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地上波テレビの字幕を全文書き起こします

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セリフ書き起こし 新春ドラマスペシャル「君に捧げるエンブレム」 2017.01.03


(和也)
人間には2種類しかない
逆境に立ち向かうやつとそうでないやつだ
俺は普通のやつらとは違う
そう気付いたのは小学校3年生のとき
・和也!・いけいけ!・和也!・いいぞ!そのまま!・いけ!鷹匠!
俺は普通のやつらとは違う
(歓声)
(和也)っしゃー!!
あるときそれが確信に変わった
(繁村)どう?
(未希)これ披露宴で流すの嫌みじゃないですかね?
(繁村)いいじゃない。
新郎がすごいやつだと花嫁が幸せに見えるわけだから。
そうですか?でもありがとうございます。
和也これすごく喜ぶ。
はい。
オフに入ったんだったらさたまには会いに来いって言ってよ。
私も会いたいです。
えっ?もう2週間会ってません。
ハァハァ。

 

 

 

 


(トレーナー)最終戦の翌日ぐらいゆっくり休んだらいいじゃないですか。
何でも一番が好きなんですよ。
だったらオフの練習も一番に始めないと。
(トレーナー)さすがだ。
あっ。
今何時っすか?お母さんごめん。
私結婚やっぱりやめるかもしんない。
(晴子)もうお父さんこれから夜勤なんだから。
波風立てないでちょうだい。
(明生)いいんだぞ。
(明生)やめちゃおうかいっそのこと。
時間と約束を守れない人間にろくなやつはいない。
ヤッバい!怒られる!
(濱中)おい鷹匠!はい?
(濱中)ちょっと待ってくれ。
で何?あのさ俺さ…。
えっ謝りに来たんじゃないんですか?ああごめんごめん。
はい〜?あのさ私たち会うのいつぶりだっけ?私1人でず〜っと式の準備してたわけ。
式場に人数出したり主賓にスピーチお願いしたり引っ越しの手配したり。
で今日やっと会えるから料理やら席順やら色々相談して決めなきゃって約束したよね?シーズン最終戦終わったよね?で来ないってどういうこと?ごめんごめん。
でも未希だって俺の試合全然来てくれないじゃん。
今それ全然関係ないよね?私がサッカーに興味ないのと今日の約束とは全然…。
分かった分かった!取りあえず俺の話聞いて。
ねっ?何で笑ってんの?こっちは怒ってるんだよ!?代表に選ばれた。
えっ?日本の代表。
A代表。
えっ?さっきチームに連絡入った。
ホント!?ホント。
そっか。
うん。
フフフそっか。
そっか!そっか〜!日本の代表だ!やった〜!
この2本の脚があれば俺はどこでだって生きていける
愛する人を幸せにできる
日本の代表だ!
そう思っていた

(子供)下手くそ!何やってんだよ!
(福本)どうも。
あ〜!福本さん。
忘れてた。
(福本)だと思った。
悪いねオフなのに取材とか。
これから引っ越しなんですよ。
車の中ででもいいですか?もう7年…8年?しつこいですね福本さんも俺なんかにずっと張り付いて。
もうね俺の方が感慨深いよ。
中学卒業ぐらいか?最初に会ったの。
そいつがホントに代表になったもんな。
こっからですよ。
代表になるのが目的じゃないんで。
さすが鷹匠和也。
フフフ。
(信号機の点滅音)
(福本)ずいぶんのんびり歩いてんな。
うわっ怖っ。
(福本)ここで降りるわ。
(福本)おっとっとっと駄目駄目駄目。
(福本)これはうちの奥さんの。
たまには機嫌取らないとさ。
お前もこれからは大事よそういうの。
そうっすかね。
(福本)ありがとう。
(ドアの開く音)・もう引っ越し終わりますけど。
もしもし?
(泣き声)立てない?歩けない?
(山口)はい。
誰が?鷹匠さんが。
いやそれ今はでしょ?その…手術すれば…。
厳しいですね。
あなたは事故で背骨の胸椎の5番と6番というところを圧迫骨折して脊髄という神経も損傷しました。
脚を動かす脳からの命令がここで遮断されてるんです。
今私は鷹匠さんの脚を触っています。
分かりますか?はっ?今しびれてるから…。
(山口)そのしびれはずっと取れないし触られている感覚が戻ることはないでしょう。
つまり今後あなたが立ったり普通に歩いたりできることはほぼありません。
いやそんな…。
フフ…。
あり得ないでしょ。
(義也)契約解除ってことは無職だよ。
(義也)無職どころかもう和也はまともな暮らしもできない。
そんな…結婚なんて話してる場合じゃないんだよ。
えっ?何?何と申し上げてよいのか…。
(義也)あっいえ。
どうも。
勝手に決めないでよ。
私別れないから!
(晴子)未希!
(和歌)ねえ簡単じゃないの。
簡単じゃないのよ。
この先親の私たちでさえ受け止められないようなことが山ほどあるの。
(和歌)そんなの無理よ。
えっ?お母さん…。
あなたまで犠牲になることないわ。
それに…。
まだ他人なんだから。
未希ちゃん…。
今までありがとね。
ねえ何でリハビリやらないの?リハビリちゃんとやれば自由に動けるようになるし自立できるし働けるし。
そう先生に聞いたの。
結構みんな普通に結婚して子供もいるんだって。
和也。
たかがサッカーじゃない。
フッ。
お前よく俺にそんな言葉言えるな。
頑張ろうよ。
フッ。
この体で何をどう頑張ればいいんだよ。
じゃあお前やってみろよ!!私はあなたじゃないからやらない。
やるのは和也だよ。
フゥ…。
ホントいつも冷静だよな。
じゃあ何?隣でシクシク泣いていればいいの?「かわいそうな和也」「私が助けてあげる」「何でもやってあげる」って…。
嘘でもそっちの方がこっちは気が休まるんじゃねえの?ハァ…。
(ドアの開閉音)フゥ…。

(史子)書くといいわよ。
私も書いたな最初は記録のつもりで。
(史子)薬のこととか手術のこととか難しい言葉が多いでしょ。
(史子)でもだんだん口に出して言えないことそこにだけ書くようになって。
案外それで落ち着くのよ。

