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字幕書き起こし 地球ドラマチック「生命進化の謎 哺乳類はどこから来たのか」 2017.02.27

哺乳類はどのように進化したのでしょうか。
恐竜時代に初めて現れた哺乳類。
その化石は長い間小さなものしか発見されませんでした。
そのため哺乳類はネズミほどの大きさで恐竜が絶滅したあとで繁栄したと考えられてきたのです。
ところが近年中国で極めて保存状態の良い哺乳類の化石が数多く発見され恐竜時代の哺乳類はサイズも種類も豊富だった事が明らかになってきました。
哺乳類はどのようにして肉食恐竜の傍らで生き抜き大量絶滅の危機を乗り越えたのでしょうか。
哺乳類の進化の謎に迫ります。
かつて火山地帯だった中国の遼寧省で驚くべき化石が発見されました。
およそ1億3,000万年前に生息していたレペノマムスという哺乳類の化石です。
体の大きさはオオカミほど。
羽毛恐竜の子供を食べていたと考えられます。
一方で巨大な恐竜にとってレペノマムスは獲物でもありました。
レペノマムスは当時最大の哺乳類で火山活動の活発な地域にも生息していました。
細かい粒の火山灰によって保存されたレペノマムスの化石は哺乳類の起源に関する定説を覆す大発見となりました。
我々人類も哺乳類です。
そう考えると哺乳類の進化の歴史は人類とも関連しているといえます。
「哺乳類」という名前は乳腺に由来しています。
哺乳類は子供に乳を与えて育てる唯一の動物です。
他にも体毛がある事や耳と顎が独立している事さまざまな形の歯があるのが特徴です。
恐竜時代の哺乳類にはすでに全ての特徴がありました。
哺乳類の歯は単純な形から次第に複雑になり食べ物をかむための道具となりました。
そのおかげで恐竜が滅びた大量絶滅期を生き延びる事ができたんです。
哺乳類の進化はおよそ2億5,000万年前。
三畳紀と呼ばれる時代の初期に始まりました。
地球はそのころ極端に暑く哺乳類型は虫類と呼ばれる哺乳類の祖先が生きていた時代です。
その一つトリナクソドンは哺乳類への進化の過程にある種では虫類の親戚にあたります。
全長およそ50センチ。
脚はは虫類のように体の真下ではなくわきについています。
外側に張り出した耳はありません。
一方で哺乳類と同じようにさまざまな形の歯があり全身は体毛で覆われていました。
トリナクソドンは暑さから身を守るため川岸に巣穴を掘って暮らしていました。
フランスの研究所では今シンクロトロン放射光を用いた新しい技術によって19世紀に南アフリカで発見されたトリナクソドンの巣穴の分析が行われています。
この技術を使えば発掘した巣穴を壊す事なく中身を分析する事ができます。
巣穴はおよそ2億5,000万年前のものでした。
その前地球上では種の7割が滅ぶという大量絶滅が起きていました。
絶滅を免れたトリナクソドン。
ではこの個体はなぜ命を落とし化石となったのでしょうか。
研究に使う放射光は医療用のX線と比べて格段に強烈です。
化石化した骨と周囲の岩の密度の差を識別する事ができます。
この調査から思いもよらない発見がもたらされました。
トリナクソドンの傍らに別の生き物が横たわっていたのです。
両生類のブローミステガです。
(フェルナンデス)驚くべき発見です。
とても珍しいケースでしょう。
通常動物が他の種の動物と巣を共有する事はありません。
体の大きさや食料が似ていたらなおさらです。
寒さから身を守るために冬眠する哺乳類がいるように哺乳類型は虫類トリナクソドンは暑さを避けるために地下の巣穴で休眠状態になったと考えられます。
休眠状態だったトリナクソドンは両生類ブローミステガが巣穴に侵入した事に気付かなかったのでしょう。
ブローミステガも身を守ろうとしていたのかもしれません。
化石から傷を負っていた事が分かっています。
(フェルナンデス)このブローミステガはろっ骨が7本折れていました。
ただし回復途中にあった事が分かっています。
