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書き起こし モーガン・フリーマン 時空を超えて・選「宇宙人はどのように思考するのか?」 2017.01.06

 

 

宇宙に生命体が存在するとしたら…。
私たちはその考え方を理解できるでしょうか?知的な活動は宇宙共通なのでしょうか?地球の生物の研究を通じてまだ見ぬ生命体の思考を理解する試みがなされています。
次第に分かってきたのは感情の大切さと体の重要性です。
宇宙人の考え方を理解できる日は来るのでしょうか?時間空間そして生命。
時空を超えて未知の世界を探求します。
生命の材料は宇宙の至る所に散らばっているので宇宙人はあちこちに存在するかもしれません。
では宇宙人も私たちと同じように脳でものを考えるのでしょうか。
実際に宇宙人を調べないかぎり解けるはずのない疑問に思えます。
しかし地球上にいるのは人間だけではありません。
この星にいる他の生物を通じて地球外生命体の思考を探る事が可能なのです。

 

 

 

 


少年時代犬は一体何を考えているのだろうとよく疑問に思いました。
少なくともうちの犬は私と同じ世界を見ているように思えました。
一方他の生き物は人間とは全く異質に見えました。
しかし他の生き物も実は知性があるのにその形式が私たちと違いすぎるため知性がないように見えるだけなのかもしれません。
特に植物はものを考えたり感じたりしないと思われています。
もしそれが間違いだったとしたら?近年の研究は植物に人間とは全く違うタイプの知性がある事を示唆しています。
大半の植物は匂いや感触や味を感じ音を聞く事もできるかもしれません。
会話ができる可能性さえあります。
コンスエロ・デ・モラエスは化学と生物学の研究者。
マーク・メスカーは動物の行動と進化が専門です。
2人の実験は脳を持たない植物が動物と同じような行動をとる事を証明しました。
植物の環境への関わり方は動物とはかなり異なったものです。
人間はある環境を前にするとそれについて考えを巡らせ問題解決の方法を見つけようとします。
そして主に視覚から得られる情報に基づいて行動します。
その点植物は全く違います。
2人はフェロモンを検知する機器と特殊カメラを使ってアメリカネナシカズラという植物を研究しています。
アメリカネナシカズラは他の植物に寄生するつる植物で植物とは思えないような行動をとります。
それは人間から見ると邪悪にすら映る行動です。
周りの生命を次々と奪う植物界のモンスターのような存在です。
アメリカネナシカズラは寄生植物ですから根はなく光合成もしません。
宿主となる植物に絡みついて栄養を吸い取って生きる吸血鬼のような存在です。
自らは何も生み出しません。
宿主から奪った栄養だけで生きていく純然たる寄生植物です。
アメリカネナシカズラはつるが伸びてくると人間が暗闇の中で電気のスイッチを探す時のように辺りを調べ始めます。
つるはしなりながら伸び宿主となる相手例えばトマトの苗を見つけます。
つるは宿主の下の方を探り茎の根元を見つけると歯のようなものを食い込ませ巻きついて栄養を吸い取っていきます。
不思議な事にネナシカズラは宿主が健康かどうかを匂いで察知します。
(デ・モラエス)寄生動物が宿主を匂いで探すのは分かっていましたが寄生植物にも同じ能力があるとは思いも寄りませんでした。
動物だけにできて植物にはできないと思われていた事が実はそうではなかったんです。
これには驚かされました。
植物は匂いによって情報交換をする事もできます。
捕食者から身を守ったり警告し合ったりするのです。
例えばイモムシが葉を食べにやって来ると大豆の苗はハチを引き付ける物質を放出しハチの助けを借りてイモムシを駆除します。
この間周りの植物はSOS信号を匂いで感知し自らも身を守るための物質を放出します。
植物と人間では時間の尺度が違います。
行動があまりにゆっくりなので何も起きていないように思ってしまいますが植物は他の植物と情報交換をし危険を察知し自分の身を守る行動をとっているのです。
植物は人類が登場するはるか以前から存在し人類よりも長く生き残るかもしれません。
だとすれば植物の思考や行動が当てはまる地球外生命体もいるのではないでしょうか?
