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セリフ書き起こし おんな城主 直虎(1)「井伊谷の少女」 2017.01.08

静岡県西部遠江のくに。
うなぎで有名な浜名湖の少し北。
そこに井伊谷という小さな谷あいの地がござる。
井伊谷はその名のとおりいにしえより井伊という一族によって守られてきた土地。
じゃがしかし戦国の世駿河の名門今川氏がこの地に手を伸ばしてきての。
井伊の者はそれは長きにわたり戦うたものの時代の流れにはあらがえず。
井伊谷はとうとう今川の治めるところとなってしもうた。
その無念いまだ冷めやらぬ頃井伊家に一人の姫が生まれたのじゃ。
逃げろ!こっちだ!
(鶴丸)待て〜!逃げろ〜!
(鶴丸)待て〜!おおこれこれ!この子がその井伊家の姫とわ。
・うわあ!・
(鶴丸)捕まえた!
(おとわ)うわっ…。
これなる鬼の子は鶴丸。

 

 

 

 

 


(鶴丸)うわあ!どうした鶴。
足をくじいたのか?かかったな。
おとわ。
あっ。
そして亀之丞。
(笛の音)
(亀之丞)鶴!こっちだ!こっちにもおるぞ!ああっ!ひきょうだぞ鶴!おとわ覚悟!うわあ〜!うわあ〜!うわあ〜!
(水しぶきの音)時は戦国。
群雄が割拠し戦や略奪が繰り返された混乱の世。
その流れに果敢にも飛び込んだ女子がおった。
彼女が辛くも守りきった井伊家はその後260年にわたり江戸幕府の屋台骨を支える事になったのじゃ。
(いななき)勇ましい男名で男たちと渡り合ったその女は…。
井伊直虎という。
いざ!
(たけ)ほかに手がないからといってあ〜んな所に飛び込むなど。
正気の沙汰ではございませぬ。
捕まらなかったではないか。
これ以上むちゃをされますとたけの首が飛んでしまいます。
ああおなかすいた〜!
(たけ)お待ち下さい。
(井伊直満)何!?今川から婿じゃと?井伊の家督は井伊の男子が継ぐ。
それの何が不服じゃと申す。
(小野政直)それがしは不服とは申してはおりませぬ。
なれど武家の婚儀は調略の場。
今川の家臣より養子をお迎えすれば太守様の大覚えめでたくなりましょうと申しておるのでございます。
今川からは既に殿がお方様をお迎えしておる。
更にお目付けとしてその兄君の新野殿まで。
まで。
(井伊直盛)叔父上。
新野殿は今や井伊にはなくてはならぬ方。
わしはもう今川の機嫌取りは十分じゃと申しておるのだ。
のう皆!
(中野直由)おおっ!井伊家が今川の軍門に下ってからまだ日も浅くゆえに今川の支配を歯がゆく思う者がほとんどで。
小野和泉守のみが今川びいきなのでござった。
父上!父上!父上!
(直盛)おとわ!父上野駆けに出られるのですか?いや…何じゃそのいでたちは。
とわもお連れ下され。
弥吉。
我の馬を。
おとわ。
(たけ)姫様お風邪を召されます。
風邪などひいた事はな〜い。
姫様お召し替えを。

