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字幕書き起こし 情熱大陸【徳山浩明/滋賀・余呉湖…世界の食通が驚嘆する発酵料理人の1年に密着】 2017.01.08

日本最古の保存食・鮓
伝統の味に更なる磨きをかける男がいる
去年暮れ
湖畔の料理宿は徹夜でお節作りに追われていた
主・徳山浩明の肩書は発酵料理人
限定100個ほどの重詰めに選び抜かれた土地の恵みばかりが丁寧な手間を経て収められてゆく
中でひときわ存在感を放っているのが千年を超える歴史を宿した…
滋賀県・余呉湖
琵琶湖の北に位置する小さな湖のほとりで料理人は発酵食品の鮒ずしを進化させてきた
奈良時代に生まれた調理法は各地の郷土料理に生きている
鮒ずしは琵琶湖周辺を代表する味といっていい

 

 

 


徳山のライフワークはその味に洗練を加えること
(スタッフ)伝統的な鮒ずしの作り方と徳山さんなりの作り方の違いみたいなのあるんですか?
(徳山)それはですね…うんあの〜いろいろありましてですね
極め付きの発酵食品だけに癖のあるにおいを敬遠する人は多い
だが徳山の鮒ずしにはなぜか臭みがなかった
あしらうソースは里山の蜜蜂が集めてきた蜂蜜
(女性客)へぇ〜!
お客は全国からやって来る
・今ちょっと寒くなってるのでやってないんですけどもおいしいあっフレッシュなのもこっちの熟成きいてるのも両方おいしいうん全然違うねというイメージがあったんが…
料理人の四季は巡り来る自然の営みと共にあった
ここでしか出せないひと皿のために
取材は芽吹きの季節に始まった
大丈夫ですか?
(スタッフ)はい…上行くんですか?そうですよ
鮒ずしの仕込みはまだ先だ
この時期は岐阜福井へと連なる険しい山々に分け入って毎朝山菜採りに夢中になる
よっしゃ採った?よっしゃ採ったOK…よっしゃよしゲット
山菜の女王ともいわれるコシアブラ
新芽は特有の香りと苦みを備えている
これぐらいがいいですね
謙虚でなければ自然を相手にはできない
別に逃げはしないけど…そうですね
屈指の名店と誰もが認める徳山の料理宿は山菜でも評判を取っていた
教えないんです
どこに行けば何が手に入るかは企業秘密
(スタッフ)それで分かります?ええ
次男・敬介さんがゼンマイの群生地を見つけてきた
おっ立派!いい感じやな5人でバ〜ッと行ったらパパッと採れるやろなぁ?採れる…採れんことはない採れる時に…よし行こう!よし決まり一気に採るぞ
昼の営業を終え朝発見したスポットに向かう
ところが…
あ〜帰ろうか
山菜ハンターが先に来ていた
もうさっきのあの軽トラが入っとる可能性がある本当にそれを教えるんですがねそうですねもう入ってるの分かってるんですからあっちいないですえっ?静かにやれしゃべるなしゃべるなって
どうやらゼンマイはまだ採られてはいなかったようだ
いっぱいあります
その日の収穫はその日のお客に
山菜の顔ぶれは毎日変わる
あく抜きをしたコシアブラはおひたしで
ジビエの生ハムやテリーヌももちろん自家製
山の緑が味と見た目を引き立てる
山菜の天ぷらはたっぷり10種類
わぁ〜!わぁ〜きれい!
(女性客)これ1枚では入らへんかったんよね
(女性客)天ぷら?何?これ
旬の山菜はできるだけシンプルに…
これが食べられるっていうのが本当に不思議うん!あぁこれ結構…う〜ん!おいしい
何から何まで土地の食材
その贅沢
徳山の料理に欠かせない花山椒で熊肉のしゃぶしゃぶはえもいわれぬ香りをまとい…
鯖の熟ずしにチーズを添えたところに発酵料理人の面目が躍如としている
鮒ずしの準備は夏の訪れを前に始まった
店の目の前に広がる余呉湖のあちこちにニゴロブナを取る仕掛けが沈めてある
あいにく外来魚ばかり
向こうかな本当にいつ来るんだおい鮒のニゴロ鮒おらん?うん鮒のニゴロええ頼んます
次男は間もなくフランスへ料理の修業に出るという
いずれは徳山の料理にフレンチのテイストも加わるのだろう
天然うなぎでも知られている余呉湖
昔ながらのうなぎ漁を後継ぎに教えることも父親の務めだった
街ではめったにお目にかかれない上物
ええ感じになってきた…いくぞ
(料理人)はいはいよ
春から秋にかけてはこのうなぎが看板料理の一つになる
肉厚の天然ものに山で摘んできた山椒の実
これはもう無敵に違いない
(男性客)いつもありがとうございますいえこちらこそありがとうございます
(男性客)今年もよろしくお願いしますこちらこそよろしくお願いします3人で写真…
いずれは長女と次男に店が託されることを常連客たちも知っていた
寒いですね
娘に弱いのは世の父親の常だろうか
あの〜あれ…どっちなん?ほんまにはっきりしてそっち着たらあっちって言うしこっち着るから