(大隼)おい。
(大隼)外の空気吸いたいってのはそういうことじゃねえだろ。
あ〜おいしい。
肺が元気な証拠。
この一服で病状が分かる。
つまり定期検査ね。
開き直るな。
(大隼)息子に嘘ついてんじゃねえよ。
ハハハハハ。
ハハハ…。
やりたくないっつってんだよ!!
(田辺)大丈夫ですか?分かりました。
(田辺)リハビリやめましょう。
(田辺)手当てしましょう。
障害者手帳?
(山口)抵抗ありますか?でも実際すごくありがたい物でもあるんですよ。
社会とつながれますからね。
障害者…ですか。
(せきばらい)あっ。
(看護師)落としちゃいましたか?別の持ってきますね。
これも落ちてましたよ。
あっ。
(ドアの開閉音)
(鶴田)話してみてくれませんか?その方のこと。
サッカー選手なんですプロの。
彼の脚は彼の人生の全てで。
彼は自分勝手でプロのくせに食事とかちょっといいかげんなところもあるけど毎日何があってもトレーニングは欠かさないし勝つために何をすればいいか常に逆算して生活しています。
フッ。
何だよ。
試合全部見てんじゃん。
お金を稼ぐだけじゃない。
彼は人に夢を与えられるんです。
「うれしいことがあった」「公園でサッカーをやってる子どもたちの中に転んで立てない子がいた」「でもその子は自分が代表のユニホームを着ていることに気付くとすぐに立ち上がってまたボールを追っていった」「その子の背中に和也の名前があった」「すごいと思った」子供が彼のようになりたいって彼の名前の入ったユニホームを着るんです。
それで少し強くなる。
すごいことですよね?「和也は人に夢を与えられる」なのに1級の重度障害者?そんなふうに言われるなんて…。
(鶴田)分かりますよ。
分からないですよ。
和也にとってサッカーができないっていうのは命を奪われるのと同じなんです。
何で…。
何で和也なんですか。
普通の人が脚を奪われるのとは訳が違うんですよ。
あなたの脚とは違うんですよ!とにかく障害者手帳の交付にはひとつきほどかかりますから早めに書類を揃えて申請にいらしてください。
その後正確な障害認定をしますんで。
じゃあ書類をお渡ししましょう。
すみません…。
すみません。
私あなたの脚とは違うなんて…。
いいんですよ。
他人にしか言えないこともあるでしょう。
またいらしてください。
「誰かが脚を失わなきゃならないならわたしの脚にすればいいのに」「神様は残酷」「走れない和也に何が残るの」「わたしが残る」「わたしだけは残る」ハァ…。
ハァ…。
ハァ…ハァ…。
うっし!
(田辺)ここまではいいですね。
全然物足りない。
もっと高度なの要求してくださいよ。
(田辺)じゃあ床トランス今週中にってのはどうですか?楽勝です。
ハァー。
どうしたの?飯食ってなかったから元気出なかったんだよ。
見てろ。
もう一回。

