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字幕書き起こし 地球ドラマチック「生命進化の謎 鳥は恐竜の子孫なのか」 2017.02.11

鳥はいつどのようにして地球上に現れそしてその祖先は何なのでしょうか。
長い間答えは謎に包まれていました。
鳥の祖先の一種として知られるのは19世紀にドイツで化石が発見された始祖鳥です。
始祖鳥は今からおよそ1億4500万年前に生息していました。
しかし近年の発掘調査によって鳥の起源は更に古い時代にまで遡ると考えられるようになりました。
新たな手がかりを与えたのは中国で発見された多くの恐竜の化石です。
それらの恐竜の体はうろこではなく羽毛で覆われ一部は空を飛ぶ事もできました。
アジアの大地に埋もれていた恐竜の化石が現代の鳥とはるか昔の恐竜を結び付け鳥類の祖先の謎を解き明かします。

 

 

 


地球上で恐竜が最も栄えたのはジュラ紀と呼ばれる時代。
今からおよそ2億年前から1億4500万年前の事です。
そのころ超大陸パンゲアはいくつかの大陸に分裂しました。
後に中国やシベリアとなる巨大な半島も形成されました。
気温は低く気候は比較的穏やかでした。
しかしその地域では地殻変動に伴う火山の噴火が度々起こりました。
やがてそこは不思議な生き物たちの楽園となりました。
「鳥に近い」という意味の小さな恐竜アンキオルニスもいました。
アンキオルニスは肉食恐竜の仲間で全身が羽毛で覆われていました。
大きさは今のハトほどで短い距離なら巧みに飛ぶ事ができました。
この時代同じ一帯にいた大型の肉食恐竜よりも生き残りに成功していたといえるでしょう。
羽毛のある大きな恐竜もいました。
グアンロンは体長3メートル体重50キロ。
2本の脚で移動する優れたハンターです。
小さなアンキオルニスは羽をいっぱいに広げて敵をかわそうとしたでしょう。
グアンロンは地面から離れられません。
しかし飛べないはずの恐竜グアンロンにも羽毛がありました。
それは一体何の役に立っていたのでしょうか。
アンキオルニスもグアンロンも近年中国で化石が見つかった羽毛恐竜です。
研究者たちはこうした羽毛恐竜と鳥類の関係を調べています。
謎を解く手がかりはジュラ紀の堆積物の中にあります。
火山の噴火による有毒ガスや火山灰がある瞬間を永遠に閉じ込めたのです。
当時の地層には灰に埋もれた生き物の骨格や組織が見事な状態で残されています。
鳥の起源につながる歴史上初めてとなる大きな証拠は19世紀にドイツで発見された始祖鳥です。
ジュラ紀の終わりごろヨーロッパの一部はテチス海と呼ばれる浅い温暖な海に覆われていました。
ドイツの大半も1億5000万年前は海に覆われ海上には熱帯気候の島が点在していました。
そこに最初の空飛ぶ脊椎動物が現れます。
ゲルマノダクティルスはこれまで発見されている翼竜150のうちの一つです。
翼竜はは虫類の仲間で恐竜ではありません。
翼は長い指と胴体の間にある膜のような皮膚です。
この皮膜を強い筋肉で操りグライダーのように滑空しました。
骨は中が空洞で軽く空を飛ぶのに適していました。
翼竜は8000万年もの間空を支配しました。
しかしある時別の生き物が空に進出します。
その一つが始祖鳥です。
始祖鳥は翼の先にかぎ爪のある原始的な鳥です。
この化石が19世紀に発見されそれが何であるか古生物学者たちを大いに悩ませる事になりました。
始祖鳥の化石はドイツ南部ゾルンホーフェンにあるジュラ紀後期の地層から発見されました。
そこはかつて海の干潟でした。
当時の地層からはやわらかい泥に埋もれた生き物の化石が数多く発見されています。
(フレイ)これが有名なゾルンホーフェンの石灰岩です。
板状の堆積物が本のページのように積み重なっています。
