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書き起こし NHKスペシャル 巨龍中国「14億人の消費革命〜爆発的拡大!ネット通販〜」 2017.01.08

中国沿岸部のある村。
一日10万個以上の荷物が中国全土に配送されていた。
実は全てインターネット通販で注文された商品だ。
中国の人口14億のうち3人に1人が利用するインターネット通販。
スマートフォンの普及で爆発的に広がり市場規模は60兆円以上。
アメリカを抜いて世界一となった。
これまで消費とは縁遠かった農村の人々もネット通販で買い物をし始めた。
中国政府は今消費の中心だった都市部だけでなく農村も市場に取り込み中国14億人の消費を掘り起こそうとしている。
ネット通販の巨大市場には一獲千金の夢を抱き若者たちが群がる。
パソコン一台でチャイナドリームをつかもうとしているのだ。
しかし熾烈な競争の中で夢破れる者もいる。
農村や人々の欲望をのみ込み膨脹するネット通販市場。
中国14億人の消費革命を見つめた。

 

 

 

 


中国・浙江省。
ここに急成長するインターネット通販を象徴する村がある。
青岩劉村。
ネットで商品を販売するネットショップが集まって出来た村だ。
中国最大のネット通販サイトタオバオの名前を取ってタオバオ村と呼ばれている。
アパートの一室を訪ねた。
部屋は人と大量のTシャツでごった返していた。
去年3月からネットショップでTシャツを売っている。
江さんはネット通販サイトタオバオに出店している。
5億人が登録する独占的なシェアを誇るサイトだ。
内陸部の貧しい農村で生まれた江さん。
中学を卒業してから紡績工場で働いていた。
月給は8万円だった。
しかし子どもが生まれこのままでは豊かな暮らしは望めないとこの世界に飛び込んだ。
今では月の利益は最高400万円。
農村から集まってきた親族10人を養っている。
実は江さんのようなネットショップの成功に中国政府も注目している。
3年前この村を訪れた李克強首相。
ネット通販は今中国の経済を引っ張っていると語った。
その言葉どおり社長となった江さん。
たった4か月で一日500枚のTシャツを売り上げるようになった。
注文先を見るとある特徴が浮かび上がる。
内陸部やチベット自治区などの農村部の人々が商品を買っていた。
江さんの販売したTシャツを追った。
貴州省三座村。
平均年収が50万円に満たない最も貧しい地区の一つだ。
Tシャツを受け取ったのはこの村の工場で働く男性だった。
実は今こうした農村に暮らす人々が急速にネット通販を利用し始めているのだ。
中国政府は今ネット通販による農村の変革を強力に後押ししています。
これまで中国は安い人件費で大量生産を行い海外に輸出する事で発展してきました。
しかし人件費の高騰などで経済成長は鈍化。
そこで中国は国内の消費を活性化させる事に力を注ぎます。
輸出から内需拡大への構造転換を図っているのです。
その鍵を握るのが6億人ともいわれる農民です。
これまで農村は経済発展から取り残され消費とは縁遠い存在でした。
しかし最近収入は都会への出稼ぎなどで10年前の2倍に上昇。
政府はネット通販がこの眠れる購買力を目覚めさせ爆発的な消費を生み出す事を期待しているのです。
江西省象湾村。
経済発展から取り残され水道も十分に整備されていません。
若者は出稼ぎに出ており500人ほどの高齢者は自給自足で暮らしています。
店もなく買い物もできなかったこの村におととしネット通販の拠点が開設されました。
政府がネット通販企業と共同で設置した注文を代行する施設です。
今こうした施設が内陸部の農村を中心に全国で4万か所設置されています。
こうした試みによって農村のネット通販市場の規模は3年で6倍にまで膨れ上がりました。
同時に国は広大な国土の隅々にまで荷物を輸送するためインフラの整備も指示しました。
この8年で毎年10万キロ以上の道路が農村に新設されています。
これにより農村の消費環境は激変。
流行とは無縁だった人々も新商品を買えるようになったのです。
ネット通販の拠点が出来た農村の工場です。
注文した商品が届けられると更に新しい注文が入ります。
消費が欲望を刺激し更なる消費を生んでいます。
消費の中心だった沿岸部の都市だけでなく内陸部の農村まで市場に取り込む壮大な試み。
中国政府は今14億人の消費革命を推し進めているのです。
農村を取り込み膨れ上がるネット通販。
一獲千金を狙う若者が吸い寄せられている。
大学を卒業したが希望の職に就けず東北部の町からこの村にやって来た。
ふるさと黒龍江省では町を支えた石炭産業が衰退。
