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字幕書き起こし 100分de名著 ガンディー“獄中からの手紙”(最終回) 第4回 2017.02.27

技術の進歩によって私たちの社会は目まぐるしいスピードで走り続けています。
しかし効率的になればなるほどどこかでゆがみが生じてしまいます。
ガンディーはそんな現代の問題を見越していたかのように「よいものはカタツムリのように進む」と説きました。
近代文明を超える価値を追い求めたガンディー。
その思想に迫ります。

(テーマ音楽)「100分de名著」司会の…今月はガンディー「獄中からの手紙」を読み解いています。
今日は早速ですがこちらの写真からご覧頂きましょう。
これはガンディーが何をしてるところだと…?何でしょう?仕事なんですかね。
糸車を回して糸を紡いでいるところなんですけれどもなぜこのような事をしていたのかというのを今日はキーワードに見ていきたいと思います。
読み解いて下さるのは今日も…よろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。
中島さんこのなぜガンディーは糸車を回しているんでしょう?まず一つにはガンディーが機械というものに支配された近代文明みたいなものを疑っているという事ですね。
手仕事が重要だというふうにガンディーは言ったんですが…その言葉だけ聞くと何で…。
ちょっと離れてて分からないですね。
糸車を回して独立に?って思ってしまいますが。
その背景にあったのはこの糸のもとになっている綿花の問題だったんですね。
インドは綿花がたくさんとれます。
しかしどこで服とか布をつくってるかというとそれを輸出してイギリスなんかでこれがどんどんどんどん布製品に大量に機械を使って加工されそしてまたインドに売られてかえってくるんですね。
そうするとどういうふうにお金の流れはなってるかというと…どんどんどんどんお金が出ていってしまうそういう仕組みになっているんですね。
これを「富の流出」というふうに言った人がいるんですけどもこれを何とかしなければいけないというのが非常に重要な課題としてありました。
その時にガンディーはちゃんと自分たちで作ろうよ。
糸を作りそして布まで作っていこうというふうに言い始めたんですね。
そしてそのシンボル象徴として「スワデーシー」というのが重要だというふうに言い始めるんですね。
こちらですね。
「スワデーシー」という事ですが意味をお願いします。
はい。
日本語で表記される時「スワデシー」というふうに書いたりするんですけど同じ事なんですが「スワ」というのと「デーシー」というのがここで分かれるんですけれども。
日本語ではよくこの…実はガンディーが考えたのはその狭い意味ではなくてむしろこの「国」よりも「大地」という方に重きが置かれたそういう解釈でこのスワデーシーという概念を作っているんですね。
ではこの広い意味のスワデーシーですけれども一体どのような意味だったのか。
「獄中からの手紙」ではこんなふうに書かれています。
ガンディーは「スワデーシー」とは身近な隣人たちへの奉仕の心であると説きます。
遠いイギリスの製品を買うのではなく糸車を回し自国品を普及する事が今のインドにおいて行う事のできる最も重要な奉仕であると考えたのです。
しかし自国品の愛用は単に外国製品を嫌う行為ではないという事も説いています。
うん何か最後の所が多分大事なんだろうなって思うのは「スワデシーの真正の信奉者は外国人に対して悪意を抱く事ではありません」。
最後の所でちょっとああそれではないというのは念を押してるという事はここに何か鍵があるのかなと。
伊集院さんおっしゃって下さったように…ガンディーは考えていたんですね。
例えば地産地消という言葉が最近日本でもありますけれどもとにかく自分たちの土地で自分たちで作っていく事。
そしてできるかぎりその隣人近い人たちに奉仕をしあいながら相互補完的にやっていく事。
他の独立運動の指導者の中でも機械というものを導入してそして大量生産をやって経済力をつけてそしてイギリスを上回るべきだというふうに主張する独立運動の指導者もいたんですがガンディーはそれをやっちゃ意味がないと言ったんですね。
イギリスもとらえられてしまっている近代文明ですねこれを越えていく。
そのためには糸車というところに戻ってそして隣人たちとの関係性をつくりながら別な世界というものをつくっていかないといけない。
そう考えたんだと思います。
