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字幕書き起こし 精霊の守り人(19)「逃亡」

(テーマソング)・「Iwanttoshineonyou」・「andalwayslikethatdazzlingsun」・「Iwilldefendyoufromallthedarkness」・「thisisthetruthfrommyheart」・「心の奥繋げたら信じてもらえるのに」・「いま見えなくても無くさないでいて」・「その優しさは無駄じゃない」・「風に乗って浮かび」・「ここじゃない何処かへ」・「海を越え時を越えきっと咲くだろう」・「いつの日にもいつもそんな君を」・「太陽のようにずっと見守れたらいいな」
バルサ)落ち着いたようだね。
さて…どうしたもんかねえ。
(ため息)
(ソウヤ)まさか新ヨゴの第二皇子がニュンガ・ロ・チャガになるとはなあ。
なんならこの村で春までお守りしてもかまわんのだが。
(トロガイ)そうもいかん事情があってな。
(ニムカ)どうしよう。
わたし皇子様に大変な事を…。
(タンダ)大丈夫。
君が悪いんじゃない。
あれは俺たちの不注意だから。
眠ったよ。
いくらか落ち着いたみたいだね。
そうか。
ニムカさっきの話の続きを聞かせておくれ。
わたしたちも卵食いが来るって事は分かっていた。
けどあの子に何も話していなかったのはせめて卵食いを退ける方法を見つけてからと思っていたからなんだ。
お願いだよ…。
卵食いは人に見えないし触れないって言ってたね。
どういう事なんだい?分からない。
わたしはそう教わっただけ。
ただニュンガ・ロ・チャガを引き裂いた時にはその姿がはっきり見えたって言ってた…。
大きな爪が何本も地面から伸びてきたんだって…。
爪が何本も?
(トロガイ)どうにも厄介だねえ。
ニムカよお前のひいばあさんはほかに何か教えてくれなかったかい?例えば卵食いが嫌う何かを。
…だろうなあ。
そんなものがありゃ100年前に試しとるわな。
ごめんなさい。
皆さんの喜ぶ話をしてあげられればいいんだけどニュンガ・ロ・チャガは初めから卵食いに食べられる運命なんだって。
やはりヨナロガイが言っていたとおりなのか。
でも卵まで食われちまったら俺たち今ごろこうして水の恩恵を受ける事はできなかったはずですよ。
…って事は100年前は卵が無事かえった訳だからニュンガ・ロ・チャガだって…。
多分ニュンガ・ロ・チャガはラルンガに引き裂かれる事で初めてサグに卵を落とせるの。
ニュンガ・ロ・イムはサグの海で生まれて川をさかのぼってナユグの深い水の底に棲みつく精霊なんだって。
だから一度こっちに卵を落とす必要があるの。
卵食いラルンガもサグとナユグが折り合うための摂理の一つなのかもな。
だとしてその生まれ出た卵はどうやって青弓の水源から海まで行くんじゃ?勝手に川を下るのか?それは田植え歌に出てくるようにナージが卵をくわえて海まで運んでくれるの。
田植え歌ってあの「ナージ飛べ飛べ」の?うん。
田植え歌の3番は「ナージ行け行け玉さらくわえ爪のかなたに舞い上がれ」ってなってるでしょ。
そんな歌あったかな?
(トロガイ)そいつはヨゴの農村辺りじゃちょいと下品だからってあまり歌われなくなった一節じゃな。
確かに昔はそう歌ってたわい。
じゃあ「海まで飛べば雨降り稲穂はすくすく育つ」は4番だったって訳か。
確かに続けると「ナージがニュンガ・ロ・イムの卵を卵食いの爪から救って海に運び精霊となって雨を降らせる」ととれなくもない。
(トロガイ)あ〜しかし参ったねえ。
更に厄介な問題が出てきたわい。
え?
(トロガイ)ナージじゃ!鈍いねお前らは…。
ナージをじかに見たのはいつが最後だ?そういえば子供のころは空を覆い尽くすほどのナージが南に向かって渡っていくのを見たけど最近はとんと…。
ヨゴ人が鉄を打つようになってからはなおさらだ。
魔よけの骨も今はなかなか手に入らぬ貴重品。
このままでは小僧を守るどころか水の精霊すら無事に海へ届ける事ができんかもしれんぞ。
どうやらこの100年でわしらが失ったものは風習や伝承にかぎった事ではなかったようじゃな。
(タガ)お頭。
(ジン)タガか。
シュガ様は?
