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セリフ書き起こし 連続テレビ小説「とと姉ちゃん」総集編(後編) 2016.12.31

 

昭和15年10月このころ日本では日中戦争が長期化。
生活に必要な物資が次々と軍事優先となっていき庶民は欠乏していました。
その影響は星野との別れを経た常子の周囲にも及びました
(まつ)あんたも強く生きるんだよ。
とと姉ちゃん!
(常子)はい。
(宗吉)じゃあな!またいつか会おうぜ!
物資不足により森田屋は弁当屋を続けられなくなり高崎へ移転
単刀直入に言うよ。
君はクビだ。
えっ?聞こえなかったのか?君はクビだと言っているんだ。
タイピストの常子もまた戦争の影響によって解雇されてしまいます
(早乙女)このご時世まっすぐに生きていても報われない事ばかりだと思うの。
でも負けないで下さい決して。
失礼します。
常子は一家を養うために次の職を探した末…甲東出版という小さな出版社に編集部員として入社する事になりました

 

 

 


(谷)何をしている?あっ皆さんにお茶のお代わりをと思いまして。
(相田)ありがとう。
(富樫)気が利くね。
いえ当然です。
(谷)何が当然だ!会議中控えを取ってばかりじゃないか。
君の意見はないのか?いやあの…女がしゃしゃり出て意見なんか出してもいいんですか?フフッ当たり前じゃないか。
ここじゃ男も女もない。
君の考えを素直に言っていいんだよ。
君が作りたいと思う企画が浮かんだら是非聞かせてくれ。
はい!
そしてついに常子に運命の出会いが訪れます
失礼します!「臨戦態勢確立」。
この風変わりな男が後に常子と一緒に雑誌を作り戦後の復興に挑んでいく事になる天才編集者花山伊佐次でした
「進め一億火の玉だ」。
う〜ん…。
あの…花山さん…。
帰れ。
邪魔するな。
いやあの私…。
帰れ。
邪魔するな。
ですから…。
帰れ。
邪魔するな。
3度も言わせるな〜!・「普段から」・「メイクしない君が」・「薄化粧した朝」・「始まりと終わりの狭間で」・「忘れぬ約束した」・「花束を君に贈ろう」・「愛しい人愛しい人」・「どんな言葉並べても」・「真実にはならないから」・「今日は贈ろう」・「涙色の」・「花束を君に」・「花束を君に贈ろう」・「愛しい人愛しい人」・「どんな言葉並べても」・「君を讃えるには」・「足りないから」・「今日は贈ろう」・「涙色の」・「花束を君に」
(ラジオ)「臨時ニュースを申し上げます。
臨時ニュースを申し上げます。
大本営陸海軍部12月8日午前6時発表。
帝国陸海軍は本8日未明西太平洋においてアメリカ・イギリス軍と戦闘状態に入れり」。
アメリカやイギリスとも戦争が始まるの?
(君子)終わるどころかどんどん大きくなっていくわ。
太平洋戦争が勃発して1年青柳商店も軍に接収。
祖母滝子たちも深川を離れる事になりました
(隈井)ごめんくださいまし。
こうして深まっていく戦争は常子の周囲の人々の平穏な暮らしを次々に奪っていきました

深川を去り目黒に越した常子たちも戦火におびえます

(警報)この空襲いつもと違うわ。
昭和20年3月10日午前0時8分米軍による焼夷弾攻撃が開始されました

(爆撃音)
(美子)やっぱりいつもと違うよ。
いつもこんなに大きな音じゃないもの。
ねえ…私たちどうなるの?ねえ!
(鞠子)大きな声出さないで!
爆撃は下町を中心に続き常子たちが暮らした深川の町も焼き尽くしました
この人たち…。
やだよ。
行きたくない。
や〜だ。
どうしたの。
大丈夫か?お竜さん?お竜さん…お竜さん!あ…あの…私です。
昔銀座で。
銀座?はい…ビアホールで。
ああ…マフラーの。
そうです。
常子はかつて自分を助けてくれたお竜と幼い兄弟を一晩泊める事にしました
お〜上手。
お竜さん。
西の方は電車が走っているそうなので川崎まで行くには渋谷まで行くといいそうです。
そろそろ出ようかと思ったんだけどこいつが目に留まってさ。
なあ…これは何て題名だい?悪いけど字が読めないんだ。
ガキの頃から母親がいなかったもんで学校にも行かず家の手伝いやらあいつらの面倒を見てきたもんだから…。
これは「新世界」という雑誌です。
「新世界」か。
あたいは戦争が終わったらいろんな事を知りたいね。
いろんな事?字もそうだけどさ普通の人が当たり前のように知っている事を知りたい。
あんたが羨ましいよ。
あんたはあたいが知らない事をたくさん知ってんだから。
そんな事ありません。
今まで働いてお金を稼ぐ事ばかり考えてきましたから。
私も知らない事がいっぱいあって知りたい事や見たい事がまだまだたくさんあるんです。
そっか。
あんたも一緒か。
はい。
(鉄郎)しっかり押さえてろよ。
押さえてますすいません。
そして…
(蝉の声)
(三宅)小橋さん。
はい。
正午にラジオを聴くように。
重大発表があるそうだ。
はい。
(玉音放送)「世界の大勢と帝国の現状とに鑑み非常の措置を以て時局を収拾せむと欲し…」。
よく分からないんだけど…。
しっ!負けたんだ。
えっ?日本が負けた。
だから戦争は終わりだ。
「抑々帝国臣民の康寧を図り万邦共栄の楽を偕にするは…」。
常子の胸の中で2つの気持ちがせめぎ合っていました。
戦争に負けた悲しみと戦争が終わった喜びとが。
結果…
よ〜し…。
できる。
できるわよ!できる!できるできるできるできる!
これからは自分の知る出版の世界でやりたい事を自由にできるかもしれない。
その喜びが体じゅうを駆け巡ったのです
叔父さん用って何ですか?また余計なものでも仕入れようとしてるんじゃ…。
バカそんなんじゃねえよ。
こいつらの顔見せようと思ってよ。
えっ?こいつらこいつら。
俺はこれ見ると胸が高鳴るんだ。
みんな生きてるって感じがするじゃねえか。
はい。
それにもう一つ胸が高鳴る事がある。
女だよ。
女?
(鉄郎)みんな男に言われるままじゃねえ。
言い返したり文句言ったりしてんだろ。
そんな様子見てたら笑えんだ。
戦争の間男は戦地に行っちまって女だけで守り抜いたって事が自信っつうかよ強さにつながったのかもしんねえな。
時代は変わったんだ常子。
こんなゴチャゴチャな世の中だから女でもやりたい事ができるようになった。
女にもチャンスが巡ってきたんだ。
今だったらお前も大金つかめるかもしれねえんだぞ。
そしたら家族に楽させてやれる。

