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書き起こし クローズアップ現代+▽カネあまりなのに借りられない?“金融排除”知られざる実態 2016.11.22

超低金利で、お金を借りやすい状況にもかかわらず、金融機関の融資に対して不満を抱く企業が今、6割にも上っています。
地方銀行で働く銀行員。
融資先には見せられないというある資料を明かしました。
企業を格付けする仕組み。
ランクが低ければ将来性があっても融資を行わないといいます。
先月、金融庁は初めて金融機関の消極的な融資の姿勢を「金融排除」と定義。
もっとリスクを取った融資を行うよう、強く求めたのです。
カネ余りの時代といわれる中企業が資金を調達できず成長の機会を逃している実態が見えてきました。
超低金利時代の新たな貸し渋り。
金融排除の実態に迫ります。
日銀はマイナス金利政策など、異次元の金融緩和を行って、行って、消費や企業の投資を活発化させようとしていますが、経済の好循環にはつながっていないと指摘されています。
なぜお金の流れが目詰まりを起こしているのか、原因の一つとして金融庁が挙げたのが、金融機関による金融排除です。
本来、金融機関は、企業の将来性を見越してお金を貸して、経済を活性化していくことが役割ですが、過剰なまでにリスクを取ることを恐れて、積極的な融資ができずに、金融排除を引き起こしているんです。
金融排除で企業はどんな事態に直面しているのか、取材しました。
焼き鳥の移動型店舗をチェーン展開する会社です。
年間売り上げはおよそ60億円。
全国39か所に営業拠点を持っています。
スーパーの店先での移動販売という独自のビジネスモデルと秘伝のたれの人気で事業を拡大してきました。
会社の資金繰りを担当している伊藤嘉洋さんです。
会社は材料を海外からの輸入に頼っているためここ数年の為替の変動で収益が不安定になっていました。
為替の影響を防ごうと計画したのが国内での加工場の建設。
そのためにはおよそ2億円の資金を銀行から借りる必要がありました。
これまで会社は本業そのものは黒字だったため9つの銀行から融資をさせてほしいと持ちかけられ取り引きをしていました。
ところが、今回の新しい設備投資について、応じてくれる銀行はありませんでした。
すでに不動産の担保枠いっぱいの融資を行っているというのがその理由でした。
資金が必要なときにかぎって融資をしてくれない銀行の姿勢に伊藤さんは不信感を募らせています。
こうした事例を、金融庁は新たに日本型金融排除だと定義。
問題視しています。
事業に将来性があったり地域の雇用を支えたりする企業に対し、不動産などの担保にこだわり過ぎるあまり金融機関が十分な融資を行っていないというのです。
金融庁のアンケート調査によると企業の6割が、こうした融資の姿勢に不満を持っていました。
かつてない金融緩和で金が余っているといわれる中金融機関はなぜ融資に踏み切れないのか。
ある地方銀行で働く現役の銀行員が匿名での取材に応じました。
融資先には見せられないという資料。
金融排除の背景には企業を格付けする仕組みの存在があると明かしました。
この銀行ではほかの金融機関と共通の格付けシステムを使い過去の財務内容などを基に企業のランクを導き出しているといいます。
一時的に業績が悪化し格付けが低くなった企業には不動産など、担保に見合う分だけの融資しか行いません。
格付けに依存するあまりたとえ事業に将来性があっても追加での融資を行うのは難しいといいます。
金融機関がこうした格付けに縛られるようになった背景には過去の金融行政があります。
はい、号外、号外です。
90年代以降不良債権処理を巡る金融不安が日本中を覆いました。
国は、金融機関が二度と不良債権問題を起こさないよう厳格な融資の判断基準を求めたのです。
そこで生み出されたのが格付けシステムでした。
リスクを取っても貸せという今回の金融庁の大きな方針転換に戸惑いを感じるといいます。
金融排除で問われているのは融資の姿勢だけではありません。
金融機関が事業を深く知ろうとしない傾向も問題視されています。
建物の鉄骨を製造する従業員20人の中小企業です。
社長の榊原清孝さんです。
リーマンショックの危機を乗り越え現在、業績は回復しています。
会社には、数年前に建設会社で設計を学んだ息子が入社。
事業を引き継ぎたいと考えています。
そのため、老朽化した機械などを更新する、設備投資を検討し始めました。
しかし、金融機関の担当者は工場の中を見学するなど現場を訪れることはほとんどありません。
会社の将来像を踏まえて融資の相談をしたいと思っていますができていないのが実情です。
村本さん、今、インタビューにもありましたが、テレビドラマに出てくる銀行員のように、実際に現場を回って、一緒に頑張りましょうと声をかけてくれるような人は、本当はいないんでしょうか?
たくさんいらっしゃいます。
銀行の方、大変頑張ってらっしゃいますね。
ただ、昔に比べて銀行の方はとても忙しい。
昔は1つの支店に、30人、40人いたんですけど、今もう半分ぐらいしかいませんから、外で仕事をする人も本当に少なくなってしまった。
そうすると、やることは多くなったけれども、企業を回るという、現場を見る力というか、そういう機会が大変少なくなってきてしまったのではないかと思います。
村本さんは、金融庁の検討会議の座長も務めていらっしゃいますけれども、今、お金が余っていて、貸し出し先に困っているというような印象も持っていたんですが、実情はどうなんでしょうか?
お金は本当にたくさん日本にはありますけれども、必要な所に回っているかという考え方でいくと、やや問題があります。

