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書き起こし クローズアップ現代+「稲妻が超高層ビルを襲う〜明らかになる“雷クライシス”〜」 2016.12.05

(落雷音)
驚異的なエネルギーで突然、襲いかかる雷実は冬の雷は、夏の100倍ものエネルギーを放つこともあるんです。
風力発電の施設を襲った雷。
冬に日本海側で多発する雷は一発雷とも呼ばれ膨大なエネルギーを放つため危険です。
宇宙からも見える雷。
(落雷音)今、都市部の超高層ビルで新たなリスクが浮かび上がってきました。
今回、NHKが独自に入手した雷による被害の写真です。
高層ビルの屋上の角に雷が直撃。
コンクリートが地上に落下しました。
都心の一等地に建つ高級ホテルでも。
高さ200メートル屋上の一部が粉砕され1階まで落下しました。
雷は避雷針ではなく超高層ビルの外壁などを直撃。
コンクリートの塊などが凶器となって地上を襲う事態が相次いでいるのです。
今回初めて、高層ビルの雷被害の調査を行った団体です。
メンバーは大学の研究者や技術者ら10人余り。
建物の被害は資産価値などに影響するため、これまであまり表に出ることがありませんでした。
ゼネコンなどへの聞き取りや現地調査から被害が明らかになった建物は全国の少なくとも10棟。
そのうち9棟が高さ100メートル以上の超高層ビルでした。
雷は巨大な電流を一気に放出します。
(放電音)そのエネルギーは、硬いコンクリートも一瞬で粉砕します。
都市部で建設が相次ぐ超高層ビル。
避雷針を備えていますが実は、それだけでは被害を完全には防げないのです。
高さ20メートルを超える建物には、避雷針の設置などが法律で義務づけられています。
しかし、高層ビルの場合離れた場所の雷が横からも襲ってくることが分かってきました。
避雷針だけでは防げず、屋上の角や側壁が被害に遭うのです。
東京都庁も高さ180メートルの側壁に雷の直撃を受けています。
壁の一部が剥がれ、地上に落下。
幸い、けが人はいませんでした。
国会議事堂も。
(落雷音)高さ60メートルを超える塔頂部を直撃。
御影石がワイヤーの入ったガラスを突き破り1階の食堂に落下しました。
(落雷音)しかし、こうした被害を報告する義務はありません。
専門家は、今回明らかになった被害は、氷山の一角だといいます。
被害が相次いできた背景には安全のための基準が守られていない実態があることも分かってきました。
国は平成17年、建築基準法の雷対策の基準を改めました。
このときすでにビルの側壁や角の部分に雷対策を行うことを求めていたのです。
実際に対策が取られたビルです。
屋上の周囲には、雷を受け止める金属を取り付けます。
側壁にも雷を受け止める金属の板を張り付け、コンクリートが破壊されるのを防ぎます。
ところが今回被害が確認された10棟はすべて、こうした対策が取られていませんでした。
しかも、国が雷対策の基準を改正したあとに建設された建物も複数含まれていたのです。
調査を行った団体のメンバー横山茂さんです。
横山さんが問題だと考えているのが、基準を改正する際に国が示した方針です。
新しく建てる場合でも古い基準の避雷設備でもよいとしていたのです。
横山さんは、このことが対策の必要性をあいまいにしてしまったと考えています。
雷対策の普及に取り組んできた、妹尾堅一郎さんにお聞きします。
雷は避雷針で受け止めているものと思ってたんですが、そうとも限らないっていうことにびっくりしました。
限らないですね。
避雷針っていう言い方をするから、ついついそこへ、全部避けてくれると思っちゃうんですけど、あれは一種の誘雷針、つまり雷を誘うようになってるんですね。
ところが、雷様は必ずしも誘われなくて、僕らのことばではミスショットをするって言うんですけども、ミスショット。
ちゃんとそこに入って、横へ回ってしまうようなことがたくさんあるんですね。
今、出ている写真のように、上にではなくて、横から来てしまうことがあると。
横から入る。
ですので、避雷針だけで防雷と言うことができてるとは考えないほうがいいですね。
それもワン・オブ・ゼンなんですが、もっと総合的な対策を打たなきゃいけない。
こういうことがあります。
そしてどうしても夏のイメージがあったんですけども、冬も雷あるんですね。
そうなんですね。
われわれ、雷について、なんか一種の独特の思い込みがありましてね、例えば落雷っていいますよね。
雷は落ちるもんだと思ってるんだけども、実は上る雷もあるんです。
それから、夏だけかと思いきや、冬の雷もたくさんあります。
これ見ますと、特に日本海側で多くなってますね。
これ、世界でも極めて珍しいんですね。
新潟ですけど、大体庄内地方から能登半島にかけては、世界でも有数の冬季雷の産地といいますかね。
冬の時期の雷?
珍しい所です。
これからまさに気をつけなくてはいけないところ。
そして島川記者に聞きますが、超高層ビルの上から、コンクリート片が落ちてくるって考えただけで怖いんですけども、これまでに人的被害というのは出ていないんでしょうか?
こちら、報告義務がありませんので、今のところ、そういった被害の確認はされていませんけれども、専門家はいつ起きてもおかしくないというふうに指摘しているんです。
この背景にありますのが、まずこちら。
都市の高層化ですね。
国内の高さ60メートルを超える超高層ビルの数、現在、都市部を中心に2500棟。
現在も増え続けているわけです。
さらにいえますのがこちら、民間の気象会社の観測では、関東や東海をはじめとして、都市で数時間に2、3000もの落雷が観測されていると。
こんなに多く起きてるんですね。
こんなことも実際に観測されてるわけですね。
もちろん地震や津波、水害といった災害への備え、これ、重要ですけども、現在進む都市の高層化、これが落雷、雷のリスクを顕在化させてきたということもいえると思うんです。
しかも国が雷対策の基準を改めたのが11年前なのに、現実、そこはそうなってこなかったわけですよね。
これはどうしてなんでしょうか?
当初、国は新しい基準へのいわば経過期間というような意味合いもあって、古い基準でも構わないという方針を示していたわけなんです。

