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字幕書き起こし クローズアップ現代+「“この世界の片隅に”時代を超える平和への祈り」 2017.01.12

女優の、のんさんが主演したアニメ映画が多くの人々の心を揺さぶり異例のヒットを続けています。
「うちは、ただでさえぼーっとしとるもんで」
原爆投下に至る戦時下の広島を描いた映画「この世界の片隅に」。
日常を慈しむように生きる主人公たちの姿が戦争の時代を遠い世界と感じていた若者の心を捉えたのです。
おととい発表された邦画ベスト・テン。
映画は「シン・ゴジラ」「君の名は。
」などの話題作を抑えて1位に。
「この世界の片隅に」。

 

 

 


時代や世代を越えて広がる新たな平和への祈りです。
異例のヒットを続ける映画「この世界の片隅に」はこれまでにない形で共感の輪が広がっていきました。
原作漫画にほれ込んだ監督が映画を企画したのは6年前。
資金ゼロからのスタートでした。
しかし、映画化に賛同した多くの一般の人々が制作費を出資したことで軌道に乗り映画はようやく完成しました。
大がかりなプロモーションもありませんでしたがSNSなどを通じて評判が幾重にも広がり動員数は100万人に達しようとしています。
アニメ作品がキネマ旬報ベスト・テン第1位を獲得したのは「となりのトトロ」以来実に28年ぶりという快挙でした。
♪「悲しくてやりきれない」
「きょうはまたようけおってじゃねえ」
「大和が2つおる」
映画は70年以上前の広島が舞台です。
東洋一の軍港といわれた呉に嫁いだ主人公、すず。
戦争が暮らしに影を落としていく中日々、小さな喜びを見いだしながら日常を懸命に生きています。
すずたちが直面する激しい空襲や原爆投下。
しかし映画は、厳しい戦時下でも人間性を失わない人々の等身大の姿を描き出していきます。
戦後日本の漫画・アニメ界をけん引してきたちばてつやさんです。
戦争を描いたこれまでの作品とまったく違う表現方法を獲得していると感じたといいます。
映画の原作は、広島出身のこうの史代さんの漫画です。
こうのさんは、以前から戦争の悲劇が死者の数だけではかられがちなことに違和感を抱いてきました。
戦時下に確かにあったはずの人々の生のきらめきや悲しみを作品に込めたかったといいます。
映画を監督した片渕須直さんは時代考証をさらに重ね原作の世界にさらなるリアリティーを加えていきました。
70年前の毎日の天気から店の品ぞろえの変化。
空襲警報の発令時刻に至るまですべて調べ上げました。
「いわしの干物4匹で一家4人の3食分」
この作品を特徴づけるのは繰り返し描かれる食事のシーン。
「食料増量の法。
まず、米をよーくいる」
空腹を紛らわすため玄米に多くの水分を吸わせるなどしてかさ増しした楠公飯と呼ばれる料理。
「ほお、けさはえろうごはんが多いのう。
飯粒が膨らんどる」
片渕さんは実際に料理を作り、味を確かめ作品に投影させていきました。
徹底した時代考証によって生き生きと表現される戦時下の暮らし。
「は…配給の50倍以上?」
そうした豊かな日常を突然断ち切る戦争。
映画を見た人々はその事実の重さを突きつけられるのです。
お願いします。
主人公、すずを演じたのんさんは、登場人物一人一人がたまらなくいとおしいと語ります。
「きょうにかぎってほげた靴下履いとってんですか」
「すずさんが繕うたんは足が入らんことなっとったんじゃ」
「ほかのもあろう」
「お2人さん、そりゃあ今せにゃいかん、けんかかね?」
時代は違ってもそこにある人々の喜びや悲しみ。
のんさんは、戦争の時代と自分の生きる時代を重ねて考えるようになったといいます。
そして、映画は戦争の深い傷痕から人々が日常を取り戻していく姿で締めくくられます。
「う、う、う、うまあ!」
大林さんは、映画のパンフレットに寄稿もされていて、普通の暮らしの中に、普遍的な宝があると書いていらっしゃいますが、この反響の広がりを、どのようにご覧になりますか?
今のVTRでも確認したんですけれども、本当20代、30代、40代、いろんな方たちが、さまざまな視点から言ってるんだけれども、でも自分から地続きであるとか、70年ちょっと前のお話なのに、そんなに昔のことに感じられないとか、本当にみんなが他人事じゃなくって、この映画を自分事として、すごく見られたんだなというものを、すごくまずは一番、大きく感じたところです。
あとやっぱり、監督もおっしゃってましたけれども、片隅の、そのさらに片隅のっていうのが、本当にアプローチを変えるだけで、物語のですね、こんなにまだ、やれることがたくさんあったんだなっていう発見が、やはり皆さんにも伝わったんじゃないだろうかって思うんですね。
