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字幕書き起こし NHKスペシャル「巨龍中国 成長産業にカネを流せ 14億人の資産の行方」 2016.11.19

中国の投資会社の女性経営者がベンチャー企業に資金を投入すべきか吟味する。
(拍手)今中国で1日に起業する会社は…株式上場を目指し次世代産業の分野に続々と名乗りを上げている。
そこに流れ込むのが総額1,800兆円ともいわれる個人資産だ。
14億人を巻き込んだ投資ブームに沸き立っている。
ブームを引っ張るのは新たに登場した民間の投資会社。
利回り30%をうたい富裕層からカネをかき集め投資する。
更にインターネットで庶民から素早くカネを集める新手の金融ビジネスも登場。
こちらは年利9%元本・利息とも保証する。
加熱するブームの陰でトラブルも頻発している。
「世界の工場」から脱皮し新たな成長産業を求める中国。
14億人の個人資産を次なる発展の起爆剤にできるのか。
飽くなき成長を追い求める中国の官民挙げての壮大な実験を追った。
上海市浦東新区。
近未来的なビルが密集するこの地区は金融城と呼ばれる中国随一のマネーシティーだ。
この街の一日の取引額は30兆円を超えるという。
中国経済にマネーという血液を送り込むいわば心臓ポンプだ。
大手国有銀行をはじめ6,000ほどの金融機関がひしめくこの街で今新たな勢力が存在感を増している。
新興の民間投資会社だ。
この日はバーチャルリアリティの分野で有望なベンチャー企業を探そうと投資会社が集まっていた。
4年後には世界で7兆円規模に膨らむと期待されるバーチャルリアリティ。
その市場を投資会社がこぞって狙っている。
新興投資会社の経営者は20代から30代の若者たち。
億単位の資金を預かりお目当てのベンチャー企業に先を争うように投じている。
この日会場を一番沸かせたのがこの恋愛体験ゲームだ。
投資会社の経営者潘小溪さんも有望な投資先を虎視眈々と狙っていた。
(取材者)おはようございます。
潘さんは金融城の投資会社でも珍しい若手の女性経営者だ。
会社の創立は4年前。
中国の輝かしい発展に寄与したいという思いを込め華輝集団と名付けた。
社員は50人。
ハイテク分野のベンチャー企業に億単位のカネを投資。
株式を上場させる事で利益を得る。
カネの出どころは資産家や企業経営者など限られた富裕層。
預かった50億円の資産を3倍の150億円に増やしてきた。
潘さんが自らに課している運用利回りは年30%だという。
この日高級タイルメーカーに投資したいという共同経営者からの提案が議論となった。
投資にあたって潘さんが最も重視するのは高い成長力があるかどうか。
たとえ確実性が高くても収益率の低い古い産業は相手にしない。
まさにハイリスクハイリターンだ。
今回の投資は再検討となった。
中国で沸き立つ投資ブーム。
背景には新たな成長を求める国の思惑があります。
今中国政府は「世界の工場」から脱皮し自力でイノベーションを起こせる創新型国家への転換を急いでいます。
そのため航空・宇宙や新素材バイオ・医療機器など10の成長分野を定め次世代産業の柱に育てようとしています。
ここで課題となっているのが成長産業を育てるための資金です。
かつて中国の経済成長を支えていたのは国有銀行と外国からの投資でした。
その資金が国有企業や外資との合弁会社に流れ込み「世界の工場」を実現しました。
しかし成長の鈍化で外国からの投資は頭打ちになり国有銀行は既存の産業の維持で手いっぱい。
そこで国が注目したのが1,800兆円ともいわれる14億人の個人資産です。
問題は成長産業にそのマネーをどうやって注ぎ込むか。
政府が考えたのはそれまでほとんど存在しなかった民間の投資会社を増やし資金の流れを作る事でした。
そのために新たな法律を作り投資会社の設立を促しました。

 

 

 

 


