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書き起こし NHKスペシャル ドラマ 東京裁判「第1話」 2016.12.12

ないという声も届いていますけれども、まさに、来週ですが、今後、国の方針というのが示されるわけですが、そこに、きちんと私たちが納得できる説明がなされるのか、今から70年余り前私の後ろにあるこの建物の中である重要な裁判が開かれました。
戦争の指導者たちを裁いた極東国際軍事裁判。
いわゆる東京裁判です。
建物の中この大講堂に法廷が設置されました。
70年前はこのような感じでした。
裁きのために集まったのは世界11か国の判事たち。
彼らは世界の歴史の中でも特別な意味を持つ大きな問いに挑みました。
人は戦争を裁けるのかという壮大な問いです。
彼らはここでどんな議論を交わしどのように決断を下したのか。
私たちは世界各地で膨大な資料の発掘に当たりました。
公式の記録に加え判事たちが残した手紙や日記覚書。
そうして明らかになってきた事実を基にカナダオランダのスタッフと共同でドラマを制作しました。
今夜から4夜連続でお送りする国際共同制作ドラマ「東京裁判」。
初めて明かされる舞台裏のドラマです。
1930年代から40年代。
日本は中国東南アジアそして太平洋の島々に軍隊を派遣。

 


戦争の末数千万人が命を落とした。
1945年9月2日日本は降伏文書に署名。
ダグラス・マッカーサー元帥が連合国軍最高司令官に任命され日本を占領。
日本の元閣僚や軍の指導者たちは逮捕された。
11月ナチス・ドイツの指導者がニュルンベルクで裁判にかけられた。
翌年1月その裁判を参考にしてマッカーサーは東京裁判所憲章を公布。
そこには3種類の戦争犯罪が記された。
日本の元指導者ら28人がA級戦犯として起訴され東京裁判が始まろうとしていた。
(レーリンク)「僕の親愛なるリーセへオランダから東京までは長旅でした。
でも今は無事に荘厳な帝国ホテルに身を落ち着けています。
ここから横浜にかけては灰と残骸以外ほとんど何もないのにこのホテルがまだ建っている事は奇跡です。
ここの人々が経験した苦難は想像できません。
僕たちは荒廃と混乱の中で正義を追求するという難しい仕事を始めます。
裁判は最高司令官のマッカーサーが任命したオーストラリア人のウィリアム・ウェッブ判事が主導します。
ほかの判事もほぼ到着しホテルに滞在しています。
皆生まれも経歴も多分思想も異なる男たちです。
マクドゥガル判事はカナダの首相の信頼厚い友人。
共産党軍と戦っている介石は中国代表として梅判事を任命しました。
ノースクロフト判事はニュージーランドで最高裁判事を務めマサチューセッツ州の裁判所から来たヒギンズ判事はアメリカによって任命されました。
フランスが任命したベルナール判事はアフリカの植民地で戦い判事を務めていました。
ソ連代表のザリヤノフ将軍はスターリンの忠実な部下です。
スコットランド人のパトリック判事はイギリス代表として選ばれました。
彼はもうすぐ到着予定で僕は会うのがとても楽しみです。
君と子どもたち全員を愛しています」。
ウィリアム・パトリックだ。
パトリック判事オランダ代表判事のレーリンクです。
どうも初めまして。
こちらこそお会いできて光栄だよ。
ここまで長い旅だったのでは?全くだ。
何の騒ぎかな?あちらはオーストラリアのウィリアム・ウェッブ判事。
この裁判の裁判長です。
記者たちが戦争に代わるネタで騒ぎ立てようとしているんだな。
マッカーサー元帥はなぜあなたを裁判長に選んだのですか?そうです教えて下さい。
その質問なら元帥に聞いた方がいい。
話してもらえればだがね。
我々はアメリカ人かイギリス人の判事を選ぶと思っていましたが。
判事たちは皆優れた裁判官だがオーストラリアは太平洋の国で我が国の海で日本と戦ったんだ。
その事も関係あるだろう。
裁判はどれくらいかかりそうですか?6か月。
そんなに?我々は歴史を作っているんだよ。
それには時間がかかる。
ごきげんよう。
「歴史を作る」か使えそうだな。

(バイオリン)あの…私は判事のベルナールフランス代表です。
判事のマクドゥガルです。
モントリオールから来ました。
フランス語圏ですね。
紳士諸君ご婦人も。
まだ会っていない方のためにニュージーランドからいらしたノースクロフト判事をご紹介させてほしい。
私の代理としての役割も務めてもらう予定だ。
この壮大な建物が裁判を行う間の我々の仕事場となる。
一緒に来て下さい。
私はヒギンズ。
マサチューセッツから来ました。
(ロシア語)マサチューセッツにいらっしゃった事はありますか?