というのは、例えば今、映画って例えば実写ではあるけれども、CGとかいろんな合成で、どんどんリアルに、リアルになって、銃声であるとか、撃たれた感触であるとか、血の吹き方であるとかって、とてもリアル、その場に自分がいるようなことだけれども、そちらから描くのではなく、その中心を描くのではなく、周りに、片隅の片隅にいる人たちを丁寧に描くことで、どんどん循環していくというか、つながっていった中で、中心が見えてくるっていう、このやり方が、本当にすばらしかったし、皆さんの、なんだろう、腑に落ちたといいますか、っていう共感につながったんじゃないかなって、すごく思います。
アニメのよさが出ていたということですね。
渋谷さんは、今もVTRにありましたが、そりゃ、今せにゃいけんけんかかねというせりふで出演されています。
台本を読んだ第一印象は、どのようなものでしたか?
もうちょっとせりふが欲しかったですけどね。
でもね、台本読んで、出来上がっていく途中に、あれ?これって淡々と普通の市井の人たちの生活を描いているだけじゃないかと。
その中に、いつのまにか戦争っていうものが、すーっと忍び寄ってくる、それはちょっと言い過ぎかな?薄い墨でかけられていくように、体に戦争が踏み込んでいく。
だから日常って、さっきのVTRでもたくさん使われてたんですけど、これが何か、戦争が襲ってくるときのことなんじゃなかった、日常にすでに入り込んでいくんじゃないんだろうかっていう、そんな怖さがありましたね。
描かれている日常の中に感じるというものですけれども、この作品は大林さん、もんぺの作り方でしたり、雑草を使ったレシピといった、徹底した時代考証に裏付けされることによって、当時の暮らしを肌感覚で伝わってくるというものがありますよね。
本当に肌感覚って、まさにそういうふうに思いまして、映画を見たあとに、すぐ外に出て、思わず草とか見ちゃうんですね。
自分で、あっ、これはなんていう草の名前なんだ、すずさんじゃないけど、これはナズナかしら、これ、カタバミかしら?これ、食べられるのかしら?って、なんかこう、皮膚感覚とかで見てしまったりとか、確かに食事のシーンがすごくいっぱい出てきて、私たちって本当、生まれてから死ぬまで、全員が共通していることって、どんなに職業が違っても、食べることっていうのが全部共通してる、われわれ人間が生きていくことで共通していくことということを考えると、本当に根源的なことにすごく立ち返るし、今よりきっと物はない、食材はないし、調味料もないけれども、すごく工夫されてることが、映画の中から時代考証を経て、すごくリアルに感じられたので、自然を慈しむ感情とかも、映画を見たことによって、またふつふつと湧き上がってきました。
日常の喜怒哀楽が渋谷さん、描かれながらも、主人公は空襲や原爆で家族を亡くすなど、戦争で多くを奪われます。
日常が描かれているからこそ、その重みを感じたんですけれども、いかがですか?
結局、普遍的なものをこの映画は描いていると思うんですよ。
私が今、在籍しております松竹新喜劇っていうお芝居なんですけれども、喜劇なんですけども、いわゆる普遍的な人間の営みの中での笑いだとか、涙とかいうのを、私たちは演じてるわけなんですけれども、それとおんなじように、今のこの現代が、そのまま、時代劇っていうんですかね、みんなが紛争して、なんかいつのまにか戦争にすーっと巻き込まれていった。
っていうのがなんか、この映画を見たときの感触ではありましたね。
その慣れていくというような感覚を含めての怖さ。
普通の人が戦争に行って、普通の人が普通の生活をしていく。
いかにも、はい、今から戦争が始まりますよじゃなくて、何かしら、こう、すーっと入っていく。
それがこのおもしろい映画の、失礼な言い方ですけど、おもしろい映画の裏にあるとっても怖いところが描かれていると思いますよね。
このパンフレットをご覧いただきたいんですけれども、映画のエンドロールにも流れますが、映画に出資した7000人の方の一部が紹介されています。
映画に寄せる人々の思いです。
映画「この世界の片隅に」は一般の人々が制作に参加するこれまでにない方法で制作されました。
インターネットを通じて一般の人から小口の制作資金を募る、クラウドファンディング。
原作に心を打たれた人や、作品の舞台となった広島の人たちなどこれまでに7000人が出資。
その額は7000万円を超えています。
この出資がなければ、作品は生まれなかったといいます。
映画に1万800円出資した塗本悟史さんです。
祖母の戦争体験を後世に残したいと呼びかけに応じました。
塗本さんの祖母の夙子さんは映画の舞台となった呉で戦争を体験しました。