しかも金融機関に厳しい規制をかける先進国と違い細かな規制を設けず自由を与えました。
結果習近平政権が誕生した頃からその数が急増。
今や2万2,000社を超えているといいます。
国は更に税の優遇措置を図るなど彼らの投資を後押し。
投資会社はそれに応えるように集めたカネをベンチャー企業に流し込んでいます。
この先中国が新たな成長エンジンを獲得できるか否かその鍵を握る存在となっています。
この日潘さんはある会社への投資に動いた。
バーチャルリアリティの発表会で目を付けた恋愛体験ゲームを作っている創業2年のベンチャー企業だ。
バーチャルリアリティは国が定めた10大成長産業にも関わる技術。
潘さんが特に力を入れている分野だ。
投資を決める前には必ずトップと会う。
見極めるのは自分たちの技術に本当に自信があるかどうかだ。
潘さんの挑発にも強気の姿勢を崩さなかった経営者たちが気に入った。
イギリスに留学し大学院も出た潘さん。
しかし専攻は美術。
投資の知識は独学だ。
その潘さんの投資活動の武器は全国に60万人の会員を持つ留学経験者団体のネットワークだ。
国家の指導者も留学経験者たちを起業や技術革新を生み出す新戦力として重視している。
潘さんはこの団体で2万人を束ねる支部長を務め顧客も投資先も多くをその人脈から得ている。
投資という資本主義的なビジネスを支えているのは中国ならではの見えない人脈の力だ。
1,800兆円ともいわれる個人資産を成長産業へ注ぎ込む新たな民間投資会社。
更に全く新しいやり方で個人資産を集める金融ビジネスも登場。
脚光を浴びている。
それが…インターネット金融はその名のとおりネットを通じて庶民からカネを集める新しい金融だ。
数年前に登場し急拡大。
今中国全土で2,000を超える会社が10兆円を超すマネーを動かしている。
利率は高いもので年13%を超える。
株価の乱高下で痛い目に遭った個人投資家たちが雪崩を打って乗り換えてきている。
このインターネット金融の先駆けとして注目を集めている企業が金融城の一角にある。
融道網。
今全国から視察が殺到している。
この日は広東省から銀行の支店長クラスを集めた視察団を迎えていた。
従業員200人。
平均年齢は29歳と若い人材が動かす会社だ。
融道網の売りはカネを集めるスピードだ。
まず事前審査を通った企業の情報をインターネットで公開する。
募集の大半は比較的容易に資金を集められる100万円単位の融資だ。
このケースでは年利9%。
返済は12か月後。
しかも元本・利息ともに100%保証付きだ。
求める金額は日本円でおよそ150万円。
募集を開始するとすぐにカネが集まり始めた。
次々とカネが集まってくる。
8人がカネを入れた。
融資の焦げ付きは1,000件に3件の割合。
その場合融道網側が負担する。
日本では貸金業法などで規制され認められないビジネス。
中国ではスマートフォンなどで誰でも簡単に参加できる。
こうして集められたカネを成長産業の企業に融資として貸し出す。
返済時に2%程度の手数料を上乗せこれが融道網のもうけとなる。
従来の金融機関なら1か月程度はかかる融資を平均1週間最短2時間で実行。
このスピードで小口の融資を数多くの企業に行い業績を急拡大させてきた。
この会社を率いる周漢さんは企業向け金融にインターネットを導入したとされる人物だ。
大手メーカーの財務担当だった周さん。
下請け企業の資金難を目の当たりにし7年前に融道網を立ち上げた。
融資の対象は成長産業への展開を見込める有望な中小企業に絞っている。
これまでおよそ1万社に資金を提供してきた。
今や2,000社を超え金融界の一大勢力となったインターネット金融。
中国政府はそのカネを集める力にますます期待を寄せている。
インターネット金融の先頭を走る融道網は2年前上海市から異例の出資を受けた。
