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クローズアップ現代+「いきなり130万部!? 村上春樹新作フィーバー」 2017.02.23

誰もが知っている村上春樹さんのベストセラーがずらり並んでいます。
こちらは、深夜まで営業している東京・代官山の書店の一角です。
こちらでは、日付が変わる時間を、今か今かと待っています。
村上さんの新刊小説がこのあと日付変わって、24日の午前0時0分1秒から発売されます。
村上さんにとっては7年ぶりの本格長編です。
本が売れない時代にたった一人、ミリオンセラーを連発する作家・村上春樹さん。
作品は、アメリカ、アジアヨーロッパ世界各国でベストセラーに。
ノーベル文学賞への期待も高まっていますよね。
でも、この人気の過熱ぶりには異議を唱える人もいます。
いやいや、別に太田さんだけではありませんよ。
今、ネットなどを中心に村上作品ラブのフィーバーにもの申す人たちが結構増えてるんです。
村上さん本人の預かり知らないところで熱心なファンとアンチの双方がありえない盛り上がりを見せているのです。
新刊発売を間近に控えまたまた熱気を帯びる村上春樹現象。
その深層に切り込みます。
村上さんの新刊小説ですが、あらすじやテーマは事前には発表されていません。
「騎士団長殺し」というタイトルは分かってるんですが、本の表紙ですとか、そういう装丁は発売前には発表されないことになってるんですね。
ですから、営業中の店内、準備作業はこのように幕を張った中で行われています。
そして伊東さん、段ボールが見えますけど、これ、この幕の中の様子をすみません、見ることはできない。
すみません、ちょっと出版社さんから止められていまして、見せたいのはやまやなんですけど。
申し訳ないです。
ということで慎重な作業が進められているんですね。
このように事前には秘密尽くしなんですけど、予約は好調だということなんですね。
そして出版社もこれ、発売前では大変異例なんですけども、重版を決めて、上下巻合わせて130万部が刷られることになっています。
こちらの書店では、午前0時を前にして、カウントダウンイベントも行われるということで、ファンの方、集まり始めています、こんばんは。
お1人まず、お伺いしますけど、きょうは何時からいらしてるんですか?
きょう、2時間前くらいから来てます。
ずいぶん長く待ってますね。
午前0時に手に入れて、そのあとはどうされるんですか?
きょうは徹夜で読んじゃいたいなと思ってます。
すごいですね、もう1人。
どちらからお越しですか?
きょうは川崎から来てます。
これ、午前0時過ぎると、終電、大丈夫ですか?
ちょっとまあ、それも心配しながら来たんですけど。
なるほど。
きょう手に入れたあとは、どういうふうにされますか?
やはりきょうのうちに読んでしまいたいなとは思っています。

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なるほど。
皆さん本当に、このようにイベントの整理券もお持ちなんですけれども、まもなくですね。
すごい楽しみです。
外は冷たい北風なんですが、静かな高揚感がこの書店の中を覆っています。
一刻でも早く読みたい、手に取りたいんですね。
でも今、出版不況といわれる中で、なぜ村上春樹さんの作品は、ここまで人々を熱狂させるのでしょうか。
「騎士団長殺し」。
なんとも不思議なタイトルだけが明らかになっている村上さんの新刊。
その発売を間近に控え都内の喫茶店で、ファンが集うイベントが開かれていました。
なんとまだ発売されていない本を勝手にデザインしちゃったようです。
新作は一体どんな小説なのか。
タイトルだけを手がかりにあれこれ空想して楽しもうというのです。
「ドン・ジョヴァンニ」はモーツァルトのオペラ。
主人公が騎士団長を殺すというシーンがあるので新作のモチーフになっているのではと考えました。
集まったのは大学生やピアノの講師会社経営者などなど。
皆さん、熱心なファン、いわゆるハルキストです。
今、全国各地、海外にもこうしたハルキストコミュニティーが生まれ、読書会を開いたりSNSでつながったりとファン活動が広がっているそうです。
ファンの多くは村上作品には隠れた意味を持つことばがちりばめられていると考えています。
本当のところは、作者の村上さんが黙して語らないため分かりません。
しかし、その沈黙が読者の想像力をさらに刺激し謎めいたことばの意味を自分なりに読み解いて披露し合うという楽しみ方が生まれているんですって。
宇野さん、もうここまで熱狂的なファンを生み出し、そして今、世界で50以上の言語に翻訳されている村上作品なんですが、なぜここまでフィーバーを巻き起こせるのか。
いろいろあるんでしょうけど、僕はその時代ごとの一見、気付きにくい、見えにくいんだけど、実はものすごく大きな問題に物語の力でずっと向き合ってきたということが一番大きいんじゃないかなと思います。
それちょっと、年表を見ながら見ていきましょうか。
簡単におさらいしますと、村上春樹さん、もともと1949年、京都にお生まれで、今、68歳です。
1979年に風の歌を聴けでデビューしましたよね。
この時期の初期作品ですよね、そこには何か学生運動の挫折の経験って、すごく大きく横たわっていると思うんですよ。
何かこう革命というものが信じられなくなったと。
なんか歴史が、個人の人生を意味づけてくれない時代をどう生きていったらいいのかという問題がね、中心にあったと思うんです。
このときのやっぱりキーワードが、デタッチメントだっていうふうに村上さん、おっしゃてるんですね。
デタッチメント?
関わりのなさですね。
何かこう、鼻息荒くして世界を変えるんだというふうに一生懸命やって、他人を傷つけてしまうよりも、物事に対してやれやれと、ニヒルに構えて、なんかこう、距離を置いたほうがいいんじゃないのかっていうね、そういう生き方を選んだ男性主人公の物語をずっと描いてきたんですね。
分かるかも。
でもそののち、1987年になると、いわゆるバブル景気真っただ中、ノルウェイの森が大ベストセラーになりまして、これ、国内だけで累計1000万部突破、日本で一番売れた小説ともいわれています。
そして1995年、この年は阪神・淡路大震災、そして地下鉄サリン事件が起きました。
その当事者にみずから取材をしたアンダーグラウンドなどの作品を発表して、ここは大きく作風に変化を与えたとも言われてますよね。

