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字幕書き起こし クローズアップ現代+▽“格差”“不安”声を上げる若者たち〜世界・日本でいま何が 2016.11.10

USA、USA、USA!
世界に衝撃を与えたアメリカ大統領選挙。
予備選挙では、既存の価値観に疑問を投げかける若者たちの行動が、大きな注目を集めました。
アメリカだけではありません。
今、世界各地で若者たちが声を上げ大きな影響力を持ち始めています。
日本でも、かつてない若者たちのムーブメントが起きました。
その代表格が自由と民主主義のための学生緊急行動・SEALDsです。
学生たちの疑問や訴えが既存の政党や組織も巻き込んでいったのです。
しかしSEALDsはことし8月に解散。
参加したメンバーはそれぞれの道を歩み始めています。
若者たちの行動は、社会にとってどのような意味を持っていたのか。
さまざまな立場の識者が考察を重ねています。
広がる格差、将来への不安既得権益への憤り。
若者たちを通して見える社会の現在地です。
トランプ氏がアメリカの次期大統領に決まりました。
しかし、こちらのデータをご覧ください。

 

 

 

 


CNNが行った出口調査では、29歳以下の世代に限っていえば、クリントン氏に投票した人は55%と、トランプ氏を大きく引き離す結果となっています。
この世代は、ミレニアル世代と呼ばれ、予備選挙でサンダース旋風を巻き起こした若者たちです。
世界で既存の価値観や社会システムに、デモや選挙などで疑問の声を上げ始めている世代ですが、彼らに共通するのは、格差や将来への不安といった、強い閉塞感です。
日本では、学生たちが作ったSEALDsと呼ばれるグループが、大きな注目を集めました。
日本のミレニアル世代への1年以上にわたる取材を通して見えてきたのは、社会が、若者の声を受け入れることの可能性と限界でした。
解散から3か月。
SEALDs創設メンバーの奥田愛基さんは今、大学院で学んでいます。
自分たちの行動は社会にとってどんな意味があったのか考え続けています。
去年、安全保障関連法案に反対するデモを主導したSEALDs。
全国の至る所で自然発生的にSEALDsに賛同する団体が作られるなど社会現象になりました。
SEALDsは、従来の市民運動の形を一変させました。
指揮系統を持たずSNSを使って情報を拡散。
ラップ調のことばを使った訴え。
デモの現場は、ライブ会場さながらの雰囲気でした。
そして、自分のことばで語りかけるスピーチ。
さらに、警備に当たる警察官たちとの関係も、従来のデモとは全く違うものでした。
よろしくお願いします。
ありがとう。
お疲れさまです。
よろしくお願いします。
若者たちが声を上げた背景には、何があったのか。
奥田さんたちメンバーは失われた20年と呼ばれる時代に育ちました。
中学でいじめに遭いながら学校が対応してくれなかったため沖縄の離島に転校した奥田さん。
子どものころから、さまざまな痛みが放置されている社会に違和感を抱いていたといいます。
メンバーは、10代後半の多感な時期に東日本大震災も経験。
大きな影響を受けていました。
創設メンバーの牛田悦正さんもその一人です。
17歳のとき父親を亡くした牛田さん。
非正規の仕事で家計をやりくりする母親に迷惑をかけたくないと480万円の奨学金を借りて大学に進みました。
震災に直面したのは18歳のとき。
それまで国がうたってきた原発の安全神話がいとも簡単に崩れたことが社会と向き合うきっかけになったといいます。
デモの現場を離れるとバンド活動をするなどメンバーはどこにでもいる若者でした。
その多くが、中高生のころから経済的な格差や排他的な空気など社会の矛盾を肌で感じていました。
若者たちが初めてデモをした都内の公園です。
活動は海外で声を上げ始めた同世代の若者たちにも大きな影響を受けました
自分たちが抱える痛みをまっすぐに訴える姿に強い共感を覚えたといいます。
世界各地で同時多発的に声を上げ始めたミレニアル世代と呼ばれる若者たち。
現実の政治の中で大きな力になっているケースもあります。
台湾の学生たちが主導したひまわり運動はその後の政権交代に影響力を及ぼしました。
スペインでは、若者たちが作った政党が、第3党にまで躍進。
大人たちが無視できないパワーを持つに至っています。
日本でも既存の政党を巻き込んで大きな社会現象となったSEALDs。
しかし、取材を通して感じたのはこの社会で若者の力を反映させていくことの難しさでした。
メンバーは徐々に偶像化されていきました。
身の丈を超えた期待が寄せられる姿を何度も目撃しました。
自分たちの意見ではなくほかの世代の考えを代弁させられているのではないかと感じられる場面もありました。
ある日の撮影では人々に隠れるようにしている奥田さんの姿も目撃しました。
19歳の少年に殺害予告の脅迫状を送られていたのです。
自分たちの想像を超えて極端な反発を招くこともあったメンバーたち。
戸惑っているように見えるときも少なくありませんでした。
取材する中でSEALDsの活動を少し引いた立場から見ている若者にも出会いました。
若者に政治参加を呼びかけるイベントを共に主催した斎木陽平さんです。
斎木さんは、特定の主張を持つ人々に巻き込まれSEALDsの本来の思いが埋もれてしまったと感じています。
984日に及んだ若者たちの行動。
デモで掲げた目標は達成できませんでした。
しかし、社会の痛みを放置してはならないという若者たちの勇気は一つの可能性を示したと感じました。
今、SEALDsに参加した若者たちは、それぞれ別の方法で社会との接点を持とうと模索しています。
東日本大震災が声を上げるきっかけとなったという牛田悦正さんです。
社会の在り方を深く学びたいと大学院を目指しています。
