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字幕書き起こし クローズクローズアップ現代+「最年少 vs 最年長〜“天才”少年棋士 鮮烈デビュー〜」 2017.01.16

史上最年少対最年長。
先月、かつてない将棋の一戦に大きな注目が集まりました。
激戦を制したのは中学2年生の藤井聡太四段。
14歳2か月でプロ昇進を果たし歴史を塗り替えた天才です。
史上最年少プロ棋士が生まれた秘密は何か。
脳科学者は、子どものころからの遊びやトレーニングに意外な鍵が隠されていると指摘します。
今夜は対戦相手となった現役最年長かつて天才少年と呼ばれた「ひふみん」こと加藤一二三九段が生出演。
天才が語る新たな天才誕生の物語です。
藤井聡太四段のプロデビュー戦3日前。

 

 

 


対戦相手の加藤一二三九段が取材に応えました。
加藤九段のプロ昇進は63年前のことです。
14歳7か月は当時の最年少記録。
神武以来
(じんむこのかた)の天才と呼ばれその後、数々のタイトルを獲得してきました。
おはようございます。
対局当日。
よろしくお願いします。
お願いします。
メディアも熱い視線を注ぐ中午前10時、対局が始まりました。
序盤、加藤九段は金と銀を王の前に並べて守る戦法矢倉囲いへと駒を進めます。
これに対して、藤井四段も矢倉囲いで応戦。
相矢倉と呼ばれる形になりました。
長年、加藤九段が最も得意としてきた相矢倉。
なんと、その全く同じ戦法で真っ向勝負を挑んだのです。
対局の様子をインターネットで見ていたもう一人の天才がいました。
これまで5人しかいない中学生プロデビューを果たした一人、羽生善治三冠です。
そして、対局開始から3時間が経過。
ここで藤井四段は意外な一手を指します。
50手目、8五歩。
これを指したのは加藤九段の攻撃が藤井四段の陣地に近づいていたときです。
守りに専念してもおかしくない場面で攻めの準備に貴重な一手を使ったのです。
プロの対局では僅か一手の指し間違いが命取りになりかねません。
観戦に来ていたプロ棋士たちも、この一手が藤井四段のピンチを招くと予想しました。
一方、藤井四段の考えは名棋士たちと異なりました。
終盤にさしかかったときのことでした。
加藤九段のペースで進む対局。
周囲の予想どおり藤井四段は激しく攻め込まれていきます。
しかし、その攻撃が緩んだ瞬間藤井四段の手が動きました。
84手目に打った「桂馬」。
あの8五歩の1つ前。
「歩」がなければ簡単に取られてしまう位置です。
この一手が加藤九段の顔色を一変させました。
自分の王が先に取られる流れだと気付いたのです。
それでもミスをすれば形勢逆転もありえる最終盤。
あの8五歩を起点に加藤九段の王を陣地から引っ張り出しました。
ありがとうございました。
攻めが一手遅れていれば逆に加藤九段が勝っていたこの対局。
勝利を引き寄せた、あの8五歩。
決着の60手も前に指した一手でした。
さあ、中学生でプロ棋士になったのは、藤井四段で史上5人目。
そしてご覧ください、ほかの方々ですが、羽生三冠など、タイトルを数多く獲得した名棋士ばかりです。
そして、その第1号は、加藤一二三九段です。
つまり、今回はいわば新旧の天才少年対決ともいえたということなんですが、さあ、ご本人の加藤さんにきょうはお越しいただきましたけれども、始まる前に、どちらが頭の回転が速いか楽しみだとおっしゃっていましたが、実際、体験してみていかがでした?
藤井四段の対戦は、ゴールの近くで初めて私の顔がちらっと藤井四段が見たんですよ。
そのときに、たぶん、藤井さんは、私の顔を見て、先生、私の勝ちですよと言ったんですよね。
で、その対局かんが正しかったことを、僕、そのとき気付かなかったけども、しばらく考えたら、あ、藤井四段が自信持ったなっていうのは確信できました。
どれぐらいあとで試合を振り返って?
さっさと浮いた手なんだけども、それから先は、私に勝ち目がありません。
彼はそれに気付いて、私の顔をちらっと見たんですよ。
目で語ってたということですか?
はい、もう私が勝ちましたよって。
だから、そこはやっぱり、すごい強いと思ったです。
今回はなんとぜいたくにも解説を、注目の若手、中村太地六段にお願いしたいと思うんですが。
よろしくお願いします。
早速じゃあ、ご準備をお願いできますでしょうか。
