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字幕書き起こし モーガン・フリーマン 時空を超えて「海は思考するのか?」 2017.03.03

地球上にはいまだ知られざる生物が潜んでいるかもしれません。
私たちが知るいかなる生命体とも異なる生物です。
その体長は何千キロにも及び1,000年に1回鼓動する心臓と地球上のほぼ全ての生物を滅ぼしかねない強力な免疫システムを持っています。
知性すら備えているかもしれません。
広大な海自体が意識を持つ生き物である可能性はあるのでしょうか?もしそうなら海は私たちの事をどう思っているのでしょう。
時間空間そして生命。
時空を超えて未知の世界を探究します。
私たちはずっと他の知的生命体を宇宙で探してきましたがそれは間違いだったかもしれません。
人間よりもはるかに進んだ知性を持つ生命体が地球上に存在する可能性があるのです。
広大な海はこの惑星最後のフロンティアです。
そして一部の科学者は海を生物と見なしています。
何かの存在を感じるけれども姿は見えないという経験をした事はありませんか?子供の頃森を歩いていると木々に見つめられていると感じたりその話し声が聞こえる気がしたりしました。
私は森そのものに意識があるのかもしれないと考えたものです。
アンダース・ニルソンはずっと地球上のあらゆる生命の基礎である化学物質に強い関心を抱いてきました。
HOの液体すなわち水です。
子供の頃毎年夏には湖で一日に5時間も泳いだり遊んだりしていました。
最近は水の中でのんびりと過ごすのが気に入っています。
体が水に溶けていくような感覚はすばらしいです。
科学者になり水への関心はますます深まりました。
水には水素結合と呼ばれる能力があります。
一つの水の分子中の水素原子が別の水の酸素原子と結び付くのです。
ニルソンはスタンフォード線形加速器研究所で液体HOの分子のX線画像を撮影。
水の分子の集団が高度なシンクロナイズドスイミングを演じる事を発見しました。
HOの分子は熟練したシンクロの選手のようなものです。
それぞれが自由に動き回る事も隣の選手と腕を組んで安定した集団を形成する事も可能です。
水の分子は折れ曲がった形をしているので氷点下で結合するとよりスペースをとります。
水が凍ると膨張するのはこのためです。
水には自由に動き回る分子と安定した集団の両方が含まれており温度によってその形を変えるのです。
ニルソンは水はそこに混ざる物質によっても状態が変わる事を突き止めました。
これが塩化ナトリウムの結晶だとします。
食べ物や海に含まれるごく普通の塩の事ですが例えばこれを…。
(ホイッスル)安定した水の分子の集団に塩を入れると何が起こるのでしょうか。
集団はバラバラになって自由に動き回る分子へと変わり塩の結晶を分解して水全体へと拡散させます。
混ぜ合わせる物質によって水の反応は千差万別です。

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  高い電荷を帯びたイオンがあるとします。
例えばマグネシウムやアルミニウムのイオンを水に投げ込むと周りに氷のような組織が作られます。
水の分子はイオンを囲むように結び付きイオンを閉じ込めます。
私たちの目にはグラスに入った水は動いていないように見えますが分子レベルでは個々の分子は盛んに脈動しています。
水はその分子構造を毎秒およそ1兆回変化させます。
水の分子構造が変わる度に水全体の化学的性質も変化します。
地球上にこんな液体は他にありません。
水の分子は温度と接触する化学物質によって反応を変えます。
まるで周囲の状況を認識しているかのようです。
この反応特性はニルソンの中で化学物質と生き物との境を曖昧なものにしました。
グラスの水が生きていると考える人もいるかもしれませんが私個人としての命の定義は何らかの意識を持っている事が確認できるかどうかです。
しかしやっかいな事に水の場合はこの点がイエスともノーとも言いきれないのです。
グラスの水が生きているかどうかは分かりませんが水があらゆる命の源である事は確かです。
人体のおよそ60%は水です。
あなたのDNAを持つ細胞はおよそ1,000種の細菌とともに水分を住みかとしています。
何百万もの生き物が生息している海も大部分が水です。
では海とそこに住む命がヒトのような一つの生物である可能性はあるのでしょうか?進化生物学者のグスタボ・カエターノ・アノイェスはその可能性を信じ系統樹の根元に位置する地球最初の生物について研究しています。
