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書き起こし 浦沢直樹の漫勉 シーズン0 完全版「かわぐちかいじ」 2017.01.05


「漫勉」。
小さなペン先から壮大なドラマを生む漫画家の仕事場に迫るこの番組。
仕掛け人はこの人浦沢直樹さん。
数多くのヒット作を手がけてきた漫画家です。
描いているのは「BILLYBAT」。
物語の登場人物たちは次第に人類の危機に直面していきます。
浦沢さんはこれまでも人物を後のない状況に追い込み緊迫感あふれるドラマを描いてきました。
今回登場するのも極限状況で人物が葛藤する姿にこだわって作品を描いてきた漫画家さんです。
デビューから49年。
テーマの大きな長編作品を数多く手がけてきた漫画界の巨匠です。

 

 

 


代表作は「沈黙の艦隊」。
原子力潜水艦が独立国家を名乗り世界の大国に挑戦するSF大作。
国際秩序の危機を鋭く問いかけ社会現象になりました。
大学生でデビュー後社会のアウトサイダーのドラマを乾いたタッチで描きます。
その後作品の舞台を広げ日本や世界の在り方を問う大作で数多くの賞を受賞してきました。
社会派の作品を描きながらこだわるのは熱い人間ドラマです。
緊迫する物語の中追い込まれ葛藤しぶつかり合う登場人物たち。
あふれ出る彼らの感情を丹念に描き読者を引き込みます。
今回は新境地である歴史大作の執筆に密着する事ができました。
そこで発見したのは熱いドラマを生み出すイメージと裏腹の緻密な執筆。
そして登場人物に寄り添いその気持ちを丁寧にくみ取ろうとする謙虚な姿勢でした。
2014年放送の「漫勉」パイロット版で紹介したかわぐちさん。
今回は新たに撮影したシーンを加えた…密着撮影した2週間後映像を見ながら2人が対談します。
かわぐちさんの母校明治大学を訪れました。
こんにちは。
久しぶりです。
かわぐちさんは当時漫画研究会に所属していました。
お〜思い出しました?すごく片づけてるなぁ。
60年の歴史を誇る明大漫研。
プロの漫画家も多く輩出しています。
当時の機関誌が残っていました。
「MORE」。
「MORE」。
うまい!隠しちゃった。
世界でもヒットする大作を生み出してきた巨匠かわぐちかいじさん。
その創作の秘密が明らかになります。
まず人物の後ろ姿を描くコマ。
下描き開始です。
HBとBでそんなに違うんですね。
歴史大作「ジパング深蒼海流」。
貴族社会から武家社会へ移行し平氏と源氏が覇権を争った平安時代末期が舞台。
激動の時代に日本を動かした人物が織り成すドラマと感情のぶつかり合いを描きます。
物語は頂点を極めた平氏に逆風が吹き始める転換期を迎えています。
今描いているのは追い込まれた平清盛の心の中を表現するコマ。
襲い来る波に立ち向かう清盛の後ろ姿です。
かわぐちさんどんどん描いていきます。
すごい速さで描いているのにもう完成みたいな絵ですね。
下描き終了です。
ここまで僅か3分。
続いてペン入れ。
Gペンを手にとりました。
デビュー以来?下描きと比べてゆっくりとしたペン入れ。
バランスもはかりながら慎重に描いていきます。
あっそうなんですか。
こういうふうになるのがさ。
あ〜そうなんですか。
かわぐちさんは繊細に探りながら描く事で絵の完成度を高めようとします。
完成度にこだわるからこそ臆病に慎重に描こうとするんですね。
ようやくペン入れが終了です。
清盛の立ち向かう感情が籠もった後ろ姿を繊細に描きました。
臆病なまでに謙虚に完成度の高い絵を目指すかわぐちさんの姿勢が伝わるコマが完成です。
このシーンを境に清盛の運命は翻弄され時代も激流にのみ込まれていきます。
そして今物語の中心は源頼朝と義経の兄弟へ。
信頼し合って源氏をもり立ててきた2人。
清盛の娘平徳子を巡って確執が生まれ兄弟の悲劇へと走り始めようとしています。
およそ2年がたったかわぐちさんの仕事場に再びお邪魔させてもらいました。
かわぐちさん変わらずこつこつと執筆しています。
今回も見せ場のページの執筆を密着撮影させてもらう事ができました。
下描き開始です。
相変わらず下描きはどんどんとかつ丁寧に描いていきます。
描いているのは美男子と名高い源義経。
