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書き起こし ハートネットTV 相模原殺傷事件▽殺された19人の障害者が生きた証しを探す 2016.12.06

「相模原市の障害者施設で入所者などが刺され19人が死亡し25人がケガをした事件で逮捕された施設の元職員の男は調べに対し『障害者がいなくなればいいと思った』という趣旨の供述をしているという事で事件の動機などを調べています」。
19人の命が奪われた相模原障害者施設殺傷事件。
神奈川県警は遺族が望んでいない事を理由に犠牲者を匿名で公表しました。
異例の対応でした。
その事に疑問を投げかける人たちがいます。
事件が起きた施設の元職員の2人です。
2人は今殺された19人がどんな人生を送っていたのか関わりのあった人たちを訪ね記録に残そうとしています。
匿名の命に生きた証を見つけようとする2人の日々を追いました。
(取材者)失礼します。
あどうぞ。
事件が起きた津久井やまゆり園の元職員西角純志さん51歳です。
(取材者)いい表情してますね。
そうですね。
すごくいい表情をしてて。
この24…この施設で働いていたのは2001年から5年間。
命を落とした人たちとも関わりがあったといいます。
西角さんは手元に残していたアルバムなどを頼りに自分が知る犠牲者の記憶を整理していました。
その中で一人の女性の写真が目に留まりました。
在職中によく見かけたもののどんな人だったのか詳しくは知りません。
この女性の人生をたどる事にしました。
向かったのは津久井やまゆり園の近くにある食堂。
よく通ったなじみの店です。
何してるの?あなたは。
今ね実はやまゆり園終わって。
当時と変わらずおかみさんとご主人が迎えてくれました。
私なんかはさあの子たちがこうやって来てくれてその時こうやって笑ってね食事したり何かあれしてたけどそういう事を思い出…思い出になっちゃうんだけど…。
そういう…今そういうふうに見せてもらってこの子亡くなったっていうとさあやっぱしさあ思い出がこうやってよみがえってくるじゃないね。
だからあああの時ニコニコしながらこのパジャマとこのやつを買うんだけどこの子に合う?なんて職員の人がさ私なんかに相談したりしてさたまたま居合わせたからね。
だからそんな事ふっと思い出しますよね。
うん。
リボンさんを担当していたという元職員の女性と連絡が取れました。

(呼び出し音)・もしもし。
あもしもし溝口さんですか?やまゆり園でご一緒しました西角と申しますけれども。
僕もちょっとまだ心の整理がまだできてないんですが女子ホームにいらっしゃったという事でそこでちょっとお話を伺いたいんですけども。
・ああそうですか。
あのですね…気持ちの整理がつかず事件の事を一切口にしてこなかったという女性。
同じ職員だった西角さんと話すうちにリボンさんの思い出を語り始めました。
西角さんは更に証言を集めたいとある人の協力を仰ぐ事にしました。
・どうぞ〜。
お久しぶりです。
ご無沙汰しています。
お世話になります。
本当に。
どうぞどうぞ。
津久井やまゆり園の元職員…定年退職するまで36年間勤め上げました。
いぶきホームでは太田さんとご一緒しましたよね。
太田さんが担当していた人も殺害されました。
その前はのぞみといぶき2か所だけ。
いろんな方からの協力を得て一応間違いない19名の方々のお名前。
かつての同僚など関係者に尋ね19人の名簿を作成していました。
(太田)恐らくこの方私もちょっとお見かけして思い出せないんで…。
太田さんもまた一人一人が存在していた事を記録し残したいと考えていたのです。
今の時点で彼ら19名…彼ら彼女ら19名の証…生きてきた証というんですかそういうものを考えた場合にはやっぱし大事な事は決して忘れない風化させないっていう事が今現在我々に課せられた課題ではないかなと。
やっぱし19名の方々を無駄死にさせないっていうんですか。
そういうなかった歴史に追い込むような事はないようにするための一つの手だてではないかなと。
二十歳の時津久井やまゆり園に就職。
理想に燃えていた太田さん。
しかし多忙な業務に追われるうちに気付くと入所者に高圧的な態度をとっていたと言います。
太田さんがそのころに書いた手記です。
「大声で叱り感情に流され思わず手を振り上げた」。
何か彼ら彼女らを管理している。
あるいは何か大きな力の下で何か閉じ込めている。
隔離している。
そういう認識がだんだんだんだん出てきてその手先ですよね私は。
加害者に回ってるっていう事を感じたんですね。
加害行為をしてる。
強い後悔の念に襲われた太田さん。
以来転勤や昇進を断り入所者の暮らしやすい環境をつくろうと努力を重ねてきました。
人生をささげた津久井やまゆり園で起きた殺傷事件。
やっぱり贖罪っていうんですかね。
そういう思いっていうのはあるんですよね。

 

 

 

 