こうした岩のページの中から始祖鳥をはじめたくさんの化石が見つかっています。
この岩の特徴は粒子が非常に細かい事です。
死んだ動物は泥に埋もれ缶詰のように密封された状態で化石になりました。
ですからこのエリア全体がジュラ紀をかいま見る事のできる窓として非常に貴重な場所なんです。
1868年イギリスの生物学者トマス・ヘンリー・ハクスリーは始祖鳥が恐竜と鳥類の間の生物であると主張しました。
ダーウィンの友人であり解剖学の専門家でもあったハクスリーは進化論を擁護しました。
彼は化石を分析し始祖鳥には鳥だけでなく恐竜のような特徴もある事に気付いたのです。
しかし多くの生物学者はハクスリーの意見には反対でした。
ダーウィンが唱えた進化論はまだ一般的には受け入れられていなかったのです。
ハクスリーは始祖鳥の歯やかぎ爪のある翼骨がたくさん並ぶ尾に注目しそれらが小型の肉食恐竜と類似している事を指摘しました。
(鳴き声)始祖鳥は機敏な動きはできませんでした。
しかし羽があり飛ぶ事ができました。
始祖鳥の叉骨はすでに現代の鳥と同じように2本の骨がくっついてV字形になっていました。
この骨のおかげで翼を効率良く羽ばたかせ狩りや巣作りに必要な高さまで飛べるようになりました。
森の周りには海へと続く干潟がありました。
岸には時折海のは虫類の死骸などが打ち上げられました。
死骸に寄ってくるハエは始祖鳥の大好物です。
しかし開けた場所には危険もたくさん潜んでいました。
同じ時代空には強大な翼竜ゲルマノダクティルスがいてたんぱく質豊富な食べ物に目を光らせていました。
打ち上げられた死骸は格好のごちそう。
ゲルマノダクティルスは自分の食事を邪魔する相手には容赦をしなかったでしょう。
翼竜は一時期最強の空の生き物でしたが今からおよそ6600万年前には絶滅してしまいました。
一方始祖鳥の子孫である鳥類は現在も繁栄しています。
ゾルンホーフェンの干潟の底に沈んだ始祖鳥は1億4500万年の時を経て化石として現れました。
それをきっかけに鳥と恐竜の結び付きが議論の的となりました。
しかし証拠が不十分だったためこの説は100年以上も棚上げとなったのです。
20世紀の末中国での新たな発見によって議論は再び活発になります。
きっかけは1993年。
中国東北部の遼寧省で1億2500万年前の恐竜の化石が大量に出土した事でした。
畑や牧草地で化石が偶然見つかり大規模な調査が始まりました。
度重なる火山の噴火によって土に埋もれていたのは始祖鳥が現れた時代から2000万年の後白亜紀の前期にいた恐竜の化石でした。
それらは北京の考古学研究所に運ばれ間もなく衝撃的な発見が世界を驚かす事になります。
1996年に発見された肉食恐竜シノサウロプテリクス。
体を覆う羽毛の痕跡がはっきりと残っています。
肉食恐竜の中に羽毛のあるものが存在したという初めての証拠でした。
これが発見された時の事はよく覚えています。
誰もがそれはもう興奮しました。
化石を見ると羽毛は恐竜の体全体を覆っているのが分かります。
頭や背中尾全体そして脚にも少しあります。
羽毛はごくシンプルで人の髪の毛のような感じです。
恐竜にも鳥のような羽毛があったという説は以前からありましたが証拠がなかったんです。
それがこの化石で一変したんです。
鳥類の特徴である羽毛が恐竜にもあったという事実。
それは恐竜と鳥が同じ系統に属しているという確かな証拠でした。
今から1億2500万年前始祖鳥よりも2000万年後の時代。
小型の恐竜シノサウロプテリクスは火山の麓にある針葉樹の森にすんでいました。
この肉食恐竜は視覚と嗅覚を使って森の中で狩りをします。
好んだ獲物はごく初期の小さな哺乳動物です。
シノサウロプテリクスの羽毛はヒヨコの産毛のように細くて弱々しいものでした。