常子の女学校時代の友人綾は戦争で夫も家も失っていました
・何回言ったら分かるんだい!こっちの部屋に入れんじゃないよ!さっさと洗濯しな!
(綾)本当はあなたにうちに来てほしくなかった。
こんなに惨めな暮らしをしてるってあなたに見られたくなかったの。
こんなつらい状況で何のために必死になって生きてるのか…。
これ覚えてる?「青鞜」…。
綾さんまだお持ちだったの。
ええ。
(東堂チヨ)「元始女性は実に太陽であった。
真正の人であった。
今女性は月である」。
(綾)あれからもう10年近くたつけど私はいまだ月のままだわ。
だけど女はもともと太陽だったって思うと「いつか私も太陽に」って元気が出てくるの。
この時常子はある一つの決意を
私…甲東出版を辞めさせて頂きたいんです。
どうして?自分で会社を作って出版しようと思うんです。
常子は姉妹で力を合わせて女性のための雑誌を出す出版社を作る事にしたのです
どう?見出し。
さあさあお立ち会い!新雑誌「スタアの装ひ」!「スタアの装ひ」入荷致しました。
新発売です!よかったらお手に取ってみて下さい。
いかがですか?よろしくお願いします。
これおいくら?7円です。
7円なら買ってみましょうか。
1冊頂戴。
ありがとうございます!
(3人)ありがとうございます!はい。
ありがとうございます!1冊売れた…。
私の文章がお金になった…。
よかった!
常子たちが創刊した服飾雑誌「スタアの装ひ」は発売当初は飛ぶように売れました。
しかし長くは続かず…
あと1冊頑張ってみない?あの人に相談してみろよ。
あの人?花山伊佐次。
会った事あるだろ?花山さん…。
あっ内務省にいた方ですよね。
そう。
その花山さん。
私あの人どうも苦手で…。
いやまあ正直な人なんだよ。
きっと君の作ろうとしている雑誌をよりよくしてくれるはずだ。
お邪魔しております。
私5年前に一度お目にかかった事がある…。
覚えてる。
甲東出版の小橋常子だ。
あ…でも今はそちらを辞めて…。
知ってる。
何だ?用件を言いたまえ。
あの…。
私雑誌を作ったんです。
母と妹2人で。
ですが思うように売れずどうしたらいいか行き詰まってしまって。
お力を貸して頂けないでしょうか。
(花山)力など貸さん。
帰れ。
(三枝子)あなた。
お前も素性の分からぬ者を勝手に家に上げるな。
強盗や詐欺の類いだったらどうする?
(三枝子)ごめんなさいね。
いえ。
(三枝子)今お茶いれますね。
あっありがとうございます。
あの…せめてこの雑誌の駄目なところを一度だけでも見て頂けませんか?駄目なところしかない。
そんな見もしないで…。
たまたま闇市で買ったんだ。
えっ?どうして…。
そうなんですか?買った事を後悔したよ。
何を見せたいんだ?文章か?洋服か?テーマは何だ!?どのページを見ても同じような割り付けで飽き飽きする。
紙も劣悪で手触りも悪い。
こんなものに7円払うならちり紙を100枚買う事を勧めるね!そもそも君は読者を想像できていない。
外国人や一握りの令嬢が着るような浮世離れした服を載せて何になる?作り方を載せたところで材料などどうやって手に入れる?型紙も載せないで読者が本当に作れると思うのか?
常子は花山の編集者としての才能にほれ込み自らの雑誌の編集長として迎えるべく拒む花山の説得に何度も向かいました
(ドアが開く音)どうしてここにいる?何しに来た?もう一度お話しさせて頂けませんか?君が粘り強い根性の持ち主なのは知っている。
だがこんな時に発揮せんでいい!昨日ご老人から伺いました。
「8月15日全てに気付いた」って。
一体何に気付かれたんですか?教えて下さい。
なぜペンを握らないのか。
「帰れ」とどなりつけたいところだがそれでは君は帰らない。
分かってる。
随分お詳しい…。
はぁ…いいか?理由を聞いたら帰ると約束しろ。
ならば教えてやる。
では言わん!ずっとそこで待つがいい。
コーヒーをどんどん頼め!はいはい…。
分かりました!教えて下さい。
うちは貧しい家でね。
母親が女手一つで私たち兄弟を育ててくれたんだ。
生きていくのがやっとで母は毎日とても苦しそうな顔をしていた。
だが私が10歳のある日母の顔が突然変わってね。
「元始女性は太陽であった。
真正の人であった」。
平塚らいてう。
そうだ。
言葉には人を救う不思議な力があるんだと子ども心に感じてね。
私もそんなふうにペンで力のある言葉を生み出し人を救ったり人の役に立つ仕事をしたいと…。
そうして内務省で宣伝の仕事の誘いを受けたんだ。
これは運命だと思った。
それで人のお役に立とうと?お国が勝てば全ての国民が幸せになれる。
それから私は戦地で戦う友のため国のために尽くそうとペンをとり言葉を選んだ。
ポスターも書いた。
何の疑いもなく「一億一心」の旗を振って戦争に勝つ事だけを考えて仕事をしてきた。
だが去年の8月15日…。
その時初めて気付いたんだ。
小さい頃から何よりも正しくて優先して守るべき大事なものがあると言われていた事が実は間違っていたんじゃないかと。
そしてそれまで言葉には人を救う力があるものだと思ってばかりいて言葉の力の持つ怖さの方に無自覚のままそれに関わってきてしまったのではないかとね。
言葉の力は恐ろしい。
人の役に立ちたくて人を救いたくてペンを握ってきたはずだったのにそんな事も分からずに戦時中言葉に関わってきてしまった。
そして終戦になって信じてきた事の全てが間違っていた事に気付かされた時もうペンは握らないと決めた。
これが全てだ。
さあもう帰ってくれ。
やっぱり諦められません。
花山さん。
私はどうしても女の人の役に立つ雑誌が作りたいんです。
たくさんの女の人たちが今この戦後の日本で物がないお金もない仕事もない…。
先行きが見えないこのひどい状況の中で必死にもがきながら生きています。
そんな皆さんの毎日の苦しい暮らしに少しでも明かりを灯せるような雑誌を作りたいんです。