(メスカー)進化の歴史は惑星によって大きく異なるかもしれません。
しかし植物に近い生命体は存在する可能性が高いと思います。
恒星の光からエネルギーを得てそれを生化学的なエネルギーに変換する生命体です。
それはどの星でも生態系の土台になる事でしょう。
では宇宙の植物が地球の植物よりも高度な思考をする可能性はあるのでしょうか。
もし宇宙の植物が複雑な思考を発達させていたら自らの葉や枝について思いを巡らせ太陽のない世界という悪夢を見ているかもしれません。
その可能性に否定的な科学者もいます。
どんな生命体であれ自ら動きながら周囲を知覚できる能力があって初めて高度な思考が発達するというのです。
認知科学者のサスキア・ネーゲルによれば意識は感覚入力と身体運動その相互作用から生み出されます。
例えばこのカップを手で触り持ち上げ重さを感じるのが「感覚入力」です。
それと同時に人は体を動かします。
カップを見るために目を動かし持ち上げるために腕を動かし中身を確認するために手を動かす…。
感覚と運動その2つが組み合わさって意識を生み出すんです。
意識は人間が備えた5つの感覚視覚聴覚嗅覚触覚味覚と深く結び付いています。
しかし宇宙人はそれとは全く異なる感覚によって高度な精神活動を発達させている可能性もある。
ネーゲルはそう考えています。
それを証明するため人間に全く新しい感覚を持たせる実験が行われました。
被験者たちが身につけているベルトは方位磁石を利用して北の方角を感知するもの。
これによって今までにない方向感覚が得られます。
このベルトには振動装置がズラリと並んでいます。
裏側には精度の高い方位磁石端には小さなコンピューター。
方位磁石とコンピューターが常に装置の一つを振動させます。
それによってどちらが北か分かるんです。
この日3人の被験者は屋外に連れ出されました。
黒のゴーグルで視覚を遮られグルグル回され方向が完全に分からなくなります。
この状態でネーゲルがいる北の方向に向かいます。
通常ならとても無理でしょうが彼らはこのベルトをつけて6週間トレーニングしてきました。
方位磁石が示す方向感覚を身につけています。
(ネーゲル)興味深いのはトレーニングを重ねるとベルトの振動に頼らずに北が分かるようになってくる事です。
これまで人間にはなかった新たな空間感覚が生じるんです。
宇宙人は私たちとは違う感覚に基づいてものを考えているのかもしれません。
このような実験は宇宙人の思考を推し量る一つの手段と言えるでしょう。
思考する能力は視覚や聴覚など私たちがよく使う感覚だけに依存しているとはかぎらないのです。
宇宙人はそれぞれの環境に合わせて感覚を発達させているはずです。
光が乏しい惑星では視覚ではなくレーダーのような感覚で周囲を捉えているかもしれません。
宇宙人の感覚は地球人とは全く違ったものかもしれないのです。
では宇宙人の集団はどのようにコミュニケーションを交わし発達した社会を作るのでしょうか?その答えは私たちの足元にあるかもしれません。
私たちの脳はねじれて入り組んだ線路のようなものです。
神経細胞が成長するにつれて何兆もの結合が生まれ信じられないほど複雑なネットワークを形成します。
しかし宇宙人も同じかどうかは分かりません。
宇宙人の場合脳の神経細胞の結合が個人という枠を超えている可能性があります。
動物行動学者のナイジェル・フランクスは地球上で最も栄えている生物の一つアリの専門家です。
私はアリについて30年間専門的に研究してきました。
それほどアリに惹きつけられる理由の一つはアリが従来考えられていたよりもはるかに洗練された生物だからです。
アリは集団になると「超個体」を形成します。
小さく特に知的ではない個体が集合すると巨大な知的生命体となるのです。
(フランクス)アリのコロニー全体が一つの脳のような構造物となりその中で情報交換をしているんです。
1匹のアリは限られた指示に従って行動しているにすぎません。
しかしそのようなアリが何千匹も集まって超個体を形成するとより高度な問題解決や価値判断効率的な行動などが実現可能になります。
(フランクス)「アリ」という生物にとって大切なのは一匹一匹のアリではありません。
大切なのは多くのアリがまとまって社会を作り上げている事だけです。
個々の存在はあくまでも全体を作り上げる部品生物で言えば数多い細胞の一つにすぎないんです。
ではアリの集合体はどのようにものを考え意思決定を下すのでしょうか?