インドの中で大量にハイスピードに作れるようなシステムを持ってきたら当然自国の消費するスピードを超えちゃうからよその国に売りつけていかなきゃなんないわけでインドがある意味イギリスに不満を持ったのと同じような事をどっかの国に思われるだけだという事ですね。
インドはものすごい暑い国ですからもう40度を超えるような時ってなかなか労働しにくい。
そんな時があったりするんですけれどもそういう時にじっくりと休む事も彼は重要だと思ってたんだと思うんですね。
そこで落ち着いてそしていろんな事を考えたりあるいは別の重要な仕事に携わったりする。
ガンディーは非常に文明的なものだというふうに捉えて考えていたんだと思いますね。
働くという意味で言いますとガンディーは労働に関してはどういう考えを持ってたんでしょうか?彼は「パンのための労働」という言葉をよく使っているんですね。
それについて「獄中からの手紙」でも述べているところがあるんですけれども。
はいこちらですね。
…と書いてありますね。
農業が何よりも大切だと。
私たちの命というものがどういう事によって成り立っているのかまずそれには食べるという問題があるわけですね。
そして私たちが彼は肉食をしなかった人なので…この観念を取り戻す事というのが重要なのでこの農業というのがまずは重要視されなければならないというふうに考えたんですがもちろんみんなが農業をやるわけにはいかないので例えば大工さん鍛冶屋さんそういう人たちもそれぞれの労働をしっかりとやる事によってそれぞれ相互補完的な役割を果たしあっていく。
一方の近代的な職業についてどう思ってたんですか?そうですねいろんなものを彼は批判をしているんですけども近代的なお医者さんも要らないんじゃないかって言いだしたりもするんですね。
何でかというと…健康に気を払わないでいるそういう人たちがいるとするならばああいうお医者さんというものが逆にそういう不健康というものを増進させてるかもしれないとそういう逆説を言い始めるんですね。
つまりガンディーが非常に問題視したのは…僕痩せようと思ってジムに通うんですけどかみさんに「車で送ってくれ」と言うんです。
ジムでねランニングマシーンみたいなのの上を歩くんですね。
歩いていけって話なんですよ。
そもそもね。
僕の場合はカロリーが一番分かりやすい。
農作業をしたうえでとれたお米を食べるという事は健康状態を害すような肥満にならないみたいな事だと思う。
そこかな。
ただねぇうまいもんがたくさん楽してとれるという事に対して人間はあがなえるのかというとこですね。
ここまで享受してしまってね。
はい。
おっしゃる事はほんとによく分かるんですけれどもなかなかこう現代の私たちに実践できる事というと何なんでしょうか?ガンディーにとって非常に重要なのはこの手仕事とか奉仕の範囲というのが非常に身近な範囲であるという事を想定してるんですね。
この手の届く範囲というものの意味というのをもう一回取り戻そうというふうにガンディーは考えていたと思います。

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  ガンディーは現代のグローバル経済の問題を見越していたかのように小さな村落社会相手の顔が直接見えるコミュニティーを非常に重要視していました。
まあ耳の痛い話ではありますね。
ええ。
まずは最も身近な人を大切に奉仕せよという事でしたね。
例えばかつて商店街とかにお買い物に行くというのは単にものを買いに行くんじゃなくて「あんた元気?」とかですね自分を確認したり人とのつながりあいというものを保っていくための非常に重要な社交の場だったんだと思うんですね。
けれどもなかなか大きな大型スーパーとかでものを買うというともう無言でものを買ってレジを出てそして家に帰れてきちゃう。
そういうようなものが果たしてガンディーは効率によって幸せになってるんですか?という事を全体としては問うてるんだと思います。
ガンディーはやっぱり…誰から買うのかというのが大切ですよという事を言っているんですね。
自分はあそこの八百屋さんを支えてるんだあそこの農家を支えてるんだ。
逆に農家の人たちはあの人の体を私たちは…なので都市の人間都市に住んでる人間はちゃんと自分たちの周りの農村を支えなさい。
誰から買うのかというのを熟慮しなさいというふうに言っているんですね。
いい子になるつもりはないのはでも便利は「便利」という言葉はそれは魅力的ですよね。
「安い」も魅力的だし。
そうですね。