系統樹は生物の進化を樹木の枝分かれのように表しています。
どんな生物でも系統樹をずっと遡っていけば全ての生物の祖先となるある有機体に行き着きます。
それがLUCA全生物の共通祖先です。
LUCAは地球に現れた最初の種の呼び名です。
およそ35億年前に生存していた現在の全ての生物の共通祖先です。
LUCAの細胞は他の有機体に脅かされる事なく原始の海を満たしていたとされますが数十億年前に絶滅してしまいました。
アノイェスは現在の生物の身体構造を研究する事でLUCAの細胞がどのような姿だったのか再現できると考えています。
そしてこの研究が自転車の進化をたどるのに似ていると言うのです。
(アノイェス)自転車は常に進化し続けています。
10年ごとに新たな機能や装置が追加されていますがその一方で基本的な構造に変化はありません。
現在の自転車にはさまざまなハイテク素材や高性能なギアが使われています。
しかし自転車として機能するための基本的な構造は同じです。
最初の自転車には少なくともサドルペダル車輪がついていたはずです。
この3つは全ての自転車に共通するパーツだからです。
こうしてリストアップしたパーツをもとにアノイェスが自転車の共通祖先だと考えたものそれがペニーファージングです。
ペニーファージングは現在の自転車の原型となる乗り物です。
サドルとペダル車輪を備えていましたがチェーンやギアはついていませんでした。
アノイェスはこれと同じ発想でLUCAの追跡を行いました。
さまざまな化石の記録と無数の有機体の遺伝子情報を比較する事でおよそ35億年前に存在していた可能性のあるたんぱく質を絞り込んだのです。
こうした調査の結果アノイェスはLUCAが今日の生物のようにしっかりと閉ざされた細胞壁を持っていなかった事を発見しました。
LUCAの細胞壁には小さな穴がいくつもありました。
そのため遺伝子情報や組織が度々漏れ出しては別の細胞との間で交換される。
こんな事が繰り返されていたのでしょう。
LUCAの細胞をペニーファージングだと考えてみましょう。
細胞壁が穴だらけなので重要なパーツが外れてしまうかもしれません。
しかしいざパーツが外れると水の分子が反応して別の細胞から代わりのパーツを得られるまで欠けた部分を補ってくれるのです。
こうしてLUCAの細胞は水の化学反応を利用しながら互いに依存しあっていたのです。
アノイェスはLUCAの細胞群を複数の有機体というよりも一つの巨大な共存的存在として振る舞う超個体だったと考えています。
有機体がいくつもの細胞から成り立つのと同様に超個体は強く結び付いたいくつもの有機体で構成されているのです。
超個体とはハチの巣のように多くの個体で形成された生き物です。
アノイェスが正しければ地球上の最初の生命は小さな細胞ではなく広大な海そのもの地球の全域を覆う超個体でした。
私たちは超巨大生物の末えいかもしれません。
生きている事の証しとは何なのでしょうか?何世紀もの間賢者たちを悩ませてきた問題です。
哲学者いわく「我思う故に我あり」。
デカルトの言葉です。

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  しかし生物学者たちは生物の定義を塗り替えかねない新たな基準を提唱しています。
それは「我食す故に我あり」。
ニューヨーク大学のタイラー・ヴォルクは多くの生物学者と同様に代謝機能を持たない生物はいないと考えています。
代謝は生命活動において非常に能動的なプロセスです。
体内に摂取した特定の化合物を小さな物質に分解し配列し直して違う物質を構成する活動です。
地球上のほぼ全ての生物は代謝機能を持っています。
体内にある臓器は栄養分からエネルギーを抽出し残りを排せつします。
海は代謝を行う生命体であふれていますが普通海そのものは生き物とは見なされません。
むしろリサイクルを担う巨大な装置と考えられています。
海中の一部の物質は生命体による吸収と排出で何百回もリサイクルされ何度も生物の体内に取り込まれるのです。
しかし海のリサイクルについて詳しく調べるとエネルギー上のつじつまが合いませんでした。
海中の生物は生と死を通じて炭素リン窒素硫黄などの栄養分を再利用しています。
ある生物が別の生物を食べそれをまた別の生物が食べたり栄養分として新たな命を育んだりする。
ほぼ完璧な再生システムです。
ヴォルクは栄養分がどの程度有効に再利用されているかを分析。