(ロシア語)
(ロシア語)地名を正しいつづりで書けない場所には行かないとおっしゃっています。
(笑い声)
(ウェッブ)この建物にはかつて日本の陸軍士官学校や陸軍省があった。
まさにこの部屋で攻撃の作戦を練った被告もいるかもしれない。
今度は我々が被告の運命を決める事になる。
(ロシア語)全員が大きな責任を分かち合っているとおっしゃっています。
我々はそれぞれの国で判事として人の運命を決めている。
例えば詐欺や殺人などの犯罪。
しかしここで我々が扱う問題は極めて複雑だ。
全員の技量と経験が不可欠だ。
既に説明を受けて我々の責務を定めた憲章も読んだでしょう。
しかしながらいま一度この場で確認をこれから我々が向き合う事になる難題についておさらいする。
我々が審理するのは3つの種類の罪。
まず1番目に来るのは平和に対する罪。
より一般的な言葉で言うなら侵略の罪。
問われているのは日本の指導者たちが侵略戦争を共謀し実行したのかどうか。
次に審理を求められているのは人道に対する罪。
該当するのは殺人民族の根絶奴隷化国外追放そのほかの不正行為。
これには更に権力者による自国民に対する犯罪が含まれる。
最後に審理すべき事は通例の戦争犯罪。
つまり…捕虜に対する虐待行為および戦場における残虐行為。
言いかえれば従来の戦争のルールに違反する罪だ。
中国では数百万人が殺されその多くが民間人です。
お国の方々の事は胸が痛むよ。
我々の国の兵士や市民についても同じだ。
しかし我々は間違えないようにしなければいけない。
正義と復讐は違う。
復讐など考えていません。
事実に言及しただけです。
中国での残虐行為は国際法上の重大犯罪にあたります。
梅判事が持ち出されたようにニュルンベルク裁判は我々に法廷内のつくり以外にも倣うべき判例を示しているだろう。
ああヨーロッパとここ太平洋では起きた事にも多くの違いがある。
しかし罪は同じように見えるがね。
ええ。
世界中がこの裁判を見守っている。
我々の議論や決断の全てを。
ではなおさらニュルンベルクの前例に倣うべきだ。
先ほど言ったように我々には難題が待ち受けている。
だが私はやり遂げられると確信している。
中国がまた内戦に突入してしまったとは悲しい事だ。
ええ命が無駄になるのはつらいです。
親族も行方不明なのです。
それはお気の毒に。
君はバイオリンを弾くんだねレーリンク判事。
もう苦情は出てますか?とんでもない。
廊下で聞こえたのでね。
いつかみんなの前で演奏してくれないか?たっぷり飲まれたあとでならやりましょう。
この法廷はニュルンベルクでナチスを裁いた法廷に似せて造られている。

(ウェッブ)今夜ホテル内の劇場でニュルンベルク裁判に関する映像を上映する。
ご興味のある方はどうぞ。
どうも。
ユトレヒト裁判所では同僚たちが連行されました。
ユダヤ人でした。
第一次世界大戦もおぞましかったが今回はもっとひどい。
だからこそこの裁判が重要だと私は思っている。
日本が占領したアジア太平洋地域は中国からここまで及びます。
うん。
オランダ領東インドは戦略的な目的で占領されました。
つまり天然資源という事か?ええ石油とゴムです。
ええそのとおり。
で日本が中国とインドシナを占領していた上にドイツやイタリアのファシストと手を組んでいたためにアメリカなどの国々は戦争の前に禁輸措置を講じました。
日本には石油資源がありません。
ですからインドネシアが重要な標的になったのです。
うん当時は妻の親族がそこにいて…。
(梅)ええ。
日本軍の収容所へ連行された。
ご両人席に着いて。
(ウェッブ)28人が戦犯として起訴されている。
これらの人物は軍の指導者や政治家そのほかの権力者たちだ。
当裁判の訴追期間つまり我々が扱う期間はパリ不戦条約の1928年から1945年の日本の降伏までとなる。
ではこれより討議を始めよう。
私から一つ質問があります。
被告のリストはどのようにして作られたのですか?検察官のチームが日本の文書や通信傍受記録関係者の証言を綿密に検討して作った。
それにしても日本の首相が過去15年の間に17人も入れ代わった事や終戦間際になって日本が文書の多くを焼却した事を考えると作成は大変だったでしょうね。
何か特に言いたい事があるのかね?レーリンク判事。
全てが恣意的に見えるのです。
それに突然2人の名前が最後に書き加えられました。
その理由は何です?ザリヤノフ判事に答えてもらおう。
(ロシア語)あ…重光は大使としてモスクワ駐在中に日本の共同謀議に参加しました。
ソビエトの友人たちは重光と梅津を起訴する事にかなり強いこだわりを持っているようだな。
2人が反共産主義だと思われるからですか?