さあ、決め手となった8五歩を、なんと藤井聡太さんは、およそ2分で指したということなんですが、つまり、60手先まで、2分で見えていたということなんでしょうか。
さすがにそうではないと思うんですね。
将棋の手の可能性というのは、10の220乗あるといわれていまして。
数えられないってことですね。
プロ棋士でも、全部を読むことは不可能です。
実戦で、この8五歩がすごい手だったんですけれども、加藤先生の銀と歩が前に来てるので、守りたくなるところなんですね。
なのに歩をじっと前にやったと。
これが実際、数字ってごに攻めの礎となって生きて、勝ったんですね。
これがたまたまなんですけど、でも本当のたまたまではなくて、経験や知識に裏付けされた直観で指したと、藤井さんもおっしゃっておられて、それが生きたので、藤井さんの直観の正確さというのが、この場面に表れたと思うんですね。
将棋界には、長考に好手なしという格言がありまして、いくら考えても、考えれば考えるほど、いい手が指せるというわけではなく、早くぱっと浮かんだ、直観に基づいた指し手のほうがいい手が指せることがあると、直観がそれほど大事ということがこの格言で示されています。
その直観にたどりつくまでの感、正確さが尋常ではないということなんですね、藤井四段は。
独特の感性、読みに裏付けられたものがあるかもしれません。
特に終始、非常に落ち着いていますよね。
だって、長時間対じしても、絶対極めて、あれですもん、落ち着いてますもん。
加藤さんご自身と比べ、タイプ違うなと思いました?
たぶん、彼はやはり、よく研究するタイプで、大変な、現に、本人も、私たちの将棋調べてると言ってますから、大変なやっぱりすばらしい才能の上に、研究をします。
それは私なんかはそんな若いころ、そんなにいろんな人の棋譜を調べたわけではありませんけど。
じゃあ加藤さんはどうやって強くなったんですか?
だから、はっきり言って、いまのわかいきしゅたちよりは、たぶん研究量は半分ですよね。
それだけ藤井聡太さん。
データとかも蓄積されていて、研究しやすい環境になってはいると思いますね。
そうなんですね。
今回、いろんな質問も来てましてね、藤井聡太さん、好きなものだけど、才能って開花するのは、何か特別なトレーニング方法があるのかしらというふうな質問もあるんですが、確かに生まれもっての才能だと思いがちなんですが、実はそうではない、それだけでは決してなかったようなんです。
こちら、ご覧ください。
藤井四段は、名古屋市の郊外愛知県瀬戸市で生まれ育ちました。
父親は会社員。
母親と高校生の兄がいます。
好きな科目は数学と体育。
テレビやゲームには興味がありません。
中学校から帰ると欠かさず将棋盤と向き合います。
休日には、7時間以上没頭することもあるといいます。
母親の裕子さんです。
幼いころの藤井四段に驚いたことがあります。
3歳のときに遊んでいた立体パズルです。
それぞれのブロックに溝や穴がありうまく積み上げればビー玉が通る迷路のような道を作ることができます。
これは、藤井四段が3歳のときに作ったものです。
大人でも難しい出来栄えでした。
将棋を始めたのは5歳のとき。
大好きな祖父から教わったのがきっかけでした。
9五歩。
9四歩。
藤井四段が通っていた将棋教室です。
当時から、あるトレーニングに力を入れています。
玉方2三玉。
それは、詰め将棋。
王を取るまでの道筋を考える練習問題です。
これは最もシンプルな問題の一つ。
最短で相手の王を取る道筋が1つだけあります。
この場合、まず竜で王手。
相手の王は逃げ場がなくこれを取る以外生き残る道はありません。
そこへ角で王手。
赤い範囲はすべて押さえました。
仮に角が取られても最後に銀で王を取る。
これが解答です。
この教室のやり方は制限時間を設けてたくさんの問題をこなすことです。
対戦相手もいないため嫌がる子どもも多い中藤井四段は飽きることなく解き続けたといいます。
膨大な手の中から最善の一手を瞬時に導き出す直観。
詰め将棋を繰り返したことで養われたという研究者がいます。
脳科学を専門にする田中啓治さんです。
プロ棋士とアマチュアに詰め将棋の問題を見せたとき脳の、どの部分を使って答えを探すか調べました。
その結果です。
アマチュアの場合人間が意識して考えるときに使う黄色で囲んだ部分に反応がありました。
