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書き起こし クローズアップ現代+「賛否噴出!ネットで“赤ちゃん”をあっせん!?」 2016.11.21

パチンコ必勝法で稼いできた男性。
新たに乗り出したのは…。
インターネットを介した赤ちゃんの養子縁組あっせんでした。
しかし男性の事業は営利目的とも疑われるあっせんで全国初の停止命令を受けました。
背景には、赤ちゃんの養子縁組が進まない現実が。
ネットを使い、効率化する動きが波紋を広げています。
ネットでの赤ちゃんあっせんは子どもが欲しいと願う人々の希望になるのか。
営利目的の人身売買にならないのか。
賛否渦巻く現場からの報告です。
赤ちゃんの到着を待つ男性。
インターネットを使って養子縁組のあっせんを行うNPOの代表です。
妊娠中から相談に乗ってきた女性が赤ちゃんを連れてくることになっていました。
女性の希望で駅前で会うことになりました。
赤ちゃんを養子として引き取ることになっている40代の夫婦です。
赤ちゃんを抱いた女性が現れました。
女性は20代のシングルマザー。
生後1か月の赤ちゃんは2人目の子どもだといいます。
経済的に苦しく親の介護も抱えているため育てることを断念しました。
女性と夫婦が顔を合わせたのは僅か9分ほど。
女性は泣き続けていました。
あまりにもあっけない別れ。
赤ちゃんは新しい親の養子として生きていくことになります。
2年前から、ネットを活用したあっせんを始めたこのNPO。
代表は、みずからも養子を迎えた経験から、今の制度では手続きに時間がかかり過ぎると主張しています。
通常、養子縁組を行うのは児童相談所や民間のあっせん団体です。
希望する夫婦の収入や年齢などを審査し、面談や研修を行います。
こどもの実の親に対しても念入りに面談や意向の確認を行ったうえで子どもが引き渡されます。
このNPOでは、こうした手続きを簡略化しています。
養子縁組を希望する夫婦には家庭訪問を原則1度行うだけ。
職業や収入などの情報はネットでの登録で済ませます。
子どもの実の親との面談も基本的には1度だけ。
その後のやり取りは主にネットやSNSで行います。
出産までにかかった生活費などは育てる親から支払われます。
あっせん団体は、営利目的での金銭の授受はできません。
しかし、このNPOは妊娠中の女性に最大200万円援助するとうたっており人身売買を想起させると批判が出ています。
このNPOのあっせんにより設立から2年で15組の養子縁組が成立しています。
子どもを手放す相談を寄せてきた200人近い女性の多くが経済的な事情を抱えているといいます。
その一人、26歳の女性です。
妊娠4か月。
交際相手とは別れています。
1人で育てる経済的な余裕がないと出産もためらっていました。
ネットで検索してまず目に入ったのがこのNPOでした。
妊娠中、仕事ができなくても生活費として月20万円支払われると聞き子どもを託すことに同意しました。
女性には赤ちゃんを託す相手を選ぶ機会も与えられていました。
Aさん、世帯年収1200万。
Bさん、夫の職業、医師。
教育方針、しつけはしっかり伸び伸び育てる。
ネットでのあっせんが広がる背景には、個人的な事情をあまり知られたくないという女性たちの存在もあります。
去年、赤ちゃんを養子に出した25歳の女性です。
ほかの民間団体にも相談しましたが深い関わりを求められないネットでのあっせんを選びました。
一方養子を迎えた夫婦からはNPOの手続きの早さが魅力だったという声も上がっています。
おととし、ネットでのあっせんで女の子を引き取った夫婦です。
9年前に結婚。
養子縁組を希望して、さまざまな民間団体に問い合わせましたが実現しませんでした。
諦めかけた夫婦が最後にすがったのがネットであっせんしていたNPOでした。
僅か4か月後生後6日の赤ちゃんを引き取りました。
このネットで赤ちゃんをあっせんする団体については、ホームページに記載されている200万円の表現が、不適切だと、大阪市から繰り返し行政指導を受けるなど、社会的な批判も高まっています。
一方、200万円については、NPO側は、あくまで必要経費だとしているんですね。
宋さんは、産婦人科医として、望まぬ妊娠をした女性ですとか、なんとか子どもが欲しいという不妊治療されているご夫婦と、何人も向き合っていると思いますが、どうご覧になりました?
日常的に意図しない妊娠のために、困った妊婦さんにお会いする機会、多いんですけれども、例えば人工妊娠中絶をするとか、必要なサポートや福祉を受けて、自分で産み育てる、妊娠、出産ということ自体が、女性の体はリスクを冒すわけですから、自分で育てるという選択肢もあると思うんですけれども、200万円っていう大金を提示されると、どうしても熟慮のうえ、選択するっていう思考能力を奪われてしまうのかなというふうに感じました。
こうした背景には、さまざまな事情で親と一緒に暮らせない赤ちゃんがいる、そしてさらに生まれたばかりの赤ちゃんが遺棄をされてしまう事件も相次いでいるという実態もあるわけです。