この労働力もその「便利」という名の下にどんどん効率化されてきたというのがあると思うんですね。
例えば近年では派遣労働の問題とかが日本で大きな問題になりましたがこれは「あんたじゃなくったって代わりはいくらでもいるよ」。
派遣労働って多分最初自由だなって思ったと思う。
生涯同じ人と顔を突き合わせて同じ職場に行くのは俺向かないなこっちの方が自由だなと思ったらその反面のところがあって多分いろんな事に一長一短ある。
それはねもう痛いほど今感じる事がある。
ええ。
ガンディーの現代的な意味というのは非常に大きいと思いますね。
やっぱり今日本で大きな問題というのはこの居場所のなさという問題ですね。
孤独死の問題とかいろんな問題に社会現象につながってると思うんですけどもガンディーはそういう世界の中で人間はなかなか生きれないんじゃないのかと考えたんですね。
もっとその生きる事の意味というのを考えた非常に壮大な思想家であり具体的な活動家だったんだと思いますね。
ではガンディーの考え方を表すこんな言葉があります。
これどんな時に言った言葉なんですか?インドの人たちにスワデーシーというのが重要だその意味を理解してもらおうと思っているその文章の中で言っている事なんですが。
スピードを出すという事は独断ですね。
「俺が正しいんだ。
このとおりやるんだ」というふうな何か人間の能力に対する…ゆっくり進みましょう。
「永遠の微調整」というのを考えたのが私はガンディーという人だと思いますけれどもその大切さというものをガンディーは歴史の中から学んだ人だと思います。
世界をあるいは…そういう事をやる事によってまた別のところに大きなひずみが生まれてくる。
一歩ずつ進めていかないと着実な変化というのは生まれないというふうに考えていたんだと思いますね。
スピードに惑わされてはいけないというふうに恐らくこの言葉は彼が言いたかった言葉なんだと思います。
彼のスケール感から言うとこのカタツムリのスピードがフルスピードじゃないかという事なんでしょうね。
そうですね。
ですからそれは遅いように多分若い指導者には見えたんですけども実はインドの独立の非常に大きな近道だった。
ガンディーは説き続けたんだと思うんですね。
早まるなという事ですよね。
さあこうして人々を導いてきたガンディーですがその生涯はどのような終わりを迎えたのか見ていきましょう。

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  しかし国内ではイスラム教徒だけで国をつくりたいという人々と皆が一緒に独立すべきだという人々がもめていました。
ベンガル地方のカルカッタで激しい宗教間の抗争が起こりおよそ4,700人の死者を出してしまいます。
ガンディーはひたすら周辺の村々を回り抗争の鎮静化に奔走。
「あなたたちが戦いをやめるまで私は断食する。
死んでもかまわない」。
痩せ細りガリガリになっていくガンディー。
それでも固い決意で紛争が止まるまで何も口にしませんでした。
人々はこうした姿を見てついに争う事をやめます。
どこにも火の手が上がっていない事を確認しガンディーはようやく一杯のジュースを口にしました。
しかし1947年イスラム教だけの国を目指した人々はパキスタンとして独立。
インドとパキスタンが分離独立するというガンディーが望んだ理想とはかけ離れた形となってしまったのです。
一人の若者が人混みをかき分けてガンディーへ近づき心臓目がけて銃を発砲。
若者はヒンドゥー教原理主義者でした。
ガンディーのイスラム教への態度があまりに寛容である事に不満を抱き暗殺を決行したのです。
インドのためにささげた78年の生涯でした。
そうですか…う〜ん。
同じヒンドゥー教徒原理主義者に殺されてしまったという事で本当に人生見てきますとなかなか難しいなっていう。
難しいですね。
これだけ才能のあるスケールの大きな人でも最後…。
まああとはそれでも紛争を一度止めてるっていうそこはまたすごいところですよね。
すごいところですよね。
そうなんですよね。
確かに結果だけ見るとしかも現在のインドとパキスタンまだ争って更に核実験をお互いやってというそういう事が続いているのでガンディーの試みが本当に成功したのかって言われるとまあいろんな問題が残ってるんですが一方において…しかもそれは大昔の何かおとぎ話のような事ではなくてまだまだ70年ほど前の実際に起きた事なんですね。
政治学でいろんな紛争解決の手段とかいろんなものというの教科書に載ってるんですけれどもガンディーはそこに載ってない事をやったわけですね。