(フランクス)実験のためアリのコロニーをここに持ってきました。
巣が破壊されて新しい住みかを探さなくてはならないのと同じ状況です。
ここでアリに2つの選択肢を与えます。
一つは非常に明るく入り口が広いつまりアリが好まない巣です。
アリはもう一つの巣を選ぶはずです。
こちらは入り口が狭くその割に中のスペースは十分。
しかも赤のフィルターによって中は暗くなってます。
この実験の目的はよりよい住みかを選ぶ決定がどのように下されるのかを観察する事です。
アリは住宅環境にうるさい生物です。
新しい家を選ぶ際には天井の高さ部屋の面積や間取り出入り口の数などを丹念にチェックします。
衛生上問題があるもの例えば前の住民の遺体などがあると購入をキャンセルします。
1匹のアリがある巣を気に入るとコロニーに戻り賛同してくれそうな仲間を見つけてまた巣に戻ります。
案内役の1匹が次に続くアリに道を教えるんです。
それを繰り返す事で新しい巣に来る仲間が次第に増えていきます。
1匹が2匹になり4匹8匹16匹と増えある時点で臨界点に達します。
すると新しい巣に移る事が決定的になり案内ではなく移動になってきます。
コンピューター科学者のジェームズ・マーシャルはフランクスの研究をもとにアリのコロニーの意思決定をコンピューターモデルにまとめました。
そして驚くべき発見をしました。
そのモデルは別の単独の生物の意思決定モデルにそっくりだったのです。
私と同じ研究チームに霊長類の意思決定モデルを作っている人物がいました。
彼と話をしているうちにそれがアリのコロニーの意思決定モデルと極めてよく似ている事が分かりました。
アリのコロニーと一匹の霊長類の脳この2つが同じようなやり方で意思決定を下していたんです。
一匹一匹のアリが霊長類の脳における神経細胞のような振る舞いをしている事にマーシャルは気付きました。
(マーシャル)アリのコロニーは興味深いやり方で情報を処理します。
一匹一匹のアリは状況について断片的な情報しか持っていません。
しかしそれがコロニーに集積されると決定を下すのに十分な情報になります。
これは脳の神経細胞にそっくりです。
神経細胞一つ一つは単純なものですがそれが集まってできた脳は複雑な情報を処理できるようになります。
では十分な時間があればアリのコロニーは意識を持つようになるのでしょうか?あるいは既に持っているのでしょうか?