(田辺)頑張れ。
もう少し。
そう頑張れ!頑張れもう少し!
(田辺)おめでとうございます。
床トランス成功です。
やった…。
やった…。
やった…。
見たか〜!できちゃうんだよ俺は!よし!よし!よし!よし!やった〜!よし。
うまいもんだろ?うん。
退院決まったよ。
ホント?やった。
よく頑張ったね。
うん。
未希もね。
それでね…。
退院したらさ。
別れよう。
えっ?それでね…。
退院したらさ。
別れよう。
えっ?何言ってるの?えっ?見ただろ?俺はもう何でも自分でできる。
一人で生きていけるんだ。
だから未希も自分の人生生きた方がいい。
ちょっと…何?待っ…。
カッコつけないでよ!私のためとか思ってるなら冗談じゃないからね。
分かってよ!俺が未希と一緒にいたくないんだよ。
えっ?たかがサッカー。
未希はそう言ってたけどホントはすごく大事にしてくれてたろ?えっ?ごめん。
手帳見ちゃったんだ。
サッカーしてる俺のこと誇りに思ってくれてた。
試合全部見てくれてるなんて知らなかったよ。
でも俺はもうサッカーはできない。
未希の誇りにはなれない。
バカじゃないの?またそんな言い方。
バカじゃないの!?少なくともこの2カ月間私は今までで一番和也のことを誇りに思った。
なくしたら生きていけない大切なもの失って普通は立ち直れないよ。
でもあなたは惨めな姿さらしてリハビリやりきって人の3倍も早く退院できるようになった。
勇気があると思った。
本当にすごい人だと思った。
こういう姿なんだって!人が憧れるのは和也のこういう姿なんだって!あなたは今も人に夢を与えられる人だよ。
たかがサッカーじゃない!私なんてもともと興味なかったし。
そんなものなくたってあなたは何も変わらない。
そうだよな。
たかがサッカー…だよな。
すいません。
まさか勝手に入籍してるとは…。
本当にすいません…。
でも見て分かったでしょ?こうして普通に外にも出られるし食事だってできるし全然普通なんだから。
(明生)未希。
軽々しく普通とか言うもんじゃないよ。
えっ?普通でしょ?お父さんこそ深刻ぶるのやめてよ。
失礼でしょ。
こうしてお父さんお母さん来てくださってるのに。
失礼は承知です。
でも申し訳ありませんがこの結婚には賛成できません。
当然です。
お父さん。
親ですから。
だから勝手に籍入れたのよ。
結局何したってお父さん絶対許してくれないじゃない。
あの…僕は…。
(スタッフ)お客さまお待ちください。
(記者)スポーツジャパンです。
鷹匠和也さんですか?日本代表のサッカー選手から障害者になった今の心境語ってもらえませんか?
(スタッフ)他のお客さまに迷惑…。
(記者)家族揃ってということは結婚されるんですか?やめてください!
(記者)彼女さん。
鷹匠さんの障害についてどう思われますか?鷹匠さん。
一言だけでもお願いします。
(男性)週刊誌か何か?
(女性)誰かいんの?
(男性)えっ?あれ鷹匠じゃね?
(女性)ほらサッカーの。
事故ったって噂の。
(男性)えっマジで?わっ車いすだ。
(男性)そんな人を写真に撮るとかどういう神経をしてるんだ。
人の不幸がそんなに面白いかね。
(義也)もう大丈夫だ。
もう帰ろう。
和也。
一緒に室蘭帰ろうよ。
あのね孝二おじさん覚えてっかな?帯広でアスパラ農園やってるの。
すごい広いんだって。
そこで働かないかって言われてんの。
そこだったら誰にも気兼ねすることない。
何言ってんの?もう十分よ。
お母さんねあんたにいっぱい親孝行してもらった。
いっぱい喜ばせてもらった。
あんたがサッカーやっててくれたおかげで「すごいねすごいね」っていろんな人に言われた。
(和歌)うれしかった。
幸せだった。
(和歌)もう…。
十分。
(和歌)だから帰ろう。
(デスク)撮れたぞ鷹匠の写真!マジで車いすだよ!半身不随はこれ本当だったんだ。
こりゃショックだねえ。
一面いけんじゃないのこれ。
地味過ぎませんかねそんなネタ。
(デスク)バカ言うなよお前。
(デスク)代表10番が車いすなんだぜみんな見たいよ。
福本お前持ってる写真出せ。
密着してたろ。
これちょっと売れちゃうかもしれないよおい。
(福本)好きなの使っていいっすよ。
(デスク)最後の一面だな。
鷹匠和也がスポーツ紙の一面を飾るのはこれが最後だ。
一度車いすの姿見たら世間はもうこんな男に興味なんか持たない。
今度載るとしたら一般紙の社会面に小さくだろ。
福祉か医療かチャリティーかそんなネタでよ。
やっぱ俺が選んでいいっすか?何?これ…。
ちょっと。
大丈夫?ああ。
えっ?息子さん?
(鶴田)すいません。
あっ先日はどうも。
あっこの間はすみませんでした。
いいんですよ。
いやこれは運命かな。
やってみますか?おーいハブちゃん。
ハブちゃんのバスケ車貸してやってよ。
(羽生)はい。
低い…。
けど何か…。
動かしてみていいですよ。
はい。
あっ。
(鶴田)いいよ自由に走ってみて。
《何かわくわくする》《顔に風が当たる》《このスピードいつぶりだろ》うおっ!早え!おっうまいな。
あああの顔。
うわっ!
(鶴田)大隼。
あんたがやりたいのはこういうことでしょ。
あっ?ああ。
やるじゃん。
うわっムカついてんだろうな。
たまんねえ。
あのさ。
いいよやりなよ。
ハハ即答だね。
できることはなるべく自分でする。
家のことも。
すぐに仕事も見つける。
なるべく未希には迷惑は掛からないようにするよ。
だから…。
分かってないな。
えっ?迷惑掛けてよ。
自分勝手に好きなことやって私のこと振り回せばいいじゃん。
前みたいに。
(莉子)WINGSへようこそ。
マネジャーやってます吉澤です。
お世話になります。
WINGSってチーム名?はい。
翼。
いい名前ですね。
くっそ…。
おいおいおい…マジかよ。
あいつの車いす車高高いし何か自由に動けるし俺の車羽生さんのじゃなくてあいつの貸してくださいよ。
(鶴田)それは無理だ。
はい。
(莉子)車いすバスケってクラス分けがあるんですよ。
クラス分け?
(鶴田)大隼は片脚の切断だから腹筋も背筋も股関節も使える。
だから車高の高い車いすに乗れる。
でもハブちゃんや君は違う。
君たちは胸から下が動かない。
手の支えがなきゃ体も起こせない。
体重移動もできない。
だから背もたれのある低いいすに乗るしかない。
スピードも出ない。
じゃあ俺はどんなに頑張ってもあいつには勝てないってことですか?まあ身体能力的には無理だね。
それじゃあ不公平でしょう。
最初からそんな不公平でスポーツなんて言えますか。
そのためにプレーヤーを障害の度合いによってクラス分けするんだよ。
君やハブちゃんはクラス1点。
(鶴田)大隼は4.5。
あの鷲見が3点。
コート上の5人のポイントの合計が14点を超えちゃいけない。
それがルール。
1点って一番できないやつってことですよね。
そもそも俺はチームのお荷物ってわけですか。
お荷物かどうかは試合を見れば分かるよ。
試合?
(鶴田)日本選手権毎年あるんだ。
うちは出られないけど見に行ってみないか?日本選手権?たまには実家で飯でも食ってくれば?あれっきりでしょ?そうだね。
じゃあそうしようかな。
よろしくお願いします。
はいはい。
美人だな。
うらやましいか?脚がいいな。
おい。
けさ息子さんが迎えに来てくれたんです。
親切ですよね息子さん。
ちょっと見た目怖いけどお母さん思いだし。
昔逆だったのよ。
あの子が入院してて私が毎日病院来てて。
骨肉腫右膝の。
幾つんとき?13。
脚切断して17んときに肺にがんが転移した。
両方。
(史子)中1の終わりから19になるまでの一番キラキラしてて楽しい時期あの子はずっと病院のベッドに縛り付けられてた。
だからもう親なんかのために病院に来ることないのよ。
どこでも好きなとこ行きゃあいいのよ。
重いね親って。
うっとうしいね。
いえ…分かります。

(歓声)何か…。
どうせしょぼい大会だと思ってたんだろ。
あっ。
くそ。
さすがStrokesだな。
何かあったの?そのStrokesってチームと。
鶴田さんと羽生さんと大隼はもともとStrokesにいたんです。
Strokesは5年連続日本一の強豪チームで。
でも大隼のことで何かヘッドコーチと衝突しちゃったらしくて。
鶴田さんが?
(莉子)鶴田さんは大隼の才能を買ってて。
でも大隼は全然試合に出させてもらえなくて。
神村さんがいたから。
神村さん?
(鶴田)神村錬。
日本の車いすバスケのパイオニア。
日本代表の不動の4.5。
あいつだよ背番号9。