張さんは国が後押しするネット通販に将来をかけようと思ったのだ。
張さんはこの村で出会った2人の仲間と一緒に3か月前からネットショップを始めた。
ITを学びこの村での成功を目指している。
王斌さんは大学を出ても働き口が見つからずこの世界に飛び込んできた。
3人には憧れの人がいる。
ネット通販最大手のアリババを創業したジャック・マーだ。
ジャック・マーは大学を卒業するも30回も就職に失敗。
そこから中国を代表する成功者に上り詰めた。
アリババを僅か15年で時価総額25兆円の巨大企業に育て上げた男だ。
そのジャック・マーが作ったのが通販サイトタオバオだ。
タオバオには独自のシステムがある。
客が商品を注文すると代金は一旦ネット上に預けられる。
商品が届き客が納得した事が通知されると初めて支払いが行われる画期的なシステムだ。
これによってコピー商品が出回る中国で信用を確保。
タオバオは…ジャック・マーは7年前から巨大なイベントを始めている。
独身者が自分のために買い物をする日だったがネット通販で大バーゲンを行ったところ中国全土が爆買いするようになった。
今ではネットショップ1,000万店が参加し一日で1兆円以上を売り上げる国民的イベントになっている。
独身の日は張さんたちネットショップの経営者にとってまさに稼ぎ時。
商品が認知されればその後も売れ続けるようになる。
この日3人は独身の日に向け新商品の発掘に向かった。
村に隣接する卸売市場には170万種類の商品を扱う問屋が密集する。
この世界最大級の問屋街がネットショップを支えている。
3人が扱っているのは女性向けの小物。
女の子のイラストが描かれた財布に目を留めた。
農村部の中高生に人気が出るとにらんだ。
早速中高生の目に留まるように工夫しながらタオバオに出品する。
価格は仕入れ値の2倍の430円。
運送費は店が持つため利益は160円程度だ。
ほかの商品の売れ行きは一日50個程度。
月収は一人3万円しかない。
独身の日までに一日500個を売るのが目標だ。
中国政府は若者のネット通販への参入を強力に促しています。
背景にあるのが中国で続く深刻な就職難です。
今年も大学生の3人に1人は卒業までに職が見つかりませんでした。
1980年代中国は改革開放の波に乗り発展。
大学を出たエリートは将来を約束されていました。
しかし国の政策によって大学が急増。
2014年には大卒者が700万人を超え企業の求人が学生の伸びに追いつかなくなりました。
そうした中政府は急成長するネット通販市場に若者たちを誘導。
雇用の受け皿としました。
その結果今や265万人が従事する巨大産業となったのです。
卒業後も希望の職に就けずネット通販を始めた3人。
あの新商品の売り上げが出た。
それでも3人は成功を諦めていない。
農村出身でTシャツを販売していた…独身の日に向けある悩みに直面していた。
(問い合わせの音)パソコンから鳴り響く音。
正体は客からの問い合わせだ。
ネットショップは問い合わせにどう対応するかで客に評価される。
実はこの客による評価こそジャック・マーが作った優良店を選別するシステムだ。
タオバオで買い物した客は店を評価する。
いい評価はプラス1点悪い評価はマイナス1点の点数がつく。
タオバオのネットショップは点数によって20段階にランク分けされている。
評価を集めるとランクは上がっていく。
ちなみに江さんは1万点でほぼ真ん中にいる。
ランクが高い店ほど検索の上位に表示され客の目に留まりやすくなる。
ランクの最上位ともなれば独身の日には商品が爆発的に売れるのだ。
しかしこの話には裏がある。
客は抗議する一方で「もし金を支払えば見返りにいい評価をつける」と交渉してきた。
こうした金で評価を買う行為を…返現のため一日で1万6,000円も支払う事もある。
しかし独身の日まではランクを落とさないためにやめられない。
そんな中トラブルが発覚した。
6日前に注文された商品がまだ発送されていなかったのだ。
しかし続けて問題が起きた。
江さんは商品が入り次第送る事を伝えおわびに返現するよう指示した。
結局160円を支払いいい評価をつけてもらった。
午前1時。
(問い合わせの音)シャワーを浴びてすぐパソコンへ向かう。
(問い合わせの音)深夜まで問い合わせに対応する。
眠ったのは3時。
江さんはできるだけ評価を集め独身の日までにランクを上げたいと考えている。
一方財布を販売していた3人組は新たな問題に直面していた。
商品の返品だ。
実はこの返品も優良店を選別する仕組みと関係している。
タオバオではネットショップが商品を送っても客が納得しない場合には料金は客に返金される。
1週間以内なら返品は無料で郵送料も店が持つ事になっている。
