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字幕書き起こし クローズアップ現代+「韓国 過熱する“少女像”問題〜初めて語る元慰安婦たち〜」 2017.01.24

韓国で過熱する少女像の問題。
自分たちの思いを韓国社会は分かっていないのではないか。
今回取材に応じた元慰安婦の女性。
これまで堅く口を閉ざしてきましたが初めて胸の内を明かしました。
プサンにある日本総領事館の前に慰安婦問題を象徴する少女像が設置されて1か月近く。
おととし、慰安婦問題を巡って結ばれた日韓合意。
今、韓国社会は揺れています。
少女像問題の深層に迫ります。

 

 

 


おととしの末、日韓両政府で合意に達した慰安婦問題。
日本政府は、責任を痛感し、心からおわびと反省の気持ちを表明するとともに、元慰安婦の支援事業のために10億円を拠出し、最終的かつ不可逆的に解決されることが確認されました。
日韓関係の最大の懸案となってきたこの問題、その経緯を振り返ります。
1965年の日韓国交正常化の際に結んだ協定によって、日本政府は、法的には解決済みと主張してきました。
しかし、韓国では、元慰安婦が訴訟を起こすなど、反発が根強くありました。
日本政府による謝罪や償いの事業などを経ても、両国の隔たりが埋まらずにきた中で、ようやくまとまったのがこの2015年、今回の合意でした。
元慰安婦への支援事業として、1人当たりおよそ1000万円が支給されることになりましたが、合意成立時に生存していた46人のうち7割に及ぶ、34人が受け入れの意向を示し、すでに31人への支給が完了しています。
しかし、韓国ではこうした元慰安婦たちの声が伝えられないまま、日韓合意の破棄を求める世論が強まっているのです。
支給を受けた元慰安婦たちは、この事態をどう受け止めているのか。
これまでメディアの取材に応えてこなかった女性や家族が、初めて語りました。
身元を特定されないことを条件に、メディアの取材に初めて応じた元慰安婦の女性です。
太平洋戦争中、東南アジアの戦地に送られたというこの女性。
日韓合意によって支援金を受け取った女性。
90歳を超え認知症の症状が出始めたため直近の記憶が不鮮明になっていました。
家族は、これまで本人からなんらかの補償を受けたいという意思を確認していたため合意を受け入れました。
今の韓国社会の中で日韓合意を受け入れたことを表だって言うことは難しいといいます。
戦後、韓国社会からも差別を受け厳しい生活を強いられてきた元慰安婦たち。
口を閉ざす背景には日本からの支援を受けたことで厳しい世論にさらされた過去があります。
1995年に日本政府が発足させたアジア女性基金。
総理大臣のおわびの手紙とともに民間からの募金などを原資に元慰安婦に償い金を支払いました。
ところが韓国では、支給を受けた一部の元慰安婦たちが痛烈な批判にさらされました。
日本政府による賠償ではない金は受け取るべきではないと一部の市民団体やメディアが猛反発したのです。
おととし、両国がぎりぎりの妥協点を探って結ばれた日韓合意。
合意を受けて韓国政府が設置する財団に日本政府が10億円を拠出。
元慰安婦たちへの現金支給が始まりました。
合意の直後、韓国の世論調査では日韓合意を評価する人が43%に上りました。
しかし今、日韓合意を破棄し10億円の返還を求める声が強まっています。
そうした中、今回取材に応じた元慰安婦や家族の中には日韓合意を前に進め少女像を撤去すべきだという人もいました。
90代の元慰安婦の家族です。
母親は寝たきりのため代わりに答えてくれました。
母親は、当時受けた傷が今も心と体に刻まれ苦しんでいるといいます。
今の中国東北部旧満州に連れていかれたという別の元慰安婦です。
自分たちの思いと裏腹に世論が日韓合意の破棄に傾くことにやりきれない思いを抱えています。
スタジオは、静岡県立大学の奥薗秀樹さんです。
奥薗さん、今もありました、自分の思いが、韓国社会に分かってもらえていないという声でしたけれども、なぜその韓国で、こういった方の声が届かないんでしょうか。
やはり改めて、一人一人の元慰安婦の方々にそれぞれの思いがあって、決して十把ひとからげにはできないと思うんですが、そうした中で7割を超える方々が、この合意を受け入れてくださったということは、重く受け止めるべきだとは思うんですけどもね。
ただ問題は、そうした事実が、今の韓国の社会的状況の中で、あまり報道されない、そして決して多数ではない反対の声だけが、クローズアップされていくと。
その結果、その当事者を無視した合意であるというイメージが出来上がって、それが一人歩きをしてしまうと。
