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字幕書き起こし クローズアップ現代+「変容するテロリスト像〜追跡・ISリクルート網〜」 2016.11.14

イラクやシリアで重要な拠点を包囲され追い詰められたかに見える過激派組織IS。
しかし、中東以外の地域ではむしろ、その脅威が深刻化しています。
国際社会の監視が強まる中ISは遠隔地からテロを扇動。
新たなネット技術を悪用して直接会ったことのない若者たちを洗脳。
しかも、ごく普通の白人女性や高学歴のエリートたちを残忍なテロリストに仕立てているのです。
大きく変容するテロリストの姿。
知られざるISリクルート網を追跡しました。
130人が犠牲となった、パリ同時テロから1年。
ご覧いただいているのは、きのう、パリで行われた追悼式です。
過激派組織IS・イスラミックステートが、影響を与えたと見られるこの事件を機に、テロは世界中に拡散。
日本人も犠牲となりました。

 

 

 


これまでISのテロといいますと、イスラムの過激思想に染まって、社会から阻害されたと感じる若い男性というのが、典型的なテロリスト像でした。
それが今、イスラム教と無関係だった女性、未成年までが、自分たちが生活する地域でテロを起こそうとする事件が相次いでいるんです。
パリ屈指の観光名所ノートルダム大聖堂。
9月、ここで起きたテロ未遂事件が、フランス全土をしんかんさせました。
この大聖堂のそばで5人の犯行グループがガスボンベを爆発させようとして失敗。
その後、警察官をナイフで襲って拘束されました。
衝撃的だったのはフランスで初めて、女性を中心とした組織がテロを起こそうとしたことです。
中にはフランスで生まれ育ちかつてはキリスト教徒だった女まで含まれていました。
取材を進めると背後に一人の男の存在が浮かび上がってきました。
去年、フランスからシリアへ渡りISの戦闘員となったラシド・カシム容疑者。
アルジェリア系フランス人です。
カシム容疑者は、シリアからインターネットを通じて面識のないフランスの若者たちにテロを指示していたと見られています。
なぜ、見も知らぬ女性たちをテロリストに仕立てることができたのか。
カシム容疑者には当局に察知されることなく遠隔地から指示できる強力な手段がありました。
新たなメッセージアプリテレグラムです。
個人情報の漏えいを防ぐために開発され機密性の高いことが特徴です。
送ったメッセージを一定の時間がたつと自動的に消えるように設定できます。
例えば、5秒で設定した場合。
メッセージが消え証拠が残りません。
さらに、メッセージを暗号化することもできます。
フェイスブックやツイッターなどISが利用していたSNSへの監視が強化される中カシム容疑者はテレグラムの機密性の高さを悪用していたと見られています。
ノートルダム大聖堂でテロを企てた一人サラ・エルブエ容疑者。
シリアにいたカシム容疑者とはネットを介して最初の接点を持ったと見られています。
キリスト教徒の家庭に育ったサラ容疑者。
当時、両親が離婚し新しい父親との折り合いが悪かったことから手首を切るなどの自傷行為を繰り返していたといいます。
カシム容疑者が当初、どのようにサラ容疑者を誘ったかは分かっていません。
しかし、テレグラムで次のようなメッセージを送り続けていたことは明らかになっています。
サラ容疑者は急速にイスラム過激思想に傾倒。
ことし9月テロ容疑で拘束されたのです。
これまでのテロリスト像が変わっているのは、ヨーロッパだけではありません。
テロが相次ぐバングラデシュ、今まで貧しい若者が、過激派に加わるケースが多いと見られていましたが、ここに来て、ISのリクルート戦略が大きな変化を見せています。
7月に起きたテロ事件で日本人7人を含む20人以上が犠牲となったバングラデシュ。
残忍な犯行に及んだ5人の容疑者のうち3人は比較的裕福な家庭に育った若者でした。
バングラデシュでは近年行方不明になる若者が後を絶ちません。
100人近い失踪者の多くがイスラム過激派に加わっていると警察は見ています。
ダッカでのテロ事件の直後そうした失踪者の1人がISの宣伝映像に登場。
衝撃を与えました。
タミド・ラーマン・シャフィ容疑者、30歳。
ISがバングラデシュの若者を取り込んでいることを強く印象づけるものでした。
シャフィ容疑者の足跡をたどるとこれまでのテロリスト像とは全く異なる姿が見えてきました。
政府高官の父を持ち経済的に恵まれた家庭で育ったシャフィ容疑者。
大学時代にはテレビの歌番組にも出演していました。
ISに傾倒しがちな貧困層ではなく宗教にも熱心ではないエリート青年でした。
なぜシャフィ容疑者は変わってしまったのか。
変化が起き始めたのは、4年前大学を卒業して、大手通信会社で働いていたころでした。
知人の証言では、このころ結婚を約束していた恋人と破局。
自暴自棄に陥り、部屋に籠もりきりになったといいます。
そこからイスラム過激思想に傾倒。
シリアに渡ったと見られています。
バングラデシュでは今恋愛や家族関係といった身近な悩みを抱える若者たちに過激派が近づくケースが相次いでいます。
過激派が勧誘に使うパンフレットです。
