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字幕書き起こし 日本の話芸 柳家さん喬 落語「笠碁」 2017.01.14

(テーマ音楽)
(出囃子)
(拍手)毎回のお運びでまことにありがとう存じます。
どうぞしばらくのおつきあいを願っておきます。
このごろは細い路地というのが無くなりまして何か区画整理だという訳でどんどんどんどん道が広くなってまいりますですね。
子どもの頃ちょっと奥まった所へ行きますと大人が縁台将棋なぞとこんなものを夢中になってやっております。
昔は大人の世界に子どもが入り込んでも何か違和感がなかったような気が致しますね。
ジ〜ッと知らない将棋を見ている。
それを「おう分かるか?え?これお前香子ってんだい。
これまっつぐ行くんだ。
これは角だ。
角は斜めにどこでも行けるんだよ。
相手の敵陣に入るってえと裏になって成金ってえんだ」なんてねそんな事を教えてもらって「ああそうか。
そういうふうにやるのか」なんてねできもしない将棋を何となく分かったような子ども心にそんな気が致しました。

 

 

 


傍目八目碁などもそうでどう見ててもよく分かりませんがそのうちに「こっちが勝ちだな」なんてねそのぐらいの事は分かるようになりますが。
いずれに致しましても今と昔ではたたずみ方が違うようでございますですね。
碁でも将棋でも今はもうゲームとしてやりますから相手は機械でございますね。
みんながワ〜ッと見て「違う違う違う!それ違う!バカだなお前。
ああバカだね」という事はなくなってしまってただ一人でやってるんですね。
何かそこににぎわいといいますかみんなが心を通わせるというような事もだんだん将棋碁一つにしてもなくなってしまったのかもしれませんが。
「碁将棋に凝ると親の死に目にあえない」。
そんな事はないんでございましょうがねただ何かものに夢中になってしまうと肝心な事を忘れてしまうよ。
そういう教えなのかもしれません。
とにかく何が何でもあまり夢中になりますと周りが見えなくなる事があるのかもしれませんが。
「あっ…」。
「この一目ちょっと待っちゃあもらえないかな」。
「え?よしましょうよ。
今日お前さん待ったなしでやろうってそう言いだしたんだよ。
ね?だからさ続けなよ」。
「まあそうは言ったけどさ…一手だけ。
ね?あとは言わないよ」。
「お前さんが言いだしたんだ。
ね?お前さんが言いだしたのにお前さんが待ったってえのはおかしいだろう。
まあいいからお前続けなほら。
おやりよほら」。
「こっちつながってくるとは思わなかったんだよな…」。
「いいだろ?この一手だけだ。
ね?」。
「私も一手待つからさ。
ね?いいだろ?」。
「お前さん根岸のご隠居に言われたんだろ。
え?『久しぶりに碁を打ったがお前はちっとも腕が上がらないな。
ひょっとしたらお前さんたち待ったやってるんじゃないか?』『え?待ったなんざしょっちゅうやってます』。
『それがいけない。
待ったをやるとな腕が上がらない。
今日は待ったなしでやってごらん。
そうすればよ〜く考えるようになる。
そうすれば碁の腕も上がるようになるから待ったなしでおやり』ってそう言われてきたから今日は待ったなしでやるって言いだしたのお前さんじゃないか。
ね?だからほら続けなよ。
ね?」。
「そうだけどね…こっちへこう来るとは思わなかったな」。
「あっそう。
どうあっても待てないかい?」。
「うん」。
「あ〜そう。
待てなきゃ待てないでいいよ。
どうあっても待てないってんだったらね私も言いたくない事のひと言も言わなくちゃならない」。
「嫌な事言うなお前は。
言いたい事あったら言っておくれ」。
「じゃあ言わしてもらう。
いやお前言わなきゃ分からない。