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これも村上さん本人が、自分の作品はデタッチメントからコミットメントへ移行したっていうふうにおっしゃってますね。
コミットメントへと。
何かやれやれとね、物事から距離を取ってるだけでは、オウム真理教のような、もうなんか、何を信じていいか分からない時代だからこそ、自分の信じたいものを盲目的に信じちゃう人間の暴走、そういった新しい暴力に対抗することはできないんじゃないかという疑問がね、やはり彼の中では大きかったらしいんですよ。
そうして彼は現代だからこそ、新しい形で、正義とかモラルだとかを描くべきなんじゃないかというふうに、かじを切ったといわれているんですね。
コミットしていく、関わっていこうとしていく。
新しい関わり方が大事なんだって、それを描くのが自分の小説なんだっていうふうにかじを切った、
さあそして、2000年代に入りますと、フランツ・カフカ賞や、エルサレム賞など、国際的な賞を次々と受賞しまして、ノーベル文学賞も毎回取る、取らないと注目されているということなんですね。
本当にまさに巨大な存在であるわけなんですが、今、そのことによって、村上作品には本当にハルキストなる熱狂的なファンも生まれていますが、一方で、こんな意見もあります。
ちょっと謎のメッセージも入っていましたけれども、太田さん、冒頭、こんな日本人いるかよとか、ちょっと難しすぎるんじゃないというご意見でした。
でもね、村上春樹の小説って、そもそもそんなに日本人だけを対象にしていないと思うんですよね。
今だったらたぶん、間違いなく海外のほうが読まれていると思いますよ。
割合的な、海外の読者のほうが全然多いはずなので、日本人しか感情移入できないような物語を、たぶん意図的に描いてないですね。
そこを言うと、そもそもターゲットは違う。
違いますし、村上さんって、さっきの太田さんじゃないですけど、やっぱアンチって多いんですよ、それね、昔からで、デビューしたころは、何かアメリカの文学の文体の影響を受けながら、何かこう、若者のおしゃれな都市のライフスタイルを描いた風俗小説なんじゃないかという扱いを受けて、いわゆる文壇の評価ってすごい低かったんですね。
国内のね。
あるいはね、村上春樹の男性主人公にありがちな、やれやれと斜めに構えた、ちょっとなんか、おしゃれに気取った、実はすごくうじうじしている男性のナルシシズムのことしか描けてないんじゃないかっていう、その批判がものすごく大きくて、ずっとね、ちょっとことば選ばなきゃいけないですけど、ばかにされてきた作家なんですよね、業界的には。
それがノルウェイの森の大ヒットで、国内のセールスがよくなったっていうのと、それ以上に海外に翻訳されていて、どんどんどんどん評価が上がっていって、凱旋帰国的に何か文壇村の評価を覆していって、日本を代表する作家になっていったっていう経緯があるんですよね。
まさに唯一無二の存在と言っても全然過言ではないですもんね。
そんな今、村上作品に対して、こうした楽しみ方、読み方をしている人もいるんです。
村上春樹作品はファンをとりこにする独特の文体を確立しています。
「台所でスパゲティーをゆでているときに電話がかかってきた」。
クールでおしゃれそしてリズミカル。
村上作品の大きな魅力の一つです。
しかし今、この文体をパロディーにして楽しんでしまおうという動きがネット上で広がっています。
例えば、こんな感じ…。
なんとなく村上テイスト捉えているような気がしません?こうした村上パロディー。
去年から多くの人が競い合うようにネットに投稿。
若者を中心にちょっとしたブームになっています。
投稿者の1人、菊池良さんです。
村上作品だけが突出して売れる中、ちょっと皮肉りたいという気持ちが働くんでしょうかね。
現代のリアルな若者目線から村上文学に物申したいという人も現れました。
アマゾンのブックレビューに投稿され、大きな話題を呼んだ一本の書評があります。
この書評を書いたドリーさん27歳。
ドリーさんは村上作品がいつまでも80年代バブルの気分を引きずって今の現実とかけ離れているのではと感じていました。
この書評は前代未聞となる3万人近い人から支持を集めました。
でも、そうは言いながらドリーさん村上さんの長編小説はすべて読破したそうです。
気になるところには細かく書き込みアンチとは思えないほどのめり込んでいますね。
嫌いでも放っておけない。
アンチでもなぜか読んでしまう。
それが村上文学の不思議なところ。
ドリーさんもまもなく発売される新作小説を心待ちにしています。
いわゆるアンチだ、アンチだという人も、気になってしょうがないっていう、引き付ける魅力、魔力があるのが村上春樹さんの作品と見えるような気もしますけれども、やはり双方の意見がここまで沸き上がる。
これ、なんでなんでしょうね?
それはね、やっぱり村上春樹が掲げているもののテーマの魅力と、そこに対してのある種の過剰な期待なんでしょうね。
やっぱり待ち焦がれていると。