 

 

 


宮島さんは、実際、児童相談所にもお勤めになって、特に子どもの福祉の観点から、この問題をずっと見られていますけれども、どうご覧になりました?
このVTRには出てきませんでしたけれども、NPO法人が、とにかく病院で出産をするということに導いているということだけは評価します。
ただ、きょうの映像を見て、本当にこれでいいのかなと思うことが、本当にたくさんありました。
まず駅前で、ああいう形で受け渡すというようなことが行われてる、驚きでした。
また、産みのお母さんとの面談、1回だけだということも驚きですけれども、そこでお金の話だけで終わってしまったと。
本当は、たくさんのいろんな思いですね、持ってらっしゃると思うんですよ。
あんまり深く聞いてもらいたくないという思いも語られていましたけれども、もっともっと複雑なものだというふうに思いますので、これでいいのかなと。
そして、子どもを手放す悲しみと、子どもを迎える喜びが同時に起こる、本当に難しいことなんだなということを改めて感じました。
こうした養子縁組が、営利目的で行われないかと、そうした心配がすでに現実のものとなったケースも実際にあります。
先ほどの大阪のNPOを参考にしたという、千葉県内のNPO団体が、全国で初めて、事業停止命令を受けました。
9月、全国で初めて養子縁組のあっせんを行っている団体に対して事業停止命令が出されました。
処分を受けた団体の理事を務めていた男性がNHKの取材に応じました。
パチンコ必勝法の教材などを手がけてきたという男性。
インターネットで養子縁組のあっせんを行うNPOがあると知りみずからも事業に乗り出しました。
処分を受けた理由は営利目的とも疑われるあっせんを行ったことでした。
団体は養子縁組を望む夫婦に対し100万円を払えば優先的にあっせんすると持ちかけ金を受け取っていました。
さらに、赤ちゃんを引き取る際に母親の意向を十分に確認しておらずトラブルになったとされています。
団体はすでに事業を廃止しています。
本来、養子縁組の際、出産費用など、必要経費を請求することは構わないのですが、この千葉の団体は、養子縁組希望者に、金品を支払わせることによって、優先的にあっせんを行ったなどによって、事業停止命令を受けたわけです。
加えて、そもそも養子縁組のあっせん団体に関しては、届け出さえすれば、いわば誰でも事業に参入できるというのが、宮島さん、実態なんですよね。
形式が整っていれば、届け出をすれば、始められるという、それが実態です。
ルールがないというのが、今の状態ですね。
これではいけない。
きちんとルールを作る、しかも強制力を持つものでなければならない、そのためには法整備をして、適切でない方には入ってきてもらっては困る。
また出ていってもらわなければならない、そういう仕組みにすべきだと思います。
急がれますね。
民間の団体の中では、本当にしんしに取り組んでいる民間団体もいるということは、忘れないでほしいですよね。
今、実際どうなのか、ちょっとこのグラフをご覧いただきたいんですけれども、民間のあっせん事業者、民間団体のあっせん事業者に、相談件数がどれだけあるのか。
一番右側を見ていただきたいんですが、育てたいわと希望する人からの相談が2506件、養子に出したいという人の相談が1898件それぞれある中で、去年1年間で見ますと、特別養子縁組が成立したのは544件。
少しずつ増えてはいるんですけれども、544件にとどまっているというのが現実です。
皆さんからの質問にも、本来ならば、行政が機能すべきではないだろうかという声も出ていますが、なぜ、なかなかこうした養子縁組が進まないのか。