肝心の鮒がどうなったかといえば…
(スタッフ)これニゴロ?これニゴロですね
地元の漁師に頼んであったニゴロブナが徐々に集まり始めていた
鮒ずしには雌を使う
卵を傷つけないよう注意しながらエラや内臓を取り出していった
これは撮らないでくださいすいませんこれがね…
発酵中に臭みの元になる内臓などを完璧に取り除くところが勝負らしい
どの角度で入れたら…腸の中でも一番引っ張ってくる腸があるんですよそれを引っ掛けるただ単に入れて抜いてるわけじゃないんですね
卵だけをきれいに残すのがポイントだった
塩をまぶすのは余分な水分を出し発酵を促すため
おなかの中に塩が回るように
こうして塩漬けにするまでが鮒ずし作りの最初の工程
この状態でおよそ4か月
梅雨が明けるまで待つ
徳山は1960年滋賀に生まれた
高校を卒業後京都の料亭で6年修業して地元に戻る
腕を生かす場が見つからずにいた頃発酵学者・小泉武夫と出会った
勧められたのが地元に伝わる鮒ずし作り
「ほんでもって他人に使われてるんじゃなくて自分でやれっつって」「だけど発酵の時代だから21世紀は」「そうですねもうそれに懸けて」
店を構えて13年になる
鮒ずし作りの第2工程が迫ってきた
発酵と向き合う徳山は職人にありがちな精神論とは無縁のようだ
いや…やはり早く覚えたほうがいいしなぁ?はいこのぐらい…合わせろすいません
気持ちよく晴れた朝
塩漬けにしてあった鮒を取り出し水で洗って天日干しにかかった
半日ほど日の光にさらしたあと鮒の体に炊いた米を詰める
桶の中に鮒と飯とを交互に漬け込んでいく本漬け
千年以上前から伝わる知恵でひたすら発酵を待つ
桶の数40数個
琵琶湖周辺では今も自家製の鮒ずしを作る家が多い
だが徳山はプロだ
それからごはん詰めていきます
(スタッフ)秘密が多すぎませんかちょっとハハハハ…
(スタッフ)ちょっとぐらい教えてもらってもいいかなと…
試行錯誤の末にたどりついたあるものが鮒ずし独特の臭みや酸味を消すらしい
最初はこうですまぁ何せ…ハハハハ…
何かを加え何かを引いては毎年実験の繰り返し
桶は厳密に温度管理された蔵で冬まで寝かせる
やがて発酵が始まるとさまざまな乳酸菌やうまみ成分のアミノ酸が息づいてくる
余呉湖の周囲は燃えるような色彩にあふれる
ものみな色づく季節を迎えると今度はきのこ狩りに精を出した
山は一年を通して食材に事欠かない
足元に見つけたのは…
あっそこ
つい没頭して道に迷うこともある
この木を目印に…その目印と右か左に行くのかまずその場所とこう点を線で結んでこちら側を見たら次そこに戻ってこちら側を見たり
ハタケシメジはツキノワグマの肉で取った出汁で
「においマツタケ味シメジ」とよく言われるが徳山のきのこ鍋は山野に潜む生き物だけが持つ豊じょうの味がする
琵琶湖の鱒で作ったパテに添えるのはカンゾウタケ
その発想は斬新だ
アカヤマドリタケという珍しいきのこを種に鮓も握った
夜も明けきらぬ時間帯食材となるカモの猟につきあった
土地を知り尽くす男たちの存在が徳山の料理を支えている
日の出の瞬間が狙い目
(銃声)
(銃声)
残念ながら撃ち損じた
だが猟師は期待を裏切らなかった
うわ〜!捕ってきたん?探したん?探したうわ〜まぁすごいな!うわっごっつ真ん丸と太ってるやんけおいう〜わっ
マガモの雄と雌
妻の純子さんものぞきに来る
本当にごめんきれいでしょう?羽がね
カモに加えジビエ料理の白眉はツキノワグマのしゃぶしゃぶ
(男性客)この脂のきれいさね
(女性客)すさまじいですね
どんぐりをたらふく食べた熊は脂に全く臭みがなかった
うん!最高!最高!うん
そして…
ようやく鮒ずしは完成を迎える
何年繰り返しても味を自在にコントロールすることはできない
桶の中で発酵を続けた鮒は果たしてこの冬どう化けたのか
いよいよ出来上がった鮒ずしを桶から取り出す
酸味の
おもしを外し蓋を取ると発酵した米はクリーム色に溶けていた
徳山の顔はいつになく緊張している
納得のいく味に仕上がったかどうかは口にするまで分からない
お母さん…お〜!上がりましたかいや〜どんなやろね?あっいい香りうん!うんいい感じいい感じ?あぁよかったハハハハハよかったいい感じ本当にいい感じちょうどいい具合だねこれそうか
今年の味は今年しか出せない味
新しい年はまた更なるここの自然のね恵みを頂いてそれで料理に挑戦していきますよはい
2017年の鮒ずしをどう作るか
思いはもう発酵を始めている
パリを魅了した新しい書の世界
2017/01/08(日) 23:15〜23:45
MBS毎日放送
情熱大陸【徳山浩明/滋賀・余呉湖…世界の食通が驚嘆する発酵料理人の1年に密着】[字]