(花山)こんな時代だからこそ伝えなくてはいけない事があるはずだ。
だが実際には作れんよ。
そんな金のかかる雑誌。
(長澤)花山。
この辺り一帯だ事務所が入るビルの建設予定地は。
(花山)何だって?
(長澤)どうした?
(花山)ちょっと待ってくれ。
そうなるとここに住んでいる人たちはどうなるんだ?
(長澤)よそに行ってもらうしかないな。
(花山)空襲で焼け出されて行き場がない人たちだぞ。
(長澤)しかたないだろ。
こいつらは勝手に住み着いているんだ。
出ていけと言われて文句を言える立場じゃない。
・お〜い長澤さん!ああ!花山さん。
こんにちは。
お宅に伺ったら奥様が仕事仲間の方とここへと。
何の用だ?答えが何となく分かったんです。
花山さんがおっしゃっていた誰にもまねされない雑誌。
衣服だけでなく衣食住にまつわる全ての中で毎号私たちが大切だと思うものを調べて実際にその生活の知恵を実験してみて体験した事を読者に伝えて皆さんの生活が今日よりも明日と少しでも豊かになるような雑誌。
ああ。
そんな雑誌を作る事ができたらとこのところ考えていたんだ。
しかしそれにはとても金がかかる。
何もかも実際に作ったり試したり…。
そんな事ができる訳がない。
夢みたいな雑誌だ。
できますよ。
私となら。
それに花山さんおっしゃってたじゃないですか。
「何よりも優先して守るべきだと思い込んでいたものが間違っていたと気付かされた」と。
だったら…もう間違えないようにしませんか?私は戦争中男には毎日の暮らしなどよりももっと大事なものがあると思い込んできた。
(花山)しかしそんなものはなかったんだな。
毎日の暮らしを犠牲にしてまで守って戦うものなど何もなかった。
毎日の暮らしこそ守るべきものだった。
毎日の暮らし…。
人間の暮らしは何ものにも優先して一番大事なものなんだ。
もし豊かな暮らしを取り戻すきっかけとなる雑誌を作れるのなら…。
私となら…必ずできます。
始めましょう。
新しい雑誌作りを。
あの2人は何をしている?えっ?あっ鞠子と美子ですか?多分今家で…。
バカ者!一瞬たりとも遊ばせておくんじゃない!四六時中雑誌の事を考えさせておけ!すみません。
全く明日からが思いやられる!お力を…貸して頂けるんですか?君は家族思いだから孝行娘の手伝いをしてやるだけだ。
君らのためにペンを握ってやる。
ありがとうございます!本当にうれしいです。
終戦の日以来初めて他人の…それも女性の言葉を信じてみたくなったんだ!よろしくお願いします。
花山さん。
ああ。
こうして2人の雑誌作りが始まりました
(花山)我々が雑誌を届けたいのは今ここにいる我々と同じ庶民だ。
戦争で一番ひどい目に遭ったのは庶民なんだ。
ええ。
何すんだい!?私が見てたもん横から取るんじゃないよ!買うまではあんたのもんじゃないだろ!何だって?金もないくせにガタガタ言うんじゃないよ!
(花山)まず戦うべきはこれかもしれんな。
戦う?まずは衣服と戦わんか?賛成です。
きれいなものを身につけると少しだけでも気持ちが豊かになるような気がするんです。
それができればこの国の暮らしぶりも変わるかもしれません。
2人は早速第1号の目玉企画に取りかかりました
型紙は使わないんですか?これじゃまるで着物じゃないですか。
黙って見ていろ。
(花山)まず2枚の布地を縫い合わせる。
つながった布地を二つに折って腕を通す分だけ余白を作って両脇を縫い合わせる。
花山さん次は?お母さんありがとうございます。
これで出来上がりです。
まあ…。
え〜!わぁ…。

