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書き起こし クローズアップ現代+「1兆円投じた“夢の原子炉” もんじゅ廃炉方針のなぜ!?」 2016.12.12

1兆円が投じられたもんじゅ。
「夢の原子炉」といわれながら事故やトラブルで運転期間は22年間で僅か250日。
本来の役割を十分果たすことなく今、その幕を下ろそうとしています。
ことし9月突然明らかになったもんじゅ廃炉の可能性。
その一方で、国は新たな形で次世代の原子炉の開発を続ける方針を打ち出しました。
もんじゅの教訓は生かされるのか。
原子力政策を巡る議論の舞台裏に迫ります。

 

 


もんじゅは廃炉に向けた調整が進められていますが、来週にも、その判断が下される見通しです。
今、日本の原子力政策は大きな岐路に立っています。
本来、もんじゅは原子力政策の要になるはずでした。
どういったことかといいますと、私たちの家庭に電力を供給する原子力発電所は、発電すると使用済み核燃料が出ます。
日本はもともと資源の少ない国です。
ですので、この使用済み核燃料を有効的に利用することはできないか、この使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクルという大きな仕組みを、開発をずっと推進し続けてきました。
その要が、この高速増殖炉もんじゅです。
特にもんじゅは、使った以上の燃料を生み出す夢の原子炉ともいわれてきました。
国は1兆円をかけて開発を進めてきましたが、トラブルが相次ぎました。
今、廃炉という方針が決まろうとしています。
しかし、その一方で、国は高速炉の開発を続けるという方針も示したんです。
これ、一体どういうことなんでしょうか。
国の突然の方針転換。
その衝撃から見ていきます。
9月、もんじゅの廃炉の可能性が、地元の福井県に突如、告げられました。
特に、もんじゅが立地する地区の住民には衝撃が走りました。
敦賀市議会の議長を務めた橋本昭三さんです。
もんじゅの計画当初から国との窓口を担ってきました。
橋本さんは地区ともんじゅの関わりなどを日記に記してきました。
取り出したのは昭和45年の記述。
「国の関係機関が建設の話を持ってくる」。
地元に関わる重要な判断はこれまで事前に橋本さんのもとに相談があったといいます。
しかし、今回は寝耳に水。
廃炉になることはやむをえないとしても国の進め方には疑問を抱いています。
衝撃を与えた9月のもんじゅ抜本的見直し。
一方で、別の形で次世代の原子炉の開発を続ける方針が打ち出されました。
4段階で実用化を目指す高速炉の開発。
今回、2段階目のもんじゅを廃炉にして、次の段階に進む検討を始めたのです。
なぜ立ち止まることなく新たな開発に進むのか。
もんじゅを巡っては、去年11月原子力規制委員会が半年をメドに、安全に運転できる新たな事業者を示すよう文部科学大臣に異例の勧告を出していました。
これに対し、ことし5月の時点で文部科学省は関係省庁と調整し電力会社やメーカーの協力を得て新たな事業者を選定するとあくまで、もんじゅ存続を前提に議論を進めていました。
3か月余りの間に一体何があったのか。
今回、関係省庁の幹部などを取材。
もんじゅの方針転換と高速炉開発の継続という水面下の議論が明らかになってきました。
6月、文部科学省は勧告に対する回答期限を過ぎても新たな事業者を示せずにいました。
こうした中、原子力政策を担当する経済産業省ともんじゅの方向性を協議する場が複数回、持たれたといいます。
今回、明らかになった当時のやり取りです。
文部科学省はもんじゅの必要性を再度主張。
一方、経済産業省は。
その上でこれまでにない提案を示します。
もんじゅにこだわる必要はないと考えたのです。
もんじゅは必要だとしてきた文部科学省。
運転を続けた場合のコストを試算したところ少なくとも5400億円もの多額の費用がかかると判明し運転再開がますます険しいことが明らかになりました。
さらに、関係省庁の複数の幹部などによると課題を抱えたもんじゅにいつまでもこだわっていると原子力政策全体に影響が出かねないという指摘も政府内で上がっていたといいます。
こうした議論を踏まえ、9月政府は、もんじゅは廃炉を含め抜本的に見直す一方高速炉の研究開発は堅持すると表明。
この高速炉開発を続ける方針に質問が相次ぎました。
今後、もんじゅの教訓は生かされるのか。
原子力政策の専門家からは懸念する声が上がっています。
失礼します。
国の原子力委員長代理を務めた鈴木達治郎長崎大学教授です。
鈴木さんはもんじゅを十分に検証しさまざまな立場の人が開かれた議論をすることが不可欠だと指摘します。