(フランクス)問題の解決法でアリが人間と大きく違うのは問題とじかに向き合う必要があるという事です。
一方人間には想像力がありますから実際に問題に直面する前に頭の中でさまざまなシナリオや解決法を練る事ができます。
人間は問題を事前に予測しアリはその場で問題に取り組むわけです。
アリのコロニーはアリ一匹一匹の能力をはるかに超えた事ができますが目の前にあるものの事しか考えられません。
自己認識と想像力が欠けているためです。
宇宙にいる昆虫は分かりませんが地球の昆虫にそのような能力はありません。
では地球上に人間に匹敵する思考能力を持った生物はいないのでしょうか?この人物は「いる」と考えています。
その生物の中に宇宙人の思考を解く秘密が隠されているかもしれません。
人間の脳は地球上で最大というわけではありませんが極めて複雑です。
単に考えるだけでなく自己認識をする能力があります。
それは人間の脳に特有の能力なのでしょうか?それとも脳の構造が大きく異なる生物にも自己認識能力があるのでしょうか?答えはこの眠そうな目の奥に潜んでいるのかもしれません。
タコは無脊椎動物ですが哺乳類に匹敵する知能レベルを示します。
考えが深く利口で計算高いようにさえ見えます。
しかし人間には全く似ていません。
どんなレベルにせよ知性を持つ宇宙の生命体に最も近い地球上の生物は間違いなくタコだと思います。
神経科学者のデヴィッド・エデルマンはタコの脳を研究しています。
タコには複数の脳があります。
タコにはおよそ5億の神経細胞があります。
しかもその半分以上が腕にあります。
タコの腕は実に興味深いものです。
人間とは違い小さな脳を備えているんです。
タコの複数の脳はコンピューターの「分散処理システム」のように働きます。
ネットワークの端末から中枢となるコンピューターにデータが送られるようにタコの腕から頭脳へとデータが送られます。
しかも切り離された端末も独自に働き続けます。
タコの腕は本体から切り落とされたとしても独立した生物のようにさまざまな動きができます。
脊椎動物ではありえない事です。
極めてユニークなタコの脳。
その謎を解く鍵は視覚システムにあるのかもしれません。
タコの興味深い特徴の一つはこの「目」です。
この目を見ると何だか人間を思い出すでしょう。
タコの目は脊椎動物の目に形が似ているし機能も似ているかもしれません。
同じようにタコの脳が情報を処理する方法も私たちとよく似ているかもしれません。
仮に違っていたとしても非常に複雑なやり方をしていると思います。
タコの目は近くから遠くまで焦点を合わせる事ができます。
その結果タコの視覚はかなり複雑なものになっているはずです。
見える距離に幅があるという事はその分脳の中で膨大な視覚情報が処理されている事を意味します。
タコの思考を調べるにはどうすればいいのでしょうか?エデルマンはネズミ用に作られた知能テストをタコで試す事にしました。
「バーンズ迷路」と呼ばれるものです。
もともとはネズミの記憶学習視覚によるナビゲーション能力を調べるためのものです。
今回はタコの視覚によるナビゲーション能力を調べるのに使います。
とても単純な仕掛けです。
18個の穴がありますがそのうちの一つだけに逃げ場所として海水を入れてあります。
その穴の上には目印として十字のマークが付いています。
ここで観察したいのはタコが目印である十字マークの位置と逃げ場所の位置を関連づけているかどうかです。
最初タコは逃げ場所となる穴を簡単に見つけました。
ところが十字マークを移動して何度か試すと既に逃げ場所はないのに十字マークのある場所に来てしまいました。
明らかにタコは物事を記憶し計画を立てて行動しています。
ではタコは「意識」を備えているのでしょうか?
(エデルマン)私の定義では「意識」とは脳に入ってくるさまざまな感覚入力が全て合わさったものです。
視覚聴覚嗅覚触覚味覚…。
それらを通じて得られる全ての情報が一つに統合されたものです。
脳が複数ある生物も意識を持っているかもしれません。
しかし意識と自己認識は必ずしも同じものではなく今のところどちらも測定する方法さえありません。
私の犬が意識を持っているかと尋ねられたら飼い主としてそして犬好きとしては「もちろん」と答えます。
この子はあたかも自分の世界を認識して反応しているように見えます。
しかし科学者としてはこう思います。