ネットを使って赤ちゃんをあっせんしている、大阪のNPOを利用した夫婦に、今回、その心のうち、実情を取材しました。
なぜ、子どもを求める夫婦はNPOを頼るのか。
この夫婦はNPOを通じまもなく生まれる女の子をあっせんされることになっていました。
子宮にがんが見つかり妊娠を断念した妻。
夫婦は当初、行政による養子縁組を希望していました。
まず訪ねたのは近くの児童相談所でした。
実習や面談を受け養子縁組を希望する里親として認定を受けた夫婦。
そこまでに半年かかりました。
しかし、その後も子どもを引き取ることはできませんでした。
東京都では常時200組前後の夫婦が養子縁組を待っています。
一方で、養子縁組に至る子どもの数は年間2、30人です。
児童相談所では実の親の意思の確認や育てる側の適格性の判断に時間をかけざるをえません。
しかし、待つ側は不満を募らせてしまうのです。
もうなんとか子どもをという、親御さんのお気持ちも分かる部分も、宋さん、ありますよね。
最近はようやく知られるようにはなってきましたけれども、妊娠できる年齢っていうのは、ある程度、限りがあるということだったりを知る機会がなかったりですとか、例えば食事とか、体を温めたりとかということで、妊娠できるんじゃないかといって、時間を費やしたりして、必要な生殖医療に、アクセスする年齢が遅れてしまうというのが、日本の問題なんですね。
やっぱり40歳ぐらいで、養子縁組の条件を切ってる所とかもあって、40歳というと、ちょうど自分の子どもを授かりたいって頑張ってる年齢で、なかなか踏み切れないっていうのもあって、気付けばそういう養子の選択肢が狭まっているという現実があると思うんです。
そこへこういう利便性を強調した団体というのがあると、本来はやっぱり、妊娠した女性と子どもというのを主眼に、どういうサポートをすべきかを考えるべきであるにもかかわらず、やっぱりそういう利便性が求められているという背景がどうしてもあると思うんですよね。
宮島さん、利便性、効率性というのは、大人側の問題。
本当に客観的に考えたときに、赤ちゃんの立場からこの問題を見ると、やっぱり大切にしなければならないことがあるのではないかというふうにも思いますよね。
赤ちゃんは自分では行動できないですから、何かあっても逃げ出すこともできない、とにかく託されるということで、身を任せるしかないわけですから、子どもにとって、本当に100%の安全を求めなきゃいけない。
児童相談所などが何かできるかということを文言にもしていただきましたけれども。
それがこのことばなんですよね。
とにかく3つ安全というのを載せているのは、子どもにとって繰り返し言わなければならないものだと思います。
ただこの3つ安全というのは、子どものためだけではなくて、託すお母さんにとっても安全でなければならない。
また託される養子縁組の希望者ですね、この方にとっても安全でなければならない。
3つの安全が必要だというふうに思います。
児童相談所になんとか期待をかける声も多いわけですけれども、児童相談所が今できることというのは、具体的にありますか?
先ほどの方も、行政なら安全ではないか、安心ではないか、これに応えなければいけませんね。
児童相談所も、もっともっと活発に養子縁組のことをしなければならないと思いますが、ただ、それに応じるためには、やはり人とお金がなければできないんですね。
責任だけ負わせて、きちんとやれ、それではブラック企業と同じですので、きちんとそれを児童相談所が担えるような態勢を整備することが不可欠だと思います。
まさにそうした中、児童相談所も養子縁組にできるだけ積極的に関わっていこうという、こうした取り組みが始まっています。