奥田愛基さんは時事問題に関する勉強会を開くなど地道に社会と向き合う仲間を増やしています。
一人一人が抱える痛みを社会全体の痛みであると言えるように行動を続けていきたいといいます。
キャンベルさん、アメリカでは大統領選挙を受けて、各地の大学で、デモも起きていますが、若者の閉塞感という点では、日本の状況と重なるようにも見えるんですけれども?
そうだと思います。
私の友人から先ほど、メールが届きまして、ニューヨークにいるんですけれども、マンハッタンではきのうから複数の場所で、自立多発的にいろんな人たちがデモをしている。
飲食店から店員たちが集まってきて、応援をするというようなことをやってて、とても若い人たちの戸惑いと怒りをすごく感じてるということを伝えてきたわけですよね。
それは、きっかけや表現には違いはあるけれども、根本というところでは、社会に広がり続けている格差であるとか、あるいは将来への希望というものが見いだせないことへの戸惑い、上の世代にそれが声として届かない、共有されないということが、怒りとして固まって、形になっていくということでは、思想がつながっているんじゃないかというふうに思いますね。
世界的に変わってきているということですか?
変わってきてるということもあるし、それぞれの地域や、文化、脈々とつながっている大人といわゆる若者社会のシステムといいますか、在り方ということは、すごく反映されてるということはあると思うんです。
形になって現れているということですね。
SEALDsに代表される日本のミレニアル世代の行動は、社会にとって、どのような意味を持っているのか、今もさまざまな立場の研究者が、考察を重ねています。
歴史社会学者の小熊英二さんは、21世紀型の社会運動だったと評価します。
一方、近代日本思想を研究する先崎彰容さんは、二項対立に陥りがちな社会の在り方に疑問を呈しています。
21世紀型の運動、そして二項対立の弊害と、それぞれ指摘がありましたが、キャンベルさんご自身はどのように考えてらっしゃいますか?
私も去年の安保法制を巡るこのデモを見てて、確かに先崎さんが指摘されるように、後半のほうは、非常にフラットな既製のイデオロギーにかなり取り込まれたと言いますか、染まったという側面があったように思います。
具体的には?
具体的には、そこは打倒政権であるとか、シュプレヒコールをずっと繰り返していくということは、わりとかけてきたことばに聞こえたり、新たな価値を生み出していく、彼らの痛みや違和感の中から生まれたことというよりも、ずっと繰り返されているという、この分かりやすいキャッチフレーズだったということは、従来のデモにほとんど変わらないという部分もあったと思うんですね。
ただ一方では、実名で自分の体験を語る若者たちが、次々と現れて、その痛みの中から、社会の一番そのルーツに、どういうことが問題としてあるのかということ、そこを突破口をそこで繰り返し作っていくということは、日本にとっては、とても新しいことだった、とてもある意味では珍しいことだったというふうにも評価をしたいと思います。
先ほどおっしゃったイデオロギーが前に立つような形にも見えて、結果、どのようになっていったと?
結果としては、一点を刻み込むことには成功したと思うんですけど、ただ、それはことしになって、それが一つの動態として、あるいは一つの継続、そしてつながって、広がっていくということには至らなかったということですね。
そこは若者たち、そこにいた人たちに、その責任を負わせるというよりも、従来、本来、日本社会に若者たちが、いわゆる大人社会につながっていく、体感できる接点ということは非常に少ない、限られているという現実があると思います。
取材スタッフは、彼らが声を上げたことで、自分が抱えている痛みや違和感を表していいんだということに気付いたという若者たちにも、多く出会ったんですけれども、キャンベルさんは、そうした若者たちの姿を、今、映画が公開されている、何者にも、色濃く反映されていると。
もともとの物語は、就職活動を一緒にしてるクラスメートたちが集まって、SNS、ツイッターなどを使って、情報交換をする、共有する、ミレニアル世代にとても得意なシェアをするということでつながってるんですけど、実はその中に、1人、その中でとても痛い思いを抱えていて、仲間を裏切ったりするという。
つまり自分のいい情報はシェアはするけれども、人に隠したい、あるいは対立というものを見せない、可視化させないということ、これはことほどさように、日本社会にはこれは多く、いろんなところで見て取れる部分じゃないかなというふうに思います。
そこで若い世代の閉塞感を克服していくために、何が必要か、書いていただきました。
お願いします。
顕われた違いから、みずからを変えるきっかけをつかむということで、自分の痛みや戸惑いというものを顕在化させる、できれば実名で表す、それを受け止める人たちが、それを違いとして、自分を変える、あるいは社会の不公平というものを見いだす、そのルーツを考えるきっかけとして、ポジティブに捉えることができれば、彼らの運動というものがつながっていくんじゃないかなと思います。
(拍手)2016/11/10(木) 22:00〜22:25
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代+▽“格差”“不安”声を上げる若者たち〜世界・日本でいま何が[字]

世界各地で声を上げ始めた若者たちがいま大きな地殻変動を生んでいる。日本で“うねり”を呼んだSEALDsの解散までのドキュメントを通して日本の現在地を見つめてく。

詳細情報
番組内容
【出演】東京大学教授…ロバート・キャンベル,【キャスター】井上あさひ
出演者
【出演】東京大学教授…ロバート・キャンベル,【キャスター】井上あさひ