その結果全てが100%リサイクルされているわけではない事が判明しました。
計算の結果海中の生物的循環は実に優れたものではありますが完璧ではない事が分かりました。
生きるためには新たな物質の補充が必要なのです。
ヴォルクはこの不完全な循環こそ海が巨大な生命体であり代謝機能を持つ事の証しだと主張します。
海も食物を摂取しているというのです。
河口は海の口と考える事ができます。
海を構成する非常に重要な物質が流れ込む入り口なのです。
海は川から入ってくる食物を代謝した後老廃物を海底へと排出します。
老廃物の一部は海底の堆積物に埋もれてしまい微生物や寄生虫によって再利用される事はありません。
ヴォルクは海中の生物はそれぞれ海という一つの生命体の臓器のような働きをしていると考えています。
魚類と哺乳類を含むグループは人間でいえば呼吸器系の役割を果たします。
酸素と炭素を取り込んでそれを二酸化炭素へと変えるのです。
海藻や植物プランクトンは二酸化炭素を取り込んで酸素に変えます。
細菌類で構成されるまた別のグループは窒素を処理してアンモニアに変えます。
ヴォルクにとって海中の生物を海の代謝器官と見なすのは単なる例えではありません。
地球上の化学的な変化に海がどのように反応するかを知る手段かもしれないのです。
工業化が大気中の二酸化炭素にどう影響するか知るためにはまずは炭素の循環を理解しなくてはなりません。
するとそこにはリンを運ぶリン酸塩窒素を運ぶ硝酸塩など他の栄養分も関わってきます。
これらが相互に固く結び付き一つの巨大な超代謝システムを形成しているのです。
これぞ超個体です。
ヴォルクは海が超個体だとしたら生物と同様に危険に対して何らかの反応を示すと考えています。
人間が海を汚染してしまっているのは確かです。
海は生き延びようとする意思を持っているのでしょうか?人間が病気になると細胞や組織臓器が協力して病気を撃退し体を守ります。
では海が病気になったら何が起きるのでしょうか?海にも免疫システムがあるのでしょうか?それが作動したらどうなるのでしょうか?海を生物と見なす科学者は僅かです。
その一人リー・カンプは海が持つ生理機能について研究を続けています。
生理学は有機体がどう働き生き物としてどう機能するのかを研究します。
(ハエの羽音)全ての生物は大きさにかかわらず生理学の基本ルールに基づいて生きています。
例えばハエも循環系など生理学的なメカニズムは人間と変わりません。
違いといえばハエの心拍数が1秒あたり5回で人間は1回というくらい。
海のような大きなものではどうでしょう。
海の鼓動はほぼ1,000年に1回です。
1,000年という周期でめぐる海の鼓動は北極と南極で始まります。
両極で冷たい空気を取り込んだ水は冷たい潮の流れとなって海底に沈み深海生物に酸素を届けます。
その後も真っ暗な海の底を進み赤道に達すると水が暖められて海面に浮上します。
そして再び両極へと移動。
この繰り返しです。
人体と同じで海も循環なしでは機能しないのです。
私たちの体内に有害な物質が入り込むと免疫系の細胞が侵入箇所に急行して脅威を無力化します。
カンプはこの1,000年周期の潮流は海にとって生物の循環系と同じだと言います。
感染箇所にいわば抗体を運ぶからです。
人間の場合循環に欠かせないのは細胞です。
海では「細菌」がその役割を担います。
人間にとって体外の細菌は免疫システムが撃退すべき脅威です。
しかし海ではむしろ細菌が免疫システムの役割を果たします。
細菌は非常に小さく海流に乗って海の隅々に運ばれます。
そして行くさきざきで有害物質を無毒化するのです。
海には有害な金属や化学物質漏れ出した原油など海を汚染するさまざまな有害物質を分解できる細菌たちが住んでいます。
皆の安全を守るためチームで協力するのは大学での生活と同じです。
放火犯が学生会館に火をつけたとしたらどうでしょう。
最初に対応するのは消防隊員です。
海ではこれが細菌の仕事。
侵入した毒素を食べ自らを増殖させます。
生態系に有害物質が入り込むと海流に乗って運ばれてくる細菌がそこで活発に繁殖し無毒化するのです。
有害物質が消えると細菌は死滅します。
鎮火のあと消防隊が現場を去るのと似ていますが細菌は大量の副産物を残します。
細菌の排せつ物が海の化学的性質に影響を与え海の変化がまた細菌に影響を及ぼすのです。
細菌が別の細菌を呼び寄せる連鎖です。
この現象は状況が安定し通常の状態に戻るまで続きます。
こうした仕組みが有害な毒素を無力化しているのです。