骨折した部分の周りに細かい骨が形成されていたからです。
川岸の巣穴で休眠中のトリナクソドン。
そして傷を負ったブローミステガは突然命を落としました。
川の水位が上がり巣穴に水が流れ込んだからです。
(フェルナンデス)地下の巣穴で休眠状態になるという特殊な代謝のおかげでトリナクソドンの仲間は厳しい環境を耐え抜き生き延びる事ができました。
これがその後の哺乳類の出現につながったんです。
研究者たちは更なる謎を解明するため新たな巣穴を探しています。
トリナクソドンがどのように繁殖していたかを突き止めるため卵か妊娠中だったメスを探しています。
難しい課題です。
哺乳類の祖先の化石自体がなかなか見つからないからです。
20世紀の終わりまで初期の哺乳類の化石で発掘されたのは歯だけでした。
パリの国立自然史博物館には哺乳類の歯が保管されています。
歯が発見された当時エマニュエル・ゲールブランは駆け出しの古生物学者でした。
研究者たちは顎や頭の骨を丸ごと見つける事を目指していました。
しかし何トンもの堆積物をふるいにかけて見つかったのは数えるほどの歯でした。
歯はエナメル質に覆われているため頭の骨の中でも最も硬く化石として残りやすいのです。
(ゲールブラン)ここにあるのはさまざまな哺乳類の歯です。

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  一番のポイントはその小ささでしょう。
数百個の歯が靴箱一つに収まってしまうほど小さいんです。
つまりある特定の地域と時代における哺乳類の歴史全てが引き出し一つに収まってしまうほど小さな数百個の歯で表されるという事です。
ゲールブランのチームは三畳紀後期に生息していた哺乳類の歯をこれまでに1,000個近く発見しています。
およそ2億1,000万年前のもので世界最古の哺乳類の歯のコレクションです。
更に歯の形状から12種の哺乳類が確認されています。
これらの臼歯には哺乳類にだけみられる3つのとがった部分があります。
臼歯は食べ物をすり潰すために使われます。
犬歯は食べ物をつかみ門歯は切る役割を担います。
歯が多様であるという事はその動物が哺乳類だという事で他の動物なら歯は1種類しかありません。
歯の形状は身分証のようなものでその動物がどのグループに属しどのようにして歯を使っていたか。
つまり何を食べていたかを教えてくれます。
例えば鋭くとがった歯があれば食虫動物であったと考えられます。
反対にどちらかといえば平らな歯だとしたら植物食動物であると考えられます。
歯の化石からは恐竜時代に生きた哺乳類の食性をうかがい知る事ができます。
しかしその姿形を特定する事はできません。
ところが2008年フランスで哺乳類の姿形に関する驚くべき発見がありました。
2人の古生物学者がやってきたのはおよそ1億年前白亜紀の地層が現れた採石場です。
当時ここは針葉樹やイチョウなどが立ち並ぶ森でした。
その痕跡が今でも残っています。
(ネロデュ)この葉っぱは1億年もの間粘土の中で眠っていました。
息を吹きかけると…。
こうして今もしなやかに曲がります。
長い年月にもかかわらず変色している以外葉が大きく変化した様子はありません。
2人はここで別の宝を探し出そうとしています。
動物の体の一部が針葉樹の樹脂に閉じ込められる事があるからです。
樹脂は化石化すると琥珀になります。
(ビュロ)ここは採石場の底の部分です。
面白い事に水の流れによって異なる地層が露出しています。
(ビュロ)地層は異なる堆積物が交互に重なって形成されるため横から見ると線のようです。
ここの堆積物には主に2種類あり白や黄土色そして赤いのが砂で黒は石炭です。
こちらは砂と粘土の層です。
植物や細かい琥珀のかけらがあります。
私たちが探しているのは琥珀です。
近くの池で堆積物をふるいにかけます。
小さいのがいっぱいだ。
(ネロデュ)これはいい。
透明でところどころ赤や茶色だ。
こうした琥珀の中から哺乳類の外見に関するある大きなヒントが発見されました。
