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セリフ書き起こし 正月時代劇 陽炎の辻 完結編〜居眠り磐音 江戸双紙〜 2017.01.02

 

 

故郷を追われた剣豪坂崎磐音を温かく迎えてくれたのは江戸の人々だった。
(金兵衛)お〜どうでぃ皆の衆。
にっちもさっちもならねえご時世だけどよそんな時こそ景気よく餅でもついて正月を迎えるってのが江戸っ子の心意気ってもんだ。
(磯次)よう〜さすが差配だどてらの金兵衛だ。
よし俺にもつかしてくれ。
(徳三)そんなら俺が先。
俺が。
俺俺。
(空也)じじ上!
(金兵衛)お〜!空也来たか〜。
よく来たなあ。
待ってたんだぞ。

 

 

 


(おいち)あれ?先生は一緒じゃないのかい?おこんちゃん。
(おこん)いるわよ。
ほら。
(磐音)これはご一同おそろいで。
今年も世話になりました。
来年もまたよろしくお願い申し上げる。
餅屋さん呼ぶなんておごったじゃないお父っつぁん。
あたぼうよ。
銭はこういう時に使うもんなんだよ。
なあ婿殿。
しゅうと殿にはいつも頭が下がります。
おいおい。
互いに褒め合ったってつまんねえだろうがよ。
先生こっち来て餅食べようよ。
空也馳走になろう。
はい父上。
磐音は町娘のおこんと所帯を持ち息子空也の成長を見守る父親となっていた。
今は小さな道場のあるじだがその腕めっぽう強く人呼んで居眠り磐音。
そしてこの青年…八代将軍吉宗の孫であり十代将軍の後継者と目された事もあったが…。
それを退けたのがこの老中田沼意次である。
(意知)父上。
松平定信が坂崎磐音の道場へ入ったと。
(意次)騒ぐな意知。
されど定信は殿様のお命を狙っておるのではありませぬか。
(意次)そのような事承知しておる。
にしても…。
坂崎磐音めどうするつもりか。
意次は当時天下にその名をとどろかせた老中であり息子意知と2人で江戸城中を掌握していた。
次!
(定信)ひとつ手合わせ願いたい。
磐音と意次いわく因縁のあるこの2人に若き定信が加わり今まさに最後の死闘が始まろうとしている。
定信は剣に自信があった。
が…。
いかがなされました?参る!うわ〜!ここまででござる。
このような事初めてだ。
剣が届かぬとは。
今までは届いておりましたか。
当たり前じゃ。
それはあなた様のご身分を慮ったか御身を案じたかどちらにせよ相手があなた様の剣に当たりに行ったからでございます。
私が打ったのではなく相手が打たれたと申すか。
はい。
私の剣は殿様剣法だと言うのだな。
はい。
あなた様の剣には何やら焦りが見受けられます。
あまりにもせいておられる。
坂崎磐音いや坂崎先生。
この定信そなたを生涯の師としたい。
お願いできましょうか。
私は強くなりたいのです。
いや強くあらねばならないのです。
お願いします。
是非ともお弟子に。
お手をお上げ下さい。
直心影流坂崎道場はどなたにも門戸を開いております。
この者たちと共に稽古にお励みなさればよい。
ありがたい。
一同よろしく頼む。
(一同)はっ!
(柳次郎)陸奥白河の!?
(武左衛門)定信公が!?昔よりの友である品川柳次郎殿と竹村武左衛門殿です。
それと…。
こ…こんでございます。
あの…こちらから息子の空也と武左衛門さんの娘で下働きをしてくれている早苗と弟の修太郎にございます。
お内儀。
はっ…はい。
あるじ殿に弟子入りを許された。
これから世話になる。
で…弟子?でしたら私の弟弟子ですね。
空也!こちらこそよろしくお願い致します。
では先輩今日のところはこれにて。
はい!はあ〜驚いた〜。
定信公が今日よりはお弟子ですか。
どうやらそのようです。
そうなるとこれからは左うちわだのう。
よかったなおこんさん。
勝手向きがよくなる。
あのお方から格別な指南料を頂く訳にはまいりません。
何故だ。
相手は金を持っておるのだぞ。
しこたまふんだくればよいではないか。
父上!先生は父上ではありません。
ふん!しかしまあ定信公が弟子になったと分かればわんさかお弟子も増えるか。
(柳次郎)はあ〜。
比べて私は相も変わらず内職に追われる貧乏御家人です。
何を言う。
それならこのわしはどうなる。
木刀しか差せぬ中間稼業だ。
そうなったのは父上が酒にだらしなかったからです!そうそう。
そういう事です。
それで今日は?修太郎さんを稽古に通わせたいのだそうです。
早苗が世話になり修太郎までとは虫がよすぎるかとは思うが…。
けどまあ頼む坂崎さん。
こいつを一人前の男にしてやってくれ。
修太郎殿今から空也と共に竹刀を振ってみますか。
(修太郎)はい。
よろしくお願いします。
やあ!やあ!やあ!やあ!もう少し腕を高く。
(武左衛門)指南料の事だが…おこんさん。
何言ってんですか竹村さんとうちの仲で。
旦那は言うだけですよおこんさん。
やあ!やあ!この男佐野善左衛門。
田沼意次に言い尽くせぬ恨みを抱えている。
(意次)今日は是非とも頼みがあってな。
江戸600軒の両替商をまとめる今津屋に頼むのが一番だと思うての。
はい。
この由蔵今津屋元締番頭としてあるじに代わってお話を伺います。
話とはほかでもない金じゃ。
金…。
(意次)進めておった印旛沼の干拓が去年の浅間山の噴火以来滞りがちになっておる。
(由蔵)はい。
知っておろうが印旛沼に新田が生まれれば4万石にはなる。
この先手賀沼の干拓蝦夷地の開拓へと手を広げる手はずも整った。
特に蝦夷は広い。
石高もばく大なものになるであろう。
だがそのためには金がかかるという訳だ。
干拓した地元の民と金を出すお主たち商人で利益は半々。
幕府にも金が入る。
ハハッ悪い話ではなかろう。
全てもくろみどおりに事が運べば…という話でございますな。
力にはなれぬと申すか由蔵。
私の一存では…はい。
(意次)商人とはそういうものよ。
もうけが出るか出ないかそれだけが肝心なのじゃ。
のう由蔵。
はい。
それはそうと小梅村の坂崎道場に松平定信が通うておる事存じておるか。
定信公が?はて何の事でございましょう。
坂崎磐音の後ろ盾は専ら今津屋であると世間のうわさじゃ。
あの道場も元は今津屋の寮であったはず。
坂崎様が前の道場を理不尽にもどなたかに潰されたと聞きましたものですからあ〜それならばと。
はい。
ああそうか?わしはてっきり天罰が下ったと聞いておったがのう。
何があったのかのう。
存じておるか意知。

