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書き起こし ハートネットTV リハビリ・介護を生きる「あなたがあなたを忘れても」 2016.11.30

10月。
愛知県名古屋市にあるミニシアターである映画が上映されました。
本当ありがとうございます。
(拍手)認知症介護の日常を描いた映画「彦とベガ」。
(朝雄)ベガ。
「年はいくつ?」だって。
(こと)16。
まあ16!いいですね。
認知症を患い…そしてその妻を見守る夫。
おっいつの間に…?
(環)お母さん!違うでしょう?お茶わん。
ごはんをよそうの。
それはお湯飲み。
…ったくどっから出すのよ。
フフフ…。
ハハハ…!ハハハ…!フフフ…!自ら脚本を書き監督を務めたのは現役の介護士でもある谷口未央さん。
介護の現場で自身が感じた思いを映画にしました。
ああ…。
あ…ああ〜!
(2人)ハハハ…!介護士というのは認知症であるという事をまず肯定してるところから入ります。
認知症といわれる方のいわゆる問題行動といわれるものはまあ問題と言ってしまうかそれを私たちなんかはきらめきとして見るところが多いです。
「なんてこの人は今輝いてるんだろう。
きらめいてるんだろう」と思う事が本当毎日毎瞬間毎瞬間ありまして…。
白い闇。
(朝雄)えっ?ハハッ。
違うよそれは…。
白い闇。
ああ…ベガはすごいな。
僕の目にはもう見えないよ。
物語に描かれるのは…シニアから若者まで幅広い層の共感を呼んでいます。
人間の老いに寄り添ってきた介護士だからこそ描ける認知症のきらめき。
この映画に込めた谷口さんの思いを聞きます。
「リハビリ・介護を生きる」昨日に続きまして映画作品を通して人間の老いや認知症について考えてまいります。
進行を一緒にして下さいますのは荒木由美子さんです。
どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。

 

 

 