(ヒギンズ)ソ連が2人を加えるよう要求して既にマッカーサー元帥も検察もそれに同意したんだ。
(ロシア語)将軍はこの問題が非公式に議論される事を望みません。
(ロシア語)彼らの起訴は決まった事で法廷には証拠が提出されます。
率直に話をするのがこの会議の目的では?もちろんそれは重要だ。
だがリストは既成事実だ。
ソ連が2名を加えるよう求め我々は受け入れた。
だからこの件は終わりにする。
では何について討議するのかね?それは我々の本来の目的である罪の定義とそれらの罪が犯されたかどうかという事だ。
だが罪の定義なら既にしたでしょう。
従って私が考える我々の目標は被告を釈放して社会に戻すのかそれとも収監または処刑するかを決めほかの誰にも同じような行為をさせないようにする事だ。
同感だ。
そのとおりだパトリック判事。

(バイオリン)おお!
(拍手)
(パトリック)お見事だレーリンク判事。
恐れ入ります。
音楽はなくてはならん。
それとこれも。
遠慮しておきます。
オランダ人なのに飲まないのか?私はバイオリンが弾けさえすればブランデーは不要なんです。
フフフよく分かるよ。
私はガーデニングでストレスを解消している。
でもここではそんな機会はなさそうだ。
どうも。
教えてくれないかね。
裁判についてここまでの意見は?ええそうですね…私にとっては興味深いです。
それは無難な答えだな。
続けて。
私は日本の指導者たちが決定に至った経緯を解明したいのです。
(マクドゥガル)解明できるのは政治と軍が必ずしも…。
(せきばらい)同じ筋書きで動かないという事だよ。
そうだ。
そしてそのような状況では大抵軍が勝つ事になる。
政治家が軍の動向を把握していなかったとしても関係ない。
もし知っていながら政治家が軍を統制できなくなっていたのであれば罪が重くなるだけで軽くなる事はない。
(ノースクロフト)同感だ。
うそをつかれていたとしても?
(パトリック)話が先走り過ぎているようだ。
音楽に戻ろうじゃないか。
それではもう一曲弾かせてもらいます。
クライスラーの曲を。
それはすばらしい。
そうですか。
ええ。

(バイオリン)戦争における天皇の責任について話し合いたい。
きっと熱い議論ができるだろう。
裁判長天皇は起訴されてない。
分かっている。
この前は議題に取り上げなかったでしょう。
だが今日は取り上げる。
我々は軽々しく議題を作るべきではない。
しかしこの先真相は突き止めなくてはならない。
同感です。
だからこそ天皇に責任があるのかどうか我々は話し合うべきでは?私は戦時中の日本軍に関する報告書を書いた。
だから日本の政治の仕組みや事情はよく知っている。
天皇は間違いなく責任を負っていたはずだ。
だから天皇の役割について考えておきたい。
進め方に関してあ…我々独自の指針を作りませんか?この先互いに意見が食い違う事があるのは明らかです。
少ない事を願いますがそうなった時立場の示し方を考えるべきでしょう。
たとえ全会一致とならない場合にでもです。
(ロシア語)あ…将軍は天皇の問題についての議論は長引くと考えています。
梅判事が提案したように対処するのが最善です。
(マクドゥガル)そのとおりだ。
(ロシア語)あ…冗談をおっしゃいました。
あなたが手を上げたのが学校みたいだと。
(笑い声)あの…私の国には習わしがあります。
判事室での秘密事項は守るというものです。
ええ我が国も同じです。
多数決で決まった評決であっても全会一致として発表されます。
そのため異論や反論などは裁判が終わったあとでも決して公表される事はありません。
そこでここでもそのやり方を採用する事を提案したい。
私は賛成する。
いいでしょう。
それではレーリンク判事の提案に賛成の諸君は?可決だ。
連合国がインドとフィリピンからそれぞれ判事を加える事に決めた。
アメリカ政府はインドが代表を出す事に賛成していなかったはずです。
国務省が考えを変えた。