しかし免疫システムが備わっていれば何があっても大丈夫というわけではありません。
免疫システムは時に多発性硬化症などの重い病気を引き起こします。
免疫システムが過剰反応すると生きるために必要な機能まで阻害するおそれがあるのです。

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  もし海で過剰反応が起きたら私たちは恐ろしい事態に直面する事になるかもしれません。
深刻な感染症が起きると細菌は制御不能なまでに増殖し利益よりも害の方が大きくなります。
日常生活でも同じ事です。
何事も過ぎたるは及ばざるがごとしです。
たまには正しい食生活なんか忘れて自分を甘やかしてもいいでしょう。
うちの大学では世界一と評判のアイスクリームが売られています。
ここで食べるものがアイスクリームしかない世界を想像してみて下さい。
店は大もうけできるとどんどんアイスクリームを作り生徒や教職員はどんどんアイスクリームを食べます。
何事も度が過ぎると悪影響を及ぼします。
学生たちは肥満になりアイスクリーム店は財力にものを言わせ大学内で他の食品が販売されないようにします。
実際にこんな事が起きたら学生は授業中に居眠りをして教職員の健康状態にも問題が生じるでしょう。
目も当てられない状況です。
免疫システムはあなたを病気から守ってくれます。
しかし過剰反応を起こせば命取りになる事もあるのです。
海の免疫システムはどうでしょう?地球では過去に5回そういう事態が起きていたかもしれません。
その時地球上のほぼ全ての生物が滅んだのです。
ミツバチは巣に近づく敵を感知すると針で刺し毒液を注入します。
敵を刺したあとハチは死んでしまいますが巣を守るためにあらゆる犠牲を惜しまないよう本能に刻まれているのです。
海の生物はどうでしょうか?ピーター・ウォードは研究対象を間近に観察する事を好む古生物学者です。
(ウォード)私は研究のためによく海に潜ります。
しかし海の中の様子をうまく言葉にできません。
でもビデオに撮ればどんな感じかよく分かります。
「1枚の絵は1,000の言葉に匹敵する」と言いますがビデオは数百万の言葉に匹敵しますよ。
一見穏やかな海底の景色。
しかしこの場所には何百万もの命が突然死へと追いやられたむごたらしい過去があるのです。
ほぼ全ての生物が犠牲になりました。
種の根絶どころか地球上から生命がほとんど一掃されたのです。
途方もなく恐ろしい出来事です。
地球で起こった大量絶滅は小惑星の衝突や巨大な火山の噴火によって引き起こされた気候変動が原因と見なされてきました。
しかしウォードは原因は他にもあると考えています。
大量絶滅の原因について調べましたが小惑星が衝突した証拠は見つからず全く別のものが見つかりました。
ウォードの研究グループは化石を調べその原因を特定しました。
どこの海岸線でもごく微量に検出される致死性の化学物質です。
見て下さい。
これはひどい。
ここまでひどい臭いなのは硫化水素が大量に含まれているからです。
硫化水素は私たち哺乳類にとって極めて有害です。
一部の細菌にとっては必要な物質ですが人間のように酸素で生きる生物には硫化水素は恐ろしい毒でしかありません。
大気中の分子100万個あたりに500〜600個含まれているだけで死に至ります。
こんなものが海の底に眠っているのです。
この致死性の神経ガスを生み出す細菌が水陸を問わず地球の全域で発生したとウォードは見ています。
その結果ほぼ全ての生物が死滅。
この事象がこれまで少なくとも5回起きたといいます。
ウォードはいつまたこの恐ろしい細菌が異常発生し硫化水素を大量に放出するのか予測したいと考えています。
これが酸素を含む冷たい水だとしましょう。
この水はメキシコ湾流からヨーロッパに向かって北上するにつれてどんどん水温が下がっていきます。
そして水温が一定以下に下がると水は海底に沈みます。
この酸素をたっぷり含んだ水が海底を覆う事で海は健全に保たれています。
すばらしい循環システムです。
しかし酸素を豊富に含む水が海の底に行き渡らなくなると状況は一変します。
もし酸素がなくなったら途端に深海は硫化水素を生み出す細菌たちに占拠されてしまうでしょう。
海面の温度がほんの数度上昇するか大量の淡水が入ってくると海面付近の水の密度は低くなります。
では次に非常に水温の高い状況をつくってみましょう。
この酸素をあまり含まないお湯を入れます。
ご覧のとおりお湯は水面にとどまったままです。
その結果海の底には酸素が運ばれず最終的には大量絶滅を引き起こすのです。