現役で介護士さんとして働きながら…。
まあどちらが一番中心のお仕事か映画監督もおやりになるというゲストですね。
はい。
ご紹介致します。
今日来て下さいましたのは介護士そして映画監督の谷口未央さんです。
どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
ご自身は映画監督と言われるのはちょっと苦手なんだそうですね?苦手というかまあ私なんかは本当映画が好きで見始めててそれで憧れてきた映画監督とじゃ今自分が同じ立ち位置にいるかといったら絶対いないと思うのでまだまだ映画監督志望だと思ってます。
あくまでも志望で…。
はい。
どうして介護士…?映画監督になりたくて東京に出てきて東京でそういった学校に通いながら何か生計を立てていこうとした時にもともとおじいちゃんやおばあちゃんと一緒に何だろう…接したりとかそういった方の何かケアをするという事はちょっとしてみたい仕事ではあったので資格を取る機会もあったので取りまして今介護士として働きながら映画を撮る事も一緒にちょっとずつやってます。
介護士というその貴重なねご経験があるからこそ生まれた映画でもあるという事ですね?そうですね。
私が介護士として経験したもので映画を撮ろうと思いました。
山あいの家で暮らす比古朝雄は認知症の妻ことと2人暮らし。
家内のことです。
ベガ。
「年はいくつ?」だって。
16。
自分を16歳の少女ベガと思い込んでいること。
ごはんにしよう。
ベガ。
お茶わんお願い。
フフフ…!
(朝雄)アハハ…!この家に訪問介護ヘルパーの菊名がやって来ます。
こんにちはことさん。
菊名さんだよ。
新しいヘルパーさん。
これ何です…?ベガ。
これも撮って。
きれいでしょ?これ。
ベガなのよ。
え〜こっちがアルタイル。
待って下さいね。
菊名は認知症のことに最初は戸惑いながらも次第にことの少女のような振る舞いにいとしさを覚えていきます。
フッ…。
監督を務めた谷口さんは介護現場での体験を基にこの映画のシナリオを書き上げました。
まあやっぱり夕方になると皆さん帰宅欲求っていうのはどんどん起こってくるんですけどあるおばあちゃんが「もう家に帰らなきゃいけない」と。
「お母さんに怒られる」っておっしゃったんですね。
…でいくつなのかっていうのを聞くと自分は中学生だっておっしゃるんですよね。
中学生の少女に戻って…で今母親に怒られるのは怖いっていうこの姿がとてもやっぱかわいいなって思ったんですよね。
(シャッター音)きれい?うん。
(菊名)ことさん。
ことさんこっち向いて。
駄目。
危ない!高齢者老人…認知症のかかってらっしゃる方というワードを抱えていても生命力をやっぱり感じさせたかったんですよね。
死に近い何かではなくってそこにはもう今現実生きているというか…谷口さんは滋賀県の病院で事務職として働いていましたが8年前に上京。
映画学校で学び始めます。
その後ホームヘルパーや介護士の資格を取りデイサービスで働きながら映画を作ります。
これまで監督として2つの作品を世に問うてきました。
そして2014年に長編デビュー作として「彦とベガ」を製作。
認知症のきらめきを描いた作品は各地の映画祭で高い評価を受け今年東京名古屋大阪で一般上映されました。
(取材者)あっすごい。
ツバキもう咲いてる。
これツバキですか?
(取材者)サザンカかな?分かんない。
ツバキかサザンカ咲いてるって。
ああ?どっちだろ?ああ本当だ。
何か白い花が咲いてます。
とりあえず。
…ツバキ?…だと思うけど分かんない。
介護士として接しながら老いや認知の衰えをありのまま受け止める。
谷口さんは認知症の人の輝きや自分をさらけ出す無垢なかわいさに心ひかれると言います。
私が感じるのは皆さん認知症になると自分を偽ろうとする力がちょっとなくなっていくのかなって。
すごく優しくしてもらえたりもするなあっていうのを感じて何か皆さん本当によくこんなに優しくいい状態でいられるなとか…。
普通に仕事してるだけでも「本当大変ね」とか言って。
「私がやろうか?」みたいに言って下さったりとかその優しい気持ちがもう本当に何の混ざりっけもなく出てこられる事がまずすごいなと思うし。
私はその優しさを受けたらやっぱうれしいしこんなにうれしいなと思う瞬間があまり今まで人生にはまああったんだと思うんですけどこんなに何度も何度もなかったなという…。
わっ!あっごめんなさい。
もうしません。
(2人)アハハ…!無邪気な心と無垢の優しさ。
谷口さんの介護現場での経験から生まれたシーンがあります。
昔僕の家にもこれみたいなフィルムのカメラがあって。
父親が置いていったカメラで…。
中学の時初めて母親が父親の撮った写真を見せてくれました。
でもいろいろ無理で…。
母親の望みには応えられませんでした。
何言ってるか分かんないですよね。
分かんなくていいんです。