どうやらアジア人の判事を数人加えるのが賢明だと思っているようだ。
人数が増えても対処はできます。
よかった。
裁判について提案がある。
開廷にあたって私からスピーチをしたい。
円滑な進行のためだ。
裁判とその関連事項は判事の権限となっています。
当裁判の裁判長として発言は許可できません。
我々の審理に影響を及ぼす事もです。
君という男はまるで相手に合わせようとしない。
気に入ってるぞ。
いいだろう。
私の要求は取り下げる。
天皇はどういう理由から被告のリストから外されたのですか?それはオーストラリア代表として質問してるのかね?いえ公式な立場ではありません。
ああ…。
私は天皇が過去10年間に日本の政治決断において決定的な役割を担ったという確かな証拠を得ていない。
今言ったとおりの言葉をアイゼンハワーに伝えた。
今年の1月にな。
天皇は極めて重要な人物であり我々の改革プログラムの正当性は天皇を通じて示されるのだ。
要するにそれは…。
(ノック)何だ?次の会議がもう始まります。
分かった。
君もご苦労。
ああ…。
(ノック)
(ウェッブ)どうぞ。
こんばんは裁判長。
これは梅判事。
おそれながら判事の席順についてイギリスの判事が私の席に配置されています。
悪いがよく分からない。
日本の降伏文書にはアメリカがまず署名し次が中国。
判事の席順にもそれを反映させるべきです。
現時点ではあなたはパトリック判事を私が座るべき席に着かせています。
我が国は戦争で最も苦しんだのです。
私の席の位置は数多くのアジア人にとって大事な意味があるのです。
失礼します。
(ドアの開閉音)
(司会者)ウ〜!以上ケイトでした。
さあ皆さんオーストラリアからの出場者に10点と盛大な拍手をお願いします。
(拍手と歓声)さて占領といえば私の心は彼女に占領されています。
ではお迎えしましょうバーバラです。
こちらへどうぞバーバラ。
(拍手と歓声)おかしなもんです。
何がですか?俺は真珠湾攻撃に遭って脚に砲弾の破片を食らい仲間も亡くした。
4年間互いにとことん殺し合ったと思ったら今度は再建を助けるとはね。
まあいい。
公正に裁いて死刑に。
公正な裁判に。
(司会者)続いてはこちらもご紹介するのがうれしくてたまりません。
ご紹介しましょう。
横浜から来てくれたイチコ!
(拍手と歓声)ヨコハマ!
(アナウンサー)「無謀な侵略戦争をあえて計画的に行い日本ばかりでなく東亜10億の民族を悲惨な状態に陥れた戦争犯罪容疑者東條元大将以下28名に対する極東国際軍事裁判が始まりました」。
いよいよ…マラソンの始まりですね。
短距離走になってほしいよ。
席順は大丈夫かね?ええ結構です。
どうも。
諸君全員を代表して私が発言し質問しまた質問に答える。
(ノック)
(法廷執行官)全員起立!
(法廷執行官)これより極東国際軍事裁判を開廷致します。
(ウェッブ)これまでの歴史においてこれほど重要な刑事裁判はありませんでした。
ここにいる被告たちには総理大臣経験者や元大蔵大臣元参謀総長そのほか日本政府において最高の地位にいた者たちが含まれています。
しかし被告がかつて高い地位にあろうと最も位の低い日本の兵卒や朝鮮の衛兵に勝るような寛大な配慮を受ける権利はありません。
我々は職務に対し開かれた心で事実および法と向き合います。
検察が果たすべき責務は合理的な疑いのない有罪を立証する事にあります。
ではこれより被告に対し有罪か無罪かの認否を問います。
(清瀬)裁判長ちょっと。
何です?清瀬弁護人。
理由を述べて下さい。
(ウェッブ)私からの回答は控えます。
ノースクロフト判事。
裁判所憲章の第2条にはこうあります。
「本裁判所は最高司令官であるマッカーサー元帥の任命する裁判官をもって構成する」。
これに基づいて本裁判所においては最高司令官により任命された者は職を解かれません。
では改めて被告に罪状認否を問います。
荒木貞夫あなたの申し立ては?重光葵あなたの申し立ては?東條英機あなたの申し立ては?
