タイ1.9!日本中の海の幸が集まる東京・築地市場。
せ〜の!1日およそ1,700t。
金額にして16億円の水産物が毎日取り引きされる世界最大規模の市場だ。
豊かな日本の食文化に触れようと海外から見物客も集まる。
でも築地の本当の姿を知っているだろうか?時間を巻き戻してみると…。
(鐘の音)
(競りの掛け声)築地はプロフェッショナルたちが日々格闘する舞台だ。
究極の魚を追い求める料理人。
一流の料理人たちを迎え撃つのは日本屈指の目利き。
築地の仲買人たちだ。
今夜は料理人と仲買人の知られざるドラマに密着。
プライドを懸けた男たちの闘い。
朝6時半。
仲卸の開店を待っていたかのように足早に歩く一人の男。
厳しく品定めするのは中国料理の奇才。
独創的な手法で未知の味を作り続ける…番組が古田を取材したのは5年前の事だった。
生まれ故郷岐阜で中国料理店を営んでいた古田。
その斬新な発想で名だたる料理人たちをうならせてきた。
代表作のフカヒレステーキ。
柔らかく煮込むという常識を覆し表面をカリッと焼き上げどこにもない食感を生み出した。
アワビの肝ソースチンゲン菜のクリーム煮添え。
フレンチの要素を取り入れ中国料理の概念を一変させた。
新感覚中華。
古田はこれまでにない創作メニューで他の追随を許さない。
岐阜の古田が今なぜ築地にいるのか。
実は2年前古田は東京銀座に店を出した。
岐阜の店は息子に託し60を前に決意した再スタート。
一日僅か8名だけをもてなす小さな店で勝負する。
料理人としての覚悟があった。
一流の料理人を刺激する東京の魅力とは何か。
(鐘の音)
(競りの掛け声)それは築地市場に集う仲買人の存在だ。
日本全国の食材を見極めるプロフェッショナルたちがいる。
エビやカニフグにアワビ。
特定の食材を専門に扱いその目利きに人生を懸ける職人たち。
例えばこの仲卸店。
明治時代から続くこの店にはカニやタイなど近海で取れる魚介のプロがいる。
目利きの達人たちを束ねるのは5代目の原田勝。
おはようございます。
おはようございます。
老舗のすし屋や高級料亭。
名だたる名店が原田の目を頼ってくる。
仕入れるのはどれも一級品。
だが客は口をそろえて「その中で一番いいものを」と言ってくる。
調理法や料理人の好みに合わせどれが最もふさわしいかを見極める。
原田の右腕沢井広志もまた料理人たちから絶大な信頼を集める目利きだ。
そんな目の肥えた料理人たちを迎えるため仲買人には切り札があるという。
決して有名産地の品ではない。
だが築地の目利きとして太鼓判を押す「隠し玉」だ。
信用第一だからこそ自分が選んだ最高のものを料理人に渡したい。
それが築地の流儀。
今年7月に還暦を迎えた古田。
(沢井)おはようございます。
お世話になっております。
半月前から毎日通うようになったのがあの沢井のいる老舗の店だった。
この日の目当ては焼き物にして出す白身魚。
質も大きさも申し分ないアカムツを見つけた。
その時…。
出してきたのは更に大物。
「隠し玉」だ。
予算を超えるが古田は即決した。
更に沢井の隠し玉が続く。
(沢井)はい。
(古田)すいません。
タチウオは諦めた。
だがこのやり取りが心地よいという。
一方の沢井にもある考えがあった。
あの時見せたタチウオはシーズン前でかなり高値だったという。
早速仕入れた食材の下ごしらえにかかる。
一流の目利きがすすめてくれた隠し玉。
これだから料理はやめられない。
(取材者)どのへんですかね?ありがとうございました。
築地の中で花形といえば本マグロ。
中でも最高級の天然本マグロだけを狙う仲買人がかつて番組に登場したあの人だ。
人呼んで「マグロのカリスマ」。
名だたるすしの名店からそのマグロの目利きに絶大な信頼を受ける。
一本数百万円もする中からこれぞというマグロを買い付けるのが藤田さんの仕事。
おもむろに尾の断面から身をほじり出した藤田さん。
この瞬間に味までも見極めるという。
(取材者)いまですか?う〜ん…。
藤田さんがうまいと認めるマグロには3つのポイントがあるという。
特別に教えてもらった。
おいしいマグロの最大の特徴はしなるほどの柔らかさ。
これは身に程よい水分を含んでいるためだ。
尾の断面に指を突っ込んだ瞬間藤田さんはこの柔らかさを見極めていた。
トロの部分に注目。
よく見ると細くて白い線がたくさん入っている。
これは実は脂。
きめ細かければ細かいほど舌にとろけるという。
3つ目のポイントはスジが硬くない事。
食感を邪魔するからだ。
持ち上げてみると…。
このとおり。
今にもちぎれそう。
身が筋張っていない証拠だ。