「言葉を持たず内面を伝える事ができない生物に意識があると言うなら証拠が必要だ」。
タコの思考は人間には分かりません。
タコに自己認識はあるのか?世界について考える事はできるのか?それは人間にとって永遠の謎かもしれません。
言葉なしでものを考える事はできるのか?できないと言う人が多いでしょうが私はそうは思いません。
人間は常に言葉でものを考えるのでイメージしにくいですが「視覚による思考」というものもありうると考えています。
宇宙人の言語はどんなものでしょうか?私たちの言語と共通点はあるのでしょうか?人間と宇宙人が出会ったとしてもコミュニケーションを交わす事は可能なのでしょうか?手がかりは地球上の言語の進化にあります。
人類の歴史はおよそ500万年と言われています。
135億年を超える宇宙の歴史に比べればほんの一瞬です。
恐らく私たちが宇宙で最も賢いわけではないでしょう。
はるかに進化した宇宙人とどうすれば意思の疎通が図れるのか。
私たちより数百万年前から宇宙にいる種は一体どんな言語を持っているのでしょうか?サイモン・カービーは言語の進化を専門的に研究しています。
現在地球上にはおよそ6,000の言語が存在し私たちの思考を表現しています。
それは今後どう変化していくのでしょうか?人間は毎日すごい事をしています。
ゆっくりと息を吐きながら同時に舌・顎・唇を大変な速さで自在に動かしているんです。
この技術によって人間は自分の考えを他人に伝える事ができます。
カービーは言語がどのように発達していくのかを追究しています。
(カービー)思考を伝える事が可能な言語を人間はどうして持つ事ができたのでしょうか?驚いた事に伝言ゲームの中にその謎を解く鍵が隠されていました。
伝言ゲームではある文章が人から人へと伝わるうちに内容が微妙に変化していきます。
それは生物学的進化に対するいわば文化的進化です。
ありがとう。
元の文章は「生存競争の中である言葉が生き残っていくかどうかは自然淘汰によって決まる」。
それが「より長く生存する事はより長く生存する事ではない」になった。
意味のある文章が意味のない文章になったように見えます。
しかしここで重要なのは文章が短く覚えやすくなった事です。
それが言語の進化につながるとカービーは考えています。
伝言ゲームはいわば文化的進化の縮図のようなものです。
ゲームに参加した人々は文章を聞き覚えそれを再現して人に伝えようとします。
しかし完璧にはいかないため時間がたつにつれて文章が変化していきます。
最終的には大きく変わってしまう。
これはある意味で参加者の脳が文章を改変した結果だと言えます。
言語は化石のように記録が残らないためその起源や進化を科学的に証明するのは困難です。
そこでカービーは全く新しい言語を作りそれを人間の脳がどう改変していくかを調べる実験を行いました。
言語の文化的進化を実験室で再現しようという試みです。
何百年もかかる出来事をある日の午後だけで研究できるかどうか試してみたいと思いました。
私たちが考え出した新しい言語いわば宇宙人の言語を被験者に教えそれがどうなるかをテストします。
まずそれぞれ違う名前が付いた宇宙の果物を見せます。
名前を覚えるのはほぼ不可能です。
では宇宙の果物の名前が分かるかどうか確認します。
プーフムー。
これです。
ワァガフキー。
名前を正確に覚えられる人はほとんどいません。
あいにく全問不正解です。
残念でした。
しかし不正解でかまわないのです。
次に被験者は自分が覚えている名前を文字にして次の被験者に教えます。
次の被験者も同じ事を繰り返します。
まさに伝言ゲームです。
(カービー)実験が進むほど多くの被験者たちの改変が加わるため言葉が次第に変化し人が覚えやすいものになっていきます。
最後の方になると初めて聞く言葉なのに名前を全部覚えられる被験者も出てきます。
全て正解です。
おめでとう。
短時間のうちに言語が進化しました。
言語の構造がです。
ある人が間違えて覚えた言語は大抵の場合他の人にとって覚えやすいものになっています。
つまり世代を経るにつれて言語は次第に分かりやすく進化していくんです。
他の惑星でも言語が同様のパターンで進化するなら宇宙人の言語はとても覚えやすいものになっている可能性があります。
だとすればコミュニケーションをとるのは容易でしょう。