合意そのものに対する理解も一向に深まらずに、日本国内にもそれが伝えられて、日本でも韓国に対する反発だけが高まっていくという、悪循環に陥っているような気がします。
今、7割の方が日韓合意を受け入れて、現金の支給を受けている。
これを重く受け止めるべきだとおっしゃいました。
その意味合いはどういうことですか?ーやはり元慰安婦の方々の年齢を考えると、ほとんど90歳前後。
これは時間との戦いという側面が一層強くなっているというふうに改めて感じます。
そうした中、やはり100%満足できるわけではないんだけれども、自分たちのせいで日韓関係がいつまでもぎくしゃくすることが忍びないとかですね。
あるいは死ぬ前にけじめをつけたいとか、あるいは子どもや孫のために、何がしか残して死ねるのならばもらいたいといったような思いが非常に強くなってるんだと思うんですね。
そういった当事者の方の思いがある中で、時間との戦いもある中で、韓国側の世論の行く先というのはどこなんでしょうか。
これは、やはり日本側は、法的にはもう解決済みなんだけれども、それを踏まえたうえで、当事者の人々を実質的にどう救済するかっていうことを重視する立場なんですが、韓国側はやはりちょっと考え方が変わっておりまして、それは、やはり日本が国としての責任、国家賠償といったようなものをきちんと果たすということが、正義にかなうんだと。
それは韓国から見たときの正義にこだわって、それを求めるというところに、重点を置いているというのが韓国側の考え方だと思いますね。
その韓国が考える正義の名においては、当事者の方の声が、言ってみれば置き去りにされている状況も起きてしまっているという。
正直に申し上げまして、そういった状況が起きていると考えざるをえないと思います。
まさに当事者の思いとは異なる形で、少女像が設置されているわけなんですけれども、改めてその動きを振り返りたいと思います。
そもそもなんですけれども、日韓合意よりも前に、2011年に、ソウルの日本大使館の前に、民間団体が少女像を設置しました。
これについて韓国政府は、この合意の際に、適切に解決されるよう努力するとしていました。
そうした中で、先月、さらにプサンの日本総領事館の前にも、新たな少女像が設置されました。
こういった動きを韓国政府が、食い止められない状況が続いているわけなんです。
日韓両政府で合意したにもかかわらず、なぜ、韓国社会で世論が先鋭化しているのか。
その背景を探ります。
去年秋から韓国社会で続くパク・クネ大統領への大規模な抗議デモです。
政権のスキャンダルが次々と明らかになる中国民の怒りが噴出。
大統領を職務停止に追い込みこれまでの政策すべてを否定する勢いです。
こうした政治的な空気の中でプサンの日本総領事館前に少女像は設置されました。
像を設置した学生グループの中心メンバーです。
学生グループが少女像の設置を試みたのは先月28日。
このとき、地元自治体は公道に像を設置することは違法だとして撤去しました。
ところが、この動きがメディアで伝えられると韓国中から自治体に対し抗議が殺到したのです。
「少女像撤去反対」「親日派の売国奴なのか?」自治体のウェブサイトには少女像の撤去を批判する書き込みがあふれ苦情の電話も鳴り続けました。
地元自治体は撤去から僅か2日後に少女像が再び設置されるのを黙認せざるをえませんでした。
日韓合意に対する韓国の世論は大きく変化。
1年前、4割を超えていた肯定的な評価が25%にまで減少。
破棄すべきと答えた人は59%に上ったのです。
少女像が新たに設置されたことに対し日本政府は大使を一時帰国させるなど対抗措置を講じました。
韓国政府は国家間の合意と世論とのはざまで対応に苦慮しています。
一方、大統領選挙を視野に入れる野党各党は世論に迎合する動きを強めています。
少女像の設置を巡って激しく揺れる韓国社会。
この日、日本と良好な関係を維持すべきだという男性が現れました。
これに対し学生グループのメンバーは非難を浴びせました。
こうした中韓国のメディアの中には過熱する世論に対し冷静さを呼びかける論調も広がっています。
韓国だけが日本との関係において過去から一歩も抜け出せないでいる。
社説を書いた主筆です。
今の韓国社会では被害者としての歴史を強調し極端な意見に結び付ける動きが広がっていると警鐘を鳴らしています。
日本政府から拠出された10億円をもとに、元慰安婦への支援事業を行っている韓国の財団です。
世論に左右されることなく元慰安婦の気持ちに寄り添うことが何より大切だとしています。
ではここで、現地から最新状況を、ソウル支局の池畑支局長に伝えてもらいます。