(たけ)私が至らぬばかりに。
姫様は日に日にやんちゃになっていくばかりで。
(千賀)お前のせいではありませんよ。
男子がおらぬからといって男子のように育ててしまった殿が悪いのです。
(たけ)お方様。
まあそれもこれも今のうちです。
今のうち?いくら男のまねをしたところでいずれ女子は女子の道を歩まねばなりませぬから。
お〜い!お〜い!
(直盛)おとわは疲れぬのか?何の!できれば一日中でも馬に乗っていとうございます。
ハハハハッ。
お前が男であったらばのう。
男であったらば面倒な事も起こらぬものを。
面倒な事…とは?いっそおとわが継ぐかわしの跡を。
えっ?我はずっとそのつもりなのですが。
違うのですか?ハハハハハッ…そうかそうであったか。
ではそうするか。
はい!よしではそろそろ戻るか。
はい!あれ?飼い葉…。
(直盛)どうしたのじゃ?誰かが飼い葉を置いてくれたのでしょうか?はてのう?どうした?いえ何でもありませぬ。
姫様…。
ここは龍潭寺。
井伊家の菩提が弔われている大事なお寺じゃ。
(昊天)「花枝自短長」。
(2人)「春色無高下…」。
遅れてすみませぬ!
(昊天)「応無処住而生其心」。
(鶴丸亀之丞)「応無処住而生其心」。
(昊天)「掬水月在手」。
(鶴丸亀之丞)「掬水月在手」。
すまぬ!昊天。
(たけ)遅くなりまして…。
(昊天)どうぞお座りを。
おはよう亀。
今日もかわいらしいの。
そういう言い方はやめてくれ。
(昊天)それではもう一度。
(とわ亀之丞鶴丸)「百尺竿頭進一歩」「春色無高下花枝自短長」。
では亀之丞という事に。
うむ。
直満叔父が押し切ったという事じゃ。
(直盛)心配か。
亀之丞は少し病がちにございますから…。
(鶴丸)見張られておる?おとわがか。
うむ!ひょっとしたら忍び…というやつではないじゃろうか。
姫を狙うての!
(鶴丸)何故見張られていると思ったのじゃ。
川の中で声が聞こえたりの知らぬうちに我の馬に飼い葉をやってくれたり。
(物音)まさか。
ほら。
ほら言うたであろ!和尚様。
また。
酒ではない。
これは米のとぎ汁じゃ。
お酒ではないですか。
しかもこれはこの井戸にお供えされたお酒ではないですか!実は今わしはの井伊のご初代様と語らっておったのじゃ。
はあ!?おぬしらはご初代共保公の事を何と聞いておる。
ある日この井戸の中に赤子が捨てられておりその子を一目見た神主が「これはただならぬ子」と拾って育てた。
その子が長じてこの井伊谷井伊家を開いた。
よう知っとるのう。
(南渓)じゃがのうその話にはちと解せぬところがあっての。
わしゃご初代様にその事をお尋ねしておったのじゃ。
どこが解せぬのですか?井戸の中に放り込まれては普通赤子は死んでしまう。
なのになぜご初代様は生きておられたのかつくづく不可思議じゃ。
で和尚様。
ご初代様は何故ご無事で。
あれ?
(鶴丸)煙に巻かれたようじゃの。
(石が落ちる音)何をしておるのじゃ。
かれておる。
