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書き起こし 地球ドラマチック「チンパンジーのカネル〜旅立ちまでの5年間〜」 2016.12.12

アフリカの広大なジャングル。
ここでは日々数え切れない命の物語が繰り広げられています。
これからお話しするのはメスのチンパンジーカネルの物語です。

 

 

 


カネルは4歳になります。
カネルは好奇心旺盛で同じ年頃のチンパンジーと同じように不思議に満ちた世界を少しずつ発見しています。
しかしカネルは普通のチンパンジーとは違います。
まだ赤ん坊だったころから人間の女性によって育てられたからです。
これはカネルが野生の世界に帰るまでの5年間の記録です。
カネルの冒険は生後6か月の時に始まりました。
ジャングルに独りぼっちでいたところを発見されチンパンジーの保護活動を行うパトリシア・ルシェーヴに預けられました。
母親は密猟者に散弾銃で撃ち殺されカネルの体にも弾がいくつか当たっていましたが幸い命は無事でした。
いい子ね〜歯を見せて。
パトリシアはアフリカ中部カメルーンで活動しています。
政府から2つの島を譲り受けカネルのような孤児となったチンパンジーが将来その島で生きていけるように計画しています。
カネルが成長して島に渡るためにはまず生きるためのすべを人間から学ばなくてはなりません。
2つの島から程近いキャンプでカネルの訓練が始まります。
孤児のカネルに何よりも必要なものは母親からの愛情あふれるスキンシップです。
(チンパンジーの鳴き声)カネルとパトリシアの間には絆が生まれていきました。
おいで怖くないわ。
大丈夫よ。

 

 

 

 