(花山)これが直線裁ちだ。
直線裁ち?
(花山)うん。
布を直線に切るだけなので型紙も要らないし布地の無駄も出ない。
1反の布地からワンピースなら3着分も作れる。
布地を直線に縫うだけなので難しい技術もいらないし夏物なら2時間もあれば完成する。
すごい!こんな便利な方法どうして今まで秘密にしてたんですか?昨日思いついた。
散髪をしている娘に新聞をかぶせていたのを見てね。
和服で洋服を作るんだよ!
(綾)お待たせしました。
早速綾の勤めるカフェの女性たちに試してもらったところ…
これだったら私たちにも作れそうだもの。
そのための直線裁ちですから。
同じ着物で店に出なくて済みますね。
臭いの心配もなくなるよ。
これでどんどんお客がつくねえ!何だかね忘れてはいけない事だと思ったわ。
どんなに惨めでもおしゃれしたいって気持ちだけは。
うん。
どうかな?
(花山)これを表紙にしてみないか?驚くのは分かる。
女性誌の表紙なら普通きれいな女の人の写真かイラストだからね。
だが…。
いいですね花山さん。
私たちが目指す豊かな暮らしがここにあるような気がします。
ならば結構。
「この中のいくつかはすぐあなたの暮しに役立ちこの中のいくつかはすぐには役に立たないように見えてやがていつの日かあなたの暮し方を変えてしまうかもしれない。
そんなふうにいつでもこの一冊はあなたの暮しによりそって息づいている」。
それを前書きとして載せたいんだが。
いいですね。
それでは…。
雑誌のタイトルをこれにしてみませんか。
あなたの暮し…?はい。
社名も「あなたの暮し出版」というのはいかがでしょう。
常子と花山が作り上げた「あなたの暮し」は企業からの広告を一切載せず編集長の花山がこだわり抜いて全ての誌面を作り上げました。
そして次の企画は…
(チヨ)どんなお部屋になるのかしら。
(泰文)僅か六畳だ。
たかが知れている。
お待たせ致しました。
これが…あの部屋?
戦後の住宅難の中限られた住まいで快適に暮らすための企画でした
(チヨ)これはどういう…?変化できる家具です。
(チヨ)変化?ええ。
こうすればソファーとして座る事もできる。
こうすれば…。
平らにして布団を敷けばベッドにもなる。
この箱もお作りになったの?いえ果物箱を利用しました。
タダ同然で売られているものを利用したのでかなり安く抑えられます。
これなら雑誌の読者もまねできるかと。
(チヨ)ええ。
(シャッター音)何でしょう?いい匂いしますね。
(花山)ああパンを焼いているんだ。
小麦粉があっても家にパン焼き器や天火がなくては焼けない。
だから代わりに焼いて商売にしているんだ。
へえ〜。
そうか…。
小麦粉を使った新しい料理だ。
次号の特集だよ!ハハハハハ!
次の企画はまだまだ配給に頼る事の多い「食」
今世の中にある雑誌ではどれも料理の作り方は文章だけで表現されている。
しかしそれでは限界がある。
そこで必要となるのが…。
写真ですか?最初と最後の写真があれば調理の変化が見えますね。
フフフ写真は2枚では足りない。
何枚も使って調理工程をそのつど見せるんだ。
つまり料理の分解写真だ!
数日後写真入りの記事は出来上がり早速試作が行われました
かき混ぜた小麦粉の固さってこれぐらいかな。
泡立て器を持ち上げてみて下さい。
あっこの写真みたいになるまで粉を足すみたいです。
じゃあもう少し足した方がよさそうだね。
はい。
どうですか?うんうん。
おいしい。
こうして衣食住を中心に企画を組んだ「あなたの暮し」は主婦の強い味方として戦後の女性たちに受け入れられていきました
創刊から3年後
平塚らいてう先生にお願いするのはいかがでしょうか。
(花山)確かに平塚らいてうの原稿を掲載できたら光栄な事だな。
ええ。
常子さん。
早速君が担当としてやってくれ。
うちで一番担当にふさわしいのは鞠子以外考えられません。
話しても無駄だよ。
受けられないんだから。
鞠子は常子の期待に応えるように必死で食い下がりようやく憧れの平塚らいてうに会う事になりました
どうか私たちの雑誌に寄稿して頂けないでしょうか?お願い致します!執筆致しますよ。
すばらしい!胡麻のお汁粉という題材がいい。
読者の求めているものをよく理解しておられる。
平塚らいてうにこの原稿を書かせた事もすばらしいじゃないか。
よくやった!ありがとうございます!
こうして大きな仕事をやり遂げた鞠子は一つの決断をする事になります
(宗吉)乾杯!
(一同)乾杯!
(拍手)きっと水田さんはこれから誰よりも幸せになる事でしょう。
鞠子をお嫁さんにもらってよかったなと心から思える事が数え切れないほどあるはずです。
だからお願いです。
鞠子を…。
私の大事な妹を幸せにしてやって下さい。
お願いします!
(拍手)ありがとう。
とと姉。
好景気に沸く昭和30年代「あなたの暮し」を代表する企画が誕生。
その企画は本格的に到来した大量消費社会を前に製品を消費者の立場で検証するものでした
試験をしましょう。
「あなたの暮し」で商品の試験をするの。
商品を試験?物が出回ってきた時代だけどその反面あのミシンのような粗悪品もたくさんあります。
そんな粗悪品を買わされる消費者のためにもいろいろな商品を実験してその商品のいいところと悪いところを伝えてはどうかと思うんです。
(水田)そうか…そうですよね。
いろいろありましたけどあの一件以降広告を載せずにやってきましたもんね。
ええ。
花山さんこの商品試験はこれからの「あなたの暮し」が読者に提供すべき大切な情報だと思うんです。
洪水のようだと思わないか?
(松永)はい?
(花山)好景気で物があふれ出した世の中がだよ。
大量生産された商品はまるで洪水のように私たちに襲いかかってくる。
しかし全ての商品が幸せを運んでくれはしない。
あのミシンのように。
だからこそこのアイデアはすばらしい!
(花山)やるからには常子さんの言うとおりただの商品紹介ではなく世間に対し「危ないものはこれだ」と教えるものにしよう!はい!全て実名を出し問題のある商品はどこが危険なのかを読者に届けよう!
(一同)はい!せ〜の…。
(一同)いちにいちに…。
いろいろな商品試験が同時進行で行われていきます
その一方で常子たちはさまざまな家庭を回って台所の取材を進めていました
・はいはいはいはい。
よいしょ。
お休みの日にすみません。
私「あなたの暮し」という…。
星野さん?常子さん?今日星野さんにお会いしました。
星野さん?星野さん!?私も驚きました。
偶然取材に伺ったお宅が星野さんのおうちだったんです。
15年ぶりにお会いした星野さんは少し痩せられたようにも見えましたがお元気そうでした。
ご結婚されてお子さんも2人いて。
(君子)そう…。
もしかしたら戦争で…と思っていたので今ああして幸せそうな星野さんを見る事ができてただただホッとしました。
花山さん。
すばらしいです。
ならば結構。
ただいくつかのメーカーを名指しでこれまで以上に辛辣に批判していますが本当にこのまま掲載しても?それでこそ商品試験の意味がある。
そのまま出してくれ。
分かりました。
失礼します。
厳しい批評を実名入りで掲載した最新号は発売されました。
すると…
何の恨みがあってこんな事をするんだよ!責任者を出せって言ってんだよ!落ち着いて下さい。
責任者だよ!責任者は私ですが。
花山さん。
あんたが社長か?いえ私が…。
失礼ですがどちら様でしょう?ちとせ製作所のもんだ。
あんたらがこの雑誌でさんざんけなした粗悪なトースターとやらを作ってる会社だよ。
あんたらのおかげで売り上げガタ落ちだ。
責任取れよ責任を!
(花山)我々は公平公正な立場で試験しそれを偽りなく発表している。
うちはな大手みたいな開発費用はかけられねえけども安い部品でコストを落とすしかねえだろ。
予算がいくらだか知らんが低予算だから粗悪品でもしかたないという道理がどこにある?てめえこの…!やめて下さい!落ち着いて!
(田中)離せ!電化製品の素人に何が分かる。
本屋がほざくな!青葉がホットケーキをですか?そうなんです。
自分でも焼いてみたいから作り方を教えてほしいって。
それでうまく出来たんですか?ええとっても。
形もきれいに円く出来ましたし味もバッチリで。
大樹君なんて「おいしいおいしい」ってペロッと2枚も食べちゃって。
アハハ。
私も今度青葉ちゃんにコツを教わりたいくらいです。
ええ。
どうかされました?お仕事で何かありましたか?えっ?僕でよければおっしゃって下さい。
トースターの商品試験である会社の商品が粗悪品だと記事を出したんです。
もちろん公正に試験した結果です。
でもその記事のせいでその会社が苦しい状況になっており…。
すみません。
お仕事で疲れてらっしゃるのにこんな話…。
確かに商品試験で粗悪品だと書かれた会社の人たちは厳しい状況に置かれるかもしれません。
でもそれによってよいものを作ってくれるようになるのだとしたらそれは…必要な事なんじゃないでしょうか。
そうですね。
星野さんありがとうございます。
フフフ…私の気持ちがかすんでいるといつもまっすぐに光をさしてくれた。
星野さんは昔からそうでした。
そうですかね…。
はい。
星野の言葉に勇気づけられた常子は…
ただいま帰りました。
そうか。
「ちとせ」が新しい商品をね…。
はい。
約束して下さいました。
あんたの言う事も一理あるかもしれねえな。
よし作ってやるよ。
期待してます。
やっと答えが出せたようだな。
商品試験を続けるべきかどうか揺らいでいただろう。
すみません。
もう迷いません。
(花山)商品試験は「あなたの暮し」の看板企画として末永く続けていくべきだ。
そのために君は社員が毎日幸せに働いているかどうかをいつも気にかけている番人になれ。
そして社員が仕事の事で外部と面倒な事になったらまずは君が出ていって謝れ。
謝るという事は会社の代表として一番大きな仕事だ。
はい。
私は私のやり方で戦う。
はい。