かれ井戸…であったからではないか?赤子が生きておられたのは。
(鶴丸)なるほど。
あっ…井戸端に捨てられておったのを井戸の中という事にしたのかもしれぬな。
井戸端ではありがたみがないゆえ。
(亀之丞)おとわは?え?おとわはどう思…。
(鶴丸)亀?亀?亀?大丈夫か?しっかり。
亀?亀。
亀。
誰か!誰かあるか!誰か!
(今村藤七郎)おおこれは姫様。
何か?亀之丞様!亀之丞様!おい水を!おい小野の小童。
おぬしが亀之丞様に無理をさせたのか?藤七郎無理をさせたのは…。
亀之丞様がご丈夫でないのを知っていて無理をさせたのではないかと言うておるのじゃ!
(亀之丞)鶴は…鶴はここまでおぶうてきてくれたのじゃぞ!しかし…。
申し訳ございませんでした。
すまぬ亀。
昨日の鬼ごっこがたたったのであろ?断らなかった俺が悪いのじゃ。
しかし何故藤七郎はあのように鶴につらくあたるのかの。
鶴の父上は嫌われておるからな。
何故鶴の父上はそこまで嫌われておるのじゃ。
小野の家は隙あらば井伊を乗っ取るつもりなのじゃと父上は言うておられるがの。
乗っ取る!?・
(直満)亀之丞!おう亀之丞。
大事はないか。
父上面目ございませぬ。
そなたの母親は丈夫ではなかったからの。
しかし半分はわしの血が流れておる。
じきに強うなる。
ハハハハハッ!案ずるな。
ハハハハハッ!ところで姫はもう亀の女房役をやってくれておるのか。
こう見るとなかなか似合いの夫婦じゃのう。
ハハハハハッ…!何を言っておいでじゃ。
え?あ…まだ聞いておられぬか。
姫。
はい?亀之丞。
はい。
実は2人はな…夫婦約束をする事になったのじゃ!ハハハッ!ゆくゆくは2人は夫婦になるという事じゃ!ハハハハハッ…!夫婦ですか?
(直満)亀之丞は姫の婿となり井伊の当主となるという事じゃ!ハハハハハッ…!当主?あっ…何じゃ姫は喜んではくれぬのか?あ…いや…。
(直満)では何なのじゃ?少し驚いただけじゃ。
ハッ…ハハハ…。
回想いっそおとわが継ぐかわしの跡を。
はい!確かに言うたがそれはその…言葉のあやというか勢いというか。
頭を冷やして考えてみなされ。
そもそも女子一人で家を継げるわけがないでしょう。
しかし!ではとわはご領主様になりたかったのですか?父上の跡を継ぎ井伊の領主に。
あちらこちらに気苦労ばかり多いこの井伊のご領主様に。
う〜ん…。
そうじゃそうじゃ。
嫌な事も多いぞ。
胃の腑に穴の開くような事ばかりじゃ。
(千賀)それにどのみち同じ事だと思いませんか?同じ事?もし仮によしんばあなたがご領主様になったとしても誰かと夫婦になる事は変わりませぬ。
跡継ぎをもうけねばならぬのですからね。
それはそうですね。
ではよいではないですか。
亀之丞の妻という事で。
そうですね!確かにおっしゃるとおりでございます。
ではよいのじゃな。
はい!女子に二言はございませぬ!回想
(直満)亀之丞は姫の婿となり井伊の当主となるという事じゃ!やはり…頼りなかろうの。
俺では。