生前、当時の話をよく聞かせてくれたといいます。
2000人もの市民の命が奪われた呉への空襲。
祖母も友人を亡くしました。
映画を見て初めて、祖母が戦時下を行き抜いたことの重さを感じたという塗本さん。
将来、この映画を通じて祖母の体験を1歳の娘につなぐことができると考えています。
「なんじゃ、あの雲は」
「雲?」
映画の舞台となった広島。
原爆の記憶の風化に直面するこの街の人々にも映画は大きなインパクトを与えています。
新井さんの体にずーんというものすごい衝撃を新井さんは感じたんだそうです。
原爆資料館で被爆者の体験を語り継ぐ活動をしている渡部公友さん。
被爆者が次々にこの世を去り危機感を抱いてきました。
映画は世代を越えて伝えることの可能性を示してくれたと感じています。
映画が、戦争を知らない若い世代の心を深く捉えたことに驚かされたという人もいます。
被爆二世の友川千寿美さんです。
友川さんは、原爆の実態を若い世代に伝えるためにドキュメンタリーフィルムの上映に力を入れてきました。
「皆さん、どうか終わりまで目をそらさないでください」
しかし、原爆の被害を直接訴える映像は敬遠されこうした映画の上映の機会もほとんどなくなりました。
戦争がもたらした過酷な現実をどうすれば次の世代に伝えることができるのか。
友川さんが作品の中で強く印象に残ったというシーンがあります。
「ほんまぼーっとしとるもんじゃけ」
絵を描くのが好きな主人公、すず。
「あれが大和。
こっちが…」
たまたま戦艦のスケッチをしていたすずはある日、スパイの疑いで憲兵に捕まります。
「け…憲兵さん」
すずのぼんやりした人柄を知る家族は憲兵が去ったあと、大笑いしていつもの日常に戻るのです。
戦時下の日常に光を当てた「この世界の片隅に」。
そのメッセージが時代を越え人々の心を打ち抜いています。
大林さん、ネット上には、自分もクラウドファンディングに参加したかったという声が多いんですけれども、本来は受け手の人たちが、能動的に映画に関わるというところに新しさを感じるんですが、いかがですか?
まさしく本当に、皆さんが一人一人でできることはもしかしたら小さなことかもしれないけども、でもこの小さなことたちが、本当、片隅の小さな人たちが、自分の思いを、数じゃない、思いをどんどんどんどんできることが、広がって、寄せ集まっていくことで、これだけ広がったっていう、参加していくっていうことが、この映画の実現に結び付いたっていうのは、とても、いろんな映画だけではなく、いろんな私たちの生活に関しても、すごく希望につながったんじゃないか、すごく多様性があるなと今の声を、皆さんの聞いても思います。
戦争や震災など、大事なことをどう伝えていくのか、多くの人たちが、そこに可能性を感じているように思うんですけれども。
まさしくこれは、私、見ながら、終わらない映画だなってすごく思いました。
皆さんがこれからずっと語り継いでいくんだろうと。
そしてできれば、このまま70年、80年と語り継いで、これが古典になっていくぐらい、戦争がない日々が、笑ってみんながおいしくごはんを食べられる日々が、つつましく穏やかに進んでいったらいいなという思いで見ました。
映画への思い、今も広がり続けていると思うんですけれども、渋谷さんはそもそも、「この世界の片隅に」というタイトルに思いを致したということですね。
そうですよね、初めは監督もおっしゃってたように、そういうことだったんだろうけれども、僕が台本頂いたときに、今現在、この時間、この世界の片隅に、同じようなことが行われている、つまり今、どこかで戦争が行われてるっていう捉え方をさせていただいた題名でした。
そのことが、巡って、今、私たちができることはなんだろうかというところにかえっていきますよね。
番組にも50代の男性から、公園で元気に遊ぶ子どもたちがとてもいとおしく、輝いて見えるようになりました。
(拍手)人生という名のコント番組「LIFE!」で〜す!2017/01/12(木) 22:00〜22:25
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代+「“この世界の片隅に”時代を超える平和への祈り」[字]

異例のヒットを続けているアニメ映画「この世界の片隅に」。制作にあたって7千人の人々から、クラウドファンディングを通じ資金が寄せられた。映画に込められた思いとは。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】映画作家・料理家…大林千茱萸,喜劇俳優…渋谷天外,【キャスター】井上あさひ
出演者
【ゲスト】映画作家・料理家…大林千茱萸,喜劇俳優…渋谷天外,【キャスター】井上あさひ