(善左衛門)田沼様〜どちらでござるか!田沼様!例の家系図を返して下され。
それでござる!この家系図はそれがしの家のものにございますぞ!返して下され。
返して下され。
返して下され家系図を!返して下され〜!田沼様!田沼様〜!意知様!意知様系図をご返却下され〜!向こうへ。
数年前時の権力者意次と一線を画していたのが古くから将軍家と関わりを持つ直心影流佐々木道場であった。
磐音は道場主佐々木玲圓に跡継ぎとして見込まれ将軍の嫡男家基の剣術指南役兼警護役を務めていたがその家基が謎の死を遂げた。
そして家基の死に関わったとうわさされたのが意次であった。
真実に迫る磐音を恐れたのか意次の手により磐音の佐々木道場は潰された。
やあ!やあ!やあ!いかがなされましたか。
先生。
私は強くなっておりますか?焦る事はないと申したはずです。
ですが私は強くなりたいのです。
強くなります。
何?父上に稽古をつけてもらえば必ず!そうだな先輩。
はい。
(由蔵)何をおっしゃいますか。
(笑い声)何か面白いお話でもありましたか。
いやいや。
おこん様と坂崎様のなれ初めのお話でございますよ。
おこん様。
はい。
品川さん。
坂崎さん実は…。
あ〜これは速水様。
あ〜元締さんも。
笹塚様までいらしたのですか。
(笹塚)うん?何だ。
おってはまずいのか品川柳次郎。
いえいやそのような事は。
例の定信公の事でちとよくない話が。
(由蔵)あっそれそれ!私も定信公が道場に通っているという話を聞きましてな。
それで今日はここへ伺ったのでございました。
(笹塚)まことか居眠り殿。
はい。
ですが元締殿はどこでその話を?え?神田橋御門内のさるお屋敷で。
神田橋御門内?という事はご老中の田沼意次様。
さようで。
いや〜話があると呼び出されましてな。
つまり…。
金の無心か。
(由蔵)さようでございます。
品川様そのよくない話というのはどこでお聞きに?私もその…同じ所で。
うん?品川さんは生計のために今金魚を育てておられるのです。
金魚?おおこれか。
端は問屋に卸していたのですがそのうち田沼様のお部屋様のおすな様が大層気に入って下さいまして今日も金魚を納めに伺ったのですが…。
品川とやらそなたの金魚は色といい形といいまずもって天下一品。
何事もその道では天下を目指さねばならぬもの。
御家人にしておくのは惜しい。
はっ。
(おすな)いかがなさいました意知様。
下がっておれ。
あの者ならよろしいのです。
大事なお話なれば。
では私はこれで。
よい。
次の部屋で待て。
(柳次郎)それで私隣の部屋で待っていたのですが。