そのためそれが本当に羽毛であるのか研究者たちの間でも意見が分かれていました。
(鳴き声)2010年研究者たちはシノサウロプテリクスの化石から羽毛に見えるものを取り出し顕微鏡で詳しく観察しました。
するとその中にある色素の痕跡が見つかりました。
発見されたのはメラノソームという羽毛に色を与える細胞で丸い形のものは茶色棒状のものは灰色になります。
これらの証拠からシノサウロプテリクスの体はリスのような茶色で尾に明るいしまがあったと推定されました。
体の色が推定できた事もすばらしいですがそれだけではありません。
メラノソームが発見された事でこれらの毛が間違いなく羽毛の一種である事が分かりました。
つまりシノサウロプテリクスは全身が羽毛に覆われた鳥のような生物だったのです。
羽毛に覆われていたもののこの恐竜は空を飛ぶ事はできませんでした。
全身の羽毛は寒さから身を守るためのものだったという説が有力です。
しかしその事を証明するのは簡単ではありません。
シノサウロプテリクスが生きていた時代。
遼寧省に当たる地域はどのような気候だったのでしょうか。
地質学者のロマン・アミオは恐竜の歯の組織から謎を解く鍵を探す事にしました。
(アミオ)この時代の化石に気候の痕跡は残っていないというのが多くの科学者の一致した意見でした。
未知のものを調査しなければならず気候の情報を見つけだせるかどうかは大きな挑戦でした。
アミオは飲み水の痕跡が残っている恐竜の歯のエナメル質から当時の気温を推定する事にしました。
その結果これまでの説を劇的に変える重大な発見をするのです。
(アミオ)当時の気候は今よりも少し寒いくらいだったと判明しました。
これまで恐竜が生息していたのは熱帯のように暑い場所だと考えられてきましたからこれは従来の説を覆すものです。
現在の遼寧省に当たる地域も冬の寒さは厳しく雪も降り積もったでしょう。
羽毛が断熱材の役を果たし体温が保たれたおかげで恐竜は一年中活動できたのです。
アミオの説を裏付けるように更に大型の羽毛恐竜が発見されました。
ティラノサウルスに近い白亜紀の強大な肉食恐竜で全身にふさふさした羽毛がありました。
体長が9メートルもあるユティラヌスの化石は北京郊外の倉庫に保存されています。
ユティラヌスの迫力には圧倒されます。
実に巨大で重さはおよそ1.5トンもありました。
体は非常に長い羽毛に覆われています。
とても意外な事でした。
普通羽毛のある生き物は体が大きくなるにつれて羽毛の量や密度が減っていくものです。
ところがこのユティラヌスは大きな体に長い羽毛がびっしりと生えていたんです。
ユティラヌスのように大きな恐竜が分厚い羽毛に覆われていたという事実は大型の動物でさえ体温を保つのが難しいほど当時の気候が寒冷であった事をうかがわせます。
今から1億2500万年前中国の遼寧省に当たる地域は冬は雪が積もるほどの寒さでした。
小さなシノサウロプテリクスも巨大なユティラヌスも鳥のように羽毛の助けを借りて厳しい冬を乗り切ろうとしていました。
これもまた恐竜と鳥が進化の歴史のどこかで関係していたしるしです。
羽毛の断熱性という特質は現在の鳥にも残っています。
しかしそれだけでは陸上の恐竜が鳥に進化した事を証明できません。
遼寧省で発見された恐竜の羽毛は同じタイプのものだけだったのでしょうか。
恐竜と鳥はどの時点で分かれたのでしょうか。
複雑な進化の道筋を解き明かすには更に多くの証拠が必要です。
遼寧省で発掘された化石からは他にも羽毛のある生き物が数多く見つかっています。
その一つ1998年に発見されたカウディプリクスは足が大きくダチョウのような姿をしていました。
この化石には美しい羽毛の跡が見られます。
ここに両方の前足があり真ん中の指に羽がついています。