(タガ)あと6ナンの所まで来ております。
(モン)ならば明日の正午前にはトウミに着けそうだな。
(スン)はい。
シュガ様もお疲れのようですが何とか。
ジンお前は先にトウミに走りいったん探りを入れてみろ。
分かりました。
タガスンお前たちも行け。
はっ。
では向こうの母屋におりますので。
なあバルサ
さすがのお前でも見えない相手とは戦えないよな。
ましてや卵をサグに落とすためにチャグムは殺されなければならないんだとしたらいっそどこか遠くに…。
駄目だ。
この場から逃げたってあの子が背負った運命からは逃げられないんだよ。
戦って道を切り開かないかぎりね。
わたしも絶対にあの子を死なせないって約束したんだ。
必ず助けてみせる。
トロガイ師何か打つ手はないのかい?チャグムを守ったうえで水の精霊をかえすうまい手は?分からん…。
とりあえず春まではまだ時間があるんだし別の手を考えましょう。
それにもし宮から追っ手が出ているとしたらここもそう安全とは思えない。
なるべく早いうちにどこかに移動しないと。
なら狩穴かのう…。
確かに。
あそこならいろいろ準備もできるかもしれない。
あっ!?あの…さっきはごめんなさい。
怖い話を聞かせてしまって。
(チャグム)いいんだ。
あそこで話してくれなかったら俺は何も知らないままだったから。
おかげで決心がついた。
俺は一人で宮に帰る。
母君のところに帰るんだ。
精霊の卵のせいで俺ばっかり恐ろしい目に遭う。
こんなのはもう嫌だ…。
待って!連れてってあげる。
え?だって怖いもんね。
いくら精霊の守り人だからって食べられちゃうなんて嫌だもんね。
だからわたしが連れてってあげる。
(いびき)どうする?村に潜入して確認するか?いや日が昇れば畑に人が来る。
その時に村の様子を聞く。
短槍使いに気取られたくない。
シュガ様お待ちしていました。
先にジンたちを送り込んであります。
いったん休んでいただき夜明けとともに出発致します。
分かった。
だがさして休む訳にもいかんようだな。
(ニムカの母)あのすみません。
ニムカはまだそちらにお邪魔していますか?ニムカなら村長と夜中のうちに母屋に帰ったと思うけど。
それが先ほど寝床を見たら帰ってきた様子がなかったものでまだそちらでいろいろお話をお聞かせしているのかと思いまして。
あ…。
(ニムカ)この道はトウミの人しか知らない近道なの。
ここを行けば2日でヤシロ村の近くまで行けるわ。
うん。
すみません2人が出ていったのにまったく気づかなくて。
(ソウヤ)まあニムカにとっては庭みたいなもんだからかまわんのですがニュンガ・ロ・チャガにもしもの事があったら…。
(トロガイ)でいつごろ出ていったかは分かったのか?ええ。
明け方犬が鳴いていたのに気づいた人がいてどうやらその時に…。
まあバルサが追いかけたんならすぐに見つけて戻ってくるだろうよ。
こっちは出発の準備だ。
(スン)いい天気ですねえ。
うん?ああ…。
驚かせてすみません。
一つお聞きしたいのですがこの村に異国の女人とヨゴ人の男児が訪れているはずなのですがご存じありませんか?あああの人らは村長さんのところにいるよ。
村に入って一番奥の家だ。
行けばすぐに分かる。
そうですか。
2人のほかにどなたか一緒ではありませんでしたか?ヤクーのだんなとそのばあ様らしい呪術師も一緒だ。
でもけさ方村を出るとか出ないとか言ってたからどこかに出発したかもしれませんよ。
(指笛)え…?