(歓声)何か速いっすね。
18でドイツに渡ってプロになったんだよ。
プロ?14番を見てみろ。
君と同じ1点だ。
神村のそばでどんな動きをしてるか見れば分かる。
ああ。
あの1点は相手ディフェンスを剥がしてる。
4.5を自由にさせてチャンスメークするのが1点なんだ。
(鶴田)さすがのみ込みが早いな。
(羽生)面白いよ1点は。
強い1点がいるチームは勝てる。
(歓声)だからさ俺がキーマンなわけよ。
分かる?俺がポテンシャル発揮しちゃえばWINGSはがぜん…。
分かった分かった。
分かりやすいな。
よかったね。
ほら〜。
脱いだら掛ける。
よっ。
よっ。
飯一人で食ったの?うわレシート見てチェック?意外と束縛しますね。
未希。
深刻にならないでよ。
別に一生親に会わないなんて思ってないしただ今は無理なの。
何よ?やっぱやろう。
えっ?またバスケの話?いや結婚式。
はっ?やろうよ普通に結婚式。
何言ってるのよ急に。
俺たちもさ堂々と祝ってもらおうよ。
そんで式挙げて写真付きのはがきとか送っちゃって。
何かやっぱそっから始まるんじゃないの?俺たち。
お金はどうすんのよ?んっ?競技用の車いす高いんだよね。
買いたいんだよね。
うっ…。
いやそっちはいいよまだ買わなくて借りるから。
バスケ車より俺は結婚式をやりたい。
フフ無理しちゃって。
いやいやいや…。
祝ってもらえるのかな私たち。
祝ってもらう。
さてとこっからが勝負だな。
よし。
(アナウンス)次は意崎意崎でございます。
お出口は左側です。
(せきばらい)あっ違ったか。
(須賀)少々お待ちくださいね。
(須賀)失礼します。
お願いします。
(須賀)お客さま降車終了です。
どこ行ってたのよ。
どっかでひっくり返ってるんじゃないかって心配して。
ごめん。
でもねいいトレーニングコース見つけたんだ。
フフフ。
日本って素晴らしいよ。
何言ってるの。
(アナウンス)お出口は左側です。
あっ。
おはようございます。
おはようございます。
あれっ?今日はスーツですか?これから仕事の面接があって。
そうですか。
うまくいくといいですね。
はい。
失礼します。
すいませんね毎日毎日。
(須賀)いいんですよ。
電車は全てのお客さまの足ですから。
足…。
あっいやすいません。
ありがたいです。
でもごめんね。
えっ?君じゃないんだ。
えっ?今日もいないか。
あっ。
あのどうすればお会いできるか考えててその…。
勝手に入籍して申し訳ないと思っています。
俺体こんなだからお父さんが大事な自分の娘を何でって怒るのも分かります。
反対するのも分かります。
(明生)お客さまの降車終了。
全てのお客さまの足。
えっ?誰でもどこへでも行きたい場所へ行かせてくれる。
毎日必ず。
改札に行かれますか?いえ帰ります。
僕たち結婚式をするんです。
来てくれませんか。

(須賀)あ〜仲川さんすいません。
僕の仕事なのに。
いつから来てる?
(須賀)えっ?あっそうですね。
2週間くらい前からですかね。
毎日。
2週間…毎日…。
(大隼)入団していきなり結婚式に出てくれっておかしくねえかあいつ。
お父さんとお母さん来てないんですか?まっ色々あんだよ。
カワイイじゃん。
そうかな。
私いまさらこんなの着てニコニコ笑って出てくのバカみたいじゃない?う〜ん…。
じゃあまあ無理して笑うこともないんじゃない?フゥ…。
すみません。
やっぱり私には務まりません。
えっ?待って。
お父さん…。
どうして?和也君が来るんだ。
毎日。
えっ?
(明生)毎日毎日来るんだよ駅に。
けさも来た。
嘘…。
(明生)毎日見てるとあの姿も見慣れるんだ。
人間って不思議だよな。
今となっちゃ違和感なんてまるでない。
ああ来てるな。
いるな。
そんな感じだ。
そういうことなんだろうな何事も。
言っとくけど喜んじゃいないよ。
けど…。
絶対に許さないなんて最初から決め付けるな。
親はな娘のために悩んで怒ってそれでも娘の行きたい方向に引っ張られてみる。
それぐらいの覚悟があるんだ。
(明生)ほら。
行くぞ。
お父さん…。
(拍手)仲川さん…。
・未希ちゃんおめでとう。
ありがとうございます。
フフッ。
フフフ。
笑ってんじゃん。
フフフ。
(せきばらい)ああああ。
えー宴もたけなわではございますがここで新郎より皆さまにご挨拶です。
ががその前に…。
えっ?何?僕たちは半年前に式を挙げる予定でした。
これはそのときに流すはずだったものなんですけども式はできなくなって…。
でも今日こうしてちゃんとやれたので皆さんにも見てもらおうと思います。

(音楽)これから2週間後僕は事故に遭って今のような体になりました。
見てもらったようにとにかくサッカー選手としてすごい男だったんでショックは大きかったです。
絶望ってこういうことなんだなって思いました。
僕の人生は終わった。
これからはただ息をして死なないでいるだけ。
僕にはもう何もない。
そう思いました。
でも…。
ここにいる未希が…。
えっ?今思うとこの人バカなのかなって僕も思うんですけど。
はっ?私だけは残るって。
私だけは残るって決意してくれました。
うれしかったです。
未希の覚悟に恥じないように頑張ろうって思いました。
まあそしたら基本何でもできちゃう男なんでリハビリなんてあっという間にこなしちゃうし今では自分で何でもできます。
隣には優しく支えてくれる妻もいるし?これならたぶん想像していたよりもだいぶまともに生きていける。
笑えるようにもなったし周りに感謝できるようにもなった。
もしかしたら前より性格良くなったなんて思ってる方いるんじゃないですかね。
全然変わってねえだろ。
でもやっぱりそれじゃ僕は僕じゃないんです。
優しくて控えめで正しいことしかしない。
そんな俺は俺じゃない。
誰よりも自分勝手で自信過剰で普通のやつらとは違うと思っていてただ上を目指してる。
それが鷹匠和也で…。
そんな鷹匠和也を誰よりも誇りに思ってくれてる。
それが未希です。
俺はサッカーを失いました。
でもここでこのビデオが終わるのは本意ではありません。
俺はこの続きをつくります。
鷹匠和也は車いすバスケで日本の代表になります。
(せき)母さん。
俺をかわいそうだと思いますか?じゅうぶん親孝行してもらったって母さん何言ってんの。
俺が親孝行するのはこれからだよ。
俺は終わってない。
これからだ。
えっ?何で?フフフ。
これどうしたの?金は?ウエディングドレス友達に借りたの。
ドレスってレンタルすると20万もかかるんだよ。
バカみたいだよね。
すげえ…。
やるからにはやってよ。
乗っていい?うおっ。
おっ。
ハハハ。
未希。
何?ありがとうって言う気になった?これで世界見せてやるよ。
やっぱ絵になるわ。
しっかし相変わらず自分勝手だな。
何やってんだ大隼先読めバカ。
(鷲見)あっ!鷲見さんいいかげんリバウンド取ってくださいよ。
(鷲見)勘弁してくれ…。
あっ!亮ちゃん。
そんなとこにいてもさ。
もうお風呂入ろう?上がるころにはパパ帰ってくるよ。