単なる糸状ではなくかなり長く形も鳥の羽のようです。
カウディプリクスには長いひらひらする羽が尾にもありました。
1億2500万年前のユニークな羽毛恐竜の一つです。
カウディプリクスは現在の飛べない鳥のような姿をしていました。
研究者たちは幼いカウディプリクスには現在の鳥と同じように母親のあとを追う習性があったと考えています。
成長すると体長およそ1メートル体重20キロほどになり前足や尾に長い独特の羽が生えます。
ではなぜこの恐竜は尾に長い羽をたくわえていたのでしょうか。
体を温める以外の何かの役に立つのでしょうか。
羽毛は1本の糸状のものから次第に束のようになり更に軸と羽枝とに分かれた羽に進化していきました。
カウディプリクスの羽は軸と羽枝に分かれていますがまだ十分に発達していないため風にふわふわとなびきます。
カウディプリクスは地上を走り空は飛べませんでした。
では尾の羽は何のためにあったのでしょうか。
オスが求愛行動に用いたというのが大方の意見です。
多くの鳥のようにカウディプリクスはオスとメスの外見が異なりオスは美しい羽でメスを引きつけようとしたのだと考えられています。
求愛に成功したものが子孫を残し遺伝子を伝える事でカウディプリクスの尾を飾る羽は独特の変化を遂げました。
ではこの時代の羽毛恐竜の中に実際に空を飛べたものはいたのでしょうか。
鳥のように空を飛ぶには風を通しにくく風圧に耐えられる強い羽風切羽が必要です。
2000年に発見された恐竜ミクロラプトルの羽には飛行能力を証明する重要な鍵があります。
羽の根元が左右非対称ですよね。
これは風切羽という鳥が飛ぶために必要とする羽の特徴です。
鳥のように飛べた恐竜がいたという貴重な証拠の一つです。
ミクロラプトルはとても不思議な姿の恐竜です。
恐竜ではありますが前足と後ろ足に風切羽のような羽のついた翼があります。
つまり4つの翼があるのです。
実に奇妙です。
恐らくこれは初めて空を飛んだ恐竜の姿に近いものだと思います。
2本足で歩く恐竜は地面を走って飛び立つというのが従来の説でした。
しかしミクロラプトルの足のかぎ爪から別の可能性が見えてきました。
1億2500万年前この小さな恐竜は植物が生い茂る森にすんでいました。
そこでは地面を走るより木の上から滑空する方が簡単だったでしょう。
ミクロラプトルは森の縦方向の広がりをうまく利用していました。
足のかぎ爪は木をよじ登るのに便利です。
主に木の上をすみかとし4つの翼を操って森の中を移動していたのだと考えられています。
前足と後ろ足の両方に翼があるミクロラプトルの姿は現在の鳥とは大きく異なります。
脚についた翼は空を飛ぶのには役立っても歩く時にはやっかいだったでしょう。
地面にいるミクロラプトルは常に狙われやすい状態でした。
古生物学者の徐星はこのような木の上にいた羽毛恐竜の一種が鳥に進化したのだと考えています。
ミクロラプトルがいたのと同じ時代原始的な鳥はすでに存在していました。
それらはどのような姿をしていたのでしょうか。
遼寧省の発掘調査では鳥類の化石もたくさん見つかりました。
全て1億2500万年前の白亜紀のものです。
見つかったのは孔子鳥という白亜紀の前期にいた初期の鳥です。
ここには標本が500以上あります。
恐らく世界最大の孔子鳥のコレクションでしょう。
(周忠和)孔子鳥は最も古い鳥だとされる始祖鳥より2000万年あとに現れました。
そのため空を飛ぶ仕組みや特徴がいくらか発達しているのが分かります。
孔子鳥の翼にはかぎ爪がありますが外見は今日の鳥によく似ています。
始祖鳥の口にあった歯はなくなり骨がたくさん並ぶ尾もありません。
首には鳥類特有のV字形の叉骨があります。
更に孔子鳥のオスの尾にはリボンのような2本の長い羽がありました。