(山伏)さようでございますか。
無事夫婦約束が決まり。

(直満)うむ。
これで動きやすうなりまする。

(鶴丸の母)では井伊の姫は亀之丞様を婿にお迎えする事になったのでございますか。
(政直)ああ。
あやつはきっと何か勇み足を踏みよるぞ。
勇んで身を滅ぼさんとよいがの。
まことに心配でならんわ。
(山伏)では確かに。
よろしくお頼み申す。
うあっ!うあっ!うああっ!ううっ!うあっ!・おとわ様と亀様が。
・聞いたぞ。
夫婦になられるのじゃろ。
まあそうなるよなぁ。
おはよう。
亀もうよいのか。
うむ。
心配かけてすまなかった。
鶴。
その実はな。
聞いておる。
亀之丞様こたびはまことにおめでとうございます。
ありがとう。
(鶴丸)まだ具合よくないのか。
おとわがあまりうれしそうでなくてな。
俺とは夫婦になりたくないのかもしれぬ。

(たけ)また!足はハの字。
ああっまたお裾が。
いちいち気にしていたら歩けぬ!
(たけ)せっかく今日から女子らしいお姿になられましたのに!何じゃ〜。
我の愛らしさに口もきけぬか。
いや…。
何かが。
(笑い声)何じゃ!何がおかしい!仁王仁王様じゃ!失礼なやつじゃの。
女子に向かって。
亀まで笑う事はないではないか。
亀はその我の旦那様になるのじゃから。
おとわは嫌ではないのか?その俺のような頼りないのは。
頼りない?おとわ。
俺もっと強うなるから。
見ていてくれ。
では我はハの字で歩けるようになるから見ていてくれ!よし。
うわ〜っ!ああ〜っ!ああっ!ああっ!うわ〜っ!ああ〜っ!おお亀が張り切っとるのう。
張り切り過ぎて熱が出ねばよいのですが。
何じゃもう亭主の心配か。
当たり前ではないですか。
我は妻になるのですから。
ハハハハハッおとわ言うのう。
そうじゃ和尚様。
最近我の身の回りで不思議な事が起こっていての。
溺れた我を助けてくれたり知らぬうちに馬の飼い葉をやってくれたりするのじゃ。
我は忍びではないかと案じておるのですが。
おとわ…おとわ。
それは竜宮小僧というやつじゃ。
竜宮小僧。
竜宮小僧!竜宮小僧!竜宮小僧とはあれか?ああ忙しいやあ〜!猫の手も借りたいにぃ。
誰かおらんかいやぁ。
愚痴ばっか出さんと手ぇ動かしっせ。
(亀之丞)知らぬ間に田に苗を植えておいてくれたり洗濯物を取り込んでおいてくれたりするというあの竜宮小僧の事か。
そうじゃ!忍びかと思っていたのは竜宮小僧ではないかと和尚様がの!はあ?竜宮小僧が住んでいるのは確か淵じゃと聞いたぞ。
淵か!わしが駿府へ?とわ様と亀之丞様の夫婦約束の件をお知らせしたところご挨拶には直満殿も参られるようにとのご返事でござりました。
(直満)なぜ!なぜわしが駿府に行かねばならぬ!
(左馬助)まあ…亀之丞様のお父上としてと存じますが。
さような事か。
どうされました叔父上。
何でもない。
ただ驚いただけじゃ。
ほれわしは昔から悪たれであったろ。
呼ばれると叱られる気がしてしもうて。
ハハハハハハハハハハッ…!
(直満)今日はよく食うの。
よく動いたので腹が減ってしまいまして。
(直満)そうか。
しかし明日からわしもおらぬ事だし倒れるほどの無理はせぬようにの。
どこかへ行かれるのですか?駿府へ次なる井伊家当主の父として挨拶に参る事になっての。
そうなのですか。
何か土産に欲しいものはあるか?私よりもあのおとわに何か。
そうか姫にの!はい。
しかしあれは何なら喜ぶのじゃ。
鏡などでよいのか。
鏡…。
のう…。
父が何か見繕ってくるわ。
ハハハハハハハッ!こうして直満は新野左馬助と共に駿府へ向かったのじゃ。
竜宮小僧〜!竜宮小僧〜!竜宮小僧出てこ〜い!竜宮小僧〜!よしもう少し奥の方を見てみるか。
まだ奥へ行くのか?あ…疲れたか?何をこれしき。
(鶴丸)もうよいのではないですか。
おとわ様。
もう?探し始めてからもう5日じゃ。
そろそろ潮時であろうと言うておるのです。
まだ5日じゃ。
亀も疲れておるじゃろうしもうよいのではないか。
亀は平気だと言うたではないか。
のう?
(鶴丸)それはお前が言わせておるのじゃ。
それくらい分かれ。
ばか!ば〜!?お前が行くと言うたら亀は嫌と言えぬのじゃ!言うたらよい。
お前は姫じゃから周りの者は逆らえぬ!皆気を遣うておるのじゃ。
そういう事を少しは考えろと言うておるのじゃ!
(笛)見事じゃのう亀の笛は。
俺の取り柄はこれだけじゃからな。
大した取り柄じゃ。
我は果報者じゃ。