(ヒョク)お前そのばあ様というのはこのくらいの背丈で怪しげな杖をついた老婆か?そうだ…けど。
お頭急ぎましょう。
うん。
あっ!?あ…。
どうしたの?何か違う景色が見えたような気がしたんだ。
大丈夫?うん。
(物音)あ…。
あっ!バルサ…。
チャグム村へ戻るよ。
嫌だ。
どうして俺には何も教えてくれなかったんだ。
卵食いの事俺が死ぬって事分かってたんだろ!ああ。
だが今まで黙ってたのは確実な事が分からなかったからだ。
お前をむやみに苦しめたくなかったんだ。
嘘だ!バルサは俺より卵のほうが大事なんだ。
それは違うよ。
わたしにとっちゃお前も卵も大事な守るべきものなんだよ。
「守るべきもの」?バルサ…俺の事はもういいんだ。
俺は宮へ帰る。
バルサは俺のお母さんじゃないから俺の苦しみなんか分からないから…。
(チャグムのすすり泣き)そうか。
そこまで帰りたいってんなら…。
あ…。
そいつでわたしを倒していきな!わたしはこうと決めたらてこでも動かないからね。
お前を宮には行かせない!それでも行くってんならそいつを取りな!さあそいつでわたしを突いてみろ!ああ…。
バルサがいくら強くても巨大な爪の怪物にはかなわない!俺は宮に帰ってシュガと母君に守ってもらうんだ〜!あっ!?うっ!?親に刃物向けるとはどういう了見だ!う…う…。
(チャグムの泣き声)チャグム…みんながお前を守ろうと頑張ってるのに自分一人逃げ出してどうするんだい。
わたしはお前を必ず守る。
そしてお前は精霊の守り人なんだ。
だから怖くても最後まで卵を守って戦うんだよ!わたしの命に代えてもお前を死なせやしない!だからわたしを信じておくれ!何で…何で俺なんだ…。
(泣き声)村長はいるか!この村に新ヨゴ皇国の第二皇子が訪れているはずだ!我らは光扇京より皇子を迎えに参った帝の使いだ!今すぐお目通り願いたい!
(トロガイ)この川沿いを行くほうが早道なんじゃないのかい?ですが皇子様の事を考えるともう少し平たんな場所を行ったほうがよいでしょう。
確かにな。
ソウヤさん今広場に宮からの使いという方が武人を連れて「皇子様を迎えに来た」って!師匠!ぬかったね…もう来たのかい。
(ソウヤ)わたしが話を聞いてみましょう。
あなたたちはここに隠れていて下さい。
(ソウヤ)これはこれは遠いところからようこそおいで下さった。
(シュガ)そなたが村長か?
(ソウヤ)はいそうでございます。
(シュガ)ならば話が早い。
今すぐここに皇子を連れてきてくれ。
それはできませんな。
どういう了見だ?
(ソウヤ)はい。
それはあのお方があなたたちの大切な皇子様であると同時にわたしたちヤクーにとっても大切な水の守り手をはぐくむ精霊の守り人だからでございます。
あの方が抱いた卵がかえらねばこの地に二度と再び水の恵みはもたらされないのです。
ですからお連れする訳にはいかないのです。
(シュガ)その事は我々も承知している。
だから危害を加えるつもりもないしむしろ大切にお守りするためにお迎えに来たのだ。
我々とて水の恩恵を失えば生きてはいけない。
そなたもこの地と新ヨゴ皇国を思うのであれば我らに精霊の卵ごと託してはくれまいか。
国と言われましてもここに暮らす者にはあまりにも縁遠いもの。
それに我々ヤクーは代々ニュンガ・ロ・チャガを自分たちの手で守ってきました。
100年前この村からニュンガ・ロ・チャガが出た時も。
ですからここからは我らヤクーが…。
おとなしく頼んでいるうちに皇子を差し出せ。
さもなくばこの村が地図から消える事になるぞ!それは穏やかではありませんな。
短槍使い聞いているか!今度はいつぞやのようにはいかんぞ!総力を上げてお前を倒す!何が目的で皇子を連れ回るのかは知らんがもうお前の役目は終わった!おとなしく姿を現せ!
(トロガイ)うるさい小僧どもが何をギャーギャーわめいてるんだい!あの人確か…。
わしが呪術師トロガイじゃ!皇子と短槍使いはもうここにはおらん。
話があるならわしが聞こう!
(エンディングソング)よんどころない気持ちを抱えたままチャグムは歩く歩く歩く。
運命は肩代わりできない。
お前ならどうする?2016/10/22(土) 01:55〜02:20
NHK総合1・神戸
アニメ 精霊の守り人(19)「逃亡」[SS][字]

上橋菜穂子原作小説をアニメ化!皇子チャグムと皇子を守るため刺客や魔物と戦う女用心棒のバルサ。二人の逃避行を軸に描く壮大な冒険ファンタジー。

詳細情報
番組内容
トウミ村の少女ニムカから、“卵食い”ラルンガのことを聞いてしまったチャグム。そのことを教えてくれなかったバルサに対する不信感と、自分が精霊の守り人であり、ラルンガの餌食になってしまう運命にあることへの恐怖から、チャグムは宮に戻る決意をする。一方、トロガイたちは、ニムカの祖母から伝えられた話から謎の答えが、誰もが知っている田植え歌の中にあることに気付くのだった。
出演者
【声】安藤麻吹安達直人
原作・脚本
【原作】上橋菜穂子