現役36年の時の不十分でしたっていう思いがまたわいてきましたよね…わいてきたっていうか思い知らされたっていうか。
なんとかならなかったのかなっていう思いですよね。
ええ。
なんとか防げなかったのかなとかなんとか事件が起きる前に防止できなかったのかなっていう思い。
太田さんには特に気になっている人がいました。
かつて自分が直接支援をしていた男性です。
音がするんで駆けつけると床にラジオをぶつけて。
「キャッキャキャッキャ」。
もう少なくとも喜んでいるっていうのかなそんな感じが我々には取れたんですけども。
「それやると壊れちゃうよ」って言って止めたりはするんですけども本人は至ってご機嫌の感じの振る舞いでしたね。
退職して12年。
ラジオさんはその後どんな人生を送っていたのか。
太田さんがこの日向かったのはラジオさんが通っていたという地元の理容店。
おはようございます。
今日はお世話になります。
ワンちゃんが出てます。
すみませんねごめんなさい。
分かりました。
いや〜残念。
ラジオさんの手がかりを得ようと太田さんは西角さんと共にある家族のもとを訪ねました。
おはようございます。
大変遅くなりまして申し訳ありません。
津久井やまゆり園の家族会の元会長です。
息子の一矢さんは腹や喉を刺され一命を取り留めたものの重傷を負いました。
ラジオさんも同じグループの仲間でした。
年に1回バス旅行を必ずやってるんですね。
今回もそのちょうど1か月前に要するにやったばっかりなんですよ。
その時に撮った写真。
「うっうっうっうっ」ってやる。
そうそうそう。
で最近はね足がもう完全に…前は歩けてたんですけど今はもう…。
ラジオさんは車椅子に乗るようになっていました。
しかし以前と変わらず家族と一緒にバス旅行を満喫している様子でした。
生きていましたねうん。
犠牲となった人たちの人生を記録する西角さん。
かつての先輩が思い出の品を持っていると聞き訪ねました。
久しぶり。
お元気ですか?元気よ。
殺害された一人を長年にわたって支援していました。
(細野)この人。
何でも職員の手助けをしてくれるし。
職員がじゃあ食事が終わって椅子を上げようかなんて思うと自分でポンポンポンポンテーブルの上へ椅子を上げてくれて掃除しやすいように。
そういう事もあったようん。
もう人が立つとね「僕がやるからいいんだよ」って怒られるの。
じゃああれですね。
職員がもう一人いるような感じ。
そうそうそう。
だから準職員だって言ってたのよ。
細野さんには忘れられないエピソードがあると言います。
演歌を聴くのが大好きで。
どんな演歌が好きだったんですか?これよ。
北島三郎。
あ北島三郎。
なるほど。
ほいでよくやってくれたから「じゃあお正月北島三郎の新春歌謡コンサートを見に行くか?」つったら「いいの?」ちゅうから「いいよ。
連れてってやるよ」つってさほいで連れてったのよ。
そしたらねこの茶わんがね2つセットで売ってるんですよ。
ほんで「この茶わんも欲しいな」って言うから「いいよもう買っていきなよ」つったら「1個でいいんだけど」ちゅうから「1個でもいいよ」つったらそのうちにどういうあれしたんだか2つ持ってきて「これ先生に1つあげるよ」つって「いいのかよ?」つったら「いい」なんちゅって。
そしてこれをよいまだに使ってるんだけど。
だからこれがもう遺品になっちゃってよ。
ただ障害者だからっつってふざけんなよって言いたくなる訳ようん。
「お前それでも人間か!」って言いたくなるよ。
今いたら本当ぶっ殺すぞって飛びかかるくらいの気持ちはあるねうん。
もし目の前に犯人がいたらね。
犠牲となった人たちの人生をたどり始めた太田さん。
かつて一緒に散歩した道を12年ぶりに歩いてみる事にしました。
こんにちは〜。
ご苦労さまで〜す。
散歩する津久井やまゆり園の入所者に出会いました。
こんにちは。
寒いですね。
こんにちは。
太田さんがかつて支援した人たちです。
はいご苦労さまでした〜。
この橋が出来る前はつり橋がありました。
見えないですね。
数え切れないほど歩いた道をたどるうちに過去の記憶がよみがえってきます。
この円形のベンチに座って小休憩。
おやつと称してお菓子みんなで食べて。
すぐ食べ終わってしまうんです。
いや〜。
いつも最後に立ち寄った神社です。
まず到着すると手を拭いてまず一服ね。
こうやって座って。
で持ってきた手拭きで手を拭いて。
歌なども好きですので歌を歌おうねって。
みんなの大好きな「高校三年生」。
自ら歌いたいっていうはい。
1番を繰り返して何回か歌いますね。
・「ああ高校三年生」・「ぼくら離れ離れになろうとも」・「クラス仲間はいつまでも」
(口笛)「高校三年生」を歌っていたらちょっとぐっと来ましたね。
はい最後のセンテンスがちょっとぐっと来て歌えなかったです。
今回の深刻さっていうのは分かっていたつもりなんですけども改めてこのコースを一緒に歩いたよね散歩したよねっていうような過去の時の事を思い出しながら歩いているうちにちょっと今までとは違う19名の事の重大さっていうのを何か感じましたね。
本当に掛けがえのない…もう当たり前の事なんですけどね掛けがえのない命を奪われたなっていう事はよう分かっているつもりなんですけどもこうやって彼らと一緒に歩いた道を今一人で歩いてると更にその思いが強くなりましたね。
匿名で公表された19人の犠牲者。
これまでに15人の情報が集まりましたがどれも断片的なものです。
西角さんと太田さんは全員の人生を明らかにし記録に残したいと言います。
11月中旬。
津久井やまゆり園の献花台の傍らにある告知が張り出されていました。
事件から4か月余り。
名前のない人々にささげられる花束も間もなくここから無くなります。
忘れたらね本当に…私たちは2回目の殺人を犯すようなもんですよね。
忘れるっていう事はね。
ここで19名の命が絶たれてで何年か後に誰もかれもが忘れてしまって話題にもならない。
振り返る事もされないような事になるという事はもう一回殺されたようなもんですよね。
そういう事では2回目は絶対そういう事はさせないしない。
そう思いましたはい。
2016/12/06(火) 20:00〜20:30
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV 相模原殺傷事件▽殺された19人の障害者が生きた証しを探す[解][字]

相模原市の障害者入所施設で起きた殺傷事件。犠牲となった19人は、いまだ匿名でしか語られない。その生前の“生きた証し”を拾い集めようとする元職員たちの姿を見つめる

詳細情報
番組内容
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出演者
【語り】河野多紀