あれはなおととしの暮れの29日」。
「お前何を言ってるんだ?2年も…」。
「まあいいからお聞きよ。
えっ。
29日だ。
お前さんしょんぼりしてやって来た。
『どうしたんだい?』『実はこの暮れへ来て200円って金が入り用になった。
倅が判を持ったまま大坂行っちまって銀行からお金下ろす事ができない。
七草には帰ってくるがそれまで200円用立てちゃくれないか』ってお前さんそう言ったんだ」。
「何言ってんだよ。
俺は返したよ」。
「返してもらったよ。
返してくれなきゃ困る。
まあいいからお聞きよ。
除夜の鐘一陽来復改まってお正月はお元日だ。
午前中に私がお前のところへ年始に行って午後お前が私のところへ年始に来てくれる。
これ毎年の吉例だ。
お前のとこ行ったよ。
いなかった。
おばあさんの話じゃどっか出かけてる。
そうかい。
昼過ぎても帰ってこない。
いや〜私もいろいろ用事があるから『ほいじゃまっ帰ってきたら顔出しておくれ』。
私うちへ帰った。
お前さん来なかった。
具合悪いのかなと思ったよ。
だけどさ『どうしたい?具合でも悪いのか』って顔出しゃそりゃ嫌みな事になるだろう。
行かなかったよ。
2日お三が日顔出さない。
どうしたんだろう?気になった。
4日5日6日とうとう七草だ。
夕暮れ時になってお前さんその敷居をしょんぼりしてまたいできたんだ。
『どうしたよ?具合でも悪かったのか心配したじゃないか』。
『いや実は敷居が高くて来る事ができなかった』。
『バカな事言うな。
お前と私の間に何で敷居が高いも低いもないもんじゃないか』そう言った。
『えっどうしたんだい?』ったら『実は暮れに借りた200円。
七草に倅が帰ってくるはずだったが大坂でもって商用が伸びちまって15日にしか帰ってこられない。
15日になれば銀行からお金を下ろす事ができるが15日まで待っちゃくれませんか』と。
その時私何て言ったい?『待てない』って言ったかい?『待つ』って言ったろう。
そしたらこの一手ぐらいは…」。
「何を言ってんだ?お前さん。
それとこれとは話が違う」。
「違わない。
違いませんよ。
こういうのは…勝負事っていうのはお前一人が勝ってりゃいいってもんじゃないんだ。
お互いに勝ったり負けたり負けたり勝ったりするから面白いんじゃないか。
自分だけ勝ってりゃいいってもんじゃないんだ。
まあいいから一手あげなさい」。
「今の話聞く先だったら一手ぐらい待ってやろうと思ったよ。
何だ?2年も前の話持ち出して。
だから待て?冗談言っちゃいけないよ。
誰が待つか」。
「いいだろう?一手ぐらい待ったって」。
「待てないな」。
「お前も強情だね」。
「強情だよ。
私は子どもの時分から強情で通ってるんだ」。
「そうかい。
どうあっても待てないか」。
「待てなきゃ待てなくったっていいよ」。
「ここ私のうちだよ」。
「そうだよ」。
「碁盤も石も私んだ」。
「そうだ」。
「ここでこういう事をするから喧嘩になるんだ。
なっ。
よしゃいいんだよ〜!」。
「お前はわがままだな」。
「わがままです。
子どもの時分からわがままで通ってるんだ」。
「あ〜あ〜そうか。
お前さんみたいなわがままな人とはな碁は打てないよ。
私は帰ら」。
「ん…?帰る?」。
「あ〜そうかい。
『帰れ』とも言わねえのに帰るのか。
あ〜帰れ帰れ。
ヘボ」。
「今何つった?ヘボつったな?」。
「ああ。
待ってくれって待てなきゃヘボだろ」。
「何を言ってる?待ってくれってよっぽどヘボじゃないか。
はっザルが」。
「何だ?」。
「ああお前さんの碁はザルだ。
ザル碁だ。
すくい上げたって何にも残りゃしないんだ。
穴ぼこだらけだ。
ハハハ!」。
(笑い)「お前みたいなやつとはな金輪際碁は打たない」。
「ああ私だってお前さんとなんざ碁は打ちたくはねえや。