(一同)青葉お誕生日おめでとう。
(青葉)ありがとう。
あっ!もう一本!逃げろ逃げろ。
大樹捕まえた〜。
私何か忘れ物でもしました?いえ。
僕は…。
もう常子さんには会わない方がいいと思っていました。
僕には妻への後ろめたさがあって…。
でも…。
子どもたちにはそんなの関係ないようです。
とても常子さんの事を好いている。
そして…。
それは僕もです。
もっと会えませんか?私も…星野さんのご迷惑になるのではないかと思っていました。
でも大樹君や青葉ちゃんともっと一緒にいたい。
星野さんとも一緒にいたい。
でも星野さんは亡くなった奥様の事を愛してらっしゃるだろうからご迷惑なんじゃないかなって思ってだから…。

(酒井)「あなたの暮し」の次の商品試験の内容が分かりました。
(村山)どうやら電気釜のようです。
(赤羽根)電気釜?
(村山)電気釜はアイロン洗濯機と並ぶ我が社の主力製品です。
再び粗悪品として記事を出されてしまうと大きな損失を生む…。
(赤羽根)そういう事はさせなければいいだろう。
そういう記事は書かせないようにしろ。
何の用だ?何度泣きつかれても君たちの要求を受け入れる事はできんぞ。
(村山)承知しております。
(村山)ほんの心付けです。
バカにするのもいい加減にして下さい!あなた方はいい商品を作ろうという生産者としての矜持はないんですか?商品試験はまだ終わっていませんが今のところあなた方の製品はとても褒められたものではありません。
粗悪品を売ってお金で評価を操作しようとするなんて恥ずかしくないんですか!いいでしょう。
お言葉に従い帰ります。
ただ…拒んだ事をきっと後悔する事になりますよ。
次の休日
では…頂きます。
(一同)頂きます。
(ガラスが割れる音)何なの?石?
(扇田)うちは風呂場の窓だ。
(本木)うちは台所や。
(木立)うちもです。
(松永)玄関の窓です。
(緑)うちは庭から部屋に投げ込んできて…。
(島倉)少しずれてたら母に当たるところでした。
(水田)子どもがけがしなかっただけよかったですけど…。
(寿美子)どうする事もできないんでしょうか…。
石を投げ込んできているのがアカバネだという証拠がない以上は…。
・突然お邪魔します。
下でお声がけしたんですがどなたもいらっしゃらなくて。
あっ!アカバネ電器製造の赤羽根と申します。
先日うちの村山と酒井が大変失礼をしたようだったのでおわびに伺ったという次第でございます。
ところでどうかしたんですか?立ち聞きをするつもりはなかったんですが石を投げられただの聞こえましたもので。
ええ。
社員たちの家に石を投げ込まれる嫌がらせが立て続けに起こっておりまして。
それは物騒ですなあ。
全くです。
同感です。
(赤羽根)しかしそうなったのもあなた方のせいでもあるんじゃないですか?あれだけほかの会社の製品にケチをつけてりゃ恨みを買って当然でしょう。
そんな怖い顔しないで下さい。
私は一般論を言ったまでですよ。
しかしよくもまあ人が汗水垂らして作った製品をあんなひどい表現で…。
我々が真剣に試験をした結果があの記事だ。
責任を持ってペンをとっている。
ペン…。
そうですか…。
へえ〜。
(どよめき)赤羽根社長。
はいはい。
私たちは屈しませんから。
何をされようが私は社員たちの事を守ってみせます。
どんな卑劣な行為にもとことん戦っていくつもりです。
常子たちは脅しに屈せず使用する主婦の立場に立って公平な商品試験を心がけました
(花山の声)「特別おいしいごはんが炊ける訳ではなくごはんが炊けるまでの時間も電気代も余分にかかる。
もちろん電気釜そのものも安くない。
それでも炊いている間は目を離せるので少しだけ家事から解放される。
これが今の電気釜に対する正しい説明ではないでしょうか。
特にアカバネは蓋やつまみが熱くなる危険のある事も明記しておらず使う人の立場を真剣に考えているとはとても言えません」。
・ごめんください。
お忙しいところ突然すみません。
大東京新聞の国実と申します。
取材に関してはまた日を改めてもらおうか。
今はそんな事をしている時間はない。
ハハ!さすがは天下のあなたの暮し出版様だな。
新聞の取材など受けてる暇はないっていう事ですか。
そんな事は言っておりません。
最近は商品試験とやらで消費者の支持を得てらっしゃるようじゃないですか。
ねえ。
自分たちだけで調査を行い商品のよしあしを記事にする。
消費者の味方として我々は実に頭が下がる思いです。
しかしもう一方ではそのような閉鎖的な試験に公平性はあるのかという疑問を持つ者もいるんです。
疑ってらっしゃるんですか?あなたたちの書いた記事でメーカーは売り上げが左右され倒産の危機に陥るとこだってある。
今日は取材は受けんと言ってるのが分からんのか?仕事の邪魔だ。
帰りたまえ。
ああそうですか。
ではまたの日に。
ちょっと森田屋さんに行ってきます。
あら日曜日なのにお仕事?いえあの…星野さんにお食事に誘われたもので。
あらそう。
ねえその口紅新しいのじゃない?うん…前の使い切っちゃったから。
とってもお似合いよ。
そうかしら。
常子さん今日は…お話があってお呼びしたんです。
お話って…。
僕は…名古屋に転勤する事になりました。
正直に言いますと辞令が出てからは気持ちの整理ができずにどうしようかと悩んでいました。
辞令の撤回を頼もうかとも何度も考えました。
でも…。
心を決めたのは大樹の事でした。
同級生の女の子からやけどの痕を気持ち悪いと言われたそうです。
毎朝自分が用意した半ズボンではなく長ズボンをはいているのに僕は全く気付いてやれなかったんです。
その間も大樹は誰にも言えずに自分一人で悲しんで苦しんで悩んで…。
何度も僕に向けて合図を送っているはずなのに僕は忙しさのあまりそれに気付いてやれなかった。
親としての責任を果たしていなかったんです。
親子の絆とは自然に出来上がるものではなく作り上げていくものなんだと実感しました。
そう思うと子どもたちとの時間を増やすためには名古屋へ行くのが一番なんだと決断したんです。
常子さんの事はとても大切です。
一緒になる事ができたらどれだけすばらしい人生が送れるだろうかとそう思いましたが…。
親の責任はとても重いものだと感じています。
星野さんのお気持ちは痛いほど分かります。
親子の絆を作り上げる事はとても大切な事だと思います。
お子さんの事を真剣に考える人だからこそ私は星野さんの事を好きになったんです。
常子さん。
ありがとう。