(ドアの開く音)・ただいま〜。
おかえり。
あしたの朝の会議早いんでしょ?大丈夫?うん。
まだ起きてたんだね。
どうだった?試合見に来ればよかったのに。
もう飽きたよ。
地方に行けばお金もかかるしパートも休めないし。
それ見せられると俺つらいんだけど。
つうかさ俺今日2桁得点よ?いいとこでシュート決めたら未希の方指さしてやんのに。
嫌だよ恥ずかしい。
あっまた。
起こさないでよ。
ただいま〜。
寝ながら走ってんの?足結構速いのよ。
俺の遺伝だよ。
いいとこは自分なんだから…。
何?皮むけてる。
えっ結構ひどい。
消毒しないと。
運転休憩した?向こうで何時間やったの?あのさいつも言ってるけど褥瘡って怖いのよ。
大丈夫分かるから。
自分の体なんだから。
何言ってんの。
胸から下の感覚ないのよ。
分かんないじゃん。
それ言う?ケガさせるのはやり過ぎだよ。
鷲見さんが取られたリバウンドは7本。
それだけで14点ですよ。
和也さ…。
日本一になりたいなら日本一練習しなきゃ駄目ですよね?正論だな。
神村錬を倒したいんでしょ?そう思ってやってきたんだけどね。
まともに戦ってないのに…。
やめられてたまるか。
(亮介)パパ今日も遅いの?う〜んそうね。
(亮介)どこにいるの?電話かけて。
帰ってきてって言って。
あのことなら今度ママが言ってあげるから。
(亮介)いい自分で言う。
(田辺)また来てる。
ちょっとオーバーワークじゃないですか?いやこれくらいでちょうど…ちょうどいいんですよ。
(田辺)顔赤いですね。
体温調節できてます?体見せてもらっていいですか?
(田辺)これ…。
いや大したことないですよ。
何度も同じこと言わせないでよ。
最近おかしいよ。
やり過ぎだよ。
自分の体もっと大事にしてよ。
あなたは普通の人とは違うんだから。
そういうこと平気な顔で言うなよ。
平気じゃないわよ!敗血症にでもなれば死んじゃうことだってあるんだよ!?大げさだよ。
いいかげんにしてよ!!分かってるって言ってんだろ!!自分の体なんだから!亮ちゃん…。
ごめん亮ちゃん。
分かってるんだ。
自分が障害者だってことホントは一瞬だって忘れたことなんてないよ。
でも唯一そういうのから自由になれるんだ。
バスケやってるときだけは。
予選ブロック終わったら少し時間くれない?たまにはゆっくり話したい。
亮介のことも。
分かった。
おいこれ初戦だぞ。
こんなとこで苦戦するなんてあり得ねえだろ。
(大隼)うるせえな。
いいだろ勝ったんだからよ。
だいたい指示出してんのお前なんだからよ。
悪いのお前だろ。
指示どおり動いてから言えよ。
それと鴻野。
お前バスケ経験者だろ。
どフリーでレイアップ外すなんて高校生でもドン引きされんだろ。
練習しろよ。
(鴻野)いやでも…。
でもじゃねえよ。
(大隼)うるさいんだよ。
(鶴田)まあまあ鴻野はまだ入ったばっかだしさ。
(莉子)ねえねえ聞いて。
日本代表のヘッドコーチが視察に来てる。
神村錬を見に来たんでしょ。
だけじゃないんだよ。
いや〜すごいよ。
ねっ?鶴田さん。
大隼が次の試合の結果次第で代表合宿に呼ばれる。
(羽生)WINGSからついに日本代表が出るよ。
やってやろうよ。
大隼を代表にしてやろう。
うん。
ところがさ次の相手がStrokesなんだよ。
それ勝たなきゃ意味ないでしょう。
神村を倒さなければ代表の4.5は神村のまま。
呼ばれたところで大隼の出番なんかないですよ。
それもそうだな。
(大隼)へいへいへい!へいへいへい!
(歓声)くそっ!出てこい神村。
(男性)いいよなあの15番。
(男性)そうだな。
和也!大隼がフリーだ!
(大隼)へいへいへい!
(大隼)へいへいへい!
(大隼)へいへいへい!
(大隼)また自分かよ!和也!大隼をフリーにしろ!
(鴻野)フリー!フリーですよ鷹匠さん!一人でやるな和也!
(鴻野)パス出してください!
(鷲見)和也!
(神村)目立ちたがり屋だな。
元Jリーガーだかなんだか知らないけど。
神村が出る。
(一同)神村!
(歓声)来たか…。
(ホイッスル)あいつバカかホントによ!いいかげんパス出せよ!
(神村)俺に任せろ。
くそっ!バックピック。
(羽生)あれってバックピック?実際やってるの初めて見た。
(鶴田)和也と神村の走力の差をついた戦術だな。
海外のリーグなんかでよくやってる。
えー何か1点の鷹匠さんいじめてるみたいじゃないですか。
それが車いすバスケだよ。
ああっ!ああっ!
(歓声)
(大隼)俺のチャンスまでつぶすな。
はっ?何でチームメートにチャンスつぶされなきゃなんねえんだよ。
頼むから邪魔しないでくれよ。
何熱くなってんだよ。
いいだろ。
お前4.5で自力でどうとだってプレーできる。
走れるし高さだってある。
なのに動けねえ1点に邪魔すんなってお前鬼かよ。
代表だって次があんだろ。
うらやましいよ脊損の1点が。
はっ?何言ってんだ…。
最悪でも死ぬことないもんな。
いいか。
俺の肺には右にも左にもがんが残ってる。
こいつがあした目覚ますかもしんねえんだよ。
お前が朝起きて飯食ってくそしてるときにこん中でそいつも目覚ますかもしんねえんだよ。
そしたらな…。
俺死ぬんだよ。
俺には次なんかねえんだよ。
俺には時間がないんだ。
どうしたんですか?鶴田さん。
(鶴田)うんちょっとね。
いい会社に勤めてるんだな。
障害者雇用枠なんで。
うんそっか。
お茶でも飲もうか。
俺がいたら勝てないって言うんですか?今の君を試合に出すのは難しいね。
俺の言うとおりにやれば必ずWINGSは勝てるようになります。
そうだね。
君の言うとおりにやれればね。
でも残念ながら俺たちは全員が鷹匠和也ではないんだよ。
ついていけないよ君には。
だってさ正しいことしか言わないんだもんな。
分かってるんだ鷲見も鴻野も俺もハブちゃんも。
みんながみんな君みたいにできればWINGSはとっくに日本一になってるよ。
でもできないんだ。
鷲見は手首をケガしたら仕事に差し障る。
そしたら家族が困るだろ?鴻野はまだ18で大検受けて大学行こうか考えたりしてる。
知らないだろ?君みたいにいい会社に勤められてさ家のことはしっかり者の奥さんが全部やってくれる。
そんな恵まれてるやつらばっかじゃないんだよ。
ほどほどでやって日本一になれると思ってるんですか?ほどほどにきっちりやって日本一になるんだよ。
それが俺がやりたい車いすバスケだ。
強いやつだけ集めてプロみたいなトレーニングして勝つとかそういうのは目指してないんだよね。
(鶴田)頑張れないやつはいるよ。
でもそこを補うのがチームの強さだと俺は思う。
試合に出られないのなら俺はWINGSにいる意味がありません。
そうか。
まああとは君の自由にしてもらっていいよ。
予選リーグ終わったらって言ってたよね。
パパまた忘れちゃったのかな。
ねえ亮ちゃん。
ママ何か分かんなくなってきちゃった。
(神村)ハァハァハァ…。
ハァハァ…。
6秒か。
(神村)WINGS日本選手権出場枠取ったね。
楽しみだよ。
いや俺出ないんです。
(神村)えっ?何で?首になりました。
(神村)そうなんだ。
何だよ鶴田さんずいぶんだね。
あなたと俺と何が違うんですか?
(神村)えっ?あなたは18で車いすバスケ始めて一人でドイツに行ってプロになってそっから20年近くバスケしかしていない。
きっと頭ん中勝つことしか考えてないでしょ。
フフ頭ん中それだけって…。
それじゃあ俺バカみてえじゃねえかよ。
まあ間違ってないか。
俺も似たようなもんなんです。
でも違う。
あなたにはみんなついていくしみんなあなたのやり方を認めてる。
何が違うんですか?俺挫折したことないからね。
えっ?
(神村)俺生まれたときからこの体で正直この体で嫌だったことってないよ。
何でも人よりできたしモテたしね。
だから車いすバスケに出合ったときは単純におもしれえ勝ちてえ本当に強くなりてえって。
ただそれだけ。
お前さ取り戻したいだけなんじゃないの?
(神村)昔の誰もがうらやむ輝かしい栄光をつかんだ自分をさ取り戻したいだけなんじゃないの?だからやたら必死で。
それってさ大変そうだよ。
面白くねえし。
そんなのに付き合わされるの誰だって嫌だと思うよ。
ついてけねえってなるよ。
でも取り戻したいんですよ。
そう思っちゃ駄目ですか?
(神村)いやいいと思うよ。
悪くないよ。
でもそれさ…。
お前一人でやれよ。