私は違う気がするんですね。
ガンジーのこのみんなの前で飢えて死んでいいという覚悟それも見て分かるように痩せ衰えてまあ貧しい格好をしてやるわけじゃないですか。
それの説得力ってやっぱりすごい気がするんですね。
そうですよね。
これが飛び降りるんでも首をつろうとするんでもスピードは速すぎてみんなに考えさせる時間を与えられないけどこの食を食べる事を断って飢え死にしてもいいんだって覚悟を見せる事はまたこの奇跡的に方法として正しいような気が。
ガンディーを殺すのは私なんじゃないのかという自己反省的なあるいは…自分は一体何をやっているのかという事を反省的に捉え内発的な力によってそれをやめていく。
それが次の本当の平和というのにつながるんじゃないのか。
平和というのはガンディーは恐らく暴力がないだけのそういう状態を言ってなかったと思うんですね。
もっと心の平穏とかみんながつながりあった世界とかそういうようなものが真の平和だと考えてた。
もっと高次の平和というのを考えたんだと思うんですね。
4回読み解いてきましたが最後にガンディーの有名な言葉をご紹介したいと思います。
ガンディーが言うからこそ説得力のある言葉ですよね。
何かあんまりこういう言葉を聞くと何だよというふうに反発したくなる何か尊大な感じがするんですけれども。
ええ。
ガンディーはやっぱりその抽象的な言葉とかというよりもそれが実行される事ですね。
しかもそれがちゃんとみんなに分かるような形でシンプルな形で伝わっていく事というのを重視した人ですね。
彼はやはり歩く事食べない事糸紡ぎの車を糸車を回す事そういった事ですねみんなあらゆる宗教の人たちが共有できるような普遍的な宗教というものをもう一回取り戻そうとしその中に生きた人ですよね。
それをやってみた人ですね。
こうやってガンディーの教えを今僕が僕ごときも聞きましたという事とあとこれも前半戦に出た宗教観としての人間というのはあくまで入れ物であってというんだとするとガンディーがそういう理屈を持ってたとするとガンディーの肉体が銃弾において滅びたという事よりもガンディーの教えが先生の手によって伝えられたという事の方が終わってない感はでかいかなという。
そうですね。
私も全くガンディーのように生きれてない人間の一人なんですけれども常に思うのは……と言われてるそんな感覚がず〜っとあるんですよね。
もちろん何にもできてないんですけどもそれでも一歩進んでみたり自分を反省的に見る。
そのまなざしをガンディーという過去から私は投げかけられてるという気がするんですね。
そこからずっと自分を見つめ直していきたいそこから社会を見ていきたいというのがありますね。
いや何かもう感動が尽きませんね。
そうですね。
4回にわたってガンディーについて学んできましたが。
でっかい目標はじゃあてれもなく言い訳全部ゼロで言うならばよい世の中にしたい。
それから自分と関わる人たちが幸せになってほしいって思う。
その一歩がもしかしたらあした宅配便を届けてくれた人にただ「ありがとう」っていつも言わない事を言えたりとか。
宅配便の人たちのストレスを軽減する事でもしかしたら最終的に世の中がよくなるかもしれないみたいなそんな具体的な事を今考えてますね。
一歩一歩相手を許したり相手とコミュニケーションをとったりという事が動かしていく一歩という事ですよね。
ほんとに深いお話4回とても楽しかったです。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
2017/02/27(月) 22:25〜22:50
NHKEテレ1大阪
100分de名著 ガンディー“獄中からの手紙”[終] 第4回[解][字]

近代が追い求めてきた価値と正反対のものを称揚さするガンディー。自国製品を愛用するスワデーシーなどの運動を通して、彼の根底に流れる宗教観、労働観に迫る。

詳細情報
番組内容
近代が追い求めてきた価値と正反対のものを称揚さするガンディー。安価な海外製品を買うよりも、手作業で作った自国産品を作り使おうという「スワデーシー」はその代表例だ。それは「隣人に対する義務」「豊かな時間」を取り戻す宗教的な行為でもある。「受動的抵抗」とも呼ばれたその運動の数々は、暴力を伴う前のめりな運動よりもはるかに大きなうねりを巻き起こした。ガンディー思想の根底に流れる宗教観、労働観に迫る。
出演者
【講師】東京工業大学教授…中島岳志,【司会】伊集院光,礒野佑子,【朗読】ムロツヨシ,【語り】屋良有作