(ベルナール)今日は大変でしたね。
(ヒギンズ)ええ全くですね。
(マクドゥガル)結構うまいな。
(ノースクロフト)でも始まりはこんなもんでしょう。
清瀬弁護人はうまいやり方をしましたね。
気分を害されましたか?うん私への侮辱だ。
あなたは確かに日本の犯罪を調査しています。
彼は法的なカードを駆使したのであって侮辱した訳じゃありません。
私は証拠に基づいてニューギニアでの犯罪を調査し偏見のない決定を下している。
東京でも同じくそうするつもりだ。
うん。
もう終わった事だよ。
申し立てはノースクロフト判事が却下した。
憲章にちゃんとのっとっている。
憲章に守ってもらう必要はない。
お先に失礼する。
仕事があるので。
では。
これほど重大な裁判を仕切るのは至難の業だ。
できる人間は少ない。
うん。
(ロシア語)
(通訳)校長先生がいなくなったのであとはリラックスして飲みましよう。
(一同の笑い声)私は結構。
悪いが疲れているのでね。
(ロシア語)我が国の文化では受け入れる事が大事だと。
では弁護人の陳述に移ります。
清瀬弁護人。
裁判長。
(ざわめき)
(ウェッブ)静粛に静粛に。
(ウェッブ)ブレイクニー弁護人発言しますか?
(ざわめき)ウェッブ裁判長。
本裁判所が侵略の罪では誰も裁く事ができないという弁護側の動議をどう思いますか?もし正しいなら裁判は終了となるのでしょうか?あの広島と長崎への原爆投下についてトルーマン大統領を訴えますか?清瀬とブレイクニーはとことん争う気だ。
その場合は我々は皆帰国すべきだ。
(パトリック)ナチスも同じ弁護をした。
戦争は合法だと主張しナチス高官による戦争の計画と遂行も合法としたがうまくいかなかった。
今回も失敗する。
我々は歴史のあらゆる前例を考慮する必要がある。
ニュルンベルクだけを見てはいけない。
(ロシア語)ああ…将軍は…今おっしゃった言葉をそのままお伝えするのは控えますが戦争で多くの命が失われた事を思い出すべきだと。
そして弁護団の異議は前例があろうとなかろうと却下されるべきです。
ベルサイユ条約においてはドイツに戦争責任があるとして第一次世界大戦で生じた損害の賠償を命じた。
そして国際社会は侵略戦争を違法化した。
1928年のパリ不戦条約によるものだ。
パリ不戦条約には日本も署名しました。
法とは常に大きな正義に向けて進化していると清瀬弁護人に回答すべきです。
ブレイクニーにはこう回答しましょう。
我々が裁くべきは日本の戦犯であってアメリカ人の行為ではありません。
将来裁くかもしれませんが今は弁護団からの動議は却下されるべきです。
私は弁護団の主張をより詳しく議論すべきだと思います。
何のために?我々の審理とその結果について後で疑念を持たれないようにするためです。
動議を考慮してあげくの果て却下するなどというのは全くもって時間の無駄と言うほかない。
(ウェッブ)弁護団の動議は却下するしかない。
我々は前へ進もう。
裁判長として却下の理由を述べた声明を書く事にする。
後ほど全員でそれを見直し再検討しよう。

(ウェッブ)レーリンク判事。
あ…こちらはインドからいらっしゃったパル判事だ。
初めましてベルト・レーリンクです。
ああ!オランダの代表ですね。
ええそうです。
後れを取り戻すのは大変でしょう。
ん?「多数決での評決でも全会一致として発表する。
反対意見は公開されない」。
何ですって?あなたの言葉ですよ。
皆さんの議論についてはほぼウェッブ裁判長から伺いました。
フフ…。
ああレーリンク判事こちらの方はハラニーリャ判事だ。
先ほどフィリピンから到着された。
日本へようこそ。
どうもありがとうございます。
日本の土を踏む事になるとは想像もできませんでした。
判事を務める事もそうでしょうね。
ええ。
こんなに平和な状況で行うとはね。
皆さんこんばんは。
こんばんは。
レーリンク判事いいかな?あ…そうだな…。
ちょっと失礼します。
どうぞ。