池畑さん、少女像の問題を巡る動き、現状、どうなっているでしょうか?
私は、毎週、抗議デモが行われているソウル中心部の広場にいます。
パク大統領は、少女像を含む、慰安婦問題の任期中の解決を外交上の大きな実績としたい考えでした。
しかし、一連の事件で足元をすくわれ、強硬な市民団体を説き伏せるだけの、いわば政治的な体力というものがないのが実情です。
それでも大統領の職務を代行しているファン首相はきのう、少し時間はかかるものの、必ず克服できるよう努力すると強調しました。
世論を左右するメディアの間でも、元慰安婦たちを置き去りにした合意破棄の主張は、無責任だと批判する論調が増えつつあります。
その冷静な対応を呼びかける動きもあるということなんですけれども、そういった声がどの程度、韓国全体に届いているんでしょうか?
まだ楽観はできません。
と言いますのも、与党も野党も、ことし前半にはパク大統領の弾劾が確定して、選挙が前倒しされる可能性があるという読みのもと、日本との関係改善よりも、大衆の支持獲得に必死です。
その結果、各党、各候補とも、慰安婦問題で日本をたたくポピュリズムに走ってしまっています。
この流れを変えるには、まず、韓国の政治家たちがこうした外交問題を選挙に利用するのを自制することが不可欠だと思います。
ソウルから池畑支局長でした。
プサンの日本総領事館前の少女像が撤去されない状況に対して、日本政府は、韓国駐在の長嶺大使らを一時帰国させました。
日本国内の世論調査では、これを評価するという声が50%に上っています。
大使の帰任については、現段階では当面、見送る方向となっている状況です。
奥薗さん、この問題、なかなか出口が見えない状況なんですけれども、先ほどもありました、韓国は大統領選挙を控えている中で、合意の履行はどうなっていくんでしょうか。
残念ですけれども、見通しは明るくないといわざるをえないと思います。
それはパク・クネ大統領のスキャンダルがはじける中で、大統領選挙がいつあるか分からないという状況になってしまいましたので、有力候補といわれている人たちが、選挙戦略を建てられない状況になってまして、その結果、すぐにでも戦って勝てるように、今からフルスロットルでいかざるをえないという状況に置かれてしまっているんですね。
その強硬だというのは、詰まりいつが大統領選挙か分からないけど、今からもうパク・クネさんではないキャンペーンを打っていくということをせざるをえないと?
そうですね。
パク・クネさんを否定して、その上で自分は国民の側に立ってるということを強くアピールして、そのためには国民の心に響きやすい、そういう主張をする方向に走りがちになってしまうと。
その結果、国際合意よりも国民感情という方向に傾きがちなんですね。
そういう中で、パク・クネ大統領がそういう状況に陥っている中で、この慰安婦問題というのが、非常に大統領選挙を念頭に置いたときに有効で、手っ取り早い、格好の材料と化してしまっているということが残念ながらいえるんだろうと思います。
それにしても日韓関係、非常に大事な関係でもありますし、それから何よりも奥薗さん、元慰安婦の方々の平均年齢は今、およそ90歳で、ことし1年余りでも、7人の方が亡くなっている状況で、そういった方々にとっては、今回の合意が、問題の解決を見届ける最後のチャンスだともいわれている状況ですよね。
どうしたら、この合意を進めていけるのか、どう思われますか?
非常に厳しいんですけれども、やはりこの対立が解けずに問題が宙にういて、事実上、その問題が放置されることになって、慰安婦の方々が皆さん亡くなってしまうような、そういうことだけは、当事者不在の最悪のシナリオで、避けるべきだというふうに思ってます。
そのためには、韓国にすべて投げてしまうのではなくて、日本側は冷静さを取り戻して、合意を前提にして何ができるのか。
もう一度、当事者に寄り添う原点を忘れずに考えてみる必要があると思います。
今日は自転車のロードレース!世界を熱狂させる2017/01/24(火) 22:00〜22:25
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代+「韓国 過熱する“少女像”問題〜初めて語る元慰安婦たち〜」[字]

韓国・プサンの日本総領事館前に新たな“少女像”が設置され大きな波紋を呼んでいる。なぜこうした事態になっているのか?揺れる韓国社会を見つめ、今後の行方を探る。

詳細情報
番組内容
【出演】静岡県立大学准教授…奥薗秀樹,【キャスター】鎌倉千秋
出演者
【出演】静岡県立大学准教授…奥薗秀樹,【キャスター】鎌倉千秋