(ドアの開く音)ただいま〜。
亮介〜。
未希。
未希?えっ?あいついつの間に。
よし。
(晴子・未希)イエーイ。
やった〜。
来てたんなら何で声掛けてくれなかったの?いや何か楽しそうだったし。
楽しそうだったら声掛ければいいじゃないの。
私が悪かったのよね。
サッカーやりたいなんて別に子供には普通のことだし。
何かのついででもいいから言えばよかったのよね。
分かってる。
ずっと話聞いてやらなかったの俺だし。
俺起きてる亮介の顔しばらく見てない。
あいつが何食って何して笑って誰とケンカしてんのかそんな話も聞いてない。
そうだね。
でも慣れちゃったよ。
いつも二人でいたしそれはそれで楽しかったし。
いつも二人…か。
それ…。
実家のお父さんとお母さん一緒の方が亮介さみしくないんじゃないかな。
何ならそっち選んでもらって構わないよ。
えっ?大丈夫。
俺は基本何でも自分でできる。
体のコントロールだってできる。
俺がいることで二人が窮屈…つうか変に気使ったりさみしい思いするんだったら別に一緒に暮らすことにこだわらなくてもいいんじゃないかな。
そうだね。
正直言うと…。
亮介じゃなくて私がもっと和也と時間を過ごしたいって思ってたよずっと。
本当は週末に3人で出掛けたりとかしたかったよ。
普通に。
でもあなたにはバスケがあったから。
頭の中強くなることでいっぱい。
ああ出合っちゃったんだって。
サッカーに代わるものに出合っちゃったのよ。
出合わない方がよかったみたいな言い方だな。
サッカーだったら許せたと思う。
だってサッカーは仕事でしょ?それで私たちを養ってくれる。
こんなこと言いたくないよ。
でも…。
気付いてよ。
もうあなたはプロじゃないのよ。
ハァ…。
ごめんなさい。
いや…。
でもねそういうとこ尊敬してるんだよ。
お金とか名誉とか関係ない。
ただ好きで強くなりたくて努力して体がしんどくてもただやる。
そういうところが好きなんだよ。
でもね時々ついていけない。
ついていけない…か。
ごめんなさい。
こんなこと言うつもりなかった。
しばらく実家行って頭冷やしてきます。
うん…。
心配しなくていいよ。
俺は一人でも生きていける。

(男性)お昼行こう。
(男性)行きましょう。
(男性)いつもの店行かない?
(神村)向井大隼は辞退したよ。

(大隼のせき)
(大隼)《俺には次なんかねえんだよ》《俺には時間がないんだ》
(鶴田)来てたのか。
大隼のとこか?
(鶴田)最後まで悩んでたよ。
代表合宿に行くかどうか。
そうですか…。
(鶴田)でもあいつはバスケを捨てて一日でも長く生きる道を選んだよ。
それで生き延びられる時間が一年か数カ月だったとしても少しでも母親を悲しませない方を選んだ。
大隼は誰かのために生きる方を選んだんだよ。

