(一同)おはようございます。
(東堂)おはようございます。
そう高らかに語った女性たちがいました。
この言葉の意味を皆さんと考えていけたらと思っています。
五年二組の担任になります東堂チヨです。
どうぞよろしく。
(一同)よろしくお願いします…。
「元始女性は実に太陽であった。
真正の人であった。
今女性は月である。
他に依って生き他の光によって輝く病人のような蒼白い顔の月である」。
東堂に借りた雑誌「青鞜」を読み深く感銘を受けた常子は自分に何ができるのか模索し始めます
おはよう。
(生徒たち)おはよう。
どうしたもんじゃろのぉ…。
あら今度はどんな面白い悩みをお抱え?人の悩みを楽しまないで。
あっねえ綾さん何か欲しいものってある?ないわ。
随分はっきり言うのね。
だって本当にないんだもの。
うちに何でもあるし。
お金持ちに聞いたのが間違いだった。
贈り物でも頂けるのかしら?ああそうじゃないの。
実はね私事業を始めようと思ってるの。
回想お話聞かせて下さい。
常子?私男の人みたいに稼ぎたいんです!一日100本ぐらいかしらね。
100本。
それからの常子は商売になりそうなものはないかと目を光らせるようになりました
すみません。
何か?今日は虫歯の治療ですか?いいえ歯槽膿漏なもので…。
お〜!ありがとうございます。
すみませんあの…奥様も歯槽膿漏ですか?ええ…。
すごい!あなた人が歯槽膿漏なのがそんなにうれしいの?いや興味深いなと。
興味深い!?どこまで失礼な方なの?
(星野)ああすみませんすみません!妹が無礼な事を。
後できつく叱っておきますので。
失礼!えっあっ…。
待ちなさい!こらあなた!すみません!あ…ごめんなさい妹なんて…。
そうでもしないと場が収まらなさそうだったので。
あ…こちらこそすみませんでした。
いえ…。
それにしても歯医者さんで何を?ああ…女性に歯槽膿漏が多いかどうか検証していたんです。
あ〜…。
かなりの方が苦しんでいるようでした。
女の人は更年期障害だったり子どもを産むから。
よくご存じですね。
母がかかった事があったのでね。
お母様が?ええ。
陸軍病院の歯科医に診てもらっていました。
でもその方が外地に派遣されるようになりそのあとは練り歯磨きを作って。
それだ。
鞠ちゃんちょっとグリセリン取って。
はい。
いくよ。
よし。
よし。
混ぜ混ぜ混ぜ混ぜ…。
どうですか…?うん悪くないね。
(照代)うん。
口の中がすっきりしていい。
(君子)何だかきれいになった気がするわ。
お〜!よかった〜!
歯磨きの試供品を森田屋の弁当につけたところ大評判。
常子は本格的に事業として取り組む事を決意します
毎度ありがとうございます。
(2人)森田屋です。
1日3回毎食後です。
(東堂)小橋常子さん。
東堂先生!何だか足取りが軽いわね。
東堂先生のおかげで胸のつかえが下りました。
そう。
それはよかった。
じゃあ妹さんの進学の件も解決されたのね?心配してたのよ〜。
鞠子さんご家族にも言えずに一人で悩んでいるようだったので。
進学の件って何ですか?妹さんからお聞きになったのでは?進学の事など全く。
平塚らいてうが詩集を出しました。
お貸ししましょう。
あ〜ごまかさないで下さい。
きれいな言葉であふれていて…。
どういう事ですか?進学って。
何でもないの。
別の生徒さんの話でした。
先生もう聞いてしまったので諦めて下さい。
先生!実は先日妹さんが…。
私…文学を学ぶために大学に進学したいんです。
大学進学…。
知りませんでした。
事業を成功させて鞠子を大学に行かせたいと常子は考えるようになりました
さてお立ち会い。
手前ここに取りいだしたる品物はこれKT歯磨き。
歯磨きと言ったってそこにもあるここにもあるというものとは格が違う。
一塗りすればいい気持ち。
二塗りすれば虫歯撃退。
三塗りすれば歯槽膿漏がピタリと止まる。
(一同)お〜!さあどうだ!効能が分かったら遠慮は無用だ。
どしどし買ってきな〜!買ってきな〜!よし買った!お〜しはい1つ。
ありがとうございます!私も!私は2つ!やめて下さい!あ〜!?貸した金を返してもらっちゃ悪いかい?
しかし鉄郎の借金を返済するためにタダ同然で歯磨きを作る事になってしまい更に翌朝…
「叔父さんはキャツラを黙らせるだけの金を作って戻ってくる」。
えっ…えっ逃げたって事?