しかしそのような宇宙人は賢いと言えるのでしょうか?今人間はインターネット上に膨大な情報を蓄積し共有し合っています。
おかげでほとんどの情報をすぐに見つける事が可能になりました。
このような点で宇宙人の文明は更に進んでいる事でしょう。
しかしそれは生物学的な見地から言えばむしろ退化だと言えます。
自分の頭を使ってものを考える事が減りその作業を文化的なシステムに担わせているからです。
今後私たちは文化的には賢くなる一方生物学的には愚かになっていく事でしょう。
文明を持つのに言語は必要でしょうが人間のように話をする必要はあるのでしょうか?わざわざ話をしなくてもテレパシーで自分の考えを人に伝えられるとしたら?宇宙人のコミュニケーション方法は?人間の場合なら話をします。
確かに言語は伝達の優れた手段です。
しかし音声だけが言語ではありません。
もし音によるコミュニケーションが不可能な惑星で生命が進化したとすれば別の情報伝達手段が発達するかもしれません。
私たちがテレパシーと呼ぶようなものです。
地球上でもテレパシーが実現するかもしれません。
この男性の考えている事が機械によって検出され外部に送り出されるのです。
神経科学者のマイク・ドゥズムラが率いる革新的なプロジェクトの一環です。
「ブレイン・コンピューター・インターフェイス」と呼んでいます。
人がものを考える時に発生するかすかな信号を検出します。
かすかな信号は脳波を分析する事で得られます。
ものを考える時に発生する信号を文章など何らかの方法を使って他人に届ける事が目的です。
ドゥズムラが調べているのは2種類の音を思い浮かべた時に発生する脳波をモールス信号のように使えるかどうかです。
実験では2つの音を聞かせます。
「ワウ」という音か「フィ」です。
被験者は「フィ」の音を聞いたら「フィ」の事を考えなくてはなりません。
フィ。
「ワウ」と聞いたら「ワウ」の事を考えます。
ワウ。
2つの音を考えた時に発生する脳波を分析しモールス信号を理解する要領で被験者の考えを読み解くんです。
実験は正解率ほぼ100%の成功を収めました。
極めて初歩的な段階ですが人の心を読み取る人工的なテレパシーが実現したのです。
脳が行動を指令する信号を出す時その行動を正確に実行するため別の信号も出します。
行動をモニターするための信号です。
その信号を読み取る事ができれば更に高度なテレパシーが可能になるとドゥズムラたちは考えました。
モールス信号ではなく普通の文章で思考を伝えられるのです。
しかし特定の信号だけを読み取るのは容易ではありません。
脳内のさまざまな構造に邪魔されて信号は極めて小さなものになってしまうからです。
神経の活動を正確に把握するのは極めて困難な事です。
問題は信号とノイズの割合です。
例えばあなたに話しかけると私の脳内で声の信号が発生します。
それを検知するにはどうしたらいいか。
私の声が脳内で起きている唯一の活動であれば話は簡単です。
しかし脳は同時にさまざまな事を行っています。
例えば心拍の調整。
呼吸速度の調整。
周囲の環境を観察。
ものを考えそこに意識を向ける。
これら全てが脳内で同時に起きていたらどうでしょうか?さまざまな楽器が閉ざされた空間の中で一斉に鳴り響いているようなものです。
信号はけん騒の中でかき消されてしまいます。
(けん騒)これが私たちの直面している問題です。
それでもドゥズムラは脳の言葉を判別する事に何回も成功し人工テレパシーは少しずつ進歩しています。
いつか完全なテレパシーが実現するかもしれませんがそれは宇宙人がふだんから使っているコミュニケーション手段なのでしょうか?何らかのテクノロジーを使ってうまく脳波をやり取りできる生命体が宇宙に存在する可能性は十分に考えられます。
例えば行動をモニターするための信号を発生する部位が脳の中ではなくもっと表面にある生命体です。
この方が信号を外部に送り出すのに便利です。
このような宇宙人はアリのコロニー同様超個体のような形で考えを共有し合えるかもしれません。
惑星全体に住む宇宙人が一つの巨大な頭脳となればその思考力は私たちの想像をはるかに超えたものとなるでしょう。
現在のところ人間はそこまで思考を共有する手段がありません。
そのため私たちは毎日膨大な文章を書いたりメールを打ったりして自分の考えを人に伝えています。
テレパシーが実現すればそのような面倒はなくなりますが同時にトラブルも起きるでしょう。