酸素が欠乏すると海中で硫化水素を生み出す細菌が活性化し有毒な紫色のヘドロで海を満たします。
やがて水中から立ちのぼる硫化水素を含むガスが大気を覆い尽くすと植物は窒息死し動物は中毒死します。
当然人類も助かる見込みはありません。
これが再び起こる危険があります。
ウォードは地球の気温がほんの数度上がるだけで私たちは大きな代償を支払うはめになるといいます。
しかしこの事は海が生き物である証明にはなりません。
微生物学者のユーリ・ゴービーは「知性」という観点からこの謎に迫りました。
そしてついに海の生態系が思考能力を備えた生きた超個体である事を示唆する証拠を見つけたのです。
私たちはどうやって頭脳を手に入れたのでしょうか?何百万年にもわたる進化の中で細胞の集団が電気的な接続を発達させて複雑なネットワークを築きました。
海にも似たようなネットワークがあるように思えます。
私たちのように知性を備えているのでしょうか?あるいは私たち以上なのかも。
ゴービーは微生物学者として非常に重要な発見に貢献しました。
海洋生物の常識を根本から覆しかねない発見でしたがその発端は「微生物はどうやって呼吸するのか?」という素朴な疑問でした。
呼吸とは息を吸い込む事だと思われがちですがそれは吸入です。
本来は体内のミトコンドリア内で電子供与体から受容体へと電子が移動する事を指します。
ほとんどの種はミトコンドリア内部で電子を酸素の原子に放出する事で呼吸します。
しかし水生細菌の多くは海水に溶けた金属元素に電子を放出する事で呼吸します。
そこでゴービーは水生細菌から生命維持に必要な金属元素を奪ったらどうなるか調べました。
てっきり細菌は窒息して死滅するものと思っていました。
しかし結果は衝撃的なものでした。
細菌は生き延びていたうえ細かい毛のようなものをのばし周囲に張り巡らせていたのです。
私は友人にサンプルを送って走査型トンネル顕微鏡で電流を流した様子を見てもらいました。
するとすぐに「信じられない事が起きた」と電話が来たのです。
慌てて友人のもとに向かい確認するとこの細かい毛には電気伝導性があると分かりました。
あまりにもすごい発見だったのでそれから何日かは眠れませんでした。
ゴービーはこの毛のようなものが電気伝導性に優れている事を突き止め「生物的ナノワイヤー」と命名しました。
このナノワイヤーは細菌が呼吸する必要がある際に形成されますが状況が正常になっても形をとどめています。
私たちの脳内には思考を処理する電気的につながった細胞がおよそ1,000億個あります。
ゴービーは海にも無数の細菌細胞から成る巨大な神経回路があると信じています。
私たちの脳内にあるものと同じく強く結び付いており思考能力を備えている可能性があるのです。
この電球は細胞を表しています。
電球から電線を通して信号をこの分岐点へと送ります。

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  分岐点は信号を右に送るか左に送るか決めなくてはいけません。
信号がコンピューターを通してトランジスターにつながるとその信号は右か左つまり1か0に変換されます。
有機体の場合トランジスターは細胞に置き換えられます。
細胞は自身と結び付いた無数の細胞に信号を伝えるのです。
そして多くの細胞が相互接続すると…膨大な量の情報を処理できるネットワークが出現します。
海が思考するかどうか真剣に検討するなら発想を広げなければなりません。
「1個の細菌は思考できるか?」と聞かれたら答えは「ノー」です。
「微生物の群集は思考できるか?」なら「できるかもしれない」。
更に「海は情報を処理して思考できるか?」なら「もちろんできる」と答えます。
海は生物的ナノワイヤーで構成される頭脳を持っているかもしれません。
私たちの頭脳とは全く違う構造です。
海底の堆積物には人間の神経細胞の数をはるかに上回る無数の細胞があります。
これらを神経回路としてつなぐと人間の脳の1,000倍のスピードで機能します。
ゴービーの説では3億6,000万平方キロにわたる海底そのものが丸ごと海の神経回路であり非常に古くから海は思考しているというのです。
海はどんな事を考えているのでしょうか?大昔から海底の生命を神経回路に組み込み続けているかもしれません。
それを何十億年も前から続けているとしたらとてつもなく深遠な考えがあるのでしょう。
もし海の生態系が全体として思考する存在であるならば人間を脅威と見なし排除しようとする可能性もあるでしょう。