(おすな)坂崎磐音を?このまま野放しにしておいてよいとは思えぬのです。
定信公も殿に対して恨み骨髄のはず。
定信と坂崎磐音過去ある者同士が結託して父上に盾つこうとしているのなら…。
思い知らせるとでもおっしゃりたいのですか。
田沼の家に刃向かえばどうなるか分からせる事肝要でしょう。
(速水)確かに定信公は田沼様を快く思っておられないとの専らの評判。
もしやとは思うが定信公がこの道場へ近づいたのは居眠り殿を味方につけるためでは?あのお方はそのような方ではありません。
(笹塚)あっこれは失礼した。
それで?坂崎さんは鈴木清兵衛という剣術家をご存じですか?有名な道場主ではないか。
門弟3,000人とかいわれておる。
(速水)鈴木道場には田沼様の息がかかっておる。
(柳次郎)そこの道場主鈴木清兵衛が坂崎さんを襲う手はずになったようです。
坂崎様ご油断なされますな。
はい。
どうかしたんですか?おこん様。
ううん。
空也は?そういえば先ほどから姿が見えませんけど。
空也?空也。
空也…。
磐音様!空也が…。
シッ。
あ…そろそろ夕げですか?もう〜心配させないで。
・頼もう!
(鈴木)坂崎磐音はおるか。
(利次郎)どなたですか。
(池内)引け!こわっぱども。
鈴木清兵衛と申す。
坂崎磐音にござる。
本日は何用でござろう。
(鈴木)剣術家としてそこもとの腕を試しに参った。
何者かに唆されましたか。
問答無用!池内!お〜!わっ。
うわっ!三田次郎左衛門参る!おおっ。
鈴木殿あなたと戦うのに門弟衆を幾人お引き受けすればよろしいか。
無礼な!真剣での勝負を所望する!父上!騒ぐな。
これで結構です。
やあっ!お強い。
え?父上はお強い。
その夜。
すまぬおこん。
どうやら田沼様とは縁を切る事ができぬようだ。
はい。
佐々木道場を潰された田沼様への遺恨いつか晴らしたいという磐音様のお気持ち察しておりました。
心配なさらないで下さいまし。
こんは磐音様と夫婦になった時からどんな事があろうと覚悟はできております。
すまぬ。
謝る事などございません。
ただ…。
必ず勝って下さいまし。
相分かった。
(定信)先生!いかがなされました?
(定信)鈴木道場は老中田沼の息がかかっております。
恐らく私が先生のもとに通っている事に気付き田沼が刺客を差し向けたのだと思います。
私のせいです。
私が軽々しく先生に近づいたせいでこのような…。
お待ち下さい。
実はそれがしにも田沼様とは因縁がございます。
存じてます。
弥助が調べてくれました。
弥助は幼き頃から私のそばについておりましたが元隠密。
さようでしたか。
先生が研鑽を究めた佐々木道場が家基様ご逝去の後田沼の手によって取り潰された事さぞや無念であった事と思います。
父が亡くなる前繰り返し聞かされた言葉があります。
よいか。
わしは病弱の兄家重に代わって将軍になるはずであった。
だがままならずこの田安の家を興した。
この田安の家から将軍を出すのがわしの夢だ。
その父の夢を継げるのはその方だ。
田安の家の者が将軍になる。
それがわしの夢だ。
蹴散らせ!邪魔をする者あらば蹴散らせ。
鬼になれ!忘るるな!父の夢を忘るるな。
ですが父の夢を叶える事なく私は田沼の手によって陸奥白河松平家に養子に出されたのです。
田沼は憎き男です。
陸奥白河の水は清く正しく美しくあなた様のご気性に合っているのでございましょうな。
この意次羨ましい限り。
アハハハ。
北の各地では今あちこちで餓死する者が出ております。
なのに田沼は何もせず金金金…何につけても金の力です。
賄賂が横行する田沼の政は悪です。
政は正しき心で行わなければなりません。
私は捨て石になる事いといませぬ。
まず田沼を葬り去らなければなりません。
だから強くなりたいと申されたか。
そうです。
ですがそれはあなた様がやる事ではありません。
それがしも田沼様を敵と思い詰め斬ろうとした事がございます。
しかし守る者ができた時その心を抑えるすべを覚えました。
憎き心を育てるのも人はやる気持ちを抑えるのも人。
お分かりか。
ですが…。
刀を抜くのは剣術家のなりわい。
人の上に立つ者は威風堂々刀を抜かずとも相手を威圧する王者の剣を身につけるべきかと。
王者の剣…。
剣の技を高めれば高めるほど人というものはつい刀を抜いて事の決着を図りたがるもの。
しかしそれは下の下。
真の達人は刀をさやに収めたまま勝ちを得るものです。
威風堂々たる王者の剣。
それがしと求めてみようではありませぬか。
まだまだ!もう一本!定信の剣の腕はみるみる上達していった。
そのころ…。
役立たずにも程がある。
坂崎磐音を倒せぬままようこの屋敷に顔を出せたものじゃ。
面目次第もございませぬ!そのような顔見たくもない。
腹を切れ!木挽町の道場はもうないものと思え。
そ…それだけはどうかご勘弁を!
(井上)鈴木清兵衛。
坂崎磐音を討ち果たすまでこの屋敷はおろか道場へも近づいてはならぬ。
よいな?下がれ下がれ!ははあ!いかがした意知大きな声を張り上げて。
父上。
坂崎磐音にたやすくやられるような道場は潰した方がよろしいでしょう。
坂崎磐音…。
そんな事でいちいち腹を立ててはなりませぬ。
それでは人の上には立てませぬぞ意知様。
私に任せておけばよいのです。
泥水なら先んじて私が飲みましょう。
あなたは田沼家の今後を背負って立たねばならぬのです。
それだけではない。
幕閣の井の中の蛙どもに代わってこの日本国を新たな道に歩ませる役目を負うべき男よ。
分かるな?承知しております。
お任せあれ。
意知様は殿様と違うて気が弱うございます。
はい上がる苦しさを知りませぬ。
なに心配はいらぬ。
世間のばかどもはわしが息子をかわいがるあまり幕閣に引き上げたと思うておるが意知は英邁さでは誰にも負けぬ。
意知の目はな海の外にある。
このままでは日本国が立ちいかなくなるのは必定。
そうならぬよう諸外国との取り引きを盛んにせねばならぬ。
そうしていつか日本国と外国が自由に行き来できるようになる事が意知の考えよ。
ばかどもにその事を分からせ田沼の家を引き継ぐまでわしが盾になり意知を守る。
佐野善左衛門から家系図を取り上げたのもそのためでございますね。
意知がどなたからも後ろ指さされぬよう田沼の家を作り上げるため。
成り上がりにはつらいところよ。
問題は定信に近づいた坂崎磐音。
たかだか町の剣術家。
取るに足りぬ。
(おすな)ですが殿様の目の上のこぶ。
私が殿様に成り代わりそのこぶを取ってさしあげましょう。
意知様のためにもこの私が。
(笑い声)やあ〜!やあ〜!やあ〜!稽古は?うるさい!この地にかつて佐々木道場があった。
磐音が田沼意次によって一敗地にまみれた場所である。
回想先生にお相手して頂くと心が洗われます。
(玲圓)剣にいささか乱れがあった。