上海市は融道網に成長産業を育てるためのあるミッションを授けた。
その舞台は…中国有数の鉄の町だ。
上海市のミッションは低迷する重厚長大産業の下請け中小企業を再生する事。
成長産業に展開できる有望な企業を見つけ育ててくれというものだった。
この日はある鉄工所に調査にやって来た。
上海の国有製鉄所の下請けとして長年やってきた会社だ。
現場深くに足を運びデータからは見えない企業の強みを見極めるのが周さんの流儀だ。
この工場は異なる金属をピタリと溶接する高い技術を持っている事が分かった。
この技術は新素材の溶接など新しい産業にも必要だと周さんは見立てた。
こうした下請けの企業が既存の金融機関からカネを借りるのは容易ではない。
鉄関連の工場となればなおさらだ。
宝山区を担当する社員も加わって聞き取りが始まった。
必要な運転資金は日本円でおよそ150万円。
担保はなし。
この資金をインターネットで募集する。
果たして人々は募集に応えるのか。
カネを入れたのは7人。
リスクを再度確認したあと鉄工所の口座に振り込まれる予定だ。
融道網が成長産業と見込んで力を入れている分野がある。
地方の農業法人だ。
農業は国の10大成長産業にも関わる分野だがとりわけ融資が行き届いていない。
この日周さんは融資先である安徽省の大規模農園を訪ねた。
最近洪水の被害に遭ったと聞き視察にやって来た。
融道網で資金を得て大規模なキウイの有機栽培に乗り出した農業法人。
今年は大豊作と見込んでいたやさきだった。
更に周さんは淡水魚の養殖会社にも足を運んだ。
融道網で集めた資金をもとに魚の種類を増やし大規模化を進めていた。
しかし洪水で水かさが増し購入したばかりの稚魚がほとんど逃げてしまったという。
事業の存続には追加融資が必要だった。
しかし融資のリスクは極めて高い。
国家から成長産業に資金を流す役割を期待され急拡大してきた新興投資会社そしてインターネット金融。
ばく大な個人資産を成長産業に流し込み一日に平均1万2,000社を起業させています。
しかし国の思惑を超えて過熱する投資ブームがここに来てさまざまなトラブルを引き起こしています。
去年12月には中国史上最大ともいわれる詐欺事件が発生。
インターネット金融会社の幹部が集めた7,500億円以上を着服。
被害者は90万人に上りました。
この事件以降もトラブルは絶えません。
インターネット金融に関するトラブル相談窓口です。
毎週電話やメールで600件を超える相談が寄せられます。
その多くが貸したお金が返ってこないというものです。
これまで世に出たインターネット金融会社の3社に1社が客との間で問題を起こしてきたといいます。
今年8月国はついにインターネット金融の規制に乗り出しました。
貸出金額の上限や融資審査の厳格化などを定め行き過ぎたブームをなんとかコントロールしようとし始めています。
しかしもうかる投資先を求めて押し寄せるマネーの勢いはいまだ衰えていません。
投資ブームが過熱する中投資会社同士の競争も激しさを増している。
あの潘小溪さんも新たな投資先を求めて過酷なスケジュールが続いていた。
競争を勝ち抜くためより大きくよりリスクの高い投資案件に踏み出そうとしていた。
この日訪れたのは中国政府も重視する環境・エネルギー分野で大きなプロジェクトを動かすベンチャー企業。
農業廃棄物などのゴミを燃料に電気を生み出すいわゆるバイオマス発電だ。
この会社の独自技術は燃料の作り方にある。
農村で環境問題の原因となっている農業廃棄物。
それを燃料に変える。
廃棄物をこの装置に投入すると独自の圧縮技術で固められ燃料となって出てくる。
大学の研究者だったこの起業家が圧縮技術を開発。
同じ重さの石炭の半分ほどの燃焼力を実現したという。
しかしこの発電所建設プロジェクトには想定外の大きなリスクがあった。
地方政府から土地を格安で払い下げてもらったが建設計画の甘さもあり基礎工事で資金が枯渇。