琥珀の中に2本の毛が閉じ込められていたのです。
こちらに映っているのが琥珀です。
真ん中に2本のうちの1本の毛が確認できます。
非常に細い毛です。
1億年前の毛と現代の哺乳類の毛を比較したところ見た目だけでなく構造的にも多くの点でとても似通っている事が分かりました。
輪郭からも現存する動物との類似性が確認できます。
哺乳類の毛の化石はこれまでほとんど発見されていません。
古生物学における大発見といえるでしょう。
1億年前の哺乳類にも現在の哺乳類と同じく体毛がありました。
体毛は厳しい気候から身を守り大量絶滅の時代を生き延びる助けとなったでしょう。
今世紀初めに中国で恐竜時代の哺乳類の容姿を示す新たな化石が発見されました。
1億2,500万年前の白亜紀と呼ばれる時代の化石です。
化石が発見された場所は当時半島でした。
辺りを支配していたのはティタノサウルスの仲間。
全長10メートル以上もある巨大恐竜です。
エオマイアスカンソリアはそうした環境で生きていた哺乳類です。
かつて火山地帯だった中国遼寧省には何百万年分もの太古の痕跡が残されている場所があります。
ここの地層は湖の底に堆積してできたものでさまざまな脊椎動物の化石が保存されています。
人類の初期の進化の歴史を知るうえで最も重要なのは白亜紀の哺乳類の化石です。
度重なる火山活動によって堆積物の層が何層もでき火山灰によって哺乳類の化石は見事な状態で保存されました。
エオマイアは体長およそ15センチ体重30グラムほど。
羽毛恐竜にとって格好の獲物でした。
北京自然博物館ではエオマイアの仲間の化石が研究されています。
エオマイアには人間と同じく胎盤があり胎児を子宮内で育てる有胎盤類です。
体が丸ごと見事なまでに保存されていて哺乳類の研究者にとってはまさに夢の化石です。
(羅)すばらしい発見です。
骨格が全てそろった状態で発見できたおかげで初期の哺乳類の本来の姿が細かいところまで分かります。
エオマイアは白亜紀に生息していました。
顎がほっそりとしていますね。
見てのとおり4本の脚もほっそりとしています。
更に長い指と特徴的な爪をしている事から木に登っていたと推測できます。
エオマイアは木の上や木が生い茂る環境に生息しこの点では同時代の他の動物たちと比べ生き抜く能力にたけていました。
これは哺乳類の進化における強みともなりました。
エオマイアは木の上に巣を作りました。
地上に生息する恐竜から身を守る事ができる安全な場所です。
とはいえ水分補給のためには巣から出る必要があります。
骨格からエオマイアが優れた移動能力を持っていた事が分かっています。
特に手首の構造は木の上に生息する霊長類をほうふつとさせます。
更に脚の関節を分析した結果エオマイアには多くの点において現在の哺乳類の出現につながった事を示す多くの特徴がある事が分かりました。
歯から何を食べていたかも分かりました。
正面にすごくとがった歯がある事が分かります。
またこの部分の歯は全体的にかなりとがった三角形をしています。
昆虫をかみ砕いたり毛虫やミミズなどを引きちぎるのに適した形をしているといえます。
エオマイアの発見以降中国では更に複数の哺乳類の化石が発見され哺乳類の進化に関する古生物学者たちの展望は大きく変化しました。
北京にある研究所には太古の哺乳類の化石が数多く保管されています。
中でも大きな骨格をしているのがレペノマムスです。
全長およそ75センチ。
2004年に発掘されました。
レペノマムスはおよそ1億3,000万年前の白亜紀に生息していました。
当時の哺乳類の大半はネズミほどの大きさでしたからこれはかなり大型です。
頑丈な顎に鋭くとがった歯も特徴です。
これまで古代の哺乳類は虫を食べ体は小さく恐竜の陰で身を潜めて暮らしていたと考えられていました。
ところがレペノマムスの鋭くとがった歯は肉食動物だった事を示しています。
更に腹部からはなんと小型の恐竜の赤ちゃんの骨が見つかりました。
古代の哺乳類は恐竜を食べていたわけです。
それは画期的な発見でした。