発酵料理人/徳山浩明▽日本古来の鮨の原点“熟鮓(なれずし)”—旨味と保存を兼ね備えた“発酵”と言う奇跡の技。里山の隠れ宿に息づく美味珍味の担い手を全編4K映像で

詳細情報
番組内容
滋賀県湖北の小さな湖、余呉湖のほとりに数ヶ月先まで予約が入る隠れ家料理宿「徳山鮓」。亭主・徳山浩明は熟鮓(なれずし)を始め、千年以上前からこの土地に伝わる食文化を忠実に受け継ぎつつも全く新しい現代の熟成発酵ワールドを切り開いてきた。里山の春夏秋冬の恵みと共に生きる徳山を1年間にわたって長期密着。旨味と保存を兼ね備えた“発酵”と言う奇跡の技と、失われつつある日本の原風景を美しい4K映像で追い続けた。
プロフィール
【発酵料理人/徳山浩明】
1960年滋賀県生まれ。余呉湖で漁師と民宿を営む家族に生まれる。京都の料亭で修業後、発酵学の権威とされる小泉武夫東京農大教授(当時)から「近江の食文化を支える熟鮓と湖周辺の食材にこだわった料理を出す店をつくってほしい」と言われ、2004年「徳山鮓」を開店、以来日本の発酵文化の担い手として、発酵料理人として活躍の場を広げている。娘と息子も現在料理人の道を目指す、56歳。
制作
【製作著作】MBS(毎日放送)
【制作協力】セピック