で東京を楽しんでるかい?裁判の調子はどうかな?そうだ何か話したい事があったらいつでもオランダ代表部へ来てくれよ。
それはどうも。
演奏してるのは誰です?ああエタ・シュナイダー。
戦前にドイツで有名だった。
パーティーのためにわざわざ来たんですか?ハハハ。
1941年からここに足止めされている。

(ピアノ)
(拍手と歓声)
(拍手)シュナイダーさん。
ハーリッヒ=シュナイダーです。
すみませんでした。
ベルト・レーリンクと申します。
お会いしてます?私はバイオリンを弾くもので…。
それは結構。
いつか演奏をご一緒できないかと思いまして。
素人とは演奏しませんの。
私もその点については同意しますよ。
ええ。
ウィリンク将軍。
ん?ああ。
あの人はオランダ代表部で働いている方?レーリンク判事我が国の代表判事ですよ。
ああ。
ああ…。
あっ。
名刺をお願い。
ではあなたの腕前を調べないといけないわね。
あ…それは非常に光栄です。
電話して。
私の日程が空いていれば日にちを決めましょう。
ダンケシェン。
何をしているんだね?帰国します。
どうして!?この裁判に関わり続ける事は良心が許しません。
しかし大統領からこの任務を命じられたはずだ。
大統領は6〜7か月で終わるともおっしゃった。
だが私の見る限りそうはなりそうにない。
検察と弁護団は審理の進行を妨げているしほとんどの判事たちは既に立場を決めてしまっている。
そんな…我々は協力して前に進まなくては。
提案があれば何でも歓迎する!提案なら幾度もしてきましたが受け入れられませんでした。
ではもう一度見直そう。
今帰国すれば悪い印象が広がってしまう。
申し訳ないがこの事はもう十分考え抜いた。
私が何をおいても果たすべき務めはマサチューセッツ州高等裁判所の裁判長です。
それを捨てる事はできない。
幸運を祈ります。

(ため息)4夜連続でお送りするドラマ「東京裁判」。
判事たちの激論は更に緊迫の度を増していきます。
憲章によって侵略の罪は認められている。
お言葉を返すようですがその当時侵略の罪は存在していませんし。
裁判長6か月で終わるとおっしゃっていた裁判がなぜこれほど長引いているのですか?検討すべき証拠が多いんだ。
裁判の舞台裏で渦巻くさまざまな思惑。
あなたの国はナチスに占領されたわ。
事態が悪化する前に素早く対処しなきゃならん。
植民地化を進めるのに正当な意図があったのかもしれない。
いかなる国にも文化や考え方を他国に押しつける権利などない。
一部の日本人は被告のうち何人かは罪を着せられたと思っています。
そして11人を待ち受ける…全く話にならない。
人は戦争を裁く事ができるのか。
世界が注目する中判事たちは世紀の判決へと向かいます。
今私は東京・日比谷にいます。
後ろに見えるのが判事たちが2年半を過ごした帝国ホテルです。
ここが彼らの住まいでありそれぞれの部屋やバーで議論を重ねたといいます。
判事たちはこの先にある皇居の横を通って市ヶ谷の裁判所に通っていました。
時には目の前にある日比谷公園で散歩もしました。
そしてホテルから歩いて5分の所にマッカーサー最高司令官がいたGHQもありました。
ドラマ「東京裁判」このドラマを制作するため私たちは世界各地で取材を行いました。
8年間にわたり集めた資料と証言。
これらを基にセリフを練りオランダカナダオーストラリアと共同で脚本を作り上げました。
そして世界から集まった俳優たちとともにヨーロッパと日本でドラマを撮影しました。
ドラマで重要な意味を持つ法廷の場面。
証人や弁護人の発言は残されている当時の記録を基に再現しています。
映像は俳優の演技を撮影したカットと残っているフィルムを組み合わせました。
フィルムのオリジナルは白黒でしたが当時のカラー写真などを基に色づけしました。
東京裁判それは戦争を起こした責任を国家の指導者個人に問うという試みでした。
この裁判の論点を改めて整理してみましょう。