返品が多いと評価も下がるため店にとって死活問題だ。
最近はひとつきに40個ほど返品される。
1個売っても200円前後しか利益が出ない彼らにとって大きな痛手だ。
3人は返品を防ぐため商品にメジャーや爪切りなどのおまけを付ける事にした。
僅かな利益を削ってサービスし評価を上げようとしたのだ。
中国にあるネットショップは1,000万店以上。
その中で生き残れるのは1割ともいわれている。
世界一のネット通販大国になった中国。
それは社会の構造にも変化をもたらしています。
アリババはネット通販で蓄えた5億人分のデータを使い新たなサービスに乗り出しています。
タオバオのシステムを応用し町の小さな店でも電子マネーで取り引きできるサービスを開始しました。
取引額は90兆円以上ともいわれています。
更にそうした取り引きで得られるビッグデータを活用し金融や交通の分野にも進出しようとしています。
中国政府はビッグデータなどの解析を行えるスーパーコンピューターを開発しました。
中国は消費革命の先を見据え動き出しているのです。
農村出身でTシャツを販売していた江さん。
新たな事態に直面していた。
夏の間一日500枚近く売れていたTシャツの売り上げが激減。
大量の在庫を抱えていたのだ。
独身の日まで1か月を切ったこの日商品の仕入れに向かった。
江さんはTシャツではなくジャケットやセーターなどの秋冬物を選んだ。
値段はTシャツの4倍。
しかし独身の日ならば売れると新商品にかける事にしたのだ。
商品を紹介するため男性モデルも用意した。
近くに住むいとこだ。
江さんは独身の日で売り上げ不振からの一発逆転をねらっていた。
一方財布を販売していた3人組には異変が起きていた。
一緒に起業した王さんが実家に帰ったきり戻ってこなくなったのだ。
しかし残された者にはやめられない理由があった。
方さんには2歳になる長男に加え8月には長女が生まれていた。
一人っ子政策が終わり授かった待望の娘。
2人の子どもを大学に行かせるためには金を稼がなければならない。
いよいよ独身の日まで2週間。
方さんの妻が2人を助けるために一緒に働く事になった。
生まれたばかりの子どもは600キロ離れた実家に預けてきた。
開店から5か月。
2人は蓄えを取り崩して暮らしてきた。
このままネット通販に将来をかけていいのか。
独身の日で決めようとしていた。
2人はこれまで売れた商品の中から4点に絞って大量に購入した。
5か月分の利益にあたる16万円をつぎ込む。
失敗したら後がない賭けに出た。
(問い合わせの音)村にはあの客からの問い合わせの音が鳴り響いていた。
(問い合わせの音)新商品で勝負をかけた江さんの店は…。
20種類以上そろえた秋冬物は見向きもされなかった。
問い合わせの音は鳴らない。
(問い合わせの音)一方張さんと方さん夫婦の店では…。
(問い合わせの音)開店以来初めて味わう盛況だ。
注文の4割は農村部の客だった。
結局注文は400個近く。
一日の売り上げは6か月分の収入に匹敵した。
独身の日の翌日江さんは友人の店を訪れた。
友人は昨日一日で2,000着近く販売していた。
江さんはネットがもたらす格差の大きさを痛感していた。
8か月間懸命に働いてきた江さん夫婦。
ネットに振り回される生活に疲れ果てていた。
一方独身の日で大きく売り上げた方さん夫婦。
2人はふるさとへ戻らず成功を目指し働き続ける事にした。
独身の日から1週間。
ネット通販の世界にまた新たな若者が飛び込んできた。
この村でネットショップを開こうとする20代の夫婦だ。
ネット通販によって解き放たれた欲望は今も膨脹を続けている。
農村を巻き込み更なる豊かさを求めて進む14億人の消費革命。
そこに必死に食らいつこうとする若者たちの格闘は今も続いている。
2017/01/08(日) 21:15〜22:05
NHK総合1・神戸
NHKスペシャル 巨龍中国「14億人の消費革命〜爆発的拡大!ネット通販〜」[字]

いま中国ではネットで商品を購入するネット通販が急成長している。農村にも広がり、市場は60兆円と世界一となった。14億人の消費革命と格闘する人々をみつめる。

詳細情報
番組内容
いま中国ではいまネットで商品を購入するネット通販が急成長している。店もない農村部にも急速に広がり、市場規模は60兆円。アメリカを抜き世界一となった。背景には、経済成長が鈍化する中、「モノを生産し海外に輸出する」ことから、「国内で消費し内需を拡大させる」という中国の構造転換がある。膨れ上がる市場には、若者が一攫千金を求め群がっている。番組では14億人の消費革命と、そこで格闘する人々をみつめる。
出演者
【語り】谷田歩,柴田祐規子