テロを起こして殉教すれば神から救済され、天国に行けると若者を説得しているのです。
実際に、過激派から誘いを受けたという若者が取材に応じました。
中東情勢に詳しい保坂さん、フランス、そしてバングラデシュの若者のケース見ましたけども、共通しているのは、それまで特にイスラム教に深く傾倒していたわけでもなく、貧しい家庭の出身でもなかった、共通しているとしたら、私生活において挫折があったということなんですけれども、なぜ、会ったこともないISの戦闘員から、これだけ過激思想、洗脳されていったんだと思われますか?
確かにこれまで、貧困とか格差とかがテロリストになる要因の1つとして挙げられていましたけれども、それはあくまで要因の1つに過ぎないわけですね。
実際にはさまざまな個人的なものも含めて、怒りや不満、そういったものであっても、簡単にテロリストになれるという状況は、実は過去にも全く同じなわけですね。
今になって突然、エリート層、あるいは関係のない人たちが、リクルートされ始めたわけではないという点は注意が必要だと思います。
言ってみれば、自分自身の居場所を探している若者がいて、そこにISが居場所を与えてしまっている?
そうですね。
居場所であり、あるいは、場合によっては死に場所なのかもしれないですね。
いずれにせよ、彼らは、今いる場所が自分たちの居場所ではないという強い意識を持っているんだと思います。
IS側は、そういった若者を、どのようにして探し出して、どうやってリクルートしていく?
基本的にISのリクルートのしかたは2とおりあると思います。
1つは、ツイッター等を使って、大規模なプロパガンダですね。
その中で、プロパガンダに反応した若者たちに対して、恐らく個別にアプローチしていくと。
こういうやり方なんだと思います。
宮坂さん、テロの危機管理に詳しい専門家でいらっしゃいますけれども、宮坂さんは、若者があっという間に過激思想に染まっていく背景を、どのように分析されますか?
これは新しい現象では決してなくて、テロリズムの歴史を見ていても、イスラム過激派だけではなくて、こういうケースはいくらでもあるんですね。
人によって、それぞれ本当に違うので、あっという間といっても、1年とか2年とかの場合もありますし、いろんなケースがあるんですね。
常にそういうところをイスラム過激派の場合は、口を開けて誘ってるわけなんで、珍しいとか、特段驚くということでは、私は思っていないんですね。
そうですか。
われわれからすると、やはり新たなテロリスト像が生まれてきてるというふうにも見えるところなんですけれども、もう一つ気になるのが、テロの手法ですね。
例えば、トラックだとか、ガスボンベといった、本当に身近なものを使うようになってきているように感じますけれども、保坂さん、そのあたりはどう分析しますか?
確かにテロの手口というのは、ここにきて非常に劣化しているというふうに感じています。
粗暴になったというふうに言ってもいいんだと思います。
もちろん爆弾等は、これまでも使用しているんですけれど、特にヨーロッパ、あるいはアメリカにおいては、ナイフであったり、あるいはトラックであったりとかですね、かなり身近なものが使われるようになってきていると。
これは最近の大きな特徴の一つとして挙げられると思います。
その意味するところは、ルールがなくなってきているということなんですか?
そうですね。
ルールの場合、基本的に標的になるものなんですけれども、通常、ISにしても、イスラム法の枠組みの中で、事件を起こすわけですけれども、例えば女性を殺してはいけないとか、無実の人を殺してはいけないという最低限のルールはあるんですけれども、ここ最近のISの文書を見てみると、それこそ集会を狙えとか、あるいはなるべく人通りの多い道を狙えとかいう感じで、ほとんど無差別になってきているということはいえると思います。
宮坂さん、誰が過激化するのか、なかなか分かりにくく、その手段も本当に身近なものになってきている中でなんですけれども、去年のパリ同時テロ以降、当局による監視対象者、女性、未成年にも対象が広がっていまして、フランス国内だけでも今や1万1000人が監視対象になっているわけなんです。
これだけ増えますと、当局としても監視、非常に大変ですよね。
大変ですし、ほとんど不可能ですね。
1人を監視するのに、1人の捜査官では監視し切れないんで、何人もがつく。
さらにその1にんの監視員の周りには、どういう人と行動を共にしているのかとか、周りの人も見ていかなきゃいけませんので、とてもその1万1000人を監視するので、1万1000人の捜査員で足りるという、そういう話ではないです。
もっともっと多くの人手もいるという問題点も挙がっていますけれども、1年前のパリ同時テロ以降、捜査当局にはさまざまな課題が突きつけられています。
1年前のパリ同時テロ。
大きな課題として残ったのは国家間のテロ情報の共有でした。
実行犯の1人は住んでいたベルギーで監視対象になっていました。
しかし、フランスにはその情報はなく入国してきた容疑者の犯行を防ぐことはできませんでした。
あれから1年。
ISのテロの手口はさらに巧妙になっています。
国境を越え、ネットの技術を駆使して、遠隔で行われるテロ。