いいか?小僧さんなんぞ使いによこすんじゃねえぞ」。
「誰が小僧なんか使いやるもんか!いいから帰れ!」。
「帰らあ!」。
たったひと言。
一目の事でもって子どもの頃から仲のよかったご隠居さんが袖を分かつような事になってしまいました。
はなのうちはお孫さんの手を引いて浅草上野と物見遊山に見物を歩いておりました。
これが4日5日6日ぐらいになりますと退屈の虫がが〜っともたげる。
雨なぞがさ〜っと降るような日。
碁敵は憎さも憎し懐かしし。
「よく雨が降るな…。
よくまあ空にこれだけ水があるもんだな。
はあ…。
おばあさんお茶をいれておくれよ」。
「あら?またですか?」。
「いいじゃないか。
お茶は飲みたい時に飲むからうまいんだよ」。
「だってね〜さっき飲んだばかりですもんね〜。
ニャ〜オ」。
「いいだろいれてくれたって。
お前猫を膝の上へ置いたまんま何でお茶をいれるんだよ?猫に湯がかかったら…本当にもう…」。
「はいはいありがとうありがとう」。
「はあ…。
おばあさん痔の具合はどうだい?」。
(笑い)「こういう時は痛むんじゃねえのか?ああそうかい。
それはよかった。
薬が効いたのかな」。
「あいつも痔なんだよ。
うん。
はあ…。
『退屈でしょう?』退屈だね。
退屈で退屈で…」。
(笑い)「落語っていうのはよく出来てるな」。
(笑い)「あ〜あ…」。
(せきこみ)「あんな一目ね待ったってどうって事なかったんだよ。
2年も前の事持ち出しやがって」。
「あいつだってそうだよ。
退屈してるだろ。
小僧さんでも何でも迎えによこしゃいいんだ。
あっそうか。
『小僧さん使いによこすな』って言っちゃったな。
ありゃ言わねえ方がよかったな」。
「やまねえかな?」。
「そうだ見舞いに行ってやろうかな。
こういう日は痔が痛むだろう。
ねっ?店の前通る。
あいつは店っ先にいつもね出てるんだ。
向こうが気が付くよ。
『おう何だい?』。
『いや〜痔が痛むんじゃねえかと思ってよ』。
『はっそうかい。
ありがとうよ。
まあお上がりよ。
一番いくか?』」。
「そうだ見舞いに行ってやろう。
おばあさん!おばあさんちょいと傘出しておくれ」。
「あらどちらかお出かけですか?」。
「ちょいと…伊勢屋へ行ってこようと思ってな」。
「あら伊勢屋さんですか?およしなさいよ。
ね〜?どうせまた喧嘩して帰ってくるんだもんね〜。
ニャ〜オ」。
「誰と話ししてんだよ?お前は。
猫ばばあ!傘出しておくれ!」。
「ありませんよ。
倅この間持っていっちまったもんね」。
「1本しかないのかい?じゃあお前の貸しておくれ」。
「駄目ですよ。
私もね出かけます」。
「すぐ帰ってくるよ。
なっ?」。
「いいえ。
駄目ですよ〜」。
「じゃあお前何か?この雨の中私にぬれてけっていうのかい?」。
「ぬれてけなんて言っちゃいませんよ。
ただ傘は貸せません」。
「同じこっちゃないか。
借りないよいいよ」。
「やまねえかな…。
そうだ!この間お山行った時に使ったあの菅笠がある。
どっかに…。
あああったあった!これこれ!これがありゃ…そうだよこれは気が付かなかった」。
「お〜ちょうどいいよ。
肩が隠れらあ。
これはいいや。
行ってくるよ!」。
「あなたおよしなさいよそんな格好で。
みっともない」。
「うるさいな。
お前が貸してくんねえからいけない。
行ってくるよ。
お〜寒い!何だ今日は妙に寒いな。
ヘヘヘこれならいいや。
ぬれないよ。
あいつ店っ先にいりゃいいけどな。
いねえと無駄だな。
中のぞき込んで…のぞき込むのも業腹だな。
でもいるかいねえか分からねえからな。
そうか…。
見るような見ないようなふりして前通ってやる」。
「ヘヘヘ!そうだこれでいいよ。
ん?ん?ヘヘヘそうだ。
これでいいやこれで」。