カネルがキャンプで暮らし始めて数週間がたちました。
パトリシアは毎晩カネルの成長記録をつけています。
そろそろカネルをキャンプの他のチンパンジーの群れの中に入れる時期です。
しかし細心の注意を払わなければなりません。
群れがカネルを拒絶するおそれがあるからです。
他のチンパンジーたちはカネルよりもずっと年上で訓練も進んでいます。
母親代わりのパトリシアから離れて一日の大半をキャンプの周りで自由に過ごしています。
パトリシアは孤児となったチンパンジーたちを集めて群れを作っています。
新しい孤児がやってくるたびにメンバーに加えてきました。
群れのメンバーにはそれぞれ序列があります。
カネルも自分の居場所を見つけなくてはなりません。
群れのリーダーはオスのパチョリです。
おはよう。
水浴びさせてくれるのね。
ありがとう。
パトリシアが抱いている見慣れない赤ん坊が気になるようです。
こっちへ来て。
新しい妹よ。
心配しないで。
ネニュファールもおいで。
あ〜洗ってあげるの?赤ちゃんだから優しくね。
リーダーのパチョリはカネルを受け入れようとしています。
ほらかわいい女の子でしょ。
顔を見て。
ね…妹よ。
他の仲間もだんだん近づいてきました。
オスのネニュファールもカネルに近づきたくてしかたがない様子です。
けんかが始まりました。
ネニュファール妹のカネルよ。
ネニュファールは争いに負け降参のポーズをとっています。
ネニュファールもおいで。
ネニュファールカネルに触りたいでしょ?ほら。
何もいないと思うけど何かついてる?仲間に受け入れられたカネルはこれから群れの規則を学んでいかなければなりません。
チンパンジーは決して独りでは生きていけないからです。
カネル。
カネルはすくすくと成長しています。
1歳になり仲間と一緒に学んでいます。
世話係のボスコが教育しています。
チンパンジーはボスコの身振りを見て理解しそしてまねをします。
早く食べたいのかい?パトリシアはチンパンジーがこうした生きるためのすべを学ぶ事で成長してくれる事を願っています。
うれしそうだね。
野生の世界と同じようにここでもまねをする事が学習の基本です。
1歳になったカネルには徐々に個性が表れてきました。
とにかく好奇心が旺盛です。
更に手が早く…。
遠慮がありません。
これで良しと。
キャンプでの決まり事にもすっかり慣れました。
もちろん夕食のメニューにも。
どうぞ。
夕食後は安全のために仲間たちは一緒の部屋で眠る事が決まりです。
しかしこの日ネニュファールは部屋に入りたがりません。
まだ帰りたくないの?野生のチンパンジーは成長すると木の上で眠ります。
パトリシアはキャンプのチンパンジーが外で眠るのはまだ早いと考えています。
しかし野性の本能が強く表れてきています。
おいで。
ネニュファールネニュファール。
さあ来い帰ろう。
うん?からかってるのか?
(犬の鳴き声)ネニュファールの行動からパトリシアは重要なメッセージを受け取りました。
野生の世界にいつ戻るのか。
そのタイミングを決めるのはチンパンジー自身です。
そしてネニュファールは自由を求めて野生に戻りたがっているのです。
パトリシアはキャンプで4年間暮らした年上のチンパンジーたちを野生に戻す事にしました。
慌てないで。
カネルミルクは?おしまいね。
しかしカネルはまだ1歳。
母親が必要です。
あと数年は安全なキャンプでたくさん遊びたくさん学ばなければなりません。
カネルはパトリシアが救った18番目のチンパンジーです。
さあ行こうか。
世話係のボスコがカネルや年上の仲間を連れて沼地へ向かいます。
カネルは沼地へ行く理由もあと数日で仲間が去ってしまう事もまだ知りません。
チンパンジーは本能的に水を怖がります。
泳ぐ事を知らないからです。
しかしジャングルで生きるためには水に慣れなくてはいけません。
更にポーズをとって仲間とコミュニケーションをとる方法などカネルはチンパンジー独自の言語をもっと学ぶ必要があります。
世話係のボスコは何年にもわたって年上のチンパンジーたちに水との接し方を教えてきました。
いまや彼らは水への恐怖心を克服するどころか水遊びが大好きになっています。
あと数日で群れに大きな変化が訪れます。
年上のチンパンジーたちはキャンプを出て島に渡るからです。
そしてカネルは数年後に島で仲間と再会する事を目指します。
島には5年前パトリシアによって放たれたチンパンジーの群れがいます。
群れを支配するのはオスのバンブーです。
バンブーがこっちを警戒してる。
前はおとなしかったけど今はナーバスになってる。
慎重に近づかないと駄目よ。
後ろ!攻撃的な振る舞いは成長の証しです。
バンブーこっちへ来ないで。
こっちは深くて危ないから。
来ないで!バンブーは縄張りを守ろうとしているのです。
マンゴーこっちにいらっしゃい。
この数日島の大人のチンパンジーたちはある大切なものを守ってきました。
赤ちゃんです。
母親のマンゴーも幼い時に保護されました。
母親代わりだったパトリシアに自分の初めての赤ちゃんを見せようとしています。
名前はヴィクトワールと名付けられました。
かわいい子ね。
この子は完全に野生のチンパンジーです。
触れてはいけません。
またね!マンゴー元気でねさよなら!みんなもさよなら!また来るから元気でね!じゃあね!キャンプでは幼いカネルが学習を続けています。