星野さんと大樹君と青葉ちゃんと過ごした時間は掛けがえのないものでした。
幸せでした。
では。
では。
元気でね。
(青葉)じゃあね。
「雑誌『あなたの暮し』に迫る。
商品試験のやり方に疑問があるという声は47.2%という結果だった」。
常子と花山は商品試験への疑いを晴らすため大東京新聞の提案による公開試験を行う事にしました
(国実)これより電気洗濯機の公開試験を始めたいと思います。
あなたの暮し出版さんは洗浄率についてどのような試験を行ってますか?え〜私たちは3種類の洗剤を使用し汚染布だけではなく家庭での洗濯物つまりシャツや靴下シーツなどを洗って基本的には目視で汚れ落ちを判断しています。
目視ですか。
(笑い声)おおむね時間をかければ汚れは落ちましたので落第点のものは1種もありませんでした。
しかし…。
洗濯したシャツを脱水するのにローラーを使いますよね。
あ〜またなった。
(村山)また?このようにボタンつきのシャツを絞ろうとするとかなりの確率で途中で引っ掛かってしまいます。
そして無理やり絞ろうとすると…。
(物が割れる音)ボタンを見て下さい。
全てのシャツで割れてますね。
ボタンのついていない試験用の布ではこのような結果は出なかったと思います。
これではたとえ絞り率がSJI規定の40%以上であったとしても誰も使いたいとは思わないのではないでしょうか。
これは私たちが屋外でテストしたアカバネの洗濯機です。
このタイマーの操作つまみはプラスチックで出来ています。
質の悪い安物のプラスチックは日光の紫外線によって少しずつ溶け劣化します。
ほらここ。
つまみが割れてタイマーの操作ができなくなればいくら耐久テストに合格していても元も子もありません。
ほかにもホースでの給水の問題があります。
中でもひどかったのはアカバネのもので…。
ほかのメーカーは10センチ近く余裕がありましたがアカバネのものは水位が3センチ超えると回した時に水があふれ出してしまいました。
給水時にきちんと見ていればいいだけの話だ。
アカバネさん。
3万円ものお金を出して洗濯機を購入した主婦の立場に立って発言なさってますか?何だと?主婦の皆さんは常に働いています。
子どもが転んだ事に気を取られたり台所でお湯を沸かしていたり。
少し気を取られている間に水があふれ出してしまうような洗濯機はそれ自体問題なのではないでしょうか。
そのとおりだよ。
私たちは目まぐるしく働いてるんだ。
ひとところにいる訳じゃないんだよ!そうですよ!そうですよ!こんなもんは認められん!あんたらがやってるのは結局あら探しだ。
うちが不利な立場になるよう無理やりやってるだけだ!
(国実)そうでしょうか。
あなたの暮し出版の試験に虚偽はなくむしろ使用者の目線に立ち行われた公正な結果だと証明された気がするんですが?そうよ!そうだ!そのとおりだ!そうだ!赤羽根さん。
アカバネ電器の洗濯機のキャッチフレーズは何ですか?え〜…。
「洗濯機が主婦を解放する」。
確かに洗濯機は主婦の方々を重労働から解放する夢の機械です。
だからこそメーカーの方々には志を持って作って頂きたいと思います。
(赤羽根)志を持って…?志を持ってなきゃこの仕事は務まらんよ!我々は1円でも安く商品を消費者のもとへ届ける事を社のモットーとして…。
(花山)いくら安くとも不良品を売りつけられてはたまったもんじゃないよ赤羽根さん。
何が悪い。
安いものを作って何が悪い。
欲しいものを安く買いたいと願うのは当たり前の事だろうが!え〜!?あれこれ欲しいと思うのは消費者だ。
どれを買うか決めるのも消費者だ。
我々はお望みどおり商品を提供してやってるんだ。
安くて何が悪い。
安いものにはそれなりに理由があってそれでも欲しがる人間がいる。
あとは買った人間の責任だろう!安かろうがメーカーが絶対に守らねばならないのは消費者の安全だ!弱小出版社ごときが偉そうに…。
今は物を買えば幸せになれる世の中なんだ。
国民は貧しさと戦争を耐え抜いた。
金を得て豊かになれば皆幸せになれる世の中なんだ!どこが悪い。
私だけじゃない。
今のこの世の中そう思っている人間ばかりだ!そうやって全国民が幸せになろうと躍起になっている。
それをなぜお前らが邪魔するんだ!お金を得て豊かになりたいと私も思います。
でも…。
そのためにささやかな幸せを犠牲にしたくないだけなんです。
ささやかな幸せだ?私たちは読者の方々からたくさんのお葉書を頂きます。
その中の一つに家に冷蔵庫が来て大喜びする子どもの事が書いてありました。
その子は家でいつでも冷たいジュースが飲めると前の晩から眠れなかったそうで。
だけどその冷蔵庫が不良品で壊れたとしたらそのせいでけがをしたとしたら高いお金を出して冷蔵庫を手に入れたのにそのせいでささやかな幸せが奪われてしまうんです。
一つ赤羽根さんに確認したい事がある。
は?確認だ?アカバネの洗濯機を調べ直していた中で発覚したんですがね…。
中に使われているネジです。
アカバネは鉄にメッキを施したネジを使用する不正を行っていたのです
答えろ村山。
なぜこんなものが使われてるんだ!しかたないでしょう!あの低予算で真鍮のネジなんか使える訳ないじゃないですか!
(国実)ネジの偽装は記事にさせて頂きますから!勝手にしろ。
今日の事はありのまま記事にさせて頂きます。
はい。
私はねなんとか戦後を終わらせようと奮闘してる人たちに「あなたの暮し」が水をさしてるように思えてたんだ。
だがあなたたちの信念も少しは理解できる気がします。
そうおっしゃって頂けると…。
大東京新聞はありのままの結果を報じ「あなたの暮し」は世間の信用を取り戻し売り上げも再び伸びていきました。
一方アカバネ電器製造は社長の赤羽根が謝罪会見を開き安全な電化製品を開発するため社内の体制を見直すと発表したのです
(一同)5678…。
昭和39年常子は念願の大きな家を新しく建てました。
小橋家は常子と君子鞠子の一家と美子の一家総勢9人で一緒に暮らすようになっていました
我々男は肩を寄せ合って生きていこう!みんなにぎやかで毎日楽しいわ。
そうですね。
常子がこの家を建ててくれたおかげよ。
フフフフフ。
ところが…
母はもう長くないという事ですか。
正確には申し上げられませんがお母様もご家族の方にも悔いのないように一日一日を大切に過ごして頂いた方がいいかと存じます。
君子の体はがんに侵されていました
小さな幸せっていうのかしら…。
その積み重ねで今の幸せがあるのね。
みんな。
本当にありがとう。
あなたたちは私の自慢の娘よ。