(福本)今日練習日だろ?もうじきみんな来るのに何で帰るの?
(福本)俺さお前がいないとWINGSを追う意味ないんだけど。
もういいじゃないですか。
何かね…。
分かっちゃったんですよ突然。
(福本)何が?チームでも家でもお荷物だったのは俺なんですよ。
はっ?チームが勝てないのはチームメートが下手くそだから。
家の中で何か居場所がないのは家族が俺を持て余してるから。
みんなバカだな。
俺の言うとおりにやってれば全部うまくいくのに。
そう思ってましたサッカーやってるときからね。
でも違ったんです。
俺が邪魔だったんです。
みんなにとって。
ついていけないって。
一人でやってろって。
やっと分かりました。
世の中では俺みたいなのが一番いらないやつなんです。
何するんすか!起きろよそっから。
はっ?何言ってんすか。
俺が最初にお前見たとき何て思ったか知ってるか?12年前15だかまだそこいらのガキみてえな顔してるお前見て俺は思ったんだよ。
こいつ天才だって。
だからわざわざ北海道くんだりまで行ってお前に張り付いたんだよ。
お前がまだ無名のときから高校サッカーとかでも勝てねえうちから。
大ばくちだよ。
だって全部自腹だもん。
でもね大正解。
だって代表10番になったもんな。
1回だけだったけどさ。
(福本)でこっから稼がせてもらいますよってときにだよ?ハァ…事故なんか遭いやがってよ。
脊損?脚が動かない?障害者?バカじゃねえの?お前。
金と時間返せってんだよ。
マジへこんだよ。
顔も見たくなかったね。
だってかわいそうじゃん。
俺もどうしていいか分かんなかったよ。
だからもう離れるしかねえかなって最後にヒーローの転落記事書いてさ。
みんな大好きだろそういうの。
それでもうおしまいにしようって。
そしたらさやってんだもん。
車いすバスケ?何?障害者スポーツだろ?逆に惨めになっからさやめろよそんなもんって思いながら見に行ったよ。
そしたらさ…。
カッコイイじゃん。
昔と変わんねえ顔してさやってんだもん。
俺離れられなかったよ。
思わずカメラ構えちゃったよ。
ぜってえこいつを追い続けてやるって。
日本一になって日本の代表になって日の丸つけるところもう一度俺が記事にしてやるって。
だから一円にもならねえのにさまた張り付いたんだよ。
(福本)何がお荷物だよ。
ついていけねえ?いいじゃんもともと自分勝手なやつなんだからさ。
いまさらいい子ぶってかわいそうなふりしてんじゃねえよ!あぁ…。
あぁ…。
くっそ…。
ハァハァハァ…。
鶴田さんな登録してんだよ日本選手権の出場メンバーにお前の名前。
あの人だって本気で勝とうとしてんだよ。
すいませんでした。
頼むぞ和也。
123。
(一同)WINGS!
(史子)どう?外の空気は。
あんまり…。
うまくねえな。
(史子)もうすぐ始まるね。
(せき)
(歓声)いけ鴻野!よし。
鷲見さんナイスリバウンド!
(鶴田)いいぞ和也頼むぞ!
(福本)何だよ。
つぶれ役全部引き受けちゃって。
(鴻野)和也さん打て!
(歓声)よし。
(ブザー)
(亮介)ママ行かないの?今日パパの試合でしょ?行かないよ。
これパパ出るの?
(神村)何プレー変えちゃって。
1点であそこまで動かれちゃ相手チームは脅威だよね。
まあでもここまでかな。
さすがに1対1じゃ俺止めれないでしょ。
・1対2ならどうですか?どうしたんだよお前。
治療は?ここに合わせて来たんだよ。
いや頑張ったわ俺。
ホント超人だわ俺。
フッ。
40分も持たねえわ。
10分で死ぬわ。
俺が生かしてやるよ10分だけ。
(神村)いいねえ。
お前らバカでゾクゾクするわ。
(鶴田)大隼がこの一戦だけWINGSに戻った。
何のためか分かるな?Strokesに勝つためだ!123。
(一同)WINGS!
(ホイッスル)
(歓声)
(歓声)
(歓声)ハァハァ…。
(ホイッスル)お前病人のふりしてねえ?だったらどうするよ。
(歓声)
(鶴田)ラスト1分!
(莉子)頑張れ!
(歓声)くそっ…。
和也!
(大隼)あいつバカが…。
また…。
和也。
打て大隼!
(歓声)うっし!くっそ…。
ナイスシュート!
(鴻野)和也さんナイスパスだ!
(鶴田)あと15秒!神村を走らせんな。
和也。
(鴻野)和也さんお願いします。
和也止めろー!耐えろ鷹匠!
(福本)耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ。
耐えろ耐えろ!
(神村)あー!
(鶴田)同点…いや逆転狙いか。
(ブザー)
(歓声・拍手)ハァハァハァ…。
負けちゃったね。
ねえ泣かなくていいんだよ。
パパすごくカッコ良かったでしょ?何か前のパパと全然違ってたね。
そうかな?そうだよ。
今日のパパの方がすごく強くなってる。
転んでばっかだったよ。
それが強いってことなんだよ。
パパはどんどん強くなっちゃうね。
(拍手)うっ。
来年もまたやろうぜ。
えっ?引退は撤回するよ。
大丈夫?椅子倒そうか?俺届かねえから自分でやって。
うるせえな。
早く車出せよ。
またここでやろうぜ。
神村引退撤回するってよ。
俺たちが火付けたんだよ。
だからさ来年こそStrokes倒して日本一になろうぜ。
そんな先のことなんて分かんねえ。
くそあちいなこの車ん中。
なあ?それもらっていいか?んっ?こんなん欲しいのかよ。
ありがとう。
えっ?み…。
だからねチームでの態度が今までと全然違うわけ。
何かすごく謙虚で。
だったらさ何でこっちに対する態度も変えられないの。
一番近いの私じゃん。
チームメートナンバーワンなわけだよ。
なのに何で来ないの?
(明生)そういうやつが一番始末に負えないんだよ。
奥さんの大事さ分かってないとか。
だよねお父さんもそう思うでしょ?ホント嫌。
(晴子)ほらお茶でも飲んで。