仲良く遊んで。
カネルの今の遊び相手は鼻の白い小さな猿です。
チンパンジーの遠縁にあたるこのオスの猿と遊びながら社会性を身につけていきます。
これが群れで暮らしていくための大事な鍵となります。
痛い痛いこら!やんちゃ坊主。
カネルお姉ちゃんになったわね。
欲しいか?年上のチンパンジーたちがキャンプを離れ島へ渡る日が近づいてきました。
これまで野生で生きるすべを人間から学んできました。
森の中にある宝物を見つける事もうまくなりました。
寝床を作る方法も学びました。
群れだけで生きていく準備は整いました。
出発の時です。
向かうのはパトリシアが用意するもう一つの島。
そこにはまだチンパンジーはいません。
新しいふるさとで新しい暮らしを築いていくのです。
旅立ちの朝がきました。
チンパンジーたちはパトリシアによって島へ送られます。
パトリシアの手から離れるのです。
さあ行こうね。
行こうパチョリ。
いらっしゃいおいでったら。
ほらこっちへ…駄目駄目。
おいで。
行けばきっと島が気に入るよ。
さあ行くわよ。
ようやくみんなボートに乗り込みました。
いよいよ出発です。
パトリシアはカネルも一緒に連れてきました。
突然独りぼっちにさせてはショックが大きすぎるからです。
カネルが仲間たちと再会できるのは数年後です。
年上のチンパンジーたちはパトリシアと最後のスキンシップの時を過ごしています。
新天地へ向かう途中に10歳になるオスのバンブーたちがすむもう一つの島があります。
バンブー!バンブー!かつてはキャンプに暮らしていた先輩です。
あなたたちもああなるのよ。
(鳴きまね)見えた?ほら大きくて強そうね。
(チンパンジーの鳴き声)見えた?あなたたちのお兄ちゃんよ。
じゃあ行こうか。
船を進めましょう。
驚いたの?大丈夫。
さよならを言って。
船はパチョリたちがこれから暮らす島へ向かいます。
1つの群れにつき1つの島を用意する事でそれぞれの縄張りと安全が守られます。
さあ着いたわよ。
降りて。
行きなさい。
あなたもどうぞ。
ほら!新しい家よ。
よ〜し。
ついに始まるわね。
もう枝を集め始めてる。
こっちに投げないでね。
パチョリ駄目よ振り回さないで。
やめて。
パチョリ駄目よやめなさい。
数年間にわたるキャンプでの訓練の日々は全てこの時のためにありました。
本物の自然本物の自由です。
こうしてキャンプで暮らすチンパンジーはカネルだけになりました。
年上のチンパンジーたちが野生に戻ってから5年がたちました。
カネルは今もキャンプで暮らしています。
パトリシアとボスコも一緒です。
孤児として新たに保護されたチンパンジーたちも加わっています。
カネルは成長し体も大きくなりました。
それでも母親代わりであるパトリシアにスキンシップを求めます。
カネルとパトリシアの絆は更に深まっています。
しかし別れの時が刻一刻と近づいていました。
雨季の間は島に近づく事ができません。
雨季が明けるころカネルは島に放されます。
チンパンジーは何でもまねをします。
カネルや他の仲間たちも人間の動きをまねながら道具の使い方を学んでいます。
自然の中にいたら覚える事はなかった行動です。
しかし人間の行動をただまねしても野生の世界で生きていく事はできません。
行動の意味を理解する必要があります。
ほらカネルこっちへおいで。
カネルは赤ん坊のころから毎週のようにシロアリのアリ塚に連れてこられています。
野生の世界では貴重な食料となるためその捕り方を学んでいるのです。
カネルは頭で考えて正確に行動しています。
カネルの行動は若いチンパンジーたちのお手本になっています。
カネルが野生の世界で生きていくすべはすでに身についています。
カネル気をつけろ。
頼むからこっちに落ちないでくれよ。
カネルのおどけた振る舞いはボスコをいつも楽しませます。
パトリシアとボスコは5年以上カネルの面倒を見てきました。
2人はカネルを愛するあまりずっと一緒に暮らしていきたいという誘惑にも駆られています。
人間に保護されながら一定の自由を満喫する今の生活がカネルには合っているとも思えるのです。
(チンパンジーの鳴き声)野生のチンパンジーの声がします。
オスです。
見知らぬオスの存在にカネルは不安を感じています。
そしてひきつけられてもいます。
カネル!カネルこっちだ。
こっちだよ。
戻っておいで。
数分後無事にカネルは戻ってきました。
おいでカネル。
ほらこっちだ。
オスはどこへ行った?年上のカネルが幼いチンパンジーをキャンプへと連れて帰ります。
ボスコはカネルとの生活が終わりに近づいている事を知らされました。
オスの叫びに反応したのはカネルが成熟した証拠です。
カネルを野生の世界に帰さなければなりません。
さあ着いたぞ。
ほらあなたも行って。
じゃあねおやすみなさい。
キスする?ほら。
カネルじゃあね。
おやすみいい子にしてね。
またあした。
野生の世界に帰るかどうかを決めるのはチンパンジー自身です。
人間はチンパンジーに寄り添い導くだけの存在にすぎません。
雨季が終わればカネルの旅立ちの時がやってきます。
雨季が明けカネルが野生の世界に戻る日がやってきました。
キャンプでの最後の食事です。
ほら食べて。
ママのお手製よ。
どう?カネルママとはここでお別れよ。
一緒に島へは行けないの。
あなたのためにもママのためにもならないから。