 

 

 

 


ただ、その後も方針の見直しは行われずに、その間、ご紹介したように、被害が相次いできたわけですから、やはり一連の対応には問題があったといわざるをえないというふうに思いますね。
その一方で、業界側、こちらにも課題があるというふうに思います。
建築の関係者によりますと、新しい基準、これを採用しますと、建物によっては数百万円から1000万円以上、コストがかかるということがあります。
さらに、デザイン的にも制約があります。
こうしたことから、新しい基準ではなくて、古い基準を採用する例、これが多いということなんですね。
今後の対応なんですけれども、今回の取材結果を踏まえて、国土交通省に確認をしたということですね。
国土交通省は、今回、明らかになった被害状況を詳しく調べたうえで、必要な対策につなげられるよう、検討していきたいとコメントしています。
やはりこれ、安全を最優先と考えた対策を求められると思いますよね。
都市部の高層化が雷のリスクを高めているという現象、ここまで見てきたんですが、もう一つ見過ごせないのが、高度に電子化した社会が雷リスクを高めている現実です。
もはや私たちの生活になくてはならないスマホやパソコン、さらに命を脅かしかねない医療機器などが、危険にさらされているんです。
長野県安曇野市。
地域の医療を支える病院です。
この病院ではおよそ80人の患者が人工透析の治療を受けています。
ことし8月その透析の機器が突如動かなくなる事態に陥りました。
(落雷音)
当時、病院の周辺では激しい雨とともに落雷が頻発。
地域一帯が停電しました。
病院ではすぐに非常用の発電機が作動。
ところが…。
(アラーム音)透析の機器から異常を知らせるアラームが鳴り続け作動しなかったのです。
幸い患者の入れ代わるタイミングで治療中の人はいませんでした。
時間帯によっては深刻な事態につながりかねない出来事でした。
一体何が起きたのか。
病院は、駆けつけたメーカーの担当者から周囲に落ちた雷の異常な電流が原因ではないかと説明を受けたといいます。
(落雷音)雷がもたらす異常な電流。
それは雷サージと呼ばれています。
雷が落ちると、その周りには強い電磁波が発生します。
周囲の電気ケーブルなどには異常な電流が流れます。
これが雷サージです。
建物に侵入した異常な電流が電子機器に影響を与えてしまうのです。
メーカーはNHKの取材に雷サージの可能性も含め詳しい原因は調査中だと答えています。
(落雷音)雷サージの脅威は、自治体の防災体制にも及んでいます。
津波や大雨などの危険が迫るときに避難を呼びかける防災行政無線。
住民の命を支えるこの設備が雷サージによって故障するケースが相次いでいるのです。
被害を受けた件数は平成24年度全国で240件以上に上ることが分かりました。
必要な情報が住民に伝わらないおそれも出ています。
台風の接近が相次いだことし8月。
前橋市では小学校に設置している防災行政無線が、半月にわたり使えなくなっていました。
内部の機器が雷サージで壊れていましたがそのことに気付かず放置されていたのです。
今、前橋市では市内に85か所ある防災行政無線で雷サージの対策の検討を始めています。
雷サージ、ライサージともいうそうですけど、これによって防災行政無線の被害が、1年間で240件、島川さん、これは問題ですよね。
これ、人命に関わる事態ですから、早急な対策、必要だと思います。
さらにですね、被害をまとめた団体によりますと、実際の被害の件数、これ、推計を含めると倍近くに上る可能性もあるというふうに指摘もしているんですね。
さらに機器の補修メーカーによりますと、自治体の中には、津波の避難訓練を行っている際に、防災行政無線が鳴らず、初めて雷サージ、ライサージが原因で壊れていることが分かったケースもあったということなんですね。
気付かないうちに、本当に被害が起きてる可能性もあるということですよね。
そして妹尾さん、私たちの身近なところに電子機器、今、あふれてますし、これはリスクがあらゆる所にあると考えられますか?
情報社会ですよね。
それからセンサーがこれから何百兆個埋め込まれる。
それからコンピューターがすべてを制御するみたいな時代に入ってきているわけですけれども、それって、ネットワークですから、全部そこを雷様が伝って入ってくる、そういう社会になっちゃったわけですね。
いわば誘雷社会って僕ら呼んでるんですけれども、それはリスクを高めるわけですね。
そうすると、どうなるか。
今見たいな、例えば病院の機器だとか、安全の対策機器だとか、要するにリスクに対する対策をすること自体がリスクにさらされるっていう、そういう状況に入ってきちゃってるんですね。
本当はリスクのときに働かなくてはいけないものが、働いてくれない。
働いてくれない。
