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書き起こし NHKスペシャル「ばっちゃん〜子どもたちが立ち直る居場所〜」 2017.01.07

罪を犯してしまう子どもたちはみんなおなかをすかせている。
そう言ってその立ち直りを30年以上支えてきた女性がいます。
子どもたちはこの女性の事をばっちゃんと呼んでいます。
自分のおばあちゃんではないけど近所のおばちゃんよりは身近な存在だからとの事。
今日はそんなばっちゃんのお話です。
問題を抱えた少年たちが毎日駆け込んでくる。
そんなうわさを聞きつけばっちゃんへの取材を始めました。

 

 

 

 


(中本)お帰りお帰り。
ばっちゃんは40代の頃から罪を犯した少年の社会復帰を手助けする保護司というボランティアをしてきました。
活動を始めてすぐに非行の原因が空腹にある事に気付きそれから子どもたちに手料理を振る舞うようになりました。
いつしか担当する子どもだけでなくその友達も来るようになりそれを見かねた地域の女性たちも手伝いに来る。
こうしてにぎやかな家になりました。
増やそう。
(取材者)カレーは便利ですね。
貧困や育児放棄。
ここに集まってくる子どもたちはさまざまな理由で食事をとれずにいました。
買うん?ラーメン買うん?インスタントラーメン?お金ないじゃろ。
ばっちゃんのごはんを食べすぐに非行がおさまる子もいれば何年もかかる子もいます。
それでもばっちゃんは毎日料理を作り子どもの声に耳を傾けていました。
ケント。
えらかったえらかった。
えらかった…ハハハッ。
ばっちゃん言うからいつも。
えらかったえらかった。
ケントなっ。
そうですそうです。
おなかをすかせては非行に走る子どもたち。
繰り返していると罪の意識がどんどんなくなってしまいます。
ばっちゃんの家は子どもたちにとって数少ない甘えてもよい場所。
外では威勢を張り隠してきた本心も思わずさらけ出してしまいます。
誰から?されてない?うん。
そうなの?うん。
え〜!だってもう関わらんつったもん俺。
悩みを打ち明けたあとにおいしいごはん。
子どもたちの心が満たされていきます。
今日はケントが主役じゃけんの。
ケント今日は。
ありがとうございます。
うまっ。
今回は揚げとるやん。
うん?これ?ここではつらかった事も不思議と笑いに変わります。
はい解錠。
はい解錠。
はい施錠よ〜し。
はい身体検査。
よしよし。
それ何で?はい後ろ向いて。
身体検査…身体検査異常なし。
何それ?はい後ろ向いて。
金属探知機です。
アハハハハッ。
はい異常な〜し。
はいじゃあ…。
(笑い声)あ〜すばらしいや。
はいじゃあ行ってらっしゃい。
ありがとうございます。
取調室です。
アハハハッ。
飯配る時?はいごはんどうぞ〜。
そんなばっちゃんは子どもたちの立ち直りが以前にも増して難しくなっていると感じていました。
社会全体に広がる不寛容な空気。
過ちを犯した子どもへの風当たりは強く居場所を見つける事は容易ではありません。
実際犯罪で検挙された少年のうち再犯者の割合は年々増え続けています。
多くの少年が悪循環から抜け出せずにいるのです。
結局はない。
マコト?ばっちゃんが特に気にかけている少年がいました。
中学2年生の…幼い頃からおなかをすかせてはここに出入りしていました。
このころ母親が再婚したばかり。
父親にはマコトと同じ年の連れ子がいて新しい家族とは会話がありませんでした。
これでも落ち着いたよ。
すっごい落ち着いた。
マコトはばっちゃんの家に来ない時は夜遊び回り度々問題行動を起こしていました。
マコトの家はばっちゃんの家の近くです。
でもなかなか家には帰ろうとしませんでした。
この1年ほどあとマコトは少年院に入りました。
マコトが入ったのは広島の少年院。
ここでの生活は1年を超えました。
仮退院が近づいた時ある事が問題になりました。
昔の仲間がいる広島では更生が難しいとマコトの親が言うのです。