(善左衛門)お待ち下され。
新番士佐野善左衛門でございます。
是非ともご老中にお話があってまかり越しました。
何だ?ご老中様例の家系図はいつご返却下さりますか?ふん。
またその話か。
(善左衛門)あの品をお貸ししたのはご老中様を信じての事。
それを…。
あの事は意知に任せておる。
意知様から昇進と加増の知らせは届いております。
ならばそれでよかろう。
ですがその約定いまだ成っておりませぬ。
よいか佐野。
何事にも根回しというのが肝要なのだ。
いくらわしとて横車を通すとなればそれなりに入り用なものもある。
賄賂ですか。
それなら既に意知様にお渡ししてある。
まだこれ以上むしり取るおつもりか!
(意次)黙らぬか。
黙れ!このわしに向かってなんという口のききようじゃ。
この佐野善左衛門ご老中とてこれ以上の恥辱許しませぬぞ!しれ者めが!老中に刃向かうとは不届き千万。
お主斬り捨てられても文句は言えぬぞ。
何者!坂崎磐音と申す。
たった一人に大勢で卑怯ではありませんか。
坂崎…。
構わぬ。
斬り捨てよ!
(意次)そこまでじゃ!そうか。
お主が坂崎磐音か。
佐野善左衛門の用心棒にでも成り果てたか。
佐々木道場の跡継ぎといわれた男が嘆かわしいものじゃ。
何の事やら分かりませんが。
確かにいい腕をしておるがその腕生かしたければもそっと利口になる事じゃ。
明日からわしの屋敷の玄関に並ぶといい。
利口者たちであふれ返っておるぞ。
それがし剣術一筋で結構です。
ほう。
上様がお主の話をしておったと言うてもか。
上様が?亡き家基様の剣術指南であったお主の事をひどく憂えてのう。
小梅村の道場を引き立てたいとな。
うそじゃ。
アッハハハ!愚か者。
ハハハハハハ!アハハハハハ!そのような事ある訳なかろうが。
(笑い声)おうわしを斬るか。
ならば斬れ。
お主わしに遺恨があったはず。
どうした。
斬らぬか。
今ここであなた様を斬るのは私怨。
それがし血にまみれた生き方をしてきましたが私怨で刀を抜いた事はありません。
ほざけ。
後でほえ面かいても知らぬぞ。
坂崎磐音。
かたじけない。
それがしは…。
その翌日は雨だった。
(善左衛門)我が佐野家は下野国都賀郡の名家。
同じ下野国の出なれど足軽の家系である田沼は成り上がりである事を隠すために我が家系を利用しようと我が手から系図を奪い取ったのです。
(善左衛門)今までに何度も系図返却を申し出たのだがまるで返す気配もない。
過日など口封じのためか御小納戸頭取と加増1,500石などと言われたのですがなしのつぶて。
田沼親子めこの佐野善左衛門を愚弄するばかりで…。
それで?坂崎殿。
この佐野に力を貸してはくれませぬか。
あなたも老中とは浅からぬ因縁があるのでしょう。
この佐野善左衛門も田沼には恨み骨髄。
共に立ち上がりませぬか。
このとおり平にお願いする。
これを見て下され。
出世を餌に田沼親子には金をむしり取られ刀まで売り払ったのでござる。
後生でござる坂崎殿!何故黙っておる!それでも剣術家か。
剣を持って老中田沼をたたき斬るぐらいの気構えを何故持たぬ!口を慎め!何!?あなた様は…。
私の事を存じておるか。
ならば話は早い。
坂崎殿は我が師じゃ。
愚弄する事はまかりならん。
その師が先夜田沼によって家臣の前で笑い物にされたのでござるぞ。
そうでござろう坂崎殿。
だとしたら許せん。
(口々に)先生!静まれ!父がよく言っておりました。
人間我慢辛抱が肝要。
いつか必ず…。
焦ってはなりません。
いつか必ず時は来ますよ。
そうだ。
先生の言うとおりだ。
とりあえず今日のところはこれにて帰る。
ごめん。
今日のところは?また来るという事よ。
夕刻雨はやんだ。
(武左衛門)だがこれでまた田沼の者どもににらまれる事になろうな。
何せ定信公に佐野という田沼のこぶが2人も…いや3人も巣くうておるのだからなこの道場は。
旦那言葉が過ぎる。
(武左衛門)うん?おお金兵衛殿来ていたか。
ああどうも。
空也に会いにね。
いいんですかい竹村さん下屋敷の方は。
つまらぬ仕事よ。
父上!また怠けておいでなのですか?こりゃいかん。
ではな。
あっ急用じゃった。
そうじゃそうじゃ。
あ〜そうじゃ。
これはしゅうと殿。
(金兵衛)婿殿そろそろおいとまするよ。
泊まっていかれればよろしいでしょう。
いや〜こっちは夜中にかわやに行ったり来たりの年寄りだ。
迷惑かけちまう。
それにな独り暮らしの方が気楽でいいんだよ。
剣術遣いとはやっかいなもんだなあ。
え?深川六間堀育ちのおいらにはね武士の一分とか剣術家の意地とかそんなものは分からねえ。
だがなあおごる平家久しからずだ。
田沼なんてやつらは黙ってたってどつぼにはまり込む。
いっその事放っておかねえか。
赤穂浪士は吉良様の首斬って辞世の歌残して切腹したってそりゃそれで満足だろうよ。
けどね敵を討った方も討たれた方も嘆き悲しむ身内ってものがいるんだよ。
しゅうと殿。
説教しようってんじゃねえ。
そんな柄じゃねえや。
おこんだってそんな坂崎磐音ってお人にほれたんだ。
しかたねえって言えばそりゃそうだけどさ。
おいらはおこんの父親だ。
父親ってやつはいつまでたっても娘がかわいいもんなんだ。
その娘に孫ができた。
こいつはもっとかわいいものなんだ。
そうだろ婿殿。
あの空也を力いっぱい大きく育ててもらいてえんだ。
おこんとあんたの手でよ。
分かるだろ婿殿。
しゅうと殿今の言葉肝に銘じます。
頼まあ。
それから数日後の事。
空也お前はどうしてこんな事を繰り返す。
父のように強くなるためです。
お前は本当に強い者を知らん。
え?
(修太郎)本当に強いのはお城に勤める武士だ。
先生はただの道場のあるじで刀を振り回してるだけのただの浪人じゃないか。
強くも何ともない。
そんな事は…。
ある!何をする。
やめろ。
やめてくれ。
修太郎!空也!
(修太郎)やめてくれ。
やめてくれ。
何してるの!空也。
母上。
修太郎さんは父上をばかにしたのです。
本当なの?修太郎。
答えなさい修太郎!
(泣き声)空也だからといって竹刀で何度もたたくのはやり過ぎではありませんか。
答えなさい空也。
空也!母上…。
父上はこの世で一番強いお人ではないのですか?
(空也)お城勤めの武士が一番強いと修太郎さんは言いました。
父上は刀を振り回すだけのただの浪人で強くなんかないと。
本当ですか?あなたはお父上の何を見てるのですか。
お父上はお強い人です。
ですが!強いだけではありません。
お優しい方です。
武士だからとか町人だからとかそんな事で人を区別なさるお人ではありません。
現に定信公はお父上を慕っておいでではありませんか。
だからといってほかの門人の方と区別はなさりません。
強いという事はそういう事です。
人に優しいという事はそういう事です。
お父上は人として強くて優しいお方です。
剣の腕が強い事は空也も知ってるではありませんか。
お父上はお強い上に優しいお方なのです。
よいですね?はい。
修太郎さんに謝りなさい。
おこん様。
よいのです。
さあ謝るのです。
空也。
空也!おこん。
2人を借り受ける。
磐音が故郷を出て初めて江戸を訪れたのは15年前の事だった。