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例えば、デタッチメントからコミットメントへという話しましたよね。
僕はあそこに村上春樹が十分に応えてるかどうか、若干疑問なんですよね。
宇野さん的に。
例えば村上春樹の作品って、さっきのVにもありましたけど、なんかフェミニズムからの評判があまりよくなかったりもする。
それ、なんでかっていうと、出てくる女性がちょっと男に都合よすぎると。
あんまりね、人間的に扱われてないんですよね。
なんか、村上作品に出てくる女性というのは、なんかナイーブな男性主人公が世の中に関わり合いを持つためのちょうつがいみたいな存在として描かれていて、例えばねじまき鳥クロニクルなんて、主人公に代わって悪を成敗しちゃうんですよ。
そしてその罪を背負って失踪とかしちゃうんですよね。
ちょっと奉仕し過ぎじゃねとか思いますよね。
たまったもんじゃないって、女性から見ても思うんですけど。
それからなってなくない?新しいコミットメント。
自分で解決してない。
あるいは1Q84なんかも、オウム真理教みたいなね、カルト教団が出てきて、そこに主人公が対決するって話を描いているんだけれども、途中からほとんど出てこなくなっちゃうんですよ。
それで、最後3巻目とかはなぜかいつもどおりの、このままじゃいけないけれど、自分からは何もしたくない系のナルシシスティックなお父さんと和解して、コンプレックスを回復するとか、なんか幼なじみの女のこと結婚するとかもう、そういうね、いつもの春樹話になってしまって、ああいうのってね、結構、わりかし僕はがっかりしましたね。
でも、そんながっかりなところにはイコール期待も。
期待もあるんですよ。
村上春樹の最大の魅力って、やっぱ掲げてる主題が、追求しているものが、僕は世界的な問題ってことだと思うんですよね。
どういうこと?
革命を失った世界をどう生きていったらいいのかとか、信じたいものを信じられる時代に正義はどこにあるのかって、ものすごくグローバルな大きい問題じゃないですか。
日本だけの問題じゃないんですよね。
それを巧みな物語の力で描いてきた村上春樹だからこそ、ここまでの期待を背負っているわけです。
その期待に応えるべく、今、村上春樹さんはいい意味で自分の世界の中で、いろんなことが聞こえてるかもしれないけども。
ファンってぜいたくなもんでね、斜め上から、むしろいい意味で裏切ってほしいみたいな心理も当然あるわけですよね。
そこはちょっと複雑ですけどね、ただ一番うれしいのは、斜めからなんかこれまで掲げてきた問題設定を無効化するような、すごいアプローチが出てくることを一番期待したいんですね。
それはなかなかハードルが高いですよね。
高いけど、村上春樹には、やっぱりそれぐらいの期待をしたいですね。
村上春樹さんだからこそのその期待の高さというのが、宇野さん自身の中にも、ずっと読んできてあるということなんですね。
でも今回、まさにこれからの新書の販売を前に、世界のいろんな人々のそれぞれ、期待感高まってる中で、ずっと読まれている宇野さんも、やはりちょっと今回の新しい新作に対しては、特別な期待感って、やっぱりありますか?
ノーベル賞、本人は取りたいでしょうからね。
そのことにあんまり引きずられ過ぎないで、自由にやってほしいなとは思いますけどね。
それも含めての、本当に周囲の期待も高まりますけれども、やっぱりだからこその村上春樹さんというのもよく分かりました。
(拍手)人生という名のコント番組「LIFE!」で〜す!2017/02/23(木) 22:00〜22:25
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代+「いきなり130万部!? 村上春樹新作フィーバー」[字]

村上春樹氏7年ぶりの本格長編がまもなく発売。今回もファン=ハルキストとアンチによる仁義なき戦いが勃発!“村上フィーバー”に隠されたヒットの方程式とは?深層に迫る

詳細情報
番組内容
【ゲスト】評論家…宇野常寛,【キャスター】伊東敏恵
出演者
【ゲスト】評論家…宇野常寛,【キャスター】伊東敏恵