そして1週間後…
お納め下さい。
これで全部か?思ったより少ねえな!1週間じゃこれが限界で…。
何しろ手作りですから…。
兄貴…。
そうか。
まあしかたないか。
それにしてもいい匂いだな。
何作ってんだ?あっちょちょちょ…調理場は立ち入り禁止です。
邪魔すんな。
ただの見学だ!何じゃこりゃ?これはお弁当を作る時の調味料なんです。
兄貴〜!これは歯磨きですぞ!あ〜?この野郎こんなに隠しやがって。
おい!・
(滝子)それくらいにしな!何だ?てめえ。
てめえら誰にアヤつけてると思ってんだ!深川とけんかする覚悟があるってんなら受けて立つよ!とっとと帰んな!ありがとうございました。
おばあ様。
何やってんだい!どうして相談しなかった?心配かけたくなくて。
…ったくもう!水くさいじゃありませんか。
家族だってのに。
(破裂音)あっ!えっ?えっ?
(破裂音と騒ぐ声)破裂…収まりましたね。
フフッ…。
ハハハ…。
とと姉?
(星野)どうしました?いや…。
失敗しちゃいました。
ハハハ…。
うん見れば分かる。
(笑い声)滑稽だねえ!ハハハ!お前ものすげえ顔してんな!
事業は失敗しましたが常子は鞠子を大学に行かせる事を諦めてはいませんでした
(東堂)これです。
お〜。
これを使って書類を作成する訳ですね。
いいえ。
基本的には男性社員の作った書類を会議出席者に配る資料として清書する。
それがタイピストの仕事です。
即刻覚えましょう。
はい!「さくらがさいた」。
ささささ…。
ありました!
常子は給料の高いタイピストになるため特訓を始めました
おっそこまで96秒です。
え〜6番。
はい。
「柔よく剛を…」。
採用!?あ〜!
特訓のかいあって無事タイピストとして就職する事ができたのです
(山岸)早く入って。
はい。
(タイプライターを打つ音)
(山岸)みんなちょっといいかな?この子今日から入った…。
え〜っと何だっけ?あ…小橋常子です。
よろしくお願いします。
常子は張り切って初出勤に臨みましたが仕事は一向に回ってきませんでした
(早乙女)これお願いね。
(かをる)はい。
そして数日が過ぎ…
誰か手ぇ空いてる者はいないか?
(早乙女)申し訳ありません。
私たち今手いっぱいでして。
そうか…困ったなあ。
私空いております。
お〜そうか。
書類の整理をやってくれ。
はい私でよければ。
ついてきたまえ。
はい!
男性社員から頼まれた大量の書類整理と清書。
家に仕事を持ち帰りなんとか徹夜で仕上げた常子でしたが…
失礼します!お待たせしました。
完成です。
えっ?昨日頼まれた資料です。
はいはい。
じゃあそこ置いといて。
聞こえなかったのか?用が済んだなら帰りたまえ。
仕事の邪魔だ。
(早乙女)よろしいですね?
(一同)はい。
小橋さん。
はい。
ちょうどよかったわ。
今日付けで発表されたタイピストの新しい規律です。
ご覧になっておいて。
「浄書室において以下の項目を禁止する。
一つ手書きによる資料の作成一つ他部署からの業務依頼を個人的に受けること」。
今後二度と勝手なまねはなさらないで。
男性と女性が尊敬し合って働くのは難しい事なんでしょうか?うん?その早乙女さん男性に見下されまいという思いがとても強いように思うんです。
それを私たちにやらせるのは雑用係だと思っているからです。
早乙女さんのおっしゃる事も分からなくはないのですが困っている方を助けないというのも…。
どうするべきか思い悩んでしまって。
フフフ…。
悩む事なんてこれっぽっちもないさ。
そうやっていがみ合うから余計互いに受け入れられなくなる。
男が悪いだ女は駄目だの言ったところで所詮この世には男と女しかいないんだよ。
だったらうまくやっていくしかないだろう。
そうか…。
そうですよね!アハハハハ!おばあ様のおかげで胸のつかえが取れました。
ありがとうございました!失礼します。
あ…常子?あっ失礼します!