(太鼓)・
(歓声と笑い声)
(にぎわう声)この宮戸川で江戸に出てきたばかりの磐音はうなぎ割きをなりわいとしていた事があった。
(松吉)久しぶりに来たと思ったらうなぎを割かせてくれっていうんだから旦那も変わってるなあ。
(幸吉)うまいもんだなあ。
腕は衰えちゃいねえや。
かたじけない師匠。
師匠?幸吉はな旦那が江戸に出てきた時にいろいろ教えてやったからその時から江戸の師匠よ。
な?
(幸吉)おう。
何か恥ずかしいけどな。
よい匂いです。
空也さん。
うちのうなぎは天下一品ってやつだ。
(鉄五郎)先生。
うまい具合にうなぎが焼けてきましたぜ。
そろそろおしまいにしましょうや。
相分かった。
(松吉)親方。
旦那のうなぎは俺が焼くって言ったじゃないですか。
松吉。
年は取ってもな先生のうなぎだけは俺が焼くんだ。
おめえなんかに任せる訳にはいかねえよ。
近頃は親方の腕をしのぐって評判なんだけどな。
うるせえ!痛え!父上!修太郎さんが許して下さいました。
空也。
はい。
母はいつもお前の事を思うておる。
はい。
母を守れる男になるのだ。
よいな?はい!私は母上をお守りします。
奈緒様をお訪ねしようか迷っていたのです。
何かあったのですか?奈緒様は女の子でよかったですね。
男の子ってつくづく難しいなってそう思って。
え?ほら私は女だし男の子の事がまるで分からなくて。
生意気だし言う事も聞かないし。
空也にとって父親は強い人ではなくてはならないみたいなのです。
磐音様はお強い方ではありませんか。
剣の腕も人としての生き方も。
私もとどのつまりそう答えるしかなかったんですけど…。
でも強い磐音様はいつも何事かに巻き込まれてしまうのです。
強くなればなるほど相手も強くなります。
もし負けるような事があればその時は磐音様が死ぬ時なのです。
そうでございましょ奈緒様。
おこん様…。
本当の事を言えば私は磐音様が強い人でなくても構わないのです。
ううんむしろその方がよいくらいなのです。
空也と親子3人笑ったり怒ったり何でもない幸せが毎日続くような…。
深川六間堀の長屋で育った私にはそんな暮らしが身の丈に合ってるんです。
なのに…なのに磐音様がお強いばかりにいつもいつも思ってもいない方へ。
その度に私が毎日どんな思いでいるか誰も分かってくれやしないんです。
誰も…誰も。
私がいますおこん様。
おこん様のお気持ち私には分かります。
奈緒様…。
泣いてよいのです。
ここで思い切り泣いて笑顔で磐音様と空也さんのもとへお帰りになるとよいのです。
よいのですか?私が泣きたい時はおこんさんの胸をお貸し下さい。
奈緒様…。
品川柳次郎。
おすな様がお会いになる。
はい。
呼ぶまで暫時ここにて。
はい。