1億2500万年前孔子鳥は多くの羽毛恐竜と同じく火山の麓にある緑豊かな森にすんでいました。
オスとメスは外見が異なり繁殖期になるとオスはメスを引きつけるために長くて美しい尾の羽を誇示しました。
孔子鳥の求愛行動は同じ森林地帯にいた羽毛恐竜カウディプリクスとよく似ています。
度重なる火山の噴火によって孔子鳥の一部もまた化石となって姿をとどめました。
孔子鳥は翼にある大きなかぎ爪を使って木の幹を登ったのでしょう。
足の爪を使って枝に留まる事もできました。
足の1番目の指が逆を向いているのは現代の鳥と同じ特徴です。
孔子鳥の翼にある幅の狭い羽はこの鳥が滑空するだけでなくいくらか羽ばたく事もできた事を物語っています。
そして自然の選択の結果飛ぶ事に秀でた遺伝子だけが子孫に受け継がれていきました。
1億2500万年前には鳥と羽毛恐竜は共に存在していました。
鳥が恐竜から分かれて生き残っていくのに対し巨大なユティラヌスは進化が行き詰まって滅びたのかもしれません。
では最初の鳥はいつ登場したのでしょうか。
その祖先は羽毛恐竜と共通なのでしょうか。
2009年遼寧省の西部で高速道路の建設中に新たな化石の層が発見されました。
ジュラ紀の地層から見つかった羽毛恐竜アンキオルニスの化石は極めて保存状態が良く鳥と恐竜の関係を説明するための決定的な証拠の一つとなりました。
歴史を書き換える画期的な発見でした。
最古の鳥として知られる始祖鳥はおよそ1億4500万年前のものですがこれまでに見つかっていた羽毛恐竜はそれより2000万年もあとのものばかりでした。
しかしアンキオルニスが見つかったのは1億6000万年前の地層です。
つまり始祖鳥よりも古い時代の羽毛恐竜が初めて見つかったのです。
この発見により羽毛恐竜は鳥が誕生するよりも前にすでに存在していた事が証明されました。
小さな羽毛恐竜アンキオルニスはどう猛な捕食者に狙われる存在でした。
翼竜ダルウィノプテルスは鋭いかぎ爪で小型の動物を襲う今日の猛きん類に匹敵する存在でした。
優れた飛行能力と空中アクロバットのような動きで翼竜は空から獲物を狙います。
敵から身を守るためにアンキオルニスが選んだのは森の中。
木の上に安全を求めました。
前足と後ろ足の両方にある4つの翼でアンキオルニスも少し飛ぶ事ができました。
ふだんは木の上で過ごし食べ物を探す時は滑空して地面に降りました。
翼の面積が少ないためそんなに長くは飛べなかったでしょう。
後ろ足が長く脚力のありそうな体形ですが4つの羽が動きを邪魔するため長時間地面にいるのは危険でした。
危険は頭上からやってきます。
アンキオルニスは小さな翼を広げ必死に敵をかわそうとしたでしょう。
しかしその飛行能力は翼竜には及びません。
1億6000万年前の空の支配者は翼竜でした。
発掘された化石の中にはアンキオルニスの後ろ足の羽毛が肉眼で見えるほどはっきりと残されていました。
古生物学者たちはアンキオルニスの骨格を医療用スキャナーで撮影し3次元のデータを作ってその生体力学を研究しようとしています。
後ろ足の翼をどう使ったかについては多少議論があります。
飛ぶ事とは関係がなく求愛のための飾りだという意見もあります。
また2本足で立つ恐竜は普通体の真下に脚があるものですがアンキオルニスは飛んでいる時は後ろ足を少し横に広げていたかもしれません。
鳥のように羽ばたけない代わり後ろ足でバランスをとって滑空能力を高めました。
アンキオルニスの発見で明らかになったのは体の構造や羽毛の進化が恐竜が空を飛ぶきっかけを作ったという事です。
では羽毛恐竜の祖先はどこまで遡れるのでしょうか。
そのヒントはシベリアで見つかりました。
2013年に発見されたロシア初の羽毛恐竜は鳥と恐竜の共通の祖先について新しい情報をもたらしました。