まああの…彼も言ってますけど分からない事がいいっていうのが多分認知症の方と接している方はたまに思う事があると思うんですけどたまにちょっと自分が悩んでたりとかした時に「今ちょっとこういう事悩んでるんですよ」って言ったら「あら大変ね」とか言って下さって。
忘れてくれるけどちゃんと親身になって聞いてくれるっていう事が思いの外接してる私たちなんかは結構救われたりする事が多々あるんじゃないかなっていう。
お母さん。
映画には介護の赤裸々な場面はありません。
私なんかは仕事でやっているのでいくらでも例えば排泄を失敗するとかいう表現だってできはします。
リアルにトイレのシーンとか作ろうと思ったら作れますけどまあそこを表現しないでも想像してもらえる延長上にあるようなところでのリアルさでこの映画はいいんじゃないかなと…。
アハハ…!アハハ…!アハハ…!おばあちゃまたちがとっても安心したお顔をなさってるのを見るととてもいい雰囲気で谷口さんたちがお世話をして下さってるんだろうなっていうのが一目で分かりました。
そもそもどうして映画をですね撮ろうと思われたんでしょうか?この映画をそもそも撮ろうと思ったきっかけというのが認知症のおばあちゃんが夕方になるとやはり帰宅欲求っていうのが出てきて「帰りたい」と。
「早く帰らしてくれ」と。
「お母さんに怒られる」っておっしゃる。
その時に「いくつなの?」っていうような事を「今いくつなんですか?」って聞くと今自分は中学生だっていう事を返して頂いて。
「ああこの方は今本当に女子中学生になってらっしゃるんだな」。
…でその方本当におきれいなおばあちゃんだったので本当にさぞかわいらしい女子中学生なんだろうって想像した時にもうすごくかわいいこのおばあちゃんの今のこの状況はかわいいなと思ってこれがきらめいて見えるとするなら…。
まあきらめいて見えてる。
でこのきらめきというのを映画だったらどう表現するのかなというところからこの映画を作ろうと思いました。
本当に日常でいろんな事が起こってそれをきらめきと受け止められるってもう本当すてきだなと思うんですけれどもそれは最初からやっぱりそんなふうにね「ああこれはすてきだな。
きらめきなんだ」と思われたんですか?どの辺りから…?やっぱり認知症の方というものにちょっと驚いたりした瞬間はあったと思うんですけど結局何がじゃあこの仕事の…救いとまでは言わないですけど楽しいなって感じるところかというとやっぱりご利用者さんとお話ししたりとかちょっとやり取り…まあ言葉でなくてもちょっとしたやり取りさせて頂いた時にこの仕事は楽しいなって思える瞬間だったなと今思えば…。
どんな時にあれですか?それは。
「ああこの人かわいいな」と思うのか…。
デイサービスの中でね。
何か本当にまあ単純に言うと私に笑ってくれればかわいいなって思いますし私がよくお風呂場でやるのは皆さんやっぱお顔とかにはしわがたくさんありますけど背中にはほとんど皆さんしわがないので「背中きれいですね」って「背中二十歳ですね」って言ったり。
そしたら「顔は?」って聞くから「18です」って…。
あっそういう会話も何かね…。
そしたら皆さんその時に笑って下さったりとか「またまた〜」とおっしゃって頂いたりとかまあそれで喜んで頂ければなというふうには思ってます。
例えばほかでは感じた事のない何かってあるんですか?この介護士としての…。
何をもって今日のケアできたかっていう基準が多分難しいなと思った時に私一度家に帰ってたまたま何か手の匂いを嗅いだ時にすごくおばあちゃんの匂いが手にしてたんですよね。
私がもし介護士として向いてる何かがあるんだったら私は手が温かいんですよ。
ご利用者さんのおトイレをお手伝いする時にしても手が冷たいとやっぱりなかなかびっくりさせてしまったりとかするんですけどこれが手が温かいからあんまりそこに支障がなかったりとか。
ちょっと手を伸ばしてみたら握って下さったりとかこんだけ手を握ってもらえる仕事はなかなかないだろうなとは思ってます。
介護士だからこそきらめきと受け取りそして介護士だからこそ生まれた映画だと思うんですけどもどんなふうにして表現してるんでしょうかしら?老夫婦というものが主人公ではあるけど老夫婦を書くのではなく比古朝雄という男の人と比古ことという女の人この2人を書こうっていうところがまあ私がやっぱりやりたかった事だし介護士としての経験の中でただ「老人2人夫婦です。
おじいちゃんおばあちゃんです」という書き方では多分それでは何のために介護士が撮ってるのかなっていうのはやっぱ思ってしまうのでその人その人を一人の男一人の女というものを撮りましょうと思って撮りました。
この上にあるのが白鳥座のデネブでこっちが鷲座のアルタイル。
そしてあれが…。
ベガ。
そう。
琴座のベガ。
ベガのベガだね。
彦星のアルタイルと琴座のベガ。
互いを「彦」「ベガ」と呼び合う2人。
しかしその穏やかな日々が移ろい始めます。
遅い!いやいやいや…。
あっ何ですか?あっいいですいいです。
いや大丈夫ですって。
いやいいですよ。
あっこんにちは。