(物音)亀!鶴!ここは。
竜宮小僧がおってもおかしくはないな。
あっ!そうか!
(鶴丸)何じゃ?
(亀之丞)どうかしたのか?井戸の子は竜宮小僧であったのではないか?何をやぶから棒に。
竜宮小僧は淵に住んでおると聞く。
ならば竜宮小僧なら井戸の中に放り込まれても息ができたのではないか!ならばなぜその子孫であるおとわ様は水の中で息ができぬのじゃ。
それは…。
あっ…。
(鶴丸)何かおるか?竜宮小僧ではないか。
(とわ亀之丞鶴丸)あっ!気がかりは直満叔父上がその時気色ばまれた事で。
もしや…まこともしやの話ですが駿府に呼ばれると困るような事でもされていたのではないかと。
杞憂と思いつつなのですが。
・和尚様〜!和尚様!父上!あの…。
(読経)
(直盛)何をしておられるのですか?和尚様。
ちと妙な骸じゃと思うてな。
妙?野盗の仕業ならかような金めのものをそのままにしておく事はなかろう。
斬られたのは恨みか。
それともほかに何か欲しいものがあったか。
欲しいもの。
この者を見た覚えがあります。
(直盛)いつ?どこで?
(亀之丞)先日屋敷に来ていた者かと。
すまぬが先に帰るぞ。
何か父上と関わりがあるのじゃろうか。
着物が似ておるだけかもしれぬし。
そうじゃ!今日明日には直満叔父様も戻られよう。
聞いてみればよいのではないか。
そうじゃな。
(いななき)おっ!ちょうど戻られたのではありませんか。
(泣き声)
(泣き声)亀之丞。
(亀之丞)はい。
そなたの父は…身まかった。
身まかった…とは?謀反をたくらんだ廉で太守様に討たれたとの事じゃ。
謀反とは…?
(左馬助)太守様は北条に宛てた直満殿の密書を手にしておられました。
そこには今川と手を切り北条に加勢したいと書かれており…。
(家臣)この書状はそなたのものか。
(家臣)そなたのものか!え…あ…。
亀。
亀。
回想
(政直)あやつはきっと何か勇み足を踏みよるぞ。
回想
(政直)まことに心配でならんわ。
父上…。
父上…父上…父上…。
父上〜!父上〜!父上〜!父上〜!父上〜!父上〜!父上〜!父上〜!父上〜!父上〜!・
(政直)かしこまりました。
太守様の御意のままに。
戻ったなら戻ったと言え。
(鶴丸)亀之丞様のお父上が討たれたそうです。
そのようじゃな。
残念な事であった。
(鶴丸)何故ご存じなのですか?先ほど今川より使者が参ったからな。
何故今川から父上に使者が参るのですか!?当然であろう。
わしは井伊の家老なのであるから。

(弥吉)川名よりご隠居様がお着きになりました!
(直盛)じじ様夜分かたじけのう。
小野か?直満を売った外道は小野かと聞いておる!じじ様今は時がございませぬ。
実は太守様からは亀之丞様の首も差し出すようにと下知を受けております。
何!たった9つの子をか。
(左馬助)なれど親の謀反の罪が子に及ぶは武門の常。
お下知に従わねば取り潰しも免れませぬぞ。
どうするつもりじゃ。
どうするつもりじゃ!直盛!まさか…今川に従うつもりではあるまいの!亀。
食事をせぬかとたけが。
亀。
亀!亀!もうどこへ行ったのかと思ったぞ。
亀…。
どうせ長くは生きられぬような体じゃ。
放っておいてくれ!亀に何かあれば井伊はどうなるのじゃ!井伊の家督を継ぐのは亀しかおらぬじゃろ!それも俺でない方がよいではないか。
そうじゃろ?鶴のように頭がよいわけでもなくおとわのように体が動くわけでもなく。
俺などただ井伊の血を引いてるだけの…ただの出来損ないではないか!我の夫は出来損ないではない!誰よりも笛がうまく人を引き付ける笑顔を持ちなれど本当は人一倍負けん気でつらい時も決してつらいと言わぬ。
よい男じゃ。
もしこのまま体が強うならねば我が亀の手足となる。
亀の代わりに我が馬に乗り村々を回る。
いざとなれば太刀をはき戦にも行ってやる。
じゃからそんな事を言うな。
言うな。
おとわは俺の竜宮小僧になってくれるのか。
(物音)亀?おとわ逃げろ!
(傑山)和尚様これでよろしいので?気が付きましたか?亀は!父上がある所へ逃がしました。
逃がす?亀の首を差し出すようにと今川からお下知があったのです。
亀は亀は何もしておらぬでは…。
聞きなさい!今川からのお下知に背き亀を逃がした。
これは大変な事なのです。
わざと亀を逃がした事が今川に知られれば井伊は今川から攻め込まれ父上はもちろん私もあなたも打ち首になるかもしれません。
だから今聞いた事は全て忘れなさい。
ただある日突然幼なじみが姿を消してしまった。
知っているのはそれだけ。
亀は無事なのですか。
ここから先は運です。
運…。
亀之丞の首をと申しつけたはずじゃ!も…守り役が異変を察し隠してしまったようで。
も…申し訳ござりませぬ!まことか。
まことでござります。
まことに申し訳ござりませぬ!うぬらは亀之丞を捜せ!
(2人)はっ!井伊殿。
場合によっては相応の処分はお覚悟して頂く。
はっ。
ご初代様。
亀の無事を井伊の無事を…。
これは亀の…。
回想
(亀之丞)俺の取り柄はこれだけじゃからな。
(鶴丸)大した取り柄じゃ。