福岡県で開かれた養子縁組に関する勉強会です。
妊娠中から女性の相談に乗り、出産後すぐに養子縁組につながる、赤ちゃん縁組を広げようとしています。
このように、赤ちゃん縁組というのは、妊娠中から児童相談所が積極的に関わって、生まれた赤ちゃんを速やかに養子縁組、里親につなげようというものなんですが、宮島さんは、さらにどうすれば、これがよりよい仕組みになるとお考えですか?
この取り組みは、非常に先駆的な、注目されている取り組みだと思います。
ただ、少し課題もあると思っています。
この方々が取り組んでいるやり方としては、とにかく家庭を確保するという面では、優れていますけれども、産んですぐに、分娩台の上から赤ちゃんを養子縁組希望者の方に託すというようなことが推奨されていたり、また産みの親ではなくて、養子縁組になる方がほとんど名付け親になるというようなことについては、私は疑問を感じています。
このへんは議論があるところで、このへんのことをきちんとまた整理した、新しい取り組みも始まっていますので、そのような働きも広がってほしいと願っています。
今、家庭というおことばが出ましたけれども、実はことしの5月に、児童福祉法が改正されまして、そこには、子どもをより家庭的な環境の中で育てていこうよというふうに、向きが定められたわけです。
そうした中で、改めてまず宋さんは、これから養子縁組などを考えるうえで忘れてはならないこと、教えていただけますか。
やっぱりまず、なぜ女性が自分の子どもを養子に出さないといけないか。
今回のケースですと、予期せぬ妊娠をしてしまったということが問題になるので、今、女性が日本で避妊にアクセスするのがすごく難しい、ピルも普及しない、緊急ピルはすごく高い、コンドームは男性任せでやるという問題があるので、まずバースコントロールの知識とアクセス、そこがまず議論を始めにしてほしいことだと思います。
それと養子縁組というのは、自分で産んだ子どもを育てられるっていうののサポートを、さんざん考えたうえで、それでも無理だという場合の最終手段として扱っていただきたいというふうに思いますね。
宮島さん、最後の何が必要か、お答えを教えてください。
私は、重みとおそれと書きました。
子どもが家庭を失うということは、大変なことです。
一方でまた、子どもが家庭を得るということも大変なことです。
この大変なことにふさわしい関わり、この重みのあることを、重みのあることとしてやるべきだというふうに思います。
これはおそれが必要なことじゃないでしょうか。
おそれというところには、すごく深い、いろんな意味がありますよね。
子ども、命、また人生、生活、このすべてが関わる。
産みの親の、また育ての親の、人生が関わっているんだと、そのことの重み、それにふさわしい対応が必要だと思います。
その時々の子どもを育てたい、赤ちゃんの希望がマッチすることが目的では決してなくて、ずっと共に歩んでいけるような。
伴走型支援が必要だと思います。
2016/11/21(月) 22:00〜22:25
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代+「賛否噴出!ネットで“赤ちゃん”をあっせん!?」[字]

今、ネット上で養子縁組をあっせんする活動が波紋を呼んでいる。子を託したい親、子を育てたい夫婦双方の希望なのか、人身売買にはならないのか、賛否渦巻く現場を取材する

詳細情報
番組内容
【ゲスト】産婦人科医…宋美玄,日本社会事業大学准教授…宮島清,【キャスター】伊東敏恵
出演者
【ゲスト】産婦人科医…宋美玄,日本社会事業大学准教授…宮島清,【キャスター】伊東敏恵