きっかけは1914年ヨーロッパを覆った第一次世界大戦。
膨大な数の死者を出す悲劇でした。
しかし当時の国際法では戦場での残虐行為は犯罪として裁かれましたが戦争を起こす事自体は合法だったのです。
その反省から1928年日本も参加して結ばれたのがパリ不戦条約。
侵略戦争を違法とする国際条約でした。
しかしこの条約では戦争を始めた指導者個人を裁く事までは踏み込んでいませんでした。
その後も世界では戦争が続きます。
日本の大陸侵攻ヨーロッパから太平洋に広がった第二次世界大戦。
世界で数千万人が命を落とす事になったのです。
次の世界大戦を防がなくてはならない。
ニュルンベルクと東京で戦争を起こした指導者たちを裁く国際裁判を開く事になりました。
2つの裁判の基本文書「裁判所憲章」。
その中で3つの罪を問うと定めています。
更に国際法にはなかった2つの罪が加えられました。
裁判で争点になったのは平和に対する罪の有効性でした。
この罪は東京裁判の被告たちが戦争を始めた時は確立されていなかった。
つまり事後法であり認められないという考えです。
こうした問題に立ち向かった11人の判事たち。
彼らは11の戦勝国から選ばれ東京に集まりました。
裁判長に選ばれたウェッブ判事。
連合国の大国ではなくオーストラリアの出身でした。
ウェッブ裁判長が残した資料。
判事が交わした覚書や個人的な手紙などが保存されています。
裁判長に就任した当初の手紙。
大役を果たす強い意志を記していました。
しかしなぜ連合国の中心であるアメリカではなくオーストラリアの人物が裁判長に選ばれたのでしょうか。
ウェッブ裁判長は長らく地方都市ブリスベンの裁判所に勤めていました。
この街には戦争中マッカーサー元帥も司令部を置いていました。
そのマッカーサーが知り合いとなったウェッブを裁判長に選んだと考えられています。
ところがウェッブ裁判長は判事たちをまとめるのに苦労しました。
ベテラン判事が多い11人の中で最も若かったのがオランダのレーリンク判事。
裁判が始まった時39歳でした。
戦争中はナチスに批判的な主張を行い左遷された事もありました。
戦後ナチスに屈さなかった事も評価されオランダ代表に選ばれました。
妻と5人の子どもを母国に置いて東京裁判に臨んだレーリンク判事。
仕事の合間を縫って日本各地を回り日本人とも交流した事を家族への手紙に書き残しています。
欧米の判事だけでなくアジアの代表たちも参加したのが東京裁判の特色です。
中国の梅判事もその一人。
故郷の南昌市には自宅が記念館として残されています。
エリートとして育ちアメリカ留学で法学を学んで英語も堪能でした。
梅判事が東京で書いた日記には歴史的裁判に臨む高揚感が率直に記されています。
それぞれの事情や背景。
そして信念を胸に東京で激論を重ねた11人の判事たち。
戦争を巡る法そして人間模様のドラマが続いていくのです。
2016/12/12(月) 22:25〜23:25
NHK総合1・神戸
NHKスペシャル ドラマ 東京裁判「第1話」[字]

70年前、世界から集まった11人の判事が「戦争は犯罪なのか」という根源的な問いに取り組んだ、東京裁判。11人が繰り広げる、緊迫感あふれるヒューマンドラマの初回。

詳細情報
番組内容
70年前、世界から集まった11人の判事が「戦争は犯罪なのか」という根源的な問いに取り組んだ「東京裁判」(極東国際軍事裁判)。NHKは世界各地で取材を行い、判事たちの公的・私的両面にわたる文書や手記、証言を入手した。そこから浮かび上がったのは、多様な背景をもつ判事たちが、激しい議論の末にようやく判決へ達したという、舞台裏の姿だった。11人が繰り広げる、緊迫感あふれるヒューマン・ドラマを全4話で描く。
出演者
【出演】ジョナサン・ハイド,ポール・フリーマン,マルセル・ヘンセマ,イルファン・カーン,マイケル・アイアンサイド,【司会】三宅民夫,【語り】草笛光子,伊東敏恵