1年以上工事は止まったままだ。
1年も塩漬けになった工事の再開には中止していた間の補償問題や基礎工事のやり直しなどリスクが付き物だ。
会社側は海外からも引き合いがあるとアピールするが果たしてリスクに見合うリターンはあるのか?投資額が大きいだけに失敗すればダメージも大きい。
しかも顧客が期待する短期での利益の回収は見込めない。
潘さんは投資を見送った。
潘さんが自らに課す年率30%もの高い利回り。
小刻みに投資を重ねなければ実現は容易ではない。
国家の期待と顧客の利益とのはざまで結果を出し続けなければならない重圧と日々隣り合わせだ。
競争を勝ち抜くために貪欲にビジネスを広げてきた潘さん。
しかし玉石混交のベンチャー企業を見極める難しさを思い知らされる事件が起きた。
トラブルの相手は地方の有力者の紹介で投資してほしいとやって来た東洋医学の医者だった。
ツボ押し健康法をビジネスにしたいという医者に賛同し潘さんはオフィスを用意。
ビジネスプランも企画書にまとめた。
ところが問題が起こりビジネスを中止せざるをえなくなってしまった。
中止の原因は医者が潘さんの企画書を餌に違法なおそれのあるカネ集めのパーティーを勝手に開いた事。
これが潘さんの言い分だ。
地方の有力者からの紹介という人脈への油断があった。
潘さんからの電話には出なくなった有力者側に仲間が代わりに抗議する事になった。
話はどこまでもかみ合わない。
人脈こそ中国社会での成功の鍵と信じてきた潘さん。
その人脈に初めて裏切られた。
秋雨が続く中融道網は新たな事態への対応に大わらわだった。
8月末国がネット金融の規制に乗り出し融資の審査を一層厳しくする事が求められるようになっていた。
調査にかかる時間とコストが劇的に増え自慢のスピード融資への影響も懸念され始めていた。
そのさなか難しい融資の審査が始まった。
水害に遭った2つの会社への追加融資だ。
周さんはメンバーたちのリスクへの懸念を押し切り追加融資を決めた。
リスクが高い追加融資にもカネは集まるのか?いつものようにあっという間に集まった。
融道網に運転資金の融資を依頼していた鉄工所。
インターネットで資金が集まってから6日たっていた。
なぜか表情がさえない。
融道網の担当者がやって来た。
企業の命をつなぐスピード融資。
規制の枠の中でその役割を果たし続ける事ができるのか?入金までにはひとつき以上かかった。
手痛い失敗を経験した潘さんにうれしいオファーが舞い込んだ。
大物投資家が立ち上げたビッグプロジェクトに参加を請われたのだ。
国家が新たな輸出産業として重視するエンターテインメント産業が潘さんの次なる投資の舞台だ。
国家の思惑に寄り添いながら潘さんは有望な投資先を探してまた旅を続ける。
一日1万2,000社が起業するベンチャー大国中国。
その中から次世代産業の担い手をどれだけ育てる事ができるのか。
今日も成長を信じる14億人のマネーが金融城を飛び交っている。
2016/11/19(土) 21:00〜21:50
NHK総合1・神戸
NHKスペシャル「巨龍中国 成長産業にカネを流せ 14億人の資産の行方」[字]

中国で投資会社やネット金融などが入り乱れて投資ブームが加熱している。背景には新たな成長を求める国の思惑がある。14億人の個人資産が流れ込むマネーの新潮流を追う。

詳細情報
番組内容
中国で投資ブームが加熱している。中でも脚光を浴びるのが、一般の人々からネットを駆使して小口の資金を集め、企業へ貸し出す新手の金融サービス。これまで株や不動産に投じられていた資金が、市場の低迷で一気に流れ込んだことで急成長した。背景には、経済成長が落ち込み、新たな成長のエンジンが必要となった中国政府の思惑がある。豊かになった14億人の個人資産が流れ込む、ダイナミックなマネーの新潮流を追う。
出演者
【語り】谷田歩