(井上)では佐野善左衛門を?・
(おすな)そうじゃ。
あやつはうるさい。
殿様のためにもならぬでな。
頼むぞ雹田平とやら。
大変だ大変だ。
大変だ!まことですか?確かにこの耳で聞きました。
意知様が遠江国相良にお帰りになられた事にして佐野を呼び出しご城下で始末すると。
坂崎殿。
相良に行かれるか。
何故それを?わなでござる。
わな?田沼意知様の手の者がご城下であなたを待ち受け始末する手はずになっているようです。
だとしてもだこのままではらちが明かぬ。
死にに行くおつもりか。
ならば坂崎殿ご同行願いたい。
そうだ私を守ってくれませぬか。
それならば…。
あっ!何者!ここがお前たちの墓場だ。
かかれ!人殺しだ!人殺しだ!誰か出会え!出会え!
(呼び子)出会え!人殺しだ!
(雹)引け!申し訳ない坂崎さん。
こいつはどうも私の事が相手にばれていたようです。
品川さんもこれでお得意をなくされた。
おあいこです。
いやその事はもう…。
(弥助)ご無事でようございました。
すまぬ。
(定信)むざむざ田沼のわなにはまる事もなかろう。
無念でござる。
ここまでこけにされるとは。
しかしこの借りいつか返さねば死んでも死にきれん。
お主の気持ちよく分かるが…。
佐野殿。
はやる気持ちを抑えしばらくはおとなしくしておられよ。
しかし…。
(定信)先生。
このままではまた狙われましょう。
この者当屋敷にしばらく逗留してもらいます。
かたじけない。
田沼への佐野の憎しみが定信の心にさざ波を立てるのではと磐音は不安を感じた。
案の定定信の屋敷で佐野は連日連夜田沼打倒を定信に促した。
定信は迷い始めた。
父上お迎えに参りました。
おう。
仕事は進んでおるか。
はい。
お前に対する世間の風当たりは強い。
しかしそれに負けてはならぬ。
世界に目を向けてこの国を変えられるのはお前しかおらん。
父上もおられるではありませぬか。
父は…父はいずれ死ぬ。
お前より先にな。
そのような事仰せられますな。
それが世の道理だ。
父が死んでもお前はまっすぐに進まねばならん。
徳川の世を未来永ごう盤石なものにするためにお前が導かねばならん。
よいな?はい。
部屋に飾りましょう。
おい誰かおらぬか。
まだまだ子どもよ。
そのころ…。
お屋敷で何かありましたか。
実は佐野様が殿の脇差しを…。
昨夜。