現在ここではロシアとベルギーの研究チームが共同で発掘作業を行っています。
(ゴドフロワ)ここはシベリア南東部のクリンダです。
ジュラ紀後期1億4500万年前から1億6000万年前の地層でここから驚くべき恐竜の骨が発見されました。
それらは羽毛恐竜の祖先について従来と異なる視点を与えてくれるものでした。
見て下さい。
かなり大きいです。
・この端ですね。
あ〜これか。
本当だ確かに羽毛のようだ。
この平たい石の端に細い糸状のものが見えますね。
これは恐竜の羽毛です。
羽毛は根元の方で1か所に集まっています。
このような特徴のある羽毛は一部の原始的な恐竜に見られたものです。
発見された化石は小さなものばかりでしたがこれらの化石から羽毛恐竜の祖先について新しい事実が分かってきました。
ジュラ紀のシベリアは寒暖の差が激しく針葉樹さえもまばらな不毛な土地でした。
火山活動も活発でした。
度々起きた噴火は生き物の命を奪いその体を泥の中に永遠に閉じ込めました。
シベリアのクリンダの地層から見つかった化石はジグソーパズルのように生き物の骨格がばらばらになっていました。
ゴドフロワたちのチームは2014年までにその全ての化石を調査しました。
(ゴドフロワ)完全にばらばらのピースを組み合わせるのはとても大変でした。
しかし骨には共通の特徴があり羽毛のある恐竜のものだと分かりました。
私たちはその恐竜をクリンダドロメウスと名付けました。
羽毛恐竜クリンダドロメウスは肉食ではありませんでした。
ほっそりとして動きが機敏な小型の植物食恐竜だったのです。
それは植物食恐竜にも羽毛恐竜がいたという世界初の発見でした。
植物食恐竜は進化の歴史において肉食恐竜とは全く別の系統に属しています。
火山活動が活発な土地でクリンダドロメウスは群れを成して生活していました。
同じ一帯でシンラプトルのような大型の捕食者が小さな植物食恐竜を狙っていました。
羽毛のある植物食恐竜クリンダドロメウスの存在は私たちに何を示しているのでしょうか。
今回の発見で全ての恐竜に羽毛があった可能性が出てきました。
鳥の特徴である羽毛が肉食恐竜にも植物食恐竜にもあったなら羽毛の起源は恐竜全体の祖先へと更に遡る事になります。
もしかしたら羽毛恐竜は恐竜が最初に地球に現れたという2億2000万年前にすでに誕生していたのかもしれません。
恐竜の羽毛が進化し最初の鳥類が誕生する過程はまだ多くの謎に包まれています。
羽毛恐竜が多数見つかっている中国やロシアでは新たな事実の解明に向けて研究が続けられています。
ジュラ紀のある日泥の中に沈んだクリンダドロメウス。
その体は長い時を経て化石として現れ鳥と恐竜の進化の秘密をかいま見せてくれました。
世界にはいまだ発見されていない未知の手がかりが眠っています。
それらはいつの日か眠りから覚め鳥類の進化の歴史を明らかにしてくれる事でしょう。
2017/02/11(土) 19:00〜19:45
NHKEテレ1大阪
地球ドラマチック「生命進化の謎 鳥は恐竜の子孫なのか」[二][字]

近年、続々と発見されている羽毛恐竜。ヒヨコのような羽毛や翼のある脚などユニークな外見ばかりでなく、その生態、さらには恐竜と鳥とをつなぐ進化の秘密が明らかに!

詳細情報
番組内容
鳥が恐竜の子孫であるという説は、19世紀の始祖鳥の化石発見で止まっていた。ところが近年、中国で次々に発見された化石により、驚きの事実が判明し始める。羽毛恐竜シノサウロプテリクスは、羽毛があるにもかかわらず飛べなかった。熱帯だと思われていた当時の気候がむしろ冷涼で、羽毛は防寒のためだったと考えられる。さらにシベリアで見つかったクリンダドロメオスにより、羽毛の起源に新事実が…!(2016年フランス)
出演者
【語り】渡辺徹