君子は73年の生涯を閉じたのです
時は変わって昭和48年
では今から調理を始めます。
受験生の中には鞠子の娘たまきの姿もありました
はいまずねこの肉切りますね。
肉はですね繊維ね今日絲でしょ。
薄切りにしていきます。
同じ幅にこれ切りますね。
繊維を断ち切るように。
はい。
ここまで。
では皆さん今見た青椒肉絲の作り方を伝える記事を書いて下さい。
こうして少しずつ世代交代が行われていったのです
そして…
(花山の声)その戦争は昭和十六年に始まり昭和二十年に終わりました。
それは言語に絶する暮しでした。
あの忌わしくて虚しかった戦争の頃の「暮し」の記録を私たちは残したいのです。
あの頃まだ生まれていなかった人たちに戦争を知ってもらいたくて貧しい一冊を残したいのです。
もう二度と戦争をしない世の中にしていくために。
もう二度とだまされないように。
ペンをとり私たちの元へお届けください。
心筋梗塞で倒れた花山が訴えかけた戦争特集号が出版されました。
そこには花山の思いが込められていました
(玉音放送)「堪え難きを堪え忍び難きを忍び以て万世の為に…」。
(本木)みんな手際よくやで。
(一同)はい。
(扇田)よいしょ。
はい増刷分。
(水田)常子さん。
はい。
近郊の書店100軒回ってきましたが全てで売り切れです。
そうですか。
では早速増刷してもらいましょう。
(たまき)常子さん。
ん?今読者の方から「これこそ後世に残したい雑誌だ」なんてお声が。
お〜。
それこそ花山さんが望んだ事よね。
「我々の雑誌は使い捨てにしたくない」ってずっとおっしゃってらしたから。
そうね。
残りの原稿は来週の中頃にまたお持ちできると思います。
よろしいですか?ああ。
では来週またお邪魔しますね。
常子さん。
はい。
すまんがもう一つ筆記を頼みたい。
分かりました。
何の原稿ですか?あとがきをね…。
ああ…。
(ボタンを押す音)では。
ハァ…。
書き出しはそうだな…。
今まで「あなたの暮し」をご愛読下さった皆様へ。
私が死んだらねその時の号のあとがきに載せてほしいんだよ。
まだお元気なのに何をおっしゃってるんですか。
もうめったな事言わないで下さい。
書いてくれないか?常子さんにしか頼めない事だ。
分かりました。
長い事「あなたの暮し」をご愛読下さりありがとうございます。
昭和22年の創刊以来27年たって部数が100万になりました。
これは皆様が一冊一冊を買ってくれたからです。
創刊当初から本当によい暮らしを作るために私たちがこの雑誌で掲げてきたのは庶民の旗です。
私たちの暮らしを大事にする一つ一つは力が弱いかもしれないぼろ布はぎれをつなぎ合わせた暮らしの旗です。
ハァ…。
世界で初めての庶民の旗。
それはどんな大きな力にも負けません。
戦争にだって負けやしません。
そんな旗をあげ続けられたのも一冊一冊を買って下さった読者の皆様のおかげです。
ありがとうございました。