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  古代の哺乳類の中には恐竜の陰でびくびくしながら生きるどころか恐竜の子供を食べるものもいた事が証明されたからです。
レペノマムスがどのように狩りをしたかは分かっていません。
しかしオオカミのように群れで狩りを行ったのではないかと考えられています。
興味深い化石は他にもあります。
2006年に発掘されたボラティコテリウムの化石には前足と後ろ足の間に大きな特徴がありました。
黒いシミのような部分を顕微鏡で見ると複数の毛が確認できます。
皮膜と呼ばれる毛に覆われた薄い膜です。
ボラティコテリウムにはムササビのように4本の脚の間にピンと張られた皮膜があり木の上から滑空する事ができました。
ボラティコテリウムが発見されるまで最初の空飛ぶ哺乳類は5,000万年前のコウモリだと考えられてきました。
恐竜と同じ時代の白亜紀に生きたボラティコテリウムの発見は空飛ぶ哺乳類がそれまで考えられてきたよりもずっと以前に存在した事を意味します。
ボラティコテリウムは夜行性で夕暮れどきに狩りを始めました。
(王)恐竜時代の哺乳類がこれまで考えられていたよりも生態学的に多様だったという事です。
木の上や地上に生息していただけではなく空中を滑空するものもいたわけですから。
この空飛ぶ動物の存在は哺乳類が恐竜絶滅のずっと以前からさまざまな環境に適応していた事を意味します。
しかしどの哺乳類がいつ有胎盤類へと進化したのかという謎は残っています。
遺伝学者と古生物学者はそれぞれの意見を激しく戦わせてきました。
ドイツ北部にある研究室では哺乳類の系統樹を完成させるべく現存する哺乳類の遺伝子の解析が進められています。
(ビニンダエモンツ)遺伝子の共通点を洗い出す事でどれだけ近い関係かを知る事ができます。
オラフ・ビニンダエモンツは2007年に現存する動物の遺伝子の99%を解析しました。
(ビニンダエモンツ)膨大なDNAデータはより完璧に近い進化の全体像を把握するのに役立ちます。
系統樹において化石はいわば点でその間を埋めるのがDNAです。
だから哺乳類が共通の祖先からどう分岐したかが分かるんです。
分子時計と呼ばれるこの系統樹は哺乳類のうち有胎盤類が1億6,000万年前のジュラ紀に誕生した事を示しています。
やがて有胎盤類は白亜紀に多様化しげっ歯類や霊長類などが出現しました。
これは想定外の結論です。
なぜならジュラ紀の哺乳類の化石はまだ発見されていないからです。
DNAデータと化石データにズレがある事自体興味深いですね。
アメリカのある研究所ではジュラ紀どころか白亜紀にも有胎盤類そのものは存在しなかったという結論が導かれました。
研究を率いたのはカーネギー自然史博物館の古生物学者ジョン・ウィブルです。
きっかけはモンゴルである化石が発見された事でした。
7,500万年前の白亜紀の地層から頭骨が出土したのです。
その骨はこれまで発見されたどの種にも属しませんでした。
そのため多くの化石や現存する哺乳類と徹底的に比較されました。
(ウィブル)その生物が何なのか他のどの生物と関係あるのかを特定するため骨の形態学的特徴を洗い出しこれまでに発見された化石や現存する動物のさまざまな種と比較しました。
結論は白亜紀に有胎盤類そのものは存在せず存在したのはその祖先にあたる動物だけだというものでした。
どちらが正しいのでしょうか。
DNAデータは有胎盤類のうちげっ歯類や霊長類などの起源は恐竜がいた白亜紀だと示しています。
問題はこの仮説を裏付ける化石が一つも発見されていない事です。
DNAデータによる分子時計説が正しければ化石が見つかるはずです。
しかし見つかっていません。
白亜紀に有胎盤類が存在した事は疑う余地もありません。
問題はそれがどのような有胎盤類だったかという事です。
哺乳類の正確な系統樹を完成させるにはまだどちらのデータも足りません。
DNAデータで突然変異の時期を特定する一方で仮説を裏付ける新たな化石の発見が期待されます。