そうなれば私たちを待つのは滅亡かもしれません。
しかし私たちもまた知的な生物です。
海の感情を知るすべはないのでしょうか?私たちは海を破壊する寸前なのか。
あるいは海に滅ぼされそうになっているのか。
もし海の「健康状態」を知るすべがあれば破滅から逃れられるかもしれません。
あとどのくらいの時間が残されているのでしょうか。
生物学者のデビッド・マルコリエーゼは複雑な生態系を独自の視点で研究しています。
一つの都市はそれ自体が一つの生態系です。
このジオラマを生態系と考えれば列車は栄養素を運ぶ食物連鎖と言えます。
列車が必要とする人のもとに食料を運ぶように生態系の中で生物から生物へと栄養を運ぶのが食物連鎖です。
もし列車が止まってしまったら食料は底をつき町全体が崩壊の危険にさらされます。
ジオラマを走る列車の様子は一目で分かりますが海の中で起きている事となるとそうはいきません。
海の生態系は極めて複雑です。
あまりにも大きいうえに多様な生態系で形成されているので全体を把握する事は難しいでしょう。
しかしマルコリエーゼは海の健康状態を知る手がかりがあると言います。
寄生虫です。
寄生虫は宿主の体に卵を産みつけ繁殖します。
中には宿主に苦痛を与えるものや宿主を死に追いやる寄生虫もいます。
しかしマルコリエーゼにとっては貴重な存在です。
寄生虫が忌み嫌われる存在なのも無理はありません。
釣り上げた魚が寄生虫ののう胞に覆われていたりタラの腹を開いて中に寄生虫がいたりしたら魚を食べたくなくなりますからね。
大抵はたんぱく質が余分にとれるだけなんですけどね。
個々の人間や動物にとって寄生虫は病気などを引き起こす有害な存在です。
しかし多様な寄生虫がいる事は生態系が健全である証しです。
さまざまな種をつなぐ食物連鎖なくして寄生虫は育たないからです。
まずアザラシの胃の中で寄生虫の成虫が産んだ卵が海に放たれます。
寄生虫の卵は排せつ物に混ざって海底に沈みやがて幼虫がかえります。
甲殻類が幼虫を摂取しその甲殻類はより大きな甲殻類に。
更に魚に食べられます。
この魚はアザラシの食料となるのです。
そしてアザラシの胃の中に宿った寄生虫は繁殖し卵を産みます。
卵は排せつ物に混ざって海の中へ。
こうしたサイクルが繰り返されます。
寄生虫は複数の種の食料となり時に海中を何千キロも移動しますがその途中で宿主に何か問題が起きれば死んでしまいます。
生物多様性の豊かな生態系では複雑なライフサイクルを繰り返す寄生虫をより多く目にします。
マルコリエーゼは寄生虫の個体数調査を通じて生態系を分析しています。
生態系全体を見られなくても食物連鎖によって栄養素が適切に循環しているかどうか分かるからです。
それぞれの光が寄生虫の種類を表していると思って下さい。
緑の光と赤い光は違う種類です。
線路の上で止まる度に寄生虫は宿主を変えながら徐々に食物連鎖の上位へと進んでいきます。
もしこうした寄生虫が消滅し始めたらそれは食物連鎖が途絶え生態系全体が崩壊に向かっている危険を表しています。
マルコリエーゼは寄生虫を調べる事でカナダの川や湖の生態系を見守っているのです。
そしていつか海でも同じ調査に挑みたいと言います。
海は地上とは全く違う完全な別世界です。
月を調べるくらいの準備が必要でしょう。
科学者たちは海の事を知り尽くしているわけではありません。
いつどのように破局を迎えるか誰も分からないのです。
海は意思を持っていて私たちの心ない行いに対して報復に出るかもしれません。
いずれにせよ海が持つ絶大な影響力を軽んじるべきではありません。
何百万もの種が生息する海はこの星で最も驚異的な生物であり最大にして最古の命かもしれないのです。
2017/03/03(金) 22:00〜22:45
NHKEテレ1大阪
モーガン・フリーマン 時空を超えて「海は思考するのか?」[二][字]

私たちは人間以外の知的生命体を宇宙に探し求めてきたが、実は私たちの住む地球上に存在する可能性がある。それは、広大な海。海は思考するのか、その可能性を探る。

詳細情報
番組内容
ある科学者は、水の分子の動きを研究。シンクロの選手にたとえながら、水は生きていると言えるのかを探る。「代謝」に着目し、海を巨大な生命体と考える生物学者もいる。もし海にも免疫システムがあれば、生き延びようという意思の元に、きわめて恐ろしい事態が引き起こされる可能性を指摘する。海に潜むさまざまな謎と絶大な影響力を探る。
出演者
【語り】菅生隆之
制作
〜ディスカバリー制作〜