全文書き起こしサイト

地上波テレビの字幕を全文書き起こします

スポンサードリンク

字幕書き起こし クローズアップ現代+「そして威信は地に堕(お)ちた〜韓国大統領 疑惑の真相は」 2016.11.16

韓国、パク・クネ大統領の衣装を仕立てるための専用の部屋。
そこに設置されていた防犯カメラの映像です。
映っているのは韓国中を疑惑の渦に巻き込んだチェ・スンシル容疑者。
大統領の長年の知人です。
大統領府の職員の顔も見ずに携帯電話を無造作に渡すチェ容疑者。
大統領の衣服について細かく指示を出す様子が映っています。
地元メディアに影の実力者と呼ばれています。
チェ容疑者は、大統領の側近と共謀して企業に圧力をかけ資金を拠出させた疑いやその一部をだまし取ろうとした詐欺未遂の疑いで今月3日、逮捕されました。
さらに政府の内部資料まで入手していました。
そして今疑惑の目は大統領自身へ。
検察は前代未聞の現職大統領への事情聴取に踏み切ろうとしています。
チェ容疑者とは何者なのか。
どのように大統領に取り入ったのか。
取材から、その一端が明らかになってきました。

 

 

 


チェ容疑者と大統領との最初の接点を知る人物に会うことができました。
牧師のチョン・ギヨン氏です。
かつて、宗教家たちの集まりでチェ容疑者の父親と知り合い共に活動していました。
すべての始まりはその父親だったといいます。
チェ容疑者の父親で宗教家のチェ・テミン氏。
パク・クネ氏に接近したのはある事件がきっかけでした。
パク氏の父パク・チョンヒ元大統領の暗殺未遂事件です。
流れ弾が当たったユク・ヨンス夫人が死亡。
チェ・テミン氏は、悲しみに暮れていたパク・クネ氏に宗教を入り口に近づいていったといいます。
その直後、チェ・テミン氏が始めた社会活動に参加するパク・クネ氏の姿です。
隣にぴったりと寄り添っているのはチェ・テミン氏の娘、若き日のチェ・スンシル容疑者です。
貧しかったチェ親子はこのころから急に羽振りがよくなったといいます。
大統領との関係を利用したと見られています。
その後、パク・クネ氏は政界に進出。
そこにチェ容疑者はどう関わっていったのか。
パク氏の側近の一人だったイ・サンドン議員が取材に応じました。
4年前、大統領選挙に立候補したパク氏を支えていたころからチェ容疑者の影響を感じていたといいます。
チェ容疑者は大統領との近い関係を利用して200以上にも及ぶ政府の内部資料を入手していたとされています。
その中には、大統領の発表前の演説原稿が含まれていました。
そのため、チェ容疑者が大統領の発言の内容にも関わっていたのではないかという疑惑が噴出しています。
その一つが、覆面をした市民が政府の教育政策に抗議したデモへの発言。
市民をテロリストと同列に扱うようなことばを使ったのです。
さらに、対北朝鮮政策に関する演説では。
この大当たり。
すごい・やばいなどを意味する若者ことばです。
こうした大統領の不自然な発言に国民の間で当惑が広がったのです。
対北朝鮮政策について大統領に助言する有識者機関の委員コ・ユファン教授です。
大統領の突然の発言に驚いたといいます。
パク大統領は内部文書をチェ容疑者に渡し助言を求めたことは認めたものの政策への関与は否定。
しかし、国民の疑念は深まる一方です。
検察が、現職の大統領としては前代未聞の事情聴取にきょうにも踏み切るという見通しがありましたけれども、これが延期となりました。
何が起きているんでしょうか。
早速、現地で取材をしている池畑ソウル支局長に聞きたいと思います。
池畑さん、国民のこれだけの抗議の中で、先送りの判断をしたのは、なぜなんでしょうか?
大統領の弁護士は、準備時間が足りないと主張しましたが、そこには政治的な駆け引きも見え隠れします。
一つは、今、大統領が聴取に応じますと、今度の土曜日にも起訴される見通しのチェ容疑者の起訴状に、大統領と事件との関与も書き込まれて、それが野党や国民からのさらなる批判につながるおそれがあるという見方です。
さらに国会では、通常の検察より広範囲に、かつ独立した立場で、捜査を行える、特別検察官を任命する方向となっています。
このため、特別検察官の聴取にじっくり備えたほうが得策だと判断したとも見られています。
検察はきょう、あさって金曜日までは、大統領の聴取は可能だという立場を示しましたが、依然として聴取の日程は見えていません。
池畑さん、先送りの判断の背景に、そういった思惑があったとなると、これ、火に油を注ぐ形で、大統領の退陣を求める声がさらに強まりませんか?
すでに、その兆しは見えています。
野党側は、早速、きょう、大統領に対する捜査を遅らせることは許されないと糾弾し、メディアでも時間稼ぎのように映る動きが、国民の怒りをさらに激しくしていると指摘しています。
ここ、ソウル中心部では、先週、26万人もの市民が集まって、大統領の退陣を要求しました。
今週の土曜日には、再びここで抗議集会が予定されています。
パク大統領としては、聴取を遅らせることによって、得るものより失うもののほうが大きそうです。