カネルあなたはボスコたちと一緒に行くの。
いいわね。
お兄ちゃんやお姉ちゃんの所へ行くのよ。
もう大人なんだから怖がらないで。
島では新しい生活が待っています。
人間の世界から離れ野生のチンパンジーとして生きていくのです。
カネルちょっと待って。
さあ乗ってほら。
早くするんだ行くよ。
大丈夫だよじっとして。
早くボートを押してくれ。
早く!手を貸してくれ。
早く!よしよし…いいぞ。
落ち着いて。
パトリシアはキャンプに残りカネルを見送りました。
島で暮らしているチンパンジーたちがカネルの到着に興奮しています。
(チンパンジーの鳴き声)そう緊張するな。
なあカネル。
5年前とは全てが一変していました。
内気だったネニュファールが今では群れを支配しています。
いつまでもキャンプで暮らしていくわけにはいかないんだ。
ママにも言われただろ?だからお前を島へ連れてきたんだよ。
赤ちゃんも産めるんだぞ。
ネニュファールが待ってる。
パチョリアルテミスエトワールそれにキウイも。
分かるか?ここがお前の家だ。
立って。
ほらそこだ。
あれだよ腕を上げて。
ほら立って。
うん?嫌か?チェイ!お前の妹カネルが来たよ!ほらチェイが見えるだろ?チェイがいるよキウイもいる。
(鳴きまね)
(チンパンジーの鳴き声)みんなうれしそうだよ。
お前が来たからさ。
妹ができると分かってみんな喜んでるんだよ。
カネルはこれから少しずつ群れに溶け込んでいかなければなりません。
一つ間違えば殺されてしまう可能性もあります。
あそこだ。
キウイ!カネルを覚えてるだろ。
ボートは岸から一定の距離を保ちながら水辺にいる群れが落ち着くのを待ちます。
ほら水を飲んで。
喉を通らないみたいだな。
群れが落ち着いたみたいだ。
向こうに行こう。
砂浜がある方に。
みんな来いよ!向こうの砂浜だ。
島でボートを着けられるのは砂浜だけです。
群れよりも先に到着しなくてはなりません。
群れが到着する前ならカネルが落ち着いて島に降り立つ事ができるからです。
カネルにとって人間と過ごす最後のひとときです。
ボートを降りればチンパンジーの群れでの生活が始まります。
カネル行くよ。
ほらおいで。
さあ行くよ。
早くして。
ほらおいで。
みんなと会おう。
よし。
よしいいぞ。
その調子だ。
怖がらなくていいよ大丈夫。
岸に上がって。
ほらこっちにおいで。
もう後戻りはできません。
ボスコと別れを惜しむ時間もありません。
じゃあね。
元気でやれよ。
みんなと仲良くするんだぞ。
いいな。
頑張れ。
ここからは独りです。
群れに受け入れてもらうにはカネルを守ってくれる仲間が必要です。
群れを支配するネニュファールが最初にやってきました。
ここで拒絶されたらおしまいです。
受け入れてもらえました。
別のオスがやってきます。
チェイです。
パチョリも近づいています。
カネルは服従する態度を示しますがパチョリには通用しません。
チェイがカネルを助けにきました。
チェイに気に入られたようです。
フフッ…。
ボートに乗ってキャンプへ帰る事にします。
もう人間の出る幕じゃない。
あとは任せます。
じゃあな!しっかりやれよカネル。
もう帰るからな。
3頭のオスは群れの偵察隊のような役割を果たしました。
しかしカネルがみんなに受け入れられたとはまだ言えません。
これから森の中にいる群れの全員と顔を合わさなければならないのです。
他の仲間に会わせる前のカネルへの最終審査が行われます。
いよいよ群れのすみかである森の中へと向かいます。
カネルは最後の試練を乗り越えなくてはなりません。
ついに群れとの対面です。
パチョリがカネルに攻撃を仕掛けます。
先ほど受け入れたように見えたネニュファールも。
しかしチェイがカネルを助けるために仲裁に入りました。
チェイは孤立し他の全てのオスを相手に戦っています。
カネルはチェイという頼もしい味方を得ました。
チェイとカネルは寄り添ってその場を立ち去ります。
チェイはカネルを群れから離れた場所へと連れていきます。
2頭は森の中へと姿を消していきました。
カネルとチェイが姿を消してから24日たちました。
2頭の間に新しい命は誕生するのでしょうか?島のチンパンジーの群れはパトリシアの夢を背負い繁栄していくのでしょうか?それは私たち人間には分かりません。
物語を紡いでいくのは野生の世界に解き放たれたチンパンジーたち。
そして結末を見届けるのはジャングルの木々のみです。
2016/12/12(月) 00:00〜00:45
NHKEテレ1大阪
地球ドラマチック「チンパンジーのカネル〜旅立ちまでの5年間〜」[二][字][再]

生後半年で母親を密猟者に殺されたチンパンジー、カネル。保護活動を行うパトリシアに預けられ、群れでの暮らし方を学ぶ。これは、カネルとパトリシアの5年間の物語。

詳細情報
番組内容
孤児のチンパンジー、カネルは、アフリカのジャングルで保護活動を行うパトリシアによって育てられている。パトリシアはカネルのような孤児を集めて「群れ」を作り、野生へ返す活動を行っている。チンパンジーは一人では生きられないため、群れでのルールを身につけ、仲間とうまくやっていく術を習得させることが重要だ。一人だけ後から加わったカネルは、年上のチンパンジーたちに受け入れてもらえるのか?(2015年フランス)
出演者
【語り】渡辺徹