(善左衛門)これだけ言ってもあなた様には田沼親子に踏みにじられたそれがしの気持ちがお分かりになられないのか!あなた様には田沼親子を蹴散らす覚悟はないのですか!蹴散らせ!邪魔をする者あらば蹴散らせ!
(善左衛門)正義面で何ができましょうか。
鬼となる覚悟はないのですか!鬼となれ!鬼となってその者たちを蹴散らすのだ!
(善左衛門)あなたのそのお腰のものは竹光ですか!何!?でなければ…お貸し下され。
お貸し下され!お貸し下され!忘るるな。
父の願い忘るるな!しばしお借り申す。
ごめん!殿!佐野様が手にした脇差しは殿のものです。
もしあの脇差しで何か事が起きたらと思うと…。
それで坂崎様にご相談を。
粟田口一竿子忠綱。
あの方の脇差しなのはどなたでもご存じ。
佐野殿がその脇差しを使うとすれば…。
やはり坂崎様も佐野様がご老中を狙うと思われますか?日々の田沼様には警護の方がいます。
佐野殿の腕ではめった斬りにされてしまうでしょう。
ですが…城中で事に及べばその限りではござらぬ。
城中で?私ならそうします。
登城にはもう時がありません。
佐野様をお止めします。
私も行きましょう。
坂崎磐音いつぞやの遺恨晴らしに来た!鈴木殿か。
勝負!先に行かれよ。
はい。
待て〜!おのれ〜!うっ!もう剣は握れません。
商売替えをなさるがよい。
既に佐野様は登城なされたようです。
もし坂崎殿の言われるような事が起これば松の廊下一件以来の騒ぎとなるは必定。
なんとかお頼みできませんでしょうか。
ほかならぬ婿殿の頼みだ。
聞くしかあるまい。
それがしの供として城中に向かう事とする。
よいな?はっ。
時がない。
急ごう。
誰かある!これを万が一の時のために。
え?はい。
ご老中様方ご下城でございます。

(善左衛門)主殿頭殿!佐野善左衛門にて候。
ごめん!父上!あ〜!父上!山城守殿…ごめん!
(善左衛門)やあ〜!
(意知)うわ〜!
(斬る音)
(意知)ああ〜…。
意知…。
たわけ!何をしておる!
(善左衛門)うあ〜!何事じゃ!慮外者をこの場から連れ去れ!その刀お預かり致します。

(弥助)全て坂崎様のお指図どおりに。
これはお預かりします。
置いてきた刀は誰のものとも分からぬもの。
殿に関わりあるとは誰も気付きませぬ。
これ全て坂崎様のおかげ…。
たわけ!やくたいもない事を口にしてどうなる!意知は城中から屋敷へと運ばれた事で出血がひどくなり手の施しようがなかった。
死んではなりませぬ。
殿様!意知様をお助け下さいまし。
意知。
父上…。
何事も…ございませなんだか。
お前のおかげじゃ。
死んではならんぞ。
わしを置いて死んではならんぞ!死んではならん。
死んでは…。
江戸城中での刃傷事件は街じゅうに知れ渡った。
(磯次)「若年寄田沼意知様のお命風前のともしび」と来た!「医師ら昼夜の奮闘虚し」だってよ。
ざまあみやがれってんだ。
親子そろってよ偉そうにしてるからよ罰が当たったんだよ。
これで世の中がパ〜ッと明るくなってくれるといいんだけどねえ。
米の値段も下がってさ。
佐野大明神様って事だなそうなりゃよ。
ああ。
だけどよ何で老中様の方じゃなかったんだ?そりゃあれだろ。
おやじはよ先に逝っちまうけどよ息子やっときゃ田沼の家もこれまでよって事だろ?なるほど。
ますます佐野大明神様だぜ!世間様なんてのはこんなもんだ。
まるで赤穂浪士の討ち入りだこりゃ。
なあ。
うん。
大丈夫なんだろうな?道場の方は。
今度の騒ぎに関わっちゃいねえんだろうな?おい。
空也はどうした?うん?あれやだ。
どこ行っちゃったんだろう。
いっつもこうなんだから。
いいのか?こんな時だぞ。
え?空也!空也!参った!これは…。
いつぞやお忘れになった刀です。
粟田口一竿子忠綱。
いやこれは…。
多少の刃こぼれがございますが。
先生かたじけない!はやってはならぬと申したはず。
いつか必ず威風堂々。
よろしいか。
私のせいです。
父のあの言葉をいつの間にか全てであると思い込んでしまった私の。
(定信)優しかった父の笑顔や手のぬくもりをいつしか忘れておりました。
私はなんと愚かな…。
よいのです。
今気付かれた事を糧として精進なさればよいのです。
人は心の持ちようで変わる事ができます。
それがしそう信じております。
先生…。
いつか必ず民百姓のためによい政を。
それがし願うております。
はい。
父上!磐音様!
(雹)刀を捨てろ。
捨てなければ2人を殺す。
誰に命じられた。
(雹)刀を捨てろ!分かった。
捨ててはなりません!父上!よいのだ。
父上!我こそは松平越中守定信じゃ!狙うなら私を狙え!父上!よう頑張ったな空也。
私は母上をお守りしました。
うん。
おこん平気か?こんはこれぐらいでへこたれるようなそんな女ではありません。
平気です。
平気です。
2日後田沼意知が死に佐野善左衛門は乱心として切腹。
事件は終わった。