 

 

 


というのは、先ほど格付けというのが出てきました。
これは、なぜやってるかと言うと、企業にお金を貸したときに返ってこないと困りますから、それぞれの段階に応じて、引き当てというお金を積んでいるということが必要なわけです。
これが不良債権を生み出さないもとになってるわけですけれども、どうしても上のゾーンですね、リスクが少なくていい所というのにお金を貸すという、つまり優良企業にお金がどんどんどんどん出てしまって、それで競争が起こります。
金利ダンピングなんていわれるぐらいに、本当に競争してる。
ところが、そのちょっと下ですね、4、5、6当たりですけれども、ここはちょっとリスクがあるんですが、一手間かければよくなる、リスク対応すれば、とてもよくなるというゾーンです。
ここがなかなかお金が回らない。
ここで金融排除ということばが使われるようになったんですね。
そうすると、ここはどうすればいいかと考えると、一手間かけるというのは、この財務ですから、そういう決算とか、担保とかというものでないものを、ここでやろう。
そうすると、過度に担保保証に依存しないということが出てくるんですけれども、一手間かけて非財務といいますけれども、その企業の持っている成長力とか、あるいは特許で表せるような技術力とか、きちっと評価できれば、もう少しお金が出ていくのではないか、目詰まりが溶けるのではないかという、今、金融排除ということばで言われているゾーンで、ここでお金を出しましょうということですね。
幸田さんは、長年、金融機関の取材を重ねていらっしゃいますが、このマイナス金利時代の貸し渋りともいえる金融排除、どうご覧になりますか?
金融排除、心情的にはとてもよく分かるんですが、本当に銀行側としては、さぞ戸惑いがあるだろうと思いますね。
今までずっと先ほどね、不良債権の処理のころから健全経営ということいわれて、ところが、もう今、環境、ころっと変わりましたよね、マイナス金利で。
とはいえ、預金者からお金は、手数料はすごく取れない、利ざやを、本当に薄い利ざやでしか融資ができない。
そうすると、もう健全化のためにはバランスシートを縮小していくしかないというのが、現状だと思います。
預金者や株主に対する責任というのもありますよね。
マイナス金利政策の中で、収益されてる中で、その中でもリスクを取ってでも、貸せと言われていることには、どんな意味があるんでしょうか?
どんな意味って、貸せって、ちょっと私はね、政策のために、銀行に責任転嫁をしてるような気が、ちょっと厳しい言い方ですけど、しますよね、確かに銀行の中では、いわゆるビジネスマッチングということで、相手には、そのままでは貸せないけれども、例えばほかの企業と、ジョイントベンチャーを作らせたり、あるいはアジアとか海外の企業と組ませたりして、貸し出せるような努力っていうのは、非常に今、やってらっしゃいますので、融資とアイデアを一緒に持っていくということはしてらっしゃいますね。
だから、そういうことができる人材を育てるということ、それがやっぱりキーじゃないかと思います。
この日本社会を覆う金融排除の問題、どうやって脱却していったらいいのか、設備投資を受けられずに困っていた、あの移動販売の焼き鳥チェーンですが、その後、大きな進展があったようです。
金融排除でお金を借りたくても借りられなかった焼き鳥の移動販売会社です。
新たな設備投資のための2億円の融資を得ることができ材料の加工場の建設に乗り出しています。
会社に融資を行ったのは栃木県を拠点とする地方銀行です。
13年前、この銀行は不良債権問題で経営破綻。
地元経済にも大きな傷痕を残しました。
経営再建したものの地元企業を成長させなければ生き残っていけない。
そうした危機感から、3年前に独自の専門チームを立ち上げ不動産の担保に依存しない融資を進めることにしました。
このチームでは融資の相談が持ち込まれると企業の決算の数字からは見えてこない商品の状態や特許の有無などを詳しく調べます。
それらがどのくらいの価値を持つのか専門の機関に評価を依頼し担保にとらわれない新たな融資を行っていこうというのです。
銀行が、焼き鳥の移動販売会社に融資をする決め手になったのが…倉庫に保管されている焼き鳥の材料です。
各地に保管された食材の価値はおよそ2億円に上ることが分かりました。
この評価をもとに設備投資への融資を行ったのです。
さらに銀行が新たな評価の対象として注目しているのが、知的財産です。
農作物の肥料を製造している企業です。
3年前に、特許技術を使って特殊な土を開発しました。
作物の収量が増え生育も早まるといいます。
外部の機関によって国内外での市場で大きな需要が見込めることが分かりました。
銀行はこの評価を根拠に海外進出などを後押しする融資を検討し始めています。
担保ではなく企業の将来性を見る新たな融資。
これまでに90件総額は130億円に上っています。
金融機関の中には地域を巻き込んで新たな融資の枠組みを作る動きもあります。
石川県七尾市に拠点を置く信用金庫です。