22年間で250日の稼働というのは、かなり厳しい結果に見えるんですが、経済産業省としてはかなりの程度、役割を果たされているとコメントしていました。
これ、なぜそういえるんでしょうか。
実際に、設計をして建設をして、最大40%の出力で運転をして、そのデータを取った。
それは事実なんですね。
しかし、長期間運転を続けて、安全を維持する技術の確立ができたかどうかといいますと、これは部分的といわざるをえません。
国は、必要最低限の知見を得るためには、100%の出力で、5年前後運転を続ける必要があるとしていましたんで。
5年前後ですか?
それができずに廃炉になるということになりますと、役割を十分果たしたか、それは十分ではないと言わざるをえないと思いますね。
こうした状況で、国が高速炉の開発にこだわるの、これはなぜなんでしょう。
それは高速炉が核燃料サイクルの中核だからなんですね。
これがなくなりますと、日本の原子力政策、立ち行かなくなるおそれがあるとされています。
模型で見ていきましょうか。
まずは原発から出る使用済み核燃料ですね。
これが行き場を失うという問題が出てきます。
使用済み核燃料は、この再処理工場を経由しまして、いわばリサイクルのようにして、高速炉で使う、そういう予定でした。
すでに一部の使用済み核燃料は、青森県六ヶ所村にある再処理工場に運び込まれています。
ということは、少しずつたまっているような状況なんですね。
このサイクルが破綻しますと、この使用済み核燃料、ここの施設に留め置かれるおそれがある。
青森県はその場合は、全国の原発に送り返しますと、そういう方針を示してるんですね。
ということは、これがまた戻ってしまうと、全国の原発にこの使用済み核燃料が、あふれてしまうような状況になるかもしれないと。
原発を動かせなくなる。
そういう事態になりかねないということなんですね。
だから開発を止められないというふうにいってるわけですね。
もう一つが、プルトニウムです。
こちら。
これは使用済み核燃料から出てきましたが。
使用済み核燃料を再利用すると、先ほど申し上げましたけれども、この使用済み核燃料の中にあるプルトニウムを取り出して使うということが、そのことなんですね。
日本は昨年末の時点で、こちら、およそ48トン、原爆にして6000発分、プルトニウムを保有しています。
国際社会のルールでは、使いみちのないプルトニウムは持たない、そういう原則になってますので、その管理には厳しい目が向けられています。
仮に、この核燃料サイクルしないということになりますと、使いみちなくなってしまいますので、国際社会に説明がつかない。
そういうことなんですね。
このほかに、プルトニウムを一般の原発で使う、そういうことも国は同時に進めてるんですけれども、それも現状では計画どおり進んでいない。
そういう状況です。
こうした状況だからもんじゅが廃炉になったら、どんどんたまっていくプルトニウムを、どうやって利用していけばいいのか、その見通しが立たなくなる。
だから、高速炉の開発というのは、旗を一度揚げるとなかなか降ろせないというのが言い分ということなんですね。
じゃあ、まあ高速炉の開発を継続するとしても、もんじゅでうまくいかなかったのに、次の段階というのは上がれるんでしょうか。
実証炉に進むために、国が手がかりにしようとしているのが主に2つあります。
1つはもんじゅの前のステップの実験炉、常陽というものを再活用するということですね。
もう1つがフランスが計画している実証炉、アストリッドといいますけれども、すでに日本とフランスは開発協力することを決めています。
このアストリッド計画の現状を取材しますと、懸念が見えてきました。
アストリッド計画の開発協力を担う原子力機構です。
テレビ会議の相手は、フランスの研究機関のメンバーたち。
すでに開発に向けて動きだしています。
機密性の高い情報を扱うため撮影は冒頭のみとされました。
計画では、もんじゅの2倍の出力となるアストリッド。
課題の一つはフランスと協力することで日本が望む最新の技術を得られるかどうかです。
アストリッド計画に参加している日本のメーカーです。
三菱重工の子会社三菱FBRシステムズです。
今回、初めてカメラが入りました。
国内で唯一、高速炉の設計を専門とするこの会社。
およそ120人がアストリッドの設計や研究開発を担っています。
このメーカーではもんじゅを設計したベテランの技術者が次々と退職し技術力の維持が課題となっています。
アストリッドの開発を通じて若手の技術力も高めたいと考えています。
しかし、重要な技術がどこまで得られるのか懸念もあるといいます。
現時点で、このメーカーが関わっているのは原発の免震装置。
それに、原子炉の冷却技術など得意としてきた分野に限られています。