そうするとこれは、生活だけではなくて、ビジネスも大変で、例えば瞬停って呼ぶんですけど、瞬間停電になるんですね。
これ、0.002秒とか、そういう単位なんですけども、それだけで例えば半導体の工場がそれにさらされたら一挙に数億円あっという間になくなっちゃう。
その一瞬でですか?
一瞬でです。
本当にそういう時代に今、産業も生活も、いろんなものが入ってきたって、そういうことでしょうね。
ではこの雷サージの被害を防ぐためには、一体どうしたらいいんでしょうか。
東京・練馬区にある総合病院です。
2年前、雷サージで医療機器につながるブレーカーが壊れました。
電子カルテや空調設備などが6時間にわたり使えなくなる事態となりました。
そこで去年、ブレーカーに避雷器と呼ばれる特殊な装置を取り付けました。
避雷器は雷サージによる異常な電流を外に逃がすことができます。
避雷器を使った実験。
電球は、雷から守らなければならない機器類の代わりです。
雷に見立てた強い電流を流すと…。
(放電音)避雷器が設置されていると電球は消えません。
避雷器は雷の異常な電流だけを外に逃がすため通常の電源が流れ続けるのです。
この病院で、避雷器の設置にかかったコストは200万円。
法律で設置の義務はありませんが再び被害に遭わないためには必要だと考えています。
(落雷音)
雷サージの対策はこんな所でも。
京都の清水寺です。
国宝の本堂をはじめ数多くの貴重な文化財があります。
寺では、雷サージによって火災の発生を知らせる火災報知器が故障する事態が相次ぎました。
そこで…。
火災報知器などにつながるすべてのケーブルに避雷器を設置しました。
その数150個。
2000万円に上りました。
対策するにはコストがかかって、ただ、病院など命に関わる施設でも、行政の支援は今、受けられない状態なんですか?
今のところ、これ、ないのが現状です。
大きな病院では進んでいますけれども、中小の病院では費用面ありますから、なかなか進んでいない現状があります。
起きてから保険で対処できるということもありますけども、これ、命に関わる部分については、補助の制度ですとか、より効果的、効率的な対策の検討、こういったものが必要な時期に今、来てるんだというふうに思います。
妹尾さん、企業などでもやはり大切なデータや、リスクを管理する機器を守るために、対策、大切ですよね。
本当にそうですね。
ここでやっぱり考えなきゃいけないのは、これが、実は今まで、雷は天災だと思われてたんだけど、実は大きく人災だっていうこのタイミングなんですね。
ちょっとここでご紹介したいのは、こういうことなんです。
天災から人災へ雷被害が移っているよってことなんです。
これは2つの意味がありましてね、1つ目は、高層ビルだとか、それから情報機器だとか、これ全部、人が作ってきたものですよね。
ところが人が作ってきたものが、実は雷被害を増やしているっていう意味合い、これは1つの人災です。
もう1つは何かというと、防ごうと思えば防げるのに、防がないというこの人災です。
例えば今、島川さん、おっしゃったように、病院だとか公共施設、これ、本当は対策を打とうと思えば打てるはずなんですね。
それから被害が出てからでは遅いんですけれども、どうしても自分だけは大丈夫だろうと思ってしまう、こういうような状況が生まれてますから、まあ、命も文化財もなくなったらおしまいですから、そういう意味では、人がやっぱり社会のリスクとして、これに対策を打つべきではないかな、こういうふうに思っておりますね。
視聴者の方からも、雷のことを軽く思っている人が多い。
自然の力を甘く見ないことですという、50代の男性の方からも頂いてますが、やはり甘く見てはいけない、防げるものは防がないといけない。
そうですね。
防げるものを防ぐ社会にしていかなければいけないなと思います。
その意味では、ちょっと今一番関心があるのは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックなんです。
影響はありますか?
あります。
これ、8月でしょ。
ですから雷が一番多発しそうな時期なんですね。
ですので、例えば競技施設だとか、それからテロ対策だとか、いろんなものに実は雷対策を背後2016/12/05(月) 22:00〜22:25
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代+「稲妻が超高層ビルを襲う〜明らかになる“雷クライシス”〜」[字]

都心の超高層ビルで落雷の被害が相次いでいる。避雷針がついていても雷が側壁を直撃し、はがれたコンクリートが歩道に落下しているのだ。雷クライシスの実態と対策を紹介。

詳細情報
番組内容
【出演】雷害リスク低減コンソーシアム代表…妹尾堅一郎,【キャスター】松村正代
出演者
【出演】雷害リスク低減コンソーシアム代表…妹尾堅一郎,【キャスター】松村正代