(隈井)あれ?ああ君。
はい。
次の会議用の資料ちょっとまとめてくれよ。
頼めばやってくれるんだろう?分かりました。
準備して営業部に伺います。
ありがとう。
恩に着るよ。
頼んだよ。
(早乙女)あなた!一体どういう神経をなさっているの?私は…たとえ雑用でも必要とされるなら受けるべきだと思うんです。
(道子)ふざけないで。
それは先日禁止令が出たじゃない。
そうよ!課長に言われたばっかりじゃない。
先ほど課長にお許しを頂きました。
男子社員を拒絶しても私たちの立場がよくなる訳では…。
甘いのよ!いいように使われてるのが分からないの?私たちがこれまでどれだけ理不尽な思いをしてきたか。
女だというだけで。
昨日今日入ってきたあなたには分からないでしょうけど。
男性に諦めを抱かずどんな事も引き受ける事で女性の評価を上げるきっかけになれば…。
どうせ無駄なのよ!昨日だって見たでしょ?向こうは言いなりになってほしいだけ。
女に有能さは求めていないの。
雑用を手伝っても当然だと思ってる。
どんなに苦労しても努力しても誰も見向きもしないわ!もうちょいちょいちょいちょい…。
困るよ職場でもめ事は。
課長禁止令を撤回したというのは本当ですか?この件は私に一任して下さったはずじゃなかったんですか?小橋君が悪い。
えっ?君は新人なんだから文句を言わず早乙女君たちの指示に従ってよ。
そんな…。
(佃)ちょっとお邪魔するよ。
(山岸)部長!何だ。
取り込み中だったのか。
(山岸)いやいやいやもう何の問題もございませんよ。
ただの意見交換でして。
ええ。
小橋常子君ってのは?あ…私ですが。
常子の手書きの書類を見た上司が丁寧な仕事ぶりを評価したのです
これからもお願いすると思うから。
あ…はい。
期待してるよ。
(早乙女)小橋さん。
はい。
上の決定ですので雑用を受ける事もタイプの使用も認めます。
ありがとうございます。
これを機に常子はようやくタイピストとして歩み始めました
おばあ様。
今月から少しずつですがお金をお返し致します。
確かに。
ああ〜!ひと仕事終えた〜!何だい大げさだねえ。
アハハハハ…。
(隈井の泣き声)お前もだよ隈井!はじめでのぎゅうりょうを…。
(滝子)分かった分かった分かった。
分かった!はぁ…。
これで名実ともに「とと姉ちゃん」ってやつになったんだねえ。
常子は一家の大黒柱って事だよ。
大黒柱…。
竹蔵さん。
常子が初めてもらったお給料です。
では…頂きましょう!
(一同)頂きます!よし取ろう!わぁ〜!緊張する…。
よっちゃん取れる?ん〜!幸せ…。
アハハハ!ちょっと待ってよっちゃん!先に行って切符買ってくる。
みんなゆっくり来ていいよ。
あっちょっと…。
フフ…行っちゃった。
春になり鞠子は帝都女子大学に美子は女学校に無事進学しました
このころ日本では日中戦争打開のために国家総動員法が成立。
暗い時代の足音は常子たちの暮らしに迫っていたのです
(宗吉)しばらくの間松弁当を作るのを見合わせようと思う。
竹弁当だけにするって事ですか?しかたねえだろ。
国が決めた値段で売ってるものなんかすぐに売り切れちまって回ってきやしねえ。
でもなあ深川からも兵隊さんとられ始めてんだ。
あの…木材の方は大丈夫なんでしょうか?おばあ様のお店の事ですか?ええ。
みんな深刻そうに相談してた。
うん?えっ?何で知ってるの?あ〜美子また縫い物しにおばあ様のところに行ってたの?頼まれるんだからしかたないでしょ。
縫い物もいいけどちゃんと勉強もしなさいよ。
勉強なんかしたって成績上がらないもん。
やめなさい。
とと姉ちゃんさ最近口うるさいと思わない?あれしろこれしろって。
回想見た目に気を遣うのもいいけど学生の本分は勉強でしょ。
口うるさいのは昔からよ。
働き始めてから変わったわよ。
お金出してるの鼻にかけてやけに自分の考え押しつけてくるっていうか。
まあまあいろいろ大変なのよ。
月に一度のお出掛けだってそうよ。
みんなもう大人なんだし家訓だからって毎月律儀に守らなくたって…。
大人って…。
あっ帰ってきたかな。
お帰り。
お帰り。
フフフフ…。
フフッ…。
口答えするのか。
やめて下さい!何だぁ貴様!よかった。
常子さんを守る事ができて。
私もよかったです。
頼もしい星野さんを見る事ができて。
小橋家の月に一度のお出掛けの日待ち合わせの時間を過ぎても美子は現れませんでした
あ〜あ〜。
私たちはあっちを。
(宗吉)じゃあ俺たちは向こうを。
お願いします。
美子。
帰ってたのね。
(君子)あなたを捜しに帰ってきたのよ。
どこに行ってたの?ごめんなさい。
おばあ様のところで小僧さんたちのお仕着せ縫ってました。
だからって…。
私たちずっと待ってたのよ。
ごめんなさい。
だけど終わらなかったんだもん。
お駄賃頂くんだからちゃんとやらなきゃって。
お駄賃のために家訓破ったの?そんなにお駄賃が欲しいの?おやつ買うとか無駄遣いしかしないのに。
もういい。
よくない。
待ちなさい。
家訓破っといていい訳ないでしょ。
そんなに家訓って大事なの?どうしても守らなきゃいけない事?当たり前でしょ。
どうして?ほかの家に家訓なんかないわ。
うちだけおかしいわよ!家訓なんてやめればいいのに!何言ってるの?家訓はととがずっと大切にしてきた事なのよ。
私ととと約束したもの。
ととの代わりに2人の事守るって。
だから…。
約束したのはとと姉ちゃんでしょ!私は約束なんかしてないもん!