兄頼朝への信頼を崩さなかった義経が初めて敵対心を口に出す物語のターニングポイントです。
悲しみと静かな怒りに満ちた表情を大ゴマで描きます。
かわぐちさんは現在68歳。
この週刊連載以外に隔週連載を持ち月6回以上の締め切りがあります。
デビューから49年目。
今なお第一線で闘い続けるかわぐちかいじさん。
漫画と映画が大好きだった少年時代。
黒澤明の作品を見て衝撃を受け映画監督に憧れました。
その後漫画界に大人向けのドラマをリアルに描く劇画が台頭。
夢中になったかわぐちさんは映画のような世界を漫画で生み出したいと思うようになります。
かつて映画を志した影響がかいま見えるのがネームより前に作るセリフを書き連ねたこの紙です。
かわぐちさんは明治大学に入学し大学3年生にしてプロデビューします。
デビュー後アウトローたちの葛藤をテーマに鬱屈した時代の空気を反映した作品を発表します。
しかしヒットには恵まれませんでした。
そしてデビュー16年目に俳優たちの鬼気迫るぶつかり合いを描いた「アクター」でブレイク。
更に「沈黙の艦隊」。
戦時中にタイムスリップした自衛隊の戦いを描く「ジパング」。
震災で東西に分断された日本を描く「太陽の黙示録」と大ヒットを連発しました。
作品のスケールを拡大しても一貫して描いたのは葛藤する人物の演技です。
まるで演劇のように対峙する人物たちがぶつけ合う激しい感情をどう表現するか。
そこにこだわり続けてきました。
義経の兄に対する哀しみと怒りが籠もった複雑な感情が描かれていきます。
義経の気持ちに寄り添いその声を聞きながら目に感情を込めます。
描き始めから11分。
美男子義経のインパクトある表情がついに出来上がりました。
哀しみと怒りをたたえしかし決意に満ちた目。
葛藤する人物の感情に寄り添い続けるかわぐちさんのこだわりが詰まったコマが完成です。
さて執筆は清盛のシーンに戻ります。
続いて描くのはこの回のクライマックスです。
まずは下描き。
描いているのは逆境に立ち向かう清盛の表情を正面から捉えた大ゴマ。
葛藤の中で戦おうとする強い意志。
かわぐちさんがこだわってきた人物の感情を描きます。
迫力ある表情が描かれてきました。
下描きが終了です。
続いてペン入れ。
慎重に線を重ね清盛の感情を捉えようとします。
ヒットに恵まれなかったかわぐちさんをブレイクに導いたのが目を使った感情表現。
この発見によって作風を一気に広げていきました。
目の表現という一つの演出によって作品世界全体を大きく様変わりさせたかわぐちさん。
その後も人物の感情を読者に伝えるにはどう演出したらいいのかそれを探求し発見する事を大切にしてきました。
ないないないない。
逆境に決然と立ち向かおうとする清盛の思い。
その声に耳を傾け更にその演出を楽しみながら表情を生み出していきます。
デビューして49年。
映画のような漫画を描きたいと志し心に迫る人間ドラマを生み出し続けてきました。
一コマも無駄にせず描きたい絵を描く。
そして自分の考えたドラマ世界を生み出す。
その純粋な喜びこそがかわぐちさんを変わる事なく突き動かし続けます。
最後に目にペンを入れます。
描き始めから22分。
清盛の力強い表情がついに出来上がりました。
男の決然とした表情を緻密に繊細に描きました。
登場人物の思いに謙虚に寄り添う事で描ける感情。
それを大きく力強い目に託しました。
かわぐちさんこん身の表情が完成しました。
2017/01/05(木) 22:00〜22:45
NHKEテレ1大阪
浦沢直樹の漫勉 シーズン0 完全版「かわぐちかいじ」[字]

完全版1本目は「かわぐちかいじ」が登場。「沈黙の艦隊」「太陽の黙示録」といった大ヒット作を生んだ現場へ密着する。

詳細情報
番組内容
完全版1本目は「かわぐちかいじ」が登場。「沈黙の艦隊」「太陽の黙示録」といった大ヒット作を生んだ現場へ密着する。漫画家としてデビューしてから15年近く、ヒットが生まれずに苦しんだかわぐちがブレイクするきっかけとなった技法が語られる。パイロット版では紹介できなかった未公開の対談や、今回新たに撮影した連載漫画の最新ペン先映像を加えたまさに完全版となる。
出演者
【出演】漫画家…浦沢直樹,かわぐちかいじ,【語り】平愛梨