(取材者)あぁ〜。
こう持っちゃうともう…。
マグロの中身はさばくまで分からない。
だが藤田さんは断面の見た目と指先の感覚で全てを見通す。
胴回りのスジが硬くないかも分かるそうだ。
おいしいですねフフフッ。
それは…。
ただし…。
うんもちろん。
それはもう…。
マグロ一筋30年の藤田さん。
奥が深すぎる。
銀座に店を構えて13年の日本料理人がいる。
その腕は和食の神髄を究めたと評される。
番組が奥田を取材したのは今年5月の事だった。
前菜はウドやワラビなど16種類の旬の野菜。
油は一切使わない。
シンプルな味付けだけで野菜本来のうまみや食感を引き出す。
夏は天然の大ウナギ。
弾力のある身を3日ほど熟成。
脂をなじませ力強い生命力を丸ごと味わってもらう。
奥田が日本料理の中心と考えているのが白身魚。
中でも刺身は素材の味だけで勝負する和食の最高峰だという。
この冬奥田があえて挑みたい食材があった。
白身の高級魚フグだ。
中でも築地に集まるのは最高級の天然のトラフグ。
今回奥田はフグを究め新しい刺身のコースを作り出そうとしていた。
奥田が頼りにする男がいた。
フグの目利きでは築地でトップクラスと言われる男だ。
串田は迷う事なく豊後水道の天然のフグをすすめた。
それは奥田ならば絶対に選ばないフグだった。
仕入れケースの中で一番小ぶりのフグ。
これが最も良いという。
天然の魚の場合一般的にはまるまると太ったものが脂がのってうまいと言われる。
ところが串田がすすめたのは通常好まれない細身のものだった。
そういうもんです。
やってみます。
ごめんなさいお時間とりまして。
ありがとうございました。
すいませんまた来ます。
だが半信半疑の奥田。
串田がすすめた2匹と共に自分が選んだフグも買った。
店に戻った奥田は料理長クラス4人を集めた。
4人のうち3人が奥田と同じく胴回りが太ったフグをうまそうだと判断した。
早速串田がすすめたフグをおろす。
内臓を取り除き「身欠き」と呼ばれる身だけの状態にして見比べる。
しかしすぐには試食しない。
フグは余分な水分を抜くと身が詰まりうまみが凝縮される。
時間をおいて試食し最適のタイミングを見極める。
冷蔵庫で一晩寝かせたフグ。
その味は…。
包丁を引く時に伝わってくるこれまでにない手応え。
一晩だけで身の詰まり具合は予想以上だった。
えっとこれが1番ですね。
2番3番。
まず串田がすすめた小さなフグ。
そして奥田が選んだフグ。
小ぶりのフグの引き締まった身の甘さ。
味の差は歴然だった。
串田の目利きの確かさに思わず本音が漏れた。
怖いです。
翌朝。
(奥田)おはようございます。
先日はありがとうございました。
奥田は再び仲買人の串田を訪ねた。
あのフグを最もおいしく客に出すにはどうすればいいのか。
串田も奥田の思いに応える。
いや〜。
(奥田)分かんない正直…。
奥田は毎日客の目の前で包丁をとる。
この13年どうすれば客を喜ばせられるかそれだけを考えてきた。
客に出している刺身のコースにあのフグを並べたいという思いにも駆られる。
だが果たして今の自分はフグを究めたと言えるのか。
フグをさばいて4日後。
串田が言う最も熟成する日。
切る度に浮き上がるほど身が詰まっている。
すごいわすごい…。
すごいと思います。
(奥田)すごい。
しかし奥田の表情はなぜか険しくなった。
ちょっと違和感ありすぎますよね。
奥田は決めた。
今年は客の前にフグは出さない。
翌朝の築地。
串田に礼を言う奥田がいた。
ありがとうございます。
いやいやいやいや…。
(奥田)私は最後料理をして味として結果も出さなければいけないし彼からもらったバトンを落としてしまったら崩してしまったら彼の真剣さには失礼にあたりますか2016/12/19(月) 22:00〜22:44
NHK総合1・神戸
プロフェッショナル 仕事の流儀 年末スペシャル「築地に集うプロたち」[解][字]
築地市場に足を運ぶ3人のプロに密着。一級品を求め、買い付けに奔走する中華の奇才・古田等。日本料理人・奥田透が出会った“未知の食材”。その使いみちとは!?
詳細情報
番組内容
3人のプロフェッショナルが“食の宝庫”築地市場で繰り広げる真剣勝負に密着。60歳にして「新参者」の中華の奇才・古田等。一級品の食材を求め、買い付けに労する姿に密着!日本料理人・奥田透が出会った驚異の可能性を秘めた“未知の食材”。和食の真髄を極めた男が1つの食材と向き合い続ける苦闘の連夜を追う。“マグロのカリスマ”と呼ばれる仲買人・藤田浩毅。その目利きの極意も大解剖!
出演者
【語り】橋本さとし,貫地谷しほり