EU各国の捜査機関は協力して対策に当たる必要性がかつてないほど高まっています。
ヨーロッパ刑事警察機構・ユーロポール。
パリ同時テロから2か月後新たにテロ対策センターを発足させました。
EU各国の捜査員たちが膨大なテロ情報を共有しアメリカとも連携して分析を行っています。
テロ対策センターではテロの容疑者やその通信内容などを網羅したデータベースを整備。
ネット上で、テロの可能性を示唆するメッセージが見つかった場合には直ちに情報を共有します。
しかし、情報収集のしかたや情報源については各国の捜査機関が機密としているものが少なくありません。
今後、どこまで重要な情報を共有し、実際にテロを食い止めていけるのかが問われています。
宮坂さん、テロの対策に対して欧州各国で連携をしなければいけないという、それを進めようとしているところなんですけれども、うまくいきますか?
1年前のパリの同時多発テロ以前から、捜査当局の間では、当然、EUの中で情報協力をしなきゃいけないというのは、全員分かっていることで、何度もいわれてることなんです。
ただ、今のVTRでもいくつか重要な点が指摘されていましたが、1つは非常に膨大な情報がどんどん入ってきて、それも、いつ、どこでテロが起こるというはっきりしたそういう情報なんていうのは、ほとんどないんで、本当にこの紙の、膨大な紙の中から、あるいはデータの中から、本当にこれが脅威なのかどうなのか、そのへんを分析して、その上で共有していく、情報交換をしていくという、なんて言うんでしょうか、オーバーワークでもあるし、言うのとやるのは違う。
圧倒的に情報量が多すぎて分析追いつかないし、人手も追いつかない現状があると。
保坂さんはこういった各国の連携の見通し、どう見られますか?
私も国どうしの連携というのは、非常に難しいのではないかと思います。
というのも、やはり国内での省庁間の連携すら、なかなかうまくいかないわけですから、非常に難しいですね。
ただ、確かにデータは膨大なんですけれども、例えば先日、サウジアラビアで、サッカーの試合が標的になる、テロ事件が、未遂に終わったんですけれども、それが摘発された一つのきっかけは、インターネット上、ツイッター上の書き込みだったんですね。
だから、そういったような形で、最低限、危険情報、確実な危険情報を事前に察知するという努力はやはり必要なんだと思います。
そういった中で、今まさに、ISの重要拠点があるイラクとシリアでは、IS壊滅の軍事作戦が展開されているところなんですけれども、しかし、このことが逆に、世界各地でさらなるテロの拡散を招く可能性があると指摘する専門家がいます。
保坂さんはこの見立て、どのようにご覧になりますか?
仮にシリアからISが駆逐された場合に、今、シリアで戦闘行為を行っている当人、外国人ですね、彼らが皆、それぞれの国に戻ってくるわけで、彼らが怒りや不満を持ったまま、しかも高い戦闘能力を携えて、それぞれの国に戻ってくるわけです。
このシリア帰り、あるいはイラク帰りの人たちの危険性というのは、これまで以上に高まってくると思います。
仮に本拠地が弱体化したとしても、テロの危険性は決してなくなっていかないんではないかということですよね。
そうなると、何ができるのかということですけれども、宮坂さん、もちろん捜査を、連携を深めて、強化していくということも大切ですけれども、ほかに何ができるんでしょう?
捜査の連携、強化というのは限界がありますので、あとは、いつ、どこで過激化、人が過激化しているのを気付くのは、警察でも政府でもなくて、その周りの人たちなんですね。
ですからコミュニティー、日本語でいえば町内会とか自治会、そこでのいろいろな役割、若者にいろんな仕事というか、役割を与えて、生きがいを与える。
非常に地道なんですが、そういうことこそが、過激化を少し防いでいく一つのやり方ではないかと。
テロリストと町内会、ちょっとかけ離れているようにも見えますけれども、実はそういうものが大事なんですか?
生まれつきテロリストいませんので、どこかで過激化していくんですね。
それは町であり、学校であり、住んでいる町なので、地区なので、そこで周りの人が気付くということが重要なんです。
保坂さんはどんなことができるとお考えになりますか?
私はやはり、リハビリテーションですね。
過激化した人たちをいかにして社会復帰させるか、この作業が必要になってくるんだと思います。
一見何の変哲もないボルトとナット。
2016/11/14(月) 22:00〜22:25
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代+「変容するテロリスト像〜追跡・ISリクルート網〜」[字]

130人が犠牲となったパリ同時テロから1年。イスラム教徒で貧困層出身者という従来のテロリスト像が、いま大きく変わりつつある。世界各地で何が起きているのか。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】日本エネルギー経済研究所・中東研究センター研究理事…保坂修司,防衛大学教授…宮坂直史,【キャスター】鎌倉千秋
出演者
【ゲスト】日本エネルギー経済研究所・中東研究センター研究理事…保坂修司,防衛大学教授…宮坂直史,【キャスター】鎌倉千秋