スタジオには、韓国政治がご専門の奥薗秀樹さんです。
こんばんは。
奥薗さん、まずここまで分かっていることを整理していきたいと思います。
疑惑は大きく分けて2つあります。
まず、古くから大統領の知人である、チェ容疑者が、政府内で管理されるべき文書を、パク大統領の側近から入手していた疑惑。
そしてこの関わった側近は、すでに逮捕されています。
もう1つは、チェ容疑者が、大統領のもう1人の側近と共謀して、企業に圧力をかけて、政府が設立に関わった2つの財団に、およそ70億円を出資させた疑いですね。
またチェ容疑者が、その一部をだまし取ろうとした疑いもあります。
この側近も、すでに逮捕されています。
今、焦点は、大統領自身がこの疑惑に関わっていたのかどうかというところなんですけれども、奥薗さん、まずこのパク大統領を巡る疑惑を、どう見ていらっしゃいますか?
実は、このチェ容疑者の父親のチェ・テミン氏と、それからパク・クネ大統領の関係については、実は80年代から、もううわさとしては、あったんですね。
だいぶ前から、実は関係が。
ただ、ある種のタブーとして、公で語られるということはあまりなかった。
ところが、パク・クネさんが、政治の世界に足を踏み入れてからは、そういうわけにもいかないと。
例えば大統領選挙に挑戦するときだとか、あるいは、大統領に就任されたあとも、この疑惑について、指摘を受けるということはあったんですが、ただし、パク・クネ大統領が、まだ強い求心力を維持していた段階では、この疑惑がこれ以上、大きくなることはなかった。
うまくこなしていったということがいえるんだと思うんですが。
そんなある種のタブーが、解かれてしまったというのは。
それはやはり、ことしの4月に総選挙、国会議員の総選挙が韓国であったんですけれども、その総選挙の結果、大半の予想を大きく裏切る形で、与党が惨敗してしまったんですね。
そのことによって、パク・クネ政権の残りの任期というのは、もうレームダックに陥っていくということが避けられないという流れがあって、その流れの中で、野党勢力ですとか、その次の大統領選挙をにらんだうえで、現政権のあら探しを始めたと。
それが一気に、歯止めが利かなくなって、今の状況になっていると。
そして焦点は、大統領自身が関わっていたのかどうかというところで、これ、韓国メディアの報道によりますと、逮捕された元側近たちは、このように語っているんですね。
大統領から直接、指示を受けた、あるいは、チェ容疑者自身も、大統領が助けを求めてきたと供述したといわれているんですが、奥薗さん、どう見ますか?もし仮に、大統領自身が関わっていたとすると。
そうですね、ご存じのとおり、これまでも韓国の歴代大統領はですね、任期末期になると、その悲惨な末路をたどるということが繰り返されてきたんですね。
ただし、これまでの歴代大統領については、大統領のきょうだいですとか、息子さんですとか、そういう身内ですね。
本人ではなかった?
本人ではなかったんですね。
身内が、大統領の権力をかさにきて、不正や横暴を働くということだったんですが、今回は、もしパク・クネさんご自身がこれに関わっていたということになりますと、現職大統領自身が、関わるということですから、これまでの歴代大統領の疑惑とは、ちょっと次元の違う話になってくると思います。
国民の怒りはこれ、とどまることを知らなくなるんじゃないかということなんですけれども、そのパク大統領の支持率を見てみたいと思います。
一番高いときで、およそ60%あったのが、今、5%にまで、本当に急落している状況なんですよね。
これは韓国の歴代大統領と比べても、過去最低となっています。
国民の怒りの背景に、何があるんでしょうか。
今、韓国で広がっているのはパク大統領の伝統的な支持基盤の崩壊です。
これまで大統領を強固に支えたコンクリート支持層とも呼ばれてきた高齢者たち。
今回の事件に困惑を隠しきれませんでした。
一連の疑惑をきっかけにパク大統領の支持をやめたというキム・ブウンさん、82歳です。
これまでパク大統領を支持してきたのは、父親のパク・チョンヒ元大統領の存在が大きいといいます。
1963年から16年にわたって大統領を務めたパク・チョンヒ元大統領。
韓国に高度経済成長をもたらした指導者として多くの国民から支持されてきました。
亡くなった母親に代わってファーストレディーの役割を果たしてきた娘のパク・クネ氏も当時から国民的人気を集めていたのです。
キムさんはパク親子を慕う気持ちから関連書籍を収集してきましたがすべて処分してしまいました。
長年にわたって抱いてきたパク・クネ大統領への愛情が踏みにじられたと感じています。
コンクリート支持層の取材を続ける地元の新聞社です。
セウォル号の沈没事故などパク大統領に逆風が吹いた際も離れなかったコンクリート支持層がついに見放したことが支持率急落の大きな要因だと指摘します。
先週、ソウルで開かれたパク大統領に退陣を求める抗議集会。