(ボタンを押す音)あぁ…。
さあ…もう帰りなさい。
花山さん。
もし花山さんがいなくなったら…私どうしたらいいんですか…。
(花山)大丈夫だよ。
悩んだ時は君の肩に語りかけろ。
「おい花山」。
「どうしたもんじゃろのぉ」と。
フフフ。
(花山)ハハ…。
次号の表紙だ。
すてきな人ですね。
常子さん。
どうもありがとう。
嫌だわ花山さん。
また来ますね。

(戸を閉める音)
これが常子と花山の最後の別れとなりました
(一同)お〜!静かに静かに!聞こえないだろ。
「皆様こんにちは。
『時代のスケッチ』の時間です。
司会の沢静子でございます。
さて今日は…」。
日本出版文化賞を受賞なさいましたあなたの暮し出版社長でいらっしゃる小橋常子さんにおいで頂いております。
いろいろお話を伺っていきたいと存じます。
どうぞよろしくお願い致します。
あ…はい。
とと姉緊張し過ぎ…。
ねえ…ととかか。
花山も私たちも戦争で奪われた豊かな暮らしを取り戻しその暮らしの役に立つ生活の知恵を提案していければと。
そしてそれが暮らしの中心にいる女の人たちの役に立つ雑誌になっていければと。
今も昔もただただその事だけを念頭に置いてやってきております。
そうそう水田さん昨日言っていた…。
あの…。
やあ常子。
とと?どうかしましたか?いえ…。
少し驚いてしまって…。
そうですよね。
突然こんなふうに現れては驚くのも無理はありません。
鞠子も美子も立派になりましたね。
はい。
よくぞここまで…。
いろんな方と出会って助けて頂きました。
とと?僕が常子に父親代わりを託したために随分と苦労させてしまったね。
すまなかった。
そんな事はありません。
とと。
私ととの代わりだから「とと姉ちゃん」って呼ばれてるんです。
とと姉ちゃん…。
私は「とと姉ちゃん」でいられて幸せです。
・「今日は贈ろう」・「涙色の花束を君に」
(愛子)鷹子さん幸せになってよかったですよね。
2016/12/31(土) 10:20〜11:48
NHK総合1・神戸
連続テレビ小説「とと姉ちゃん」総集編(後編)[解][字]

連続テレビ小説「とと姉ちゃん」総集編の後編。11週から26週までを網羅。常子が戦中の経験を経て出版社を起こし、戦後の日本で奮闘する常子一家の姿を描く。

詳細情報
番組内容
連続テレビ小説「とと姉ちゃん」総集編の後編。11週から26週間までを網羅。常子が戦中の経験を経て出版社を起こし、戦後の日本で奮闘する一家の姿を描く。魂のパートナー花山伊佐次との出会いと別れを主軸に描く。
出演者
【出演】高畑充希,木村多江,相楽樹,杉咲花,向井理,ピエール瀧,平岩紙,川栄李奈,浜野謙太,佐藤仁美,坂口健太郎,上杉柊平,阿部純子,石丸幹二,野間口徹,矢野聖人,伊藤淳史,奥貫薫,古田新太ほか
原作・脚本
【作】西田征史
音楽
【音楽】遠藤浩二