哺乳類の起源を突き止めるには有胎盤類より更に古い時代の哺乳類を探さなければなりませんでした。
1997年に中国で発掘されたジャンヘオテリウムはまさに有胎盤類よりも前の時代の哺乳類でした。
(羅)体毛と生殖系の特徴からジャンヘオテリウムは哺乳類だといえます。
授乳を行っていた事は間違いありません。
ただし卵から生まれたのか赤ちゃんとして生まれたのかまでは特定できていません。
食料が十分でない環境においては授乳が有利に働きます。
母体の蓄えで子供が成長を続けられるからです。
授乳は腹部にある乳を分泌する何百もの乳腺により行われました。
現在のカモノハシのように子供は母親の腹部の毛をなめて濃厚なミルクを飲みました。
ジャンヘオテリウムにはカモノハシと共通の特徴がもう一つあります。
後ろ足にある突起いわゆる蹴爪です。
(羅)こちらの化石では骨ばった蹴爪が確認できます。
最初の化石も蹴爪があったと推測されます。
現在生息しているカモノハシなどは蹴爪を自己防衛のために使っています。
ジャンヘオテリウムの蹴爪には敵をまひさせる毒があった可能性があります。
とはいえさほど有効な武器ではなかったでしょう。
毒が回るまでに時間がかかってしまうからです。
そこで哺乳類は進化とともに素早く逃げる能力を身につけます。
素早く逃げるのに最も役立つのは優れた聴覚です。
耳の骨の進化は哺乳類にとって大きな利点でした。
1億2,000万年前に生息していた哺乳類リアオコノドンの化石が2011年に発見されました。
この化石によって現在の哺乳類の耳の骨がどのように形成されたかが明らかになりました。
このリアオコノドンの標本は中国で発掘された哺乳類の化石の中でも最も完全な形で発見されたものの一つです。
全ての骨が残っており見事な標本になっています。
中でも耳小骨と呼ばれる耳の辺りの小さな骨はあまりに小さいため化石として残る事はめったにないんです。
哺乳類の耳の進化の過程を示す極めて重要な標本だといえます。
太古の哺乳類の下顎は長く伸びた骨によって頭の骨につながっていました。
この化石ではそれが進化し耳の骨が形成され始めています。
現在の哺乳類では独立した3つの骨が内耳を形成しています。
なんと人間を含む全ての哺乳類が子宮の中でこの進化の段階を再現し内耳を形成します。
この精密な内耳によって私たちは周囲で起こっている物事を常に聞き分け分析する事ができるのです。
(王)他の動物よりも早く危険を察知する能力があれば敵から逃げる事も可能になります。
哺乳類の武器となった耳の骨の謎。
それは新たな化石の発見によって解明されました。
哺乳類のもう一つの武器歯。
アメリカシアトルのワシントン大学では最先端の技術を用いて3,400万年前に絶滅した哺乳類多丘歯類の歯を分析しています。
(ウィルソン)およそ8,500万年前恐竜が絶滅する2,000万年ほど前に当時生息していた多丘歯類から多様な子孫が出現したという興味深い結果が得られました。
例えば最初は僅かにとがった歯で昆虫などを食べていたのが次第にさまざまなとがり方をした歯や特殊な形をした歯が出現し植物など新たな食料を食べられるようになりました。
(ウィルソン)新しい食料を食べられるようになった事で多丘歯類は種を増やし体の大きさも多種多様に進化しました。
その結果恐竜が滅びた大量絶滅をも生き延びる事ができたのです。
ウィルソンの研究によって多丘歯類は恐竜が絶滅する前に巧みに進化した事が明らかになりました。
花をつける植物や被子植物は白亜紀に出現しました。
多丘歯類の主な食料は昆虫から植物へと移行したのです。
(ウィルソン)こちらは多丘歯類の中でも大きな化石です。
ビーバーほどの大きさだったでしょう。
歯列の端から端まで複数の凹凸があり食料をかみ砕くのに役立ちました。
一方で…こちらの試験管には別の多丘歯類の歯が入っています。
同じくたくさんの凹凸があります。
先ほどのとは大きさが全く異なります。
歯の形状にどのような意味があるのか数値化し分析する作業は簡単ではありませんでした。