結局ばっちゃんが愛知県のNPOに引き受けを頼みそこで更生を目指す事になりました。
マコトは愛知県の少年院に移され仮退院の日を迎えました。
(取材者)久しぶり。
久しぶりです。
(取材者)痩せたんじゃない?いやすごい…。
(取材者)何年何か月だったっけ?1年と2か月。
(取材者)怖いんだ?中学の卒業式にも出席できませんでした。
たった一人で新しい生活を始めます。
(取材者)マコト君昨日何で来たの?新幹線です。
新幹線と特急電車乗ってきました。
(取材者)それ手錠つきだった?はい。
すごい恥ずかしかったです。
(取材者)あっそうだよね。
見られた?やっぱり。
すごいはい。
(取材者)袋はかぶせてもらった?ジャンバー着てジャンバーの中で閉じて後ろでひも縛るんですけど後ろからひもが丸見えなんで。
携帯電話を渡され真っ先にかけたのは…。
もしもし。
はい?帰ったよ。
うん。
近田さんと渋谷さんって人と。
ほうほうほうほう。
そうかそうかそうか。
ああそうかそうか。
よかったよかった。
ちゃんと保護観察所行くんよ。
うん。
住む場所と最低限の家財道具はNPOが用意してくれました。
これこういう事ですか?おっいいね。
そのとおりだ。
あっはい。
一合二合三合ってやって…知り合いが誰もいない土地で更生を目指すマコト。
まだ16歳です。
やっぱまあ…結構いろいろ。
何か…。
(取材者)何か…何?マコトには新しい生活を始める前にやっておきたい事がありました。
それはばっちゃんに会いに行く事です。
当面の生活資金として親からもらっていた5万円。
散髪をし深夜バスのチケットを買いました。
おらん。
上から歩いたけどおらん。
えらかったえらかった。
伊集院さんにも言わにゃ。
心配かけましたって。
(母)どんなに人に迷惑かけとるか分かっとる?同じ事言われたよね。
(母)いい加減にしっかりせえや!言う事ないん!?ごめんなさいは?お母さんごめんなさいって。
(アナウンス)「間もなく広島駅南口に到着を致します。
こちらで降りられるお客様下車の準備をよろしくお願い致します」。
早朝マコトは広島に着きました。
一方ばっちゃんは料理を作っていました。
この日ばかりはマコトのためだけに。
(ノック)はいはい。
はいはいはいはい。
お土産。
田村のばっちゃんと。
はいはいはいはい。
ええ男になったのう。
ばっちゃんが作っていたのはマコトが小さい頃から好きだった親子丼です。
(取材者)どう?マコト。
のうマコト。
しんどい?ごはんを食べながらマコトはばっちゃんにいろいろと注意されました。
昔と変わらず本当にこまごまと。
1年ぶりの広島の街でマコトは多くの友人に会いました。
おなかがすくとばっちゃんとごはんを食べ語りました。
(取材者)少年院でさ面会室で会うのとさばっちゃんちで会うのとは違うじゃろ?はい。
だいぶ違いますね。
(取材者)どんな感じで?どんな感じって言われたら…。
(取材者)ばっちゃんち行って?マコトの同級生は高校2年生。
皆楽しそうに学生生活を送っていました。
一方知らない土地で一人で暮らす事になったマコト。
仕事を探すのだけでも容易ではありません。
居場所のなさが子どもたちを非行に走らせ立ち直りの可能性さえも奪ってしまう。
ばっちゃんはここ数年家にやって来る子どもたちと地域住民とが交流する取り組みにも力を入れています。
一緒にごはんを食べ顔なじみになる事で地域が子どもの居場所の一つになれないか模索しているのです。
会には子どもたちの親も呼んでいます。
この母親は3人の息子がばっちゃんの家に通っていました。
この日ばっちゃんは少年院にいる女性の息子から届いた手紙を渡しました。
そこには漢字も多く使われ周囲への感謝の気持ちがつづられていました。
自分が知らない息子の成長が手紙の中にあふれていました。
親自身が家庭のぬくもりを知らずに育っている事も少なくありません。
どうしていいか分からない親にばっちゃんは何度も語りかけます。