(笛)おらぬ!どこじゃ?どこに隠しおった?おらぬ!どこに隠された!さ…昨夜寺へ。
弔いを致したいと。
どけ!邪魔だ!直満の小童を出せ!さような者はおりませぬがお捜しになるのであればどうぞご随意に。
中じゃ!行け!
(一同)はっ。
何じゃこれは!
(傑山)ハハハハッ!小僧が油をこぼしまして。
奥じゃ!行け!行け早く!うまくいきますかな。
所詮はいとましのぎ。
これから先はみ仏のご加護を祈るしかあるまい。
いたぞ!待て!井伊亀之丞か!続く。
必ずおとわのもとに帰る!待っておる。
我が父が今川に密告したのじゃ。
その者の首をはねよ!へっ!?えっ!?
(千賀)ほかに手だてはないのです。
亀之丞様〜!答えは一つとは限らぬからの。
あっあっああっ…!とわは立派な次郎法師になります!
やがて10年の月日が流れ…
(南渓)形こそ女子であれあれは次郎。
我は竜宮小僧じゃからな。
どうしておるのかのう亀は…。
(直平)おとわ!ついにその時が来た!井伊亀之丞ただいま帰参致しました。
俺はおとわと一緒になるつもりじゃ。
お前のそういうところが好かぬ。
叔父上!
時を経て揺れ動く3人の絆
皆殺しにせよ!
群雄割拠の戦国。
井伊を支配する今川もまた運命の時を迎えていた
出陣じゃ〜!
翻弄される井伊の衆
はっ!
そしてついに…
我が井伊直虎である。
静岡県浜松市。
浜名湖が広がるこの辺りはかつて遠江と呼ばれた場所です。
湖の北に位置する井伊谷で井伊直虎は生まれました
井伊家が拠点とした井伊谷城。
里を一望できる高台に築かれていました
田園風景が広がるこの場所に井戸が残されています。
ここから井伊氏の初代井伊共保が生まれたという伝説が語り継がれています。
幕末には末えいの井伊直弼が訪れ歌を詠み先祖をしのびました
滋賀県彦根市近江と呼ばれたこの地も豊かな水の恩恵を受けた場所です。
時代を超え井伊氏は近江に根を下ろしました。
遠江から近江へと井伊谷の人々の魂は受け継がれたのです。
おんな城主直虎が未来へつないだ歴史はこの井伊谷から始まろうとしています
2017/01/08(日) 20:00〜21:00
NHK総合1・神戸
おんな城主 直虎(1)[新]「井伊谷の少女」[解][字][デ]

のちに井伊直虎(柴咲コウ)と名乗って戦国の世を生き抜くことになる少女・おとわ(新井美羽)。ある日、彼女のもとに幼なじみの亀之丞(藤本哉汰)との縁談話が舞い込む。

詳細情報
番組内容
のちに井伊直虎(柴咲コウ)と名乗って戦国の世を生き抜くことになる少女・おとわ(新井美羽)は、井伊家当主の父・直盛(杉本哲太)と母・千賀(財前直見)のもと幸せな日々を過ごしていた。ある日、おとわに亀之丞(藤本哉汰)との縁談話が舞い込む。当主の座を継ぐつもりだったおとわは最初戸惑うが、やがて当主の妻として井伊家を支えていこうと心に決める。そんな折、亀之丞の父・直満(宇梶剛士)に謀反の疑いがかけられる。
出演者
【出演】柴咲コウ,杉本哲太,財前直見,新井美羽,藤本哉汰,小林颯,吹越満,宇梶剛士,苅谷俊介,でんでん,筧利夫,市原隼人,小松和重,梅沢昌代,芹澤興人,蔵本康文,春風亭昇太,前田吟,小林薫
原作・脚本
【作】森下佳子
音楽
【音楽】菅野よう子