一方、プロ棋士は無意識の行動をするときに使う部分に強い反応がありました。
プロ棋士の答えは深く考えるのではなく無意識、直観から生み出されていたのです。
これを可能にするには1日3〜4時間10年のトレーニングが必要と考えられています。
藤井四段の場合5歳で始めた詰め将棋を10年間ほぼ毎日続けてきました。
この間に解いた数は1万を超えます。
その膨大な反復が脳に蓄積され史上最年少でプロになれる直観を生み出したと田中さんは見ています。
大盛りチャーシュー麺お待たせしました。
プロになった今でも詰め将棋を続けている藤井四段。
色紙に書き始めたのは自作の詰め将棋の問題です。
ありがとうございます。
頑張ってくださいね。
もう皆さんの期待が大きいですから。
最後に藤井四段が将棋以外で得意なことは、なんなのか。
質問をぶつけてみました。
全部将棋じゃないですか。
そうですね。
好きなことを3つ挙げてもらったら。
どこまで好きなんだという。
そうでないと、天才じゃないんですかね。
そういうことなんでしょうかね。
じゃあ、元天才少年の加藤さんの好きなものも、ちょっと事前に3つ挙げていただいたんですが、こういうことだそうです。
上1つが。
これは、クラシック音楽で、よく音、特に40を過ぎてから、対局前に聴くのが好きになって、要するに、将棋の対局の前にクラシック音楽聴くと、いい緊張感とか、やっぱり楽しみとか、やっぱりクラシック音楽のように、いい将棋を指したいなという気持ちが次第に高まってくるので一番です。
旅行の理由を簡潔に教えていただくと。
これは今までイスラエルに旅行した2回の経験で、2回ともイスラエルに行って帰ってきたら、十段になり、王位になりましたので、私は旅行に行くごとに、たぶん精神の活性化が図られると思ってます。
3つ目に、やっと将棋出てきました。
これですけども、これは今でも、例えばこの前、藤井さんに負けた将棋も、かれこれ、そのあと、3日間は敗因を研究しまして、負けた将棋は、よく若いころから、3日間とか1週間かけて、よく、繰り返し、研究してます。
というのは、やっぱり一つは、どこで負けたか、分からないと嫌ですから。
ですって、中村さん。
負けたのを思い出すのは、結構つらいので、大変な作業だと思います。
中村さん、してますか?
僕は1日ぐらいしかできないですね。
だって、途中で答えが出ないと嫌でしょ?
おっしゃるとおりです。
さあ、せっかくの機会ですから、ぜひ、中村さんからも、大先輩に。
加藤先生は長く第一線で活躍されてますけども、きらめく才能を継続させて輝かせるための秘けつっていうのを教えていただきたいんですけど。
とにかく、一つは私、30過ぎたときに行き詰まったんですけど、行き詰まったときに、自分の、いわゆる物事の考え方で乗り切って、そのあと、ものすごく名人にもなりました。
だから実は若いときよりも、30過ぎてからのほうが、私はいい将棋を指してます。
それはやっぱりものの考え方だと思うんです。
あるいは人生観といってもいいかもしれないけども。
いろいろ経験するのが将棋にも生きてくるってことですか?
経験ではなくて、ものの考え方だと思います。
つまり、簡単に言うと、バックボーンがしっかりすれば、将棋がしっかりしてくると思います。
ということは、藤井聡太さんや中村さんも、これから先に何か。
もちろん、課題は、彼は将棋で一本にいってますけれども、将棋一本でいくというタイプもいると思うけども、私の場合は、将棋一本よりは、例えば音楽とか、視野広くいって、僕は一応成功しました。
いろんな幅広い人生の積み重ねからも、やっぱり好きなものを開花させていく、そこを刺激するということですね。
2017/01/16(月) 22:00〜22:25
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代+「最年少 vs 最年長〜“天才”少年棋士 鮮烈デビュー〜」[字]

史上最年少でプロ棋士となった、中学2年の藤井聡太四段。先月、“ひふみん”こと加藤一二三九段との対局を制し、鮮烈のデビューを飾った。“天才”の秘密に迫る。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】プロ棋士…加藤一二三,プロ棋士…中村太地,【キャスター】伊東敏恵
出演者
【ゲスト】プロ棋士…加藤一二三,プロ棋士…中村太地,【キャスター】伊東敏恵