今夜寝る所がないという少女から電話がかかってきました。
(取材者)中本さん何だって?
(ノック)おはようございます。
おはよう。
次の日電話をしてきた少女がばっちゃんの家にやって来ました。
中本さ〜ん。
何がどうなっちょるやらや。
この少女は家族に暴力を振るったため家にいる事ができなくなりました。
住み込みの仕事を始めましたが続けられなくなったといいます。
住む場所をなくした少女。
親の同意が得られないため自分でアパートを借りる事もできません。
親への暴力は全く自分に関わろうとしない事への怒りだったといいます。
中本さ〜ん。
ん?はい?中本さ〜ん。
ん?何でもない。
少々お待ち下さい。
はいはいはい何でしょう?何にもない。
ただ呼んだだけ。
食べたよ。
何かええ話になったの?あっそうなん。
そんな大した話してないよ。
うち中本さん好きよって言っといた。
アハハハハ!ほうじゃと。
ありがたい事じゃね好かれてね。
まあまあ…はあはあそういう結論になった訳?今言った訳よ。
いい相手がおったらね。
子どもにねベビドの服着せるんだ。
ベビードールっていう…。
何ね?それ。
分かる?ベビードールって知らん?っていうね服屋がある。
ブランドなのかなぁ。
ソレイユとか行きゃあるよベビードール。
それを着せるん?子どもの服はある。
かわいいんじゃけ!そんなのを着せて連れて歩くのが夢?うん。
まあなんとたわいもない事ですね。
で子どもが履くキュッキュいう靴あるじゃない。
あれ履かすんだ。
心の居場所を求めてもがき続ける子どもたち。
その声に私たちはどれほど気付けているのでしょうか。
敬老の日にばっちゃんの家を訪ねると子どもたちからたくさんの贈り物が届いていました。
まあこれは…。
見てみんさいな。
御年82。
最近は仲間も増え寄付も寄せられているというもののなぜ続けられるのか。
そんな疑問をどうしても抱いてしまいます。
言うんよ私ね。
「どう言うん?」言うて言うけん…ここから巣立っていった子どもは300人を超えます。
よっしゃ。
かつて暴走族のリーダーだった少年から最近連絡がありました。
長男の就職が決まり次男は専門学校に入学したとの事。
薬物に手を出していた女の子は母となり最近息子が結婚したと報告してきたそうです。
少年院を出てから5か月。
マコトを訪ねてみると働き始めていました。
勤め先は近所の居酒屋です。
開店前の掃除や仕込みそして接客。
お酒の種類やメニューなど覚える事もたくさんあります。
でも目標が出来ました。
ありがとうございます。
ごちそうさま。
うまくいかない事や壁にぶつかる事もたくさんあります。
それでも自分の人生を歩み始めていました。
1人暮らしにもだいぶ慣れました。
ただ一つ離れてみてばっちゃんの存在の大きさを改めて感じています。
なぜ続けられるのか?繰り返し尋ねる私たちにばっちゃんはある日こう言いました。
「子どもから面と向かって助けてと言われた事がない人には分からないんじゃないの」と。
はいよどうぞどうぞ。
ちゃんと食べるものを食べて。
ほいじゃ一応3時半ね。
はいはいよしよし。
ほいじゃね。
はいよ。
2017/01/07(土) 21:00〜21:50
NHK総合1・神戸
NHKスペシャル「ばっちゃん〜子どもたちが立ち直る居場所〜」[字]

非行に走る子どもたちは、みな腹をすかせている。30年以上にわたり手料理を振る舞うなどしてその立ち直りに寄り添ってきた“ばっちゃん”こと中本忠子さんのドキュメント

詳細情報
番組内容
社会に居場所を失い、非行に走る子どもたち。そんな少年や少女に寄り添い、30年以上、その立ち直りを支えてきた女性がいる。“ばっちゃん”こと、元保護司の中本忠子(ちかこ)さん82歳。長年の経験から「非行の根っこには空腹がある」と確信した中本さんは、広島市内にある自宅を開放し、手料理を振る舞い、親身になって相談にのりながら、多くの子どもたちを更正させてきた。そんな中本さんと子どもたちの8年間の記録。
出演者
【語り】伊東敏恵