29歳以下の大統領の支持率が異例の0%となるなど若者たちの不信感も極限に達していました。
経済停滞が続く中、名門大学を出ても就職が難しい韓国。
若者たちは恋愛、結婚、出産の3つを諦めざるをえない三放世代とも呼ばれています。
チョ・ミニョンさん、19歳。
ソウルの名門女子大学の1年生です。
格差が広がる中で、将来への不安を抱えてきたチョさん。
以前から今の政治に疑問を感じてきました。
今回の事件で権力と既得権益層との結び付きがあらわになったと感じ政治不信が一層強くなったといいます。
奥薗さん、それにしても、コンクリート支持層と言われた、年配の方々の怒りはすさまじいですよね。
何がそんなに裏切られたと感じるポイントなんですか?
1つはですね、パク・クネさんというと、約束を守る政治家、信頼できる政治家というのが、代名詞だったんですね。
それはやはりパク・クネさんが、ご両親とも、銃弾に倒れるという悲惨な生い立ちを持っておきながら、国家のために、自己を犠牲にして、尽くしてきたと。
こんな発言もあったんですよね。
私は韓国と結婚した。
パク・クネさんは独身でいらっしゃるわけですけれども、国家と結婚したんだということをおっしゃったりとか、そういう自己犠牲の象徴のように、国民には映ってきた側面があったんですね。
それが今回、こういう形で、裏切られてしまったということで、非常に大きな怒りを買っているということがあると思いますし、もう1つは、先ほどの年配の方のVTRの中にありましたけれども、年配の方々っていうのは、やはり、パク・クネさんを支持するのではなくて、パク・チョンヒさんの娘さんだから支持すると。
それは韓国が非常に貧しかった時代を、パク・チョンヒ大統領の指導の下で一緒に生きてきた人たちは、パク・チョンヒさんの娘さんだからということで支持をしてきた。
年配の方からすると、その一緒に歩んできた時代も、まるで否定されたかのように感じている部分があると。
父親が命を懸けて作ったこの国に、泥を塗ったと。
父親の顔にも泥を塗ったというようなところがあるんだと思います。
怒りなんですね。
そのパク・クネ大統領が、今後、取れる道なんですけれども、今言われているのは、大きく3つありますね。
みずから辞任をするのか、弾劾されるのか、それとも権限を縮小して、委譲する形にするのかということなんですが、ここで再びソウル支局、池畑支局長に聞きたいと思います。
池畑さん、そうは言いましても、今のこの低い支持率の中で、パク・クネ大統領、どんな選択ができるんでしょうか。
今のところ、大統領は任期を全うする意思を崩していません。
そのために、野党側に譲歩を繰り返しました。
しかし、野党各党はあくまで退陣を求めていて、早くも大統領選挙モードに突入か?という雰囲気すら出てきています。
かつて失意の底で大統領府を去ったパク・クネ氏は、今、再び、志半ばで、大統領府から去るべきだという、強い圧力にさらされています。
奥薗さん、ますます韓国の政治は混乱が進みそうにも感じますけれども、これがでは、外交にどういう影響を与えるのか、どう分析されますか?
パク・クネさんの指導力が極端に低下することは避けられませんので、その意味では、外交面においても、マイナスはあっても、プラスはないというふうに考えざるをえないと思いますね。
取り巻く環境として、北朝鮮や日本、アメリカなどもありますけれども、日本としては、この事態をどう見ればいいんですか?
やはり、パク・クネさん、ようやく、日米間連携に軸足を移して、日米連携がプラスの方向に向かう流れが出来ていたところだったんですね。
ですから、そこでなされた合意というものを、パク・クネさんが今後どういう状況に置かれようとも、日本やアメリカは、決まったことを淡々と、粛々と、合意に基づいて進めていくということが、求められるんだと思います。
今後の政治の行方、日本としては、それを冷静に見守っていくことが大事だということなんですね。
そうですね。
きょうはパク・クネ大統領の疑惑について、奥薗さんと共にお伝えしてまいりました。
さて、ここで1つ、お伝えしなければいけないことがあります。
おとといの放送の中で、フランスで起きたテロ未遂事件の容疑者だとする写真をお伝えしましたが、これは過激派組織IS・イスラミックステートに加わっていたと見られる、別の人物の写真でした。
大変失礼いたしました。
2016/11/16(水) 22:00〜22:25
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代+「そして威信は地に堕(お)ちた〜韓国大統領 疑惑の真相は」[字]

韓国のパク大統領が政府の内部文書を知人女性に渡し、国政への介入を許していたとされる問題。韓国の政治と社会を揺るがす疑惑の真相と大統領が窮地に陥った背景を伝える。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】静岡県立大学教授…奥薗秀樹,【キャスター】鎌倉千秋
出演者
【ゲスト】静岡県立大学教授…奥薗秀樹,【キャスター】鎌倉千秋