「定吉〜!火がないよ火が。
お前にいつも言ってるでしょう。
お客様がお見えになった時にたばこ一服差し上げられないといけないから火は絶やしちゃいけないって。
見てごらんほら。
もう炭消えかかってるじゃないか。
本当にしょうがないな。
炭持っといで炭!みんな灰になっちまってんだから」。
「ここ掃除したの誰だい?長吉か?こっちおいで。
こっちおいで。
見てごらん。
拭いたあとみんな縞になって残っちまってる。
お前はな手間を惜しむから。
いいかい?雑巾ゆすがないだろ。
一度でもって全部拭くから跡こうやって縞になって残っちまう。
雑巾とバケツこっち持っといで。
こっち持って。
よくゆすいで。
ぎゅっと絞るんだ。
もっとぎゅ〜っと絞るんだ。
固く絞るんだよ。
固く絞らねえから縞になっちまうんだ。
そうだ拭いて拭いて。
あっこっちもこっちも。
もうゆすぎなゆすぎな。
ぎゅっぎゅっぎゅっぎゅ〜。
そうそう。
なっ?こうすりゃ跡残らない。
いいかい?手間を惜しむと二度でも三度でも余計な事やらなくちゃいけない。
番頭さんお前さんそのね外へ向かって大きなあくびするんじゃないよ。
通る人が飲み込まれると思うじゃないか。
お前また随分たくさん炭持ってきたな。
私はここで煮物やろうってんじゃないんだ。
一つだけ…。
番頭さんあくびはよしなさい。
えっ何?『退屈でしょ』?退屈だよ。
『碁会所でもいらしたらどうです』?碁会所?何言ってんだい。
碁会所なんか行ったって相手がいないよ。
えっ?『弱すぎるんですか』?強すぎるんだよ。
このごろは本かなんか見て…。
えっ何?『美濃屋呼びにやりましょうか』?」。
「駄目だよ。
お前知ってるじゃないか喧嘩したのあっそうだ。
お前私と美濃屋が大喧嘩してるとこお前さん顔出したからああありがてえ番頭さんに仲裁に入ってもらおうって私は一生懸命目配せした。
そしたらお前『ん?あ?』ピッていなくなっちゃった。
何でああいう薄情な事するんだお前は。
え〜?美濃屋も美濃屋だよ。
来りゃいいだろう。
百年の敵じゃないんだから。
目の前通ってさそうすりゃこっちも『お〜何だいまあ茶でも一杯。
一番やるか』って事になるんだろ?それをあいつは子どもの頃から強情なんだよ。
目の前通りゃいいんだ。
そうだろ?ったく何だと思ってんだよ。
百年の敵…」。
「来た。
来たよ。
ハハッ辛抱できる訳ない。
おい奥の座敷にな盤と石をなそれから羊羹厚く切っといてやんなよ。
渋いお茶がいいんだ。
来りゃいいんだよ。
おかしな格好して来やがったな。
菅笠つけてやけに首を振って来やがる。
疳でも起きたかな」。
「あいついるといいけどな。
いなきゃ無駄だな」。
「いた。
おい早く声かけろ。
声をかけろよ」。
「何だねあいつは。
何でわざわざ向こう通るんだ?こっち来いこっち。
こっち来りゃいいだろ。
何だこっちだよ。
こっち通れ」。
「早く声をかけろ。
通り過ぎちまうじゃねえかよ」。
「早くこっち来いって」。
「行っちゃった。
うちへ来たんじゃないのかな。
『碁会所』?バカな事言うな。
あいつは碁会所なんかで打てる碁じゃないよ。
私としか打てない碁なんだよ。
見たかい?番頭さん今のあいつ。
え〜?顎でもってフンフンって。
私ここにいるの分かってんだぞ?『よう』のひと言声かけりゃいいだろ。
それがフンフン。
ああいうやつかな?わざわざ嫌みやりに来たんだ。
うちの…。
戻ってきた戻ってきた」。
「嫌な野郎だなあ。
俺がわざわざ来たんだから『おい』ひと言声をかけりゃいいじゃないか。
顎でもってあっち行けあっち行けって」。
「こっち来いこっちへ。
何してんだよ。
こっちへ来いっつってんだよ」。
「嫌な野郎だ」。
「こっち来いって。
えっ何?『気が付かないんでしょう』?そんな事ないよ。