取り引き先である地元企業は廃業などによりピーク時から3割以上減少しています。
そこで2年前から始めたのが創業支援プロジェクト。
新しく事業を始める人に積極的に融資を行うものです。
融資を検討する場には金融機関だけでなく市役所や商工会議所の職員も参加します。
これまで、担保を持たない個人が事業を始めようとしても金融機関はほとんど融資を行ってきませんでした。
しかし、関係機関が一体となり補助金の申請や取り引き先の紹介などサポートすることで融資につなげるようにしたのです。
この仕組みを利用しことし9月に創業したレストランです。
ごめんください。
経営者には担保がなかったものの東京の有名レストランで修業を積んだ実績を評価。
融資に踏み切りました。
これまでに創業した会社は2年間で46社。
将来の収益の基盤につながると金融機関は期待しています。
村本さん、この足利銀行のような取り組み、うまく回れば一つの理想的な形かなとも思うんですけれども、本当に全国に広がっていくんでしょうか?
足利銀行は、一時、国有化されたということもあって、真剣にどうやったらいいか、地元に還元できるかを考えたんですね。
そういうことを考えている金融機関、まだたくさんあります。
そのとき、私は重要だなと思っているのは、企業をきちっと見るときに、財務情報と非財務情報をトータルで見る。
それ見るために、今、経済産業省がローカルベンチマークというのを作って、あらゆる企業がそれを健康診断のように今すぐ受けてくださいと。
そうすると、みんなが同じ情報を持って企業を育てるとか、あるいはいざというときに、助けるということができるようになると思いますので、そういうものもぜひ活用して、みんなが頑張っていけるような体制を作ってほしいと思っています。
幸田さん、不動産担保を基準に、今までやってきた銀行員にとっては、将来性を見て判断していくという、このそういう人たちが育っていくのかというのも重要ですね。
実は今、融資だの、それから金融排除だのと言っているところじゃないというぐらいに、大きな経済とか金融に転換期が来てるんですね。
例えば、フィンテックだとか、AIだとかインターネットの進化で、個人と個人を結ぶいわゆるソーシャルレンディングだとか、クラウドファウンディングとかね、そういった中で、それが新しいものにどうやって適合して、チャンスを見つけて、…できる人材をどうやって育てていくか、これはもう、銀行経営の本当に肝だと思いますよね。
お話伺ってると、本当に銀行、金融が転換点に来ているなという感じがするんですけれども、そんな中で、銀行や銀行員に、これから何が求められるのかというのをお二方に書いていただきました。
まず村本さん、見せていただけますか?
金融機関というのは、やはり地域に責任を持つ、あるいはそれを前提で責任を持つという意味で、志をぜひ持っていただきたい。
そして企業に寄り添うという姿勢をぜひ出してほしい。
それを怠けてしまうということが時々ありますので、それを注意してぜひ頑張ってほしいと思っています。
本当に特に地方にとっては、こういう銀行が存在してほしいですよね。
伴走という言い方をしますけれども、ガイドランナーという感じで、企業と共に歩くという姿勢が大事じゃないでしょうか。
そして幸田さんは、発想力、これはどんな意味で?
例えば、なぜ貸せないかと言うと、回収力、これがやっぱり日本の金融は弱いんですよね。
そのへんのところとか、信用が低い所には、例えば高い金利を取るような、そういった制度設計をするとか、そういった発想の転換と言いましょうかね、さっきも申し上げた新しい環境に適応するような、発想の柔軟性を求められたり。
あと金融力と書きましたのは、金融って実はものすごく可能性があるんですよ。
すべての基本ですからね。
ですから、今まで融資がどうだってことに捉われないで、日本の金融力を高めていくと、お金が回って、そしてそれが地方の経済の活性化にもつながりますしね。
いろんな夢が実現して、元気になれるような、本当の金融力を日本はつけていきたいなと思いますよね。
これから若い世代、こういう人たちが育っていくでしょうかね。
ぜひね。
育ってほしいと思います。
こんにちは相葉雅紀です。
今日はここ広島からお送りします。
2016/11/22(火) 22:00〜22:25
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代+▽カネあまりなのに借りられない?“金融排除”知られざる実態[字]

金融庁は金融機関が融資を判断する際、担保にこだわりすぎ将来性のある企業などを融資の対象から外しているおそれがあるとして調査に乗り出すことにした。その実態を探る。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】成城大学名誉教授…村本孜,作家…幸田真音,【キャスター】久保田祐佳
出演者
【ゲスト】成城大学名誉教授…村本孜,作家…幸田真音,【キャスター】久保田祐佳