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  これまでさまざまなアプローチを試みてきましたが今ほど精密な分析はできませんでした。
古生物学者たちの研究に革命をもたらしたのが医療用のCTスキャンです。
6,700万年前の歯の標本をX線で細部までスキャンします。
長い門歯が特徴的ですが研究者を引き付けるのは臼歯のかみ合わせ部分の複雑さです。
CTスキャンにかけコンピューターで解析し正確な歯の形状を表します。
ウィルソンの研究によれば肉食の哺乳類が比較的シンプルな歯をしていたのに対し多丘歯類はずっと複雑でした。
かみ合わせ部分の凹凸は肉食の哺乳類よりも多いものでおよそ3倍も確認されました。
こちらの標本には歯列の表面におよそ500種もの多種多様な凹凸が確認できます。
植物をうまく消化するには植物の繊維をすり潰す必要があります。
多丘歯類は植物を主とした食性へと進化したんです。
すり潰すという歯の機能が植物食や雑食の哺乳類が急増する一因となりました。
初期の哺乳類は生態的に優位な地位をつくり出したのです。
哺乳類はどこから来たのかという重要な疑問は今世紀に入るまで謎のままでした。
答えを与えてくれたのはまたもや中国遼寧省で発掘された化石でした。
2011年ジュラマイアシネンシスの化石がジュラ紀の地層から発見されました。
中国のジュラ紀の母という意味です。
(羅)とても興味深い発見です。
有胎盤類の系統が地球に出現した時期を知るための新たな道しるべとなるわけですから。
現在の全ての有胎盤類がジュラ紀を起源としまさにここから出現したと考えられます。
この岩場には火山灰が眠っています。
地質年代学の分析によればこの地層はおよそ1億6,000万年前のものだという結果が出ています。
つまりこれらの岩がジュラ紀後期のものである事は間違いありません。
ジュラマイアシネンシスの化石は有胎盤類の中で最古の化石であり哺乳類の進化においても重要な発見となりました。
歯を分析した結果臼歯犬歯門歯が確認されました。
ジュラマイアの発見は有胎盤類がこれまで考えられていたより少なくとも3,500万年前まで遡って存在した事を意味します。
つまり有胎盤類が誕生する前の哺乳類の起源もDNAデータが示すとおり化石データよりもずっと以前である可能性があります。
ジュラマイアの発見によって遺伝学者と古生物学者の溝は埋まりつつあります。
ジュラマイアの発見によって1億6,000万年前の哺乳類が体毛多様な歯そして敵の位置を把握し逃げるための優れた聴覚をすでに持ち合わせていた事が判明しました。
その後の繁栄をもたらす特徴です。
(羅)虫を食べていた事や木登りの能力を持ち合わせていた事などはこの哺乳類が進化するうえで有利に働きました。
ジュラ紀後期にしてすでにさまざまな能力を身につけており恐竜絶滅後の時代にその子孫が繁栄したのも納得できます。
恐竜時代の哺乳類の祖先は確かに小柄でした。
しかしこれまで考えられていた以上に多様でさまざまな強みを持っていました。
そしてその能力は私たち人類へと受け継がれてきたのです。
2017/02/27(月) 00:00〜00:45
NHKEテレ1大阪
地球ドラマチック「生命進化の謎 哺乳類はどこから来たのか」[二][字][再]

私たち哺乳類の祖先はどこから来たのか?その進化の謎に迫る発見が相次いでいる。大量絶滅時代を生き抜いた哺乳類の戦略とは?最新の化石研究を圧巻の高精細CGでつづる!

詳細情報
番組内容
恐竜時代に初めて現れた哺乳類。長い間、初期の哺乳類はネズミほどの大きさしかなく、恐竜が絶滅した後で繁栄したと考えられていた。ところが、近年の中国での発見により、恐竜時代にはすでにサイズも種類も豊富だったことが明らかに。中には、恐竜を食べていた痕跡も!哺乳類は、どうやって肉食恐竜のかたわらで生き抜き、大量絶滅の危機を乗り越えてきたのか?哺乳類進化の謎に迫る!(2016年フランス)
出演者
【語り】渡辺徹