(おすな)坂崎磐音…あやつのせいです。
あやつのせいじゃ。
そうではない。
あやつのせいじゃ…。
剣術家である坂崎があのような事をする訳がない。
坂崎じゃ!誰ぞあやつを!あやつを斬れ!
(意次)下がれ!下がっておれ。
井上!はっ。
何しに来た?坂崎磐音。
そうか。
笑いに来たのかこのわしを。
親が子より先に死ぬのが世の習い。
なのに子に救われおめおめとこうして生き延びたあげくその子を失ってうろたえる親をお主笑いに来たのであろう。
田沼様。
勝ったつもりでおるか。
ならば帰って定信に伝えよ。
このわしが必ず意知の…。
お聞きあれ!私とて子を持つ親でございます。
何?田沼様のお気持ち痛いほど分かり申す。
ハハッ分かる?分かる訳がない!つないだこの手のぬくもりが次第に冷たくなっていく…次第に冷たくなっていく我が子の手をお主は握りしめた事があるのか!ないであろう!田沼様。
もう終わりに致しましょう。
闘いは終わりです。
哀れみか。
わしを哀れむのか。
このわしを。
哀れんでおるつもりか。
ならば笑止なり坂崎磐音。
わしがこのまま朽ち果てるとでも言いたいか。
侮るなこわっぱ!わしを誰だと思うておる。
鬼と出会えば鬼を殺し仏と出会えば仏を殺し泥水を飲む覚悟で天下をつかんだ田沼意次ぞ!たとえ息子を失おうともその事に変わりはない!そこへ直れ!成敗してくれる!
(おすな)殿様!来るな!来てはならん!坂崎磐音…覚悟せよ!あっ…。
坂崎…殺せ。
わしを殺せ。
殿様!殺さぬか!殺せ。
殺せ!
(おすな)殿様!殺せ…殺せ!殺せ〜!
(意次)殺せ!意知…意知!意知〜!意知〜!お帰りなさいませ。
全て終わりました。
ご苦労さまでございました。
父上雨はもう…。
風呂に入ろう空也。
はい。
湯加減はどうですか?
(2人)よいです。
まあ!今この時を大事にしたい。
そう磐音は思った。
ほう宮戸川に。
そうなんですよ。
坂崎さんの伝だそうです。
修太郎は剣術には向かぬようですがうなぎ割きが大層気に入ったようです。
宮戸川の鉄五郎親方が必ず一人前にしてやると請け負ってくれました。
それはようございましたな。
武士として生きるだけが道ではございません。
職人として立派に生きるのもまた道。
というかやはり俺の息子だ。
武士には向かぬ。
ぼうふらのように漂うばかりの男には似合いの息子でござる。
そう言われますな。
千代田の城で老中と呼ばれるお人も私たちも男子の一生などそう変わりがあるものではありません。
じゃあ坂崎さんは竹村の旦那と田沼のご老中は同じだと言うのですか?はい。
え!それはまた面白い。
うんにゃそのような事はない。
断じてない!父上!また油を売っておいでですか。
え!いやそのような事…。
これを頂きました。
まあ!ありがとうございます。
お内儀世話になった。
え?行かれますか。
先生の事は生涯忘れませぬ。
先輩ともお別れです。
はい!ご一同失礼つかまつる。
ちょっと…。
お〜のどかな音でございますな。
このような音ばかりを聞いて生きていける世の中ならよろしゅうございましたな。
ねえ坂崎様。
この後田沼意次は幕閣を去り定信が老中となった。
田沼殿大儀でござった。
痛み入る。
田沼意次と松平定信。
この2人の政については移ろいやすい民の常さまざまな評価がなされている。
だがここ坂崎道場の熱気だけは変わらず江戸の人々にその名をとどろかせた。
居眠り磐音の名はいつも彼らの口の端に上っていたという。
お願いします。
やあ!やあ〜!それで終わりか空也。
まだまだこれから。
やあ〜!2017/01/02(月) 21:00〜22:30
NHK総合1・神戸
正月時代劇 陽炎の辻 完結編〜居眠り磐音 江戸双紙〜[解][字]

剣豪・坂崎磐音(山本耕史)の道場に、田沼意次(長塚京三)打倒のため、白河藩主・松平定信(工藤阿須加)が弟子入りをする。それを知った意次一派は磐音に刺客を送る。

詳細情報
番組内容
剣豪・坂崎磐音(山本耕史)は、妻・おこん(中越典子)と8歳の息子・空也と、江戸で剣術道場を開き、幸せに暮らしていた。そこに、磐音の宿敵でもある時の権力者・田沼意次(長塚京三)打倒のために、白河藩主・松平定信(工藤阿須加)が弟子入りを願い出る。それを知った意次一派は、次々と磐音に刺客を送りつけてくる。家族を守るため、再び磐音は剣を抜くのだった。
出演者
【出演】山本耕史,中越典子,大西利空,宇梶剛士,優希美青,芝本麟太郎,長塚京三,滝藤賢一,神野三鈴,工藤阿須加,小林隆,青山草太,小松政夫,中本賢,深沢敦,悠木千帆,笛木優子,河西健司,内野謙太ほか
原作・脚本
【原作】佐伯泰英,【脚本】尾西兼一
監督・演出
【演出】西谷真一
音楽
【音楽】佐藤直紀