(宗吉)明けましておめでとうございます。
(一同)おめでとうございます。
よしじゃあ頂きます。
(一同)頂きます。
年が明けても常子と美子の間には溝が出来たままでした
更に常子に重大な出来事が…
常子さん。
はい。
実は…今度大阪に行く事になりました。
五十嵐教授の研究室に勤める事になったんです。
だから…もう東京には…。
す…すみません。
突然の事で驚いてしまって…。
僕の方こそずっと常子さんには言わねばと思っていたのに遅くなってしまい…。
すぐにとおっしゃってましたが大阪にはいつごろ?来月の半ばには引っ越しを。
来月…。
常子さん。
僕と…結婚して下さいませんか?結婚…。
(竹蔵)約束してくれないかい?ととの代わりを務めると。
常子さん。
僕と大阪に行って下さい!
(君子)常子遅れるわよ。
常子?ずっと考えていたんです。
鞠ちゃんもよっちゃんも私が思っていたよりずっとしっかりしていたんですね。
そうね。
あなたももう少しだけ自分の事を優先してもいい時期かもしれないわね。
ええそうですね。
よっちゃん。
ごめんね。
おばあ様から聞いたの。
よっちゃんがお駄賃を学費の返済に充ててくれてるって。
そうとは知らずにひどい事言ってごめんなさい。
私もいろいろごめんなさい。
とと姉ちゃん。
ん?これよっちゃんが?だってとと姉ちゃん自分のお洋服なんて随分買ってないでしょ。
せめてマフラーくらいは新しいのしてほしいなと思って。
フフフ。
フフッ。
ありがとう。
・星野さん!は〜い。
開けるよ!常子さんいらしたわよ。
ごゆっくり〜。
ありがとうございます。
ああ星野さんお茶持ってこようか?あっありがとうございます。
あっいやでも僕が自分でいれますので。
そうかい?はい。
じゃ…じゃ…。
フフフフ…。
ごゆっくり〜。
あ…ありがとうございます。
どうぞ。
荷物が多いもので整理してまして。
ああ…。
浜松から上京してきた時の事を思い出します。
お部屋を片づけてるとお金見つけません?お金?あ…すみません。
引っ越しの手を止めてまでするようなお話ではなかったですね。
いえ。
僕もよく話を切り出せずどうでもいい話を。
そういえばそうですね。
フフフ。
はい。
似てるんですね私たち。
僕もそう思います。
星野さん。
私…。
今は結婚できません。
そうですか…。
すみません。
あ…謝らないで下さい。
僕もね心のどこかでそう言われるのは分かっていた気がします。
えっ?恐らく…僕が思いを寄せた常子さんはそうされると思ったからです。
自分の事は後回しにしてご家族のために全力で走り回る常子さんだから恋に落ちたんです。
矛盾した話ですが僕を選ぶ常子さんは僕の好きな常子さんではない。
僕の好きな常子さんであれば結婚よりもご家族を選ぶ。
そんな気がしていました。
この辺でお別れしましょう。
さようなら。
万歳!万歳!万歳!万歳!すみません。
常子さん!常子さ〜ん!常子さん!常子さ〜ん!常子さん!常子さん!回想ごめんなさい。
今は家族と離れる訳には…。
これからも支えていかなければなりませんし私自身まだまだ支えたいと思ったんです。

(汽笛)
常子はこの時改めて「とと姉ちゃん」として家族と生きていく事を決意したのです
2016/12/31(土) 08:45〜10:15
NHK総合1・神戸
連続テレビ小説「とと姉ちゃん」総集編(前編)[解][字][再]

連続テレビ小説「とと姉ちゃん」総集編の前編。1週目、常子がとと姉ちゃんになるところから、10週目までを収録。人生の前半で常子が下した決断とは?

詳細情報
番組内容
連続テレビ小説「とと姉ちゃん」総集編の前編。1週目、ととから託された約束を胸に、家族を守る決意をした常子は、断絶した祖母と母の絆を奔走して取り戻し、さらに新たな人生の決断をする。女性のための雑誌をつくろうとする前の、常子の少女時代・青春時代を描きます。
出演者
【出演】高畑充希,西島秀俊,木村多江,相楽樹,向井理,片岡鶴太郎,大地真央,坂口健太郎,秋野暢子,ピエール瀧,平岩紙,杉咲花,【語り】檀ふみ
原作・脚本
【作】西田征史
音楽
【音楽】遠藤浩二