さっきから目と目が合ってんだから」。
(笑い)「行っちゃったよ。
うちに来たんじゃないのかな。
え〜?嫌なやつだ。
わざわざ嫌みやりに来たんだよ。
見たろ?番頭さん。
私がここにいるの分かってる。
『よう』ひと言でいいんだ。
それをえ〜?百年の敵じゃないんだよ。
そうだろ?ひと言言やぁそれで…」。
「いた。
郵便ポストの陰隠れてどっちがポストだか分からない。
入りづらいんだよ。
入りやすいようにしてやれ。
碁盤こっち持ってきて。
白い石はそっち置いてやんな。
番頭さん今ね私この音であいつをおびき出す。
この音を聞いたら…。
どうだ?この音だよ。
パシッて。
このパシッって。
このパシッ!」。
「嫌な野郎だな。
わざわざ雨の中来てやったのにあっち行けあっち行けってよ。
来なきゃよかったな。
なにも敵同士じゃねえ。
ひと言『よう』って言やぁそれで事足りるじゃねえか。
それをこの雨の中わざわざピシッピシッ」。
「いい音だなあ。
あいつんとこは盤石がいい。
誰かほかの相手ができたのかな。
えっ?いやほかに相手ができたって事については…」。
「出てきた出てきた出てきた。
ほらほら何してんのほら。
分かんねえのか?ほら…分かんねえのかな?ダッダッダッダ」。
「やい!ヘボ!」。
「何だ?今何か言ったな?『ヘボ』って言ったな?」。
「ああヘボだよ。
『待ってくれ』ってあれだけ頼んで待てなきゃヘボだ」。
「何を言ってるんだ。
『待ってくれ』って方がよっぽどヘボじゃねえか。
へっ…ザルが!」。
「ヘボ」。
「ザル」。
「ヘボ」。
「ザル」。
「ここに盤と石が出てる。
ヘボだかザルだか一番くるか?」。
「よ〜し!ハハハッ…」。
「さあさあさあ…寒かったろう?ねっ。
フフフッ…。
え〜…今日は妙にな寒いからな。
ハハハッ…。
あれおかしいね。
何だい?誰だ?誰だい?ええ?碁盤の上でお茶いれたやつ。
見ろ。
ぬれてるじゃないか。
駄目だよそういう事しちゃ。
ええ?あれ?何だ?おかしいおかしい…。
あっ…雨漏りしてる訳…。
ハハハッお前さんまだかぶり笠取らねえじゃねえか」。
「え…?アハハハッ本当だ。
いけねえいけねえ。
すっかり忘れてた。
ハハハハハ。
慌てて上がっちまったから」。
「ハハハハハッお前さんもそそっかしいね〜。
あっ…こないだはすまなかったな」。
「え?」。
「いや待ったなしで始めたのに『待ってくれ』なんて言っちまってすまなかったな。
堪忍しておくれよ」。
「いやいやとんでもねえとんでもねえ。
私がつまらない強情張っちまったのは悪かった。
一手ぐらい待ったってさどうって事ないのに私がついつい強情張っちまったんだよ。
堪忍しておくれ。
悪かったな」。
「いいやそんな事はねえ。
言いだしたのは私だから堪忍しておくれ。
つまらねえ意地張っちまったからな」。
「ええ?私もつまらない意地張っちまった」。
「ああ。
意地なんぞ張ったってしょうがねえよ」。
「そうそう。
もうこの町内でなお前と私2人っきりになっちまったんだから。
なあ?」。
「そうさ。
もう俺たちは後がねえんだからな」。
「そうだよな。
俺たちはもう後が…ねえと」。
「俺たちはもう待ったなしだからな」。
「そうだよな俺たちは…。
この一目待っちゃくれねえか」。
(拍手)2017/01/14(土) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
日本の話芸 柳家さん喬 落語「笠碁」[解][字][再]

柳家さん喬の落語「笠碁」」を放送する。(第688回東京落語会)【出演】柳家さん喬【演目】笠碁

詳細情報
番組内容
柳家さん喬の落語「笠碁」」を放送する。(第688回東京落語会)【出演】柳家さん喬【演目】笠碁
出演者
【出演】柳家さん喬