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書き起こし ハートネットTV「私たちは発信する〜パンジーメディアの挑戦〜」 2016.12.08

(ドアをたたく音)虐待される知的障害者たち。
(一同)そうだそうだ。
たたかおう!お〜!これは知的障害者自らが演じたドラマです。
プロデューサーや原作者も障害のある当事者です。
自分たちで番組を作りインターネットで発信する。
日本で初めての知的障害者による放送局作りに挑戦しています。
432…。
最初は7月26日に…。
放送開始までの半年間の記録です。
頑張って。
東大阪市の社会福祉法人が運営する施設…毎朝およそ100人の知的障害者がグループホームや自宅から通ってきます。
おはようございま〜す。
パンやお弁当を作り学校や役場に売りに行っています。
パンジーのモットーは障害者が地域で共に生きる事。
障害の重さにかかわらずそれぞれができる仕事をして過ごします。
知的障害者が地域で暮らすためにもっと彼らの事を知ってほしいと考えてきました。
林さんが自分たちの番組作りを思いついたのは16年前。
パンジーのメンバーとスウェーデンへ視察に行った時の事。
障害者たちによる放送局に出会いました。
「いつかは自分たちも」と計画をメンバーと温めてきたのです。
当事者の人たちが「こんな映像を作りたい」とか「自分がこんな役割を持ちたい」っていう部分の中でその人たちのその思いや役割をね壊さない形でいいものを作っていくっていうのがもう当事者がこう…何て言うん?作るメディアって言っていいんでないかな。
今年2月。
みんなの夢がいよいよ実現する事になりました。
まず最初はカメラの使い方から。
カメラ使う時はまず蓋を開けます。
スイッチやモニターはどこにあるのか。
たまたま取材に訪れていた私が教える事になりました。
ゼロからのスタートです。
カメラの向きやサイズ簡単にはいきません。
ふだん何をやるにも人気漫画のキャラクターの縫いぐるみと一緒です。
カメラにはどアップのドラえもんがひたすら映っていました。
本当に番組が作れるのか不安なスタートでした。
ひとつき後カメラに慣れたところで次は何を撮るか決めての撮影です。
お題は「仲間の食事シーン」。
繰り返し練習します。
撮った映像をみんなで見て確認する事にしました。
以前に比べると見違えるほど安定していました。
今日参加してた人の感想を聞きたいと思います。
今度は自分を表現する練習です。
カメラに向かって感じた事を伝えます。
テーマは「私の春」。
正直なところ彼らがこれほど生き生きと自分の感じた事を表現するとは想像していませんでした。
それはパンジーのスタッフも同じでした。
私が今まで思ってる以上に当事者のみんなもいろんな事を思ってて何か表現する場があれば自分の思いをちゃんと伝える事ができるんやなあっていうのを改めて実感したというか…。
いよいよ番組作りがスタート。
まずはメンバーそれぞれが企画を考えます。
寄せられたアイデアは37に上りました。
ドキュメンタリーや料理番組旅ものなど実にさまざま。
第1回の放送は半年後。
この中から5本を選び制作する事になりました。
最初に取り組んだのは「私の歴史」。
自分の歩んだ人生を朗読で伝えます。
語り手は…職員が幼い時からの体験を聞き取りまとめました。
ふだんもの静かで自分の事をほとんど話さない冨田さん。

 

 

 