アストリッド計画で将来の実証炉開発につながる重要な設備の設計に加われるかどうかはまだ分かっていません。
取材を進めると大きな費用負担を求められる可能性も見えてきました。
ことし6月、フランス側から日本の関係者に非公式な形で費用に関する考え方が示されていました。
計画に関する費用は数十億ユーロ。
日本の負担割合は、50/50。
半々だというのです。
10月、フランス政府の担当者が取材に応じました。
フランス側は、金額はまだ決まっていないとしたうえで日本に費用負担を期待していることは認めました。
その背景に何があるのか。
フランスのエネルギー政策に詳しい、シンクタンクの代表イヴ・マリニャックさん。
フランスの原子力を取り巻く環境の変化があるといいます。
マリニャックさんが指摘したのはアストリッドの運営を担うフランス電力会社の経営状況です。
公表資料によると362億ユーロ日本円で4兆円を超える負債を抱えています。
要因の一つが原発の建設費の高騰。
この原発の場合当初の予定の3倍およそ1兆3000億円に跳ね上がりました。
福島の原発事故後安全対策が求められ工期が延びたことなどが理由です。
現段階では、アストリッドの建設費を調達できるメドは立っておらず実際に建設するかどうかはフランス政府が2019年以降に判断する方針です。
日本側の負担はどうなるのか。
それに見合った技術は得られるのか。
国は、費用が一方的に決められることはないとしたうえで、具体的なことは今後の交渉しだいだと説明しました。
多額の費用を負担するにしても、その分だけの得られるものというのは本当にあるんでしょうか。
そのことも十分に確かめていく必要があると思います。
多額の費用がかかるもんじゅを見直して、別の高速炉開発を進めようというわけですから、その費用負担どうなるのか、それに見合う知見が得られるのか。
そういったこと、まずしっかり検証して、交渉の過程、内容、そういったことも十分説明していく必要があると思います。
ですよね。
そもそもこの核燃料サイクルを維持するのか、それとも見直すのか、いろんな議論があると思うんですが、いずれにしても、もんじゅを廃炉にして次の実証炉を国内に作るとなると、なかなか道、険しそうですよね。
作る場合は、やはりすごい長いスパンになるんですね。
当面は不透明な状態が続きそうです。
国は開発のロードマップ、それの策定に、年明けから着手して、再来年・2018年をメドに示すというふうにしています。
しかし、その先には、どこに作るのか、誰が運営するのか、そういったことを具体化していくという、難しい問題も待ち受けています。
いずれにしてもばく大なお金がかかる話です。
しかも今すでに、原発事故の補償ですとか、廃炉に向けた費用というのも膨れ上がっていますし、国民の負担というのも増えようとしていますよね。
そうした状況を踏まえて、やはり広く議論をして、きちんと説明をしてほしいと強く思いますね。
福島第一原発の廃炉、それから賠償の費用などの費用ですね、これまでの試算の2倍近い21兆円以上に上る見通し、これ、最近になって明らかになってきたんですね。
原発を巡るコストを私たちの生活にどう響いてくるのか。
非常に関心高いと思います。
原発の事故を踏まえて国は、わが国の目指すエネルギー政策として、次のようなことを明言しています。
それは2014年にすでに書かれて、作られたものなんですね。
国民一人一人の意見や不安に謙虚に向き合い、国民の負託に応えうるエネルギー政策。
まさにこれ、実現してほしいと思います。
高速炉の開発にしましても、核燃料サイクルの確立にしましても、今後、多額の費用を投じようということ、大きな問題ですのでね。
エネルギーの全体状況を踏まえながら、しかも幅広い議論をしたうえで、十分な丁寧な説明をしていくということが求められると思います。
実際に、番組に宛ててもいろんなご意見も頂戴しております。
まさに60代の男性からは、高速増殖炉をどうするのか、国民全体で考えるために、オープンな議論の場を作るべきという意見、また、きちんと総括せずになし崩し的に肥大化させることはあってはならないという声も届いていますけれども、まさに、来週ですが、今後、国の方針というのが示されるわけですが、そこに、きちんと私たちが納得できる説明がなされるのか、2016/12/12(月) 22:00〜22:25
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代+「1兆円投じた“夢の原子炉” もんじゅ廃炉方針のなぜ!?」[字]

廃炉を含めた抜本的な見直しの方針が突きつけられている高速増殖炉「もんじゅ」。見直しの議論の舞台裏を明らかにし、“次世代原発”開発の行方を徹底検証する。