お邪魔します。
大丈夫ですよ。
持ちますよ。
ご苦労さま。
我々の目に見えるのは川底の無数の砂ばかり。
…白い闇。
えっ?君それは…?・
(こと)彦!あっベガ。
どうしたの?彦!ベガは菊名を昔の彦と思い込みます。
今日星見える?ベガ…。
ベガどうした?ベガ…。
あなた私を助けてはくれない。
ベガ。
彦!助けて彦〜!僕が彦だ!あいつじゃない!誰が君と星を見た!?あいつか!?星なんかどうでもいい!一人の男と一人の女までまあどうにかそこの土台まで持ってきて彼らを書きたいと思ったんですね。
あそこは…。
お茶の間で2人でお茶をすすってるような老夫婦というところではなくって何かもっといろいろ中に内面にあるものがどろっと出る…。
認知症がだいぶ進んでいますね。
度々怒ったり泣きだしたり暴力行為も…。
感情失禁です。
そう。
感情失禁。
それにトイレの失敗も多くなって…。
介護度が上がればいろいろ上がりますよね。
実は老人ホームの入所を考えてまして…。
環。
もう限界よ。
お前が決める事じゃない。
何よ…。
私は無理よ。
ここで一緒に暮らせない。
お父さん?今日はよそう。
私の世代…私今81ですけど7080になると「認知症になったらどうしよう」とか「背負いきれるだろうか?」っていう心配があるんですけど「あっそうか。
死ぬまで人間は愛して生きる事ができるんだな」。
悲惨は絶望っていうイコールで結ばれるものじゃなくて悲惨に見える事態の中にも希望はある。
悲惨に見える場合にも愛を注ぐ事ができる。
(すすり泣き)悲惨の中にも愛があるっていうのはもう本当に究極な言葉…。
忘れてもやっぱりねあるんですね。
ねえ。
お互いやっぱり求め合う気持ち…ですか?今までケアをさせて頂いた方に夫婦でお部屋を入って頂いてる方がいらっしゃって奥様の方がまあどちらかというと認知症もあるしちょっと自分では立ったり歩いたりもできないケアが必要な奥様で旦那さんの事をちゃんと認識されてるのかちょっと分かりにくい。
でもその方お二人がずっと部屋に一緒にいるんですよね。
なかなかこれはもうこっちが勝手に決めていい物語でも何もないですけどただこの今お互いの事を認識し合ってるかどうかも分からない2人が同じ部屋で寝て起きてをされているという事って私はすごいなと…。
介護の映画を撮るんだとか老夫婦の主人公の映画を撮るんだというよりも一人の男…。
まあ主人公は比古朝雄男なんですけどその人物の葛藤だとか…。
やっぱりこれが年齢が若かったら叫んだり走りだしたりとかする葛藤でそれが青春映画っていわれるんですけどそうではない年齢の人の葛藤のこの心の何とも言えないひだみたいなのをどうすくい取れるかっていう。
私の中ではこの映画は青春映画を撮ってるんだと思って撮ってはいるんですよね。
すると谷口さんも現場で働いてらっしゃるからこそ今回の映画の描写というか「きっとこういう事なんだろうな」って事がやっぱりお役には随分と立った訳ですよね?「これが私が介護士として見てきた世界です」っていうところで皆さんに「見て下さい」って出してる訳なのでまあ私の多分介護士としての姿勢だとかも全部出てるとは思うんですね。
いいところも悪いところも。
私の目で見たおじいちゃんおばあちゃんがなんてかわいいのかっていう。
そこがずっと継続して私が持っていければいいんだろうなと。
もちろん技術知識はもっともっとなければいけないところでもあるけれどもそれ以上に今私が目の前にしてる人たちのやっぱりきらめきって言葉を使っちゃいますけど…が私の中で陰らないようにしていくしかないのかなっていうふうに思います。
老いてきていろんな問題は出てくるけれどもそれをこうやってまあ日本中探してみたら谷口さんのような人が何人かいてくれてきらめきって考えて受け取って下さる方がいたら幸せですね。
本当にそうですね。
きらめきあるいは希望という事を映画を通してお話を通して今日すてきな言葉を本当教えて頂きました。
これからも活躍をお祈りしております。
ありがとうございました。
2016/11/30(水) 20:00〜20:30
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV リハビリ・介護を生きる「あなたがあなたを忘れても」[字]

介護福祉士として働きながら、認知症を描く劇映画「彦とベガ」を撮った谷口未央(37歳)。「老いの先にある“生”と“きらめき”をすくい上げた」と語る。

詳細情報
番組内容
「彦とベガ〜あなたがあなたをわすれても」は、80歳の夫と77歳の妻の二人暮らしを描く物語。妻が認知症になってからは、お互いを「彦」「ベガ」と呼び合い、時々ふたりで川原の星空を眺めている。監督・谷口未央が、純粋な気持ちは、年齢を超越して表れるという構想を思いついたのは、介護施設での経験が元になっている。「認知症になっても命のきらめき、輝きは失われない」と語る。
出演者
【出演】映画監督…谷口未央,荒木由美子,【司会】桜井洋子