「感情」というやっかいなものがあるからです。
その点より進化した宇宙人なら問題ありません。
彼らはきっと感情を超越した論理的な存在だからです。
しかしこの科学者はそう考えていません。
思考と感情はコインの裏表のようなものであり宇宙人にも私たちのような感情があるはずだというのです。
SFには冷たく感情のない知性の固まりのような宇宙人がしばしば登場します。
足の生えたコンピューターのような存在です。
そのような設定では感情は思考の邪魔となる原始的な衝動だと見なされます。
しかし知性が優れた宇宙人には本当に感情や心のようなものがないのでしょうか?心理学者リサ・バレットの研究によれば言語や記憶理性的な思考さえも全て感情に依存しています。
怒りのような強い感情を抱く時は何かを考える時や記憶する時あるいは美しい花を見る時とはまるで違う体験をしているように思えます。
でも脳の活動という見地からすると実はどの場合にも働く共通のネットワークが存在しているんです。
感情と理性は全く別のものだという考え方は古代ギリシャの時代にまで遡ります。
プラトンは感情を野蛮な本能だと見なしました。
チャールズ・ダーウィンは感情は人間が動物から進化した名残でありもはや何の役にも立たないと述べました。
未来の人類やはるかに進化した宇宙人は感情を捨て去っているように思えます。
しかしバレットによれば感情と理性を切り離す事は不可能です。
バレットは感情がどのように思考を形成するのかを研究しています。
感情の根底にある基本的な状態コア・アフェクトを本人が気付かないうちに変えてしまう実験を行っているのです。
実験に参加した被験者には左目と右目でそれぞれ違う画像を見てもらいます。
片方は抽象的な図形と砂嵐のようなノイズがチカチカと交互に映し出されます。
もう片方は静止画で普通の表情笑顔しかめっ面のうちどれか一つが映ります。
この2つを左右別々の目に見せた場合意識されるのはチカチカした画像の方だけで静止画は意識されません。
しかし静止画も潜在的には意識に届いています。
バレットは被験者の心拍数呼吸数汗のかき具合などを調べる事で潜在的に意識された静止画が感情にどのような影響を与えているかを分析しました。
その結果笑顔を見た人々の方がしかめっ面を見た人々よりも抽象的な図形を美しいと感じる事が明らかになりました。
私たちがものを見る時感情を持たずに反応する事はありません。
何を見るかそれをどう判断するかには感情が大きな影響を与えています。
感情は私たちの考え方や関心の持ち方を左右しているのです。
今あなたは他の全てを無視して私に注目しています。
感情のなせる業です。
認識力を研ぎ澄ますのにも役立っています。
それら全てを感情が生み出しているんです。
もし感情が意識や自己認識に不可欠のものだとしたら宇宙人も感情を持ち私たちと同じように使っているはずです。
目標を達成するため。
個性を発揮するため。
自分たちの世界を理解するため。
宇宙人の思考がどんなものか本当のところは分かりません。
それはきっと私たちの想像を超えたものでしょう。
しかし地球上の他の生物の思考を研究する事で私たち自身とりわけ脳の神秘に触れる事ができました。
いつの日か宇宙人と出会う事ができれば意識や感情や想像力が私たちだけのものなのかそれとも宇宙に広く存在するものなのかが分かるでしょう。
今のところそれを知るすべはありません。
できるのは想像する事だけです。
2017/01/06(金) 22:00〜22:45
NHKEテレ1大阪
モーガン・フリーマン 時空を超えて・選「宇宙人はどのように思考するのか?」[二][字]

宇宙人がいるとしたら、どんな思考をするのだろうか?違う惑星で進化を遂げた以上、感覚や思考の形式は人間とまったく違うのでは?地球の生物を手がかりにヒントを探る。

詳細情報
番組内容
進化生物学者や化学環境学者は、脳を持たない植物が動物と同じ行動をすることを、実験や観察で証明している。では、植物も高度な思考能力を持っているのか?アリを研究する動物行動学者は、アリのコロニーに着目。集団としての知的能力の高さは、宇宙人にも当てはまるのか?また、宇宙人を使うのか?使うならどんな言葉なのか?言語学者や神経学者が、さまざまなアプローチでなぞに挑む。(2016年10月初回放送)
出演者
【語り】菅生隆之