(チャイム)
(晴子)はーい。
宅配便かしら。
亮ちゃんおいで。
和也さん。
すいません突然お邪魔して。
パパ!
(ドアの閉まる音)ごめん俺が悪かった。
未希の気持ちも亮介の気持ちももっとちゃんと考えるべきだった。
ついていけないとかもう…夫としても父親としても一番言わせちゃいけない言葉だったと思う。
ホントごめん。
でも俺やっぱバスケはやめられない。
たぶんやっちゃうと思う。
今までどおり。
えっ?今までどおり…。
やっちゃうと思うたぶん。
それは俺が生きていくための命綱みたいなもんだからどうしても手放せない。
でもそれよりも手放せないものがあった。
それはお前たちなんだ。
未希と亮介なんだ。
俺日本代表の選考合宿に呼ばれた。
えっ?やっぱり一緒に喜んでもらいたい。
今日だけじゃない。
これからもずっと。
うれしいことはお前たちと一緒に喜びたい。
だから…。
頼む。
一緒に帰ろう。
おっ亮介。
亮介。
亮介もごめんね。
サッカー見に行けなくて。
これからはさパパも一緒にサッカーやっていいかな?いいけどパパできんの?フフフ。
これでも昔はすごいうまかったんだぞ。
(亮介)何点入れてた?何点?たくさん入れたよ。
(亮介)嘘つき。
ホントだよ。
(亮介)嘘つき。
100点100万点。
(亮介)嘘つき。
200万点。
(亮介)嘘つき。
嘘じゃないよ。
取りあえず車で待つ?いや…。
んっ?うちへ帰ろう。
えっ?普通に帰ろうよ。
何言ってるの。
階段しかないんだよ。
無理だよ。
何で無理なんだよ。
手段があるのに無理とか簡単に言うなよ。
またそういう感じになるわけ?自分だけは違う俺にはできるってむきになるわけ?たかがエレベーターで。
そうじゃない。
俺はただうちに帰りたいんだよ。
未希と亮介と3人で。
よし。
はい。
うーん…。
あ〜。
はい。
あ〜。
ヤッベえこんな…。
だから言ったじゃない。
ホントバカ。
スポーツバカ。
体痛めつけたり精神的に追い込んだりしないと生きてる気がしないんですか?マゾですか?ホント最悪だよな。
付き合わされる人間はたまんないよな。
そうだよ。
一人じゃ自分の家にも帰れないくせに。
えっ?ホントは何もできないんだ俺は。
結局助けられてばっかで。
一円にもならないバスケなんかやって。
ハァ…。
あっ亮ちゃん。
パパの脚持つの手伝ってくれる?うん。
よいしょ!あ〜。
これ先長えな。
やるって言いだしたのそっちですよ。
未希俺さ…。
うん?ホントは一日だって生きていけないんだよ一人じゃ。
この階段だって上れない。
でも未希と亮介がいれば上れるんだきっと。
1段上れば確実にゴールにまた近づく。
この1段次の1段って乗り越えて…いくんだよ。
普通の家族が5分でたどりつけるところを2時間かかる。
遠回りさせたり苦しい思いさせたりすると思う。
でも俺は必ず乗り越える。
そしてお前たちを幸せにする。
だから…。
信じて。
俺の動かない脚持っててくれないか。
はい。
何?どうしたよ?ごめん…。
頑張ろう。
(和也・未希)せーの…。
よっ。
はい。
よしこの勢いで世界見せてやるよ。
別にそんなの見たくないよ。
僕見たい!フフ。
見せてやるよ。
せーの…。
やったー!
(未希・亮介)やったー!やったやった。
ハイタッチ。
やった。

(ドアの開く音)
(外国語)
俺は普通のやつらとは違う
(義也・亮介)カッセーカッセー和也!
この胸に2つの日の丸をつけた経験がある人間はそうはいないと思う
1つ目は自力でつかんだ
自信を持ってそう言える
でも2つ目はお前の実力かと問われたら違う
自分の力だけでつかんだものじゃない
(須賀)あれ仲川さん何見てるんですか?んっ?息子なんだよ。
(福本)来た来た!写真来たよ!
(福本)俺ならもうちょっとうまく撮るのにな。
ハハハ。
よし!記事にするぞ。
(一同)はい!
だからこそ重い
123。
(一同)日本!・しゃあ!
だからこそ俺は…
この2つ目のエンブレムが好きだ
(歓声・拍手)
(ホイッスル)
部屋の中でいきなりドッジボール
(生田)ヨコ!俺じゃないって!2017/01/03(火) 21:00〜23:30
関西テレビ1
新春ドラマスペシャル「君に捧げるエンブレム」[字][多][デ]

櫻井翔主演。未来を絶たれたJリーガーが車いすバスケで再び夢に挑む。恋人の想い、友との絆、迫力のプレーシーン!新年の幕開けにふさわしい爽やかな感動の物語。

詳細情報
番組内容
このドラマは、ある男の挫折からの復活と、それをひたむきに支え続けた妻の固い絆を描いた物語。男が愛する人のために不屈の闘志でそのプライドと人生をかけて戦う舞台は車椅子バスケ。車椅子バスケ日本代表選手として世界を目指した実在の元Jリーガーをモデルに描くヒューマン・ラブストーリーだ。
見どころのひとつはエキサイティングな車椅子バスケ競技そのもの。
番組内容2
これほど激しいスポーツはないと言われる車椅子バスケの世界を、新春大型ドラマにふさわしい迫力ある映像で描く。そして物語の核となるのは、逆境に立ち向かう男と、どん底に陥った夫を持ち前の笑顔で支え続けた妻の、温かな夫婦愛。さらに彼らを取り巻く人々、仲間やライバルたちとの絆、愛する家族との葛藤が描かれる。
主人公の鷹匠和也を演じるのは、櫻井翔。
番組内容3
主人公の婚約相手、ヒロイン・仲川未希を長澤まさみ。車椅子バスケ・チーム“Wings”の得点王・向井大隼に市原隼人、“Wings”を主宰する市役所職員・鶴田仁志に田中哲司、未希の父親・仲川明生に小林薫、和也の母・鷹匠和歌に倍賞美津子、大隼の母・向井史子にかたせ梨乃、車椅子バスケ不動のエース・神村錬に安藤政信、和也を追うスポーツ紙記者・福本廣太郎を香川照之が演じる。
出演者
櫻井翔 
長澤まさみ 
市原隼人 
田中哲司 

小林薫 
倍賞美津子 

かたせ梨乃 
安藤政信 
香川照之
スタッフ
【原案】
京谷和幸 

【脚本】
安達奈緒子 

【演出】
西浦正記(FCC) 

【プロデュース】
増本淳 
浅野澄美(FCC) 

【制作著作】
フジテレビ