う〜ん。
今回出来上がった原稿は20枚以上にもなりました。
撮影が始まりました。
カメラマンももちろんパンジーの仲間たち。
はいじゃあいきま〜す。
54321…。
はい冨田さんお疲れさまでした〜。
どうでしたか?撮られて。
恥ずかしい?うん。
冨田さん飛び切りの笑顔です。
自分の事がいっぱい言えた?うん言えた。
続いて挑んだのが目玉の企画ドラマ「闇の王」です。
入所施設に閉じ込められた知的障害者が自由を求め施設の理事長闇の王と戦う物語です。
7月中旬ドラマの台本が出来上がりました。
この日はおもだった出演者の初会合です。
(職員)職員ABCDは皆さんがご指名した…。
闇の王役はいつも控えめな…ちょっと不安そう。
主役を助ける天使役山田浩さんは小道具や衣装に興味津々。
総監督はいつもリーダー的存在の…闇の王と戦うヒロインジャンヌ役は…このドラマの原作者です。
中山さんは闇の王役の野村さんとパンジーの近くのアパートで2人暮らしをしています。
中山さんも野村さんもパンジーに来る前入所施設に入っていました。
そこでの暮らしにはあまりいい思い出がありません。
これまで2人の間でしか話してこなかった施設での経験や思いをドラマなら多くの人に伝えられる。
そう考え中山さんはこの作品を書きました。
殴られたんだ?中山さんは同じ思いを持つ野村さんをドラマに誘いました。
地域で自立して暮らす自分たちの気持ちを作品に託します。
いよいよ稽古が始まります。
出演するメンバー13人のうち6人は入所施設にいた経験があります。
ルールが厳しすぎます。
(職員)そうそうそう…いいいいいいいい…。
これは施設のルールなんだ。
スタッフと稽古を繰り返す中でこれまで語れなかったつらい体験や思いも自然に笑いに変わっていきました。
もう一回もう一回…。
今は作業時間と決まってるだろう。
これは施設のルールなんだ。
(職員)そうそうそうそういい感じ。
出演者の一人有光一仁さん。
稽古にもいつものように縫いぐるみを抱えてやって来ました。
ドラえもん無しで演技ができるのだろうか。
もうちょっと前に来て。
ここに来ていいよ。
暴力は嫌だ。
ドラえもん無しで…。
有光さん初めて縫いぐるみを置きました。
暴力は嫌だ。
もうちょっと大きな声で。
暴力は嫌だ!暴力は嫌だ!暴力は嫌だ。
そうそうそう。
自分には役割がある。
その事でメンバーたちがどんどん積極的になっていくのが伝わってきました。
開けて〜!できないからって…。
できないからって閉じ込めるのはよくないよ。
なんとかして!稽古が始まって4日後あの事件が起きました。
施設で19人の知的障害者が殺される。
ドラマのストーリーと重なるような事件でした。
しかしメンバーたちは事件を話題にする事はありませんでした。
本当はどう思っているのか。
あの入所施設でそこで暮らしてた人たちがたくさん殺されたりケガをしたりした事件。
理事長の林さんはあえて聞いてみる事にしました。
そんなんでちょっと話をしてたんだけど…。
閉じ込めていた思いがあふれてきました。
話し合いの末この思いを急きょ台本に付け加える事にしました。
「闇の王」撮影当日。
朝からみんな興奮気味です。
う〜わすごいねこれ。
天使と闇の王の衣装はメンバーとスタッフの手作りです。
豊田さん。
豊田さんいくよ。
54…。
撮影が始まりました。
もうできないよ!真面目に作業しなさい。
そんなにイライラすんやったら頭冷やしてきなさい。
おいでこっち。
はいOKです。
闇の施設の職員を演じるパンジーのスタッフもこの迫真の演技。
作業する時間だから。
決まってるからちゃんと座って作業して!何だ。
何だ?ちょっと何かなめるように…。
もうこう腕組みしなくてもさ…。
私も思わず演技指導。
何だ?職員が辰巳さんを突き飛ばした。
トイレに行きたかっただけなのに。
最初はセリフを読むので精いっぱいだったメンバーたち。
堂々とカメラの前に立っていました。
あったり前…だ!ルールを守れないやつは…。
(2人)罰を与える!バッチリよ。
(拍手)いける。
相模原の事件を受けてセリフを追加したシーンです。
暴力は嫌だ。
つらいけど逆らうのも怖い!
(一同)そうだそうだ!たたかおう!お〜!3日間にわたるドラマの撮影が無事に終わりました。
(拍手)最後にスタジオ収録です。
5432…。
パンジーメディアへようこそ。
パンジーメディアは知的障害を持つ私たちが作る番組です。
キャスターやコメンテーターは話し合いで選ばれました。
男に刃物で刺されて19人が死亡。
番組の冒頭に取り上げたのは相模原の事件。
パンジーに寄せられた障害者の声を紹介します。
半年前ゼロからスタートした番組作り。
当初は本当にできるか半信半疑でした。
はい終わりましたね。
はいお疲れさまでした〜。
しかしチャンスさえあればさまざまな可能性が広がっている事を教えられました。
面白かった?9月16日準備から7か月。
ついに番組がアップされました。
パンジーメディアへようこそ。
パンジーメディアは知的障害を持つ私たちが作る番組です。
私たちの事をもっと知ってほしい。
仲間の声や思いを伝えていきたいです。
では私がおいしい話をしま〜す。
今日は簡単でおいしいブラウニーを作りま〜す。
ブラウニーってチョコの焼き菓子ですよね。
はい。
でも今回はなんとオーブンで焼かなくってもできるんですよ。
え〜!少〜しだけお塩を入れるのがポイントで〜す。
スイッチオン!ギュッ。
楽しいね。
私たちはドラマも作りました。
私がいるのは闇の施設。
フッフッフッフッフッ。
早く行け。
何だ?
(一同)そうだそうだ。
たたかおう!お〜!このあとどうなるんですか?それは次回のお楽しみに…。
次は10月にお会いしましょう。
パンジーメディアは今後も毎月新しい番組をアップしていく予定です。
知的障害のある人による日本で初めての試み。
パンジーメディアはそれを実現したのです。
2016/12/08(木) 20:00〜20:30
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV「私たちは発信する〜パンジーメディアの挑戦〜」[解][字]

日本で初めての知的障害者がつくる放送局が、この秋立ち上がった。ドラマや料理番組などを企画し出演するのは、知的障害者本人。放送開始までの半年を追う。