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書き起こし 土曜ワイド劇場 「終着駅の牛尾刑事vs事件記者・冴子」 2017.01.07

(山路刑事)しかも1億。
誰にかけられたんですか?うわあっ!容疑者なんですか?
(こう)3回結婚して3回夫を殺した女だって…。
(咲田早苗)怖い人…。
『土曜ワイド劇場』「終着駅の牛尾刑事」…
「VS事件記者・冴子」
「ラストファミリー」このあとすぐ

(物音)
(藤崎こう)死に神…。

 

 

 

 

(牛尾正直)
大都会東京
東京には多くの交差点があります
人の人生にもまたいくつもの交差点があるのではないでしょうか
その人生の交差点で人は出会いすれ違いそして別れていきます
幸せに繋がる出会いもあれば不幸せに繋がる出会いもありそして悲劇へと繋がってしまう出会いもまたあるのです
殺人という悲劇に

(携帯電話の着信音)牛尾です。
(坂本課長)「モーさん藤崎こうが死んだ」ええっ?
(坂本)10年前に我々がワッパをかけ損なった黒い未亡人だ。
あの藤崎こうが死んだんだ。

(山路刑事)いつか必ずこういう日が来ると思ってたよ。
3人の男と次々と結婚し高額な保険をかけて3人とも平然と殺してきた女だ。
この女には無残な最期しかあり得ないって。
物取りの犯行じゃなさそうだし恨みによる犯行か…。
殺しじゃないんだ。
自殺したんだこの女。
自殺?屋上から飛び降りるのを通行人が110番通報してくれてそれで。
これ握り締めて死んでた。
2度目の結婚で子供を1人産んでるはずだから恐らくその時の子じゃないかと思う。
藤崎こう
私にとってこの女性の存在は胸の奥に突き刺さった一本の鋭いトゲのような存在でした
10年前の事件で出会い疑いを持ったものの結局何一つ明らかに出来なかった3つの殺人事件
マスコミや世間は当時この女性をこう呼びました
「疑惑の女黒い未亡人」と

10年前のあの日私は同じこの部屋で今と同じように被害者の家族が到着するのを待っていました
(大上刑事)奥さんが見えました。
こちらです。
どうぞ。
ご主人の藤崎正明さんに間違いありませんか?主人です。
間違いありません。
ご主人は西新宿にある芦川神社の境内の階段の下で亡くなってました。
その少し前午後11時18分に境内の階段の上で2人の酔っ払いが口論しており若い男が年配の男性を突き飛ばして逃げたという110番通報が入ったのでパトカーが向かいました。
到着した時には残念ながらご主人はもう…。
(足音)
(倉橋真理)パパ?パパ!パパ!どうしてよ…!どうして死んじゃったのよパパ!パパ…!
(真理の泣き声)お身内の方ですか?そっちが主人の愛人その1。
ここで騒いでるのが主人の愛人その2。
もういいでしょあなたたちは外で。
あんたなんだ…。
あんたがパパを殺したんだ。
そうなんでしょう!?パパ言ってたんだから。
うちの女房は前に2度結婚した事があって2度とも亭主に高額な保険金をかけて殺した怖い女なんだって!パパ言ってたんだから…。
あんな怖い女とは別れてお前と結婚するって…。
なのに…。
あんたなんだ。
あんたが殺したんだ!人殺し!人殺し!
(大上)落ち着いてください。
落ち着いて!こちらでお話伺いますんで…。
離してよ!こちらで…。
人殺し!
(咲田早苗)本当の事よ。
その人が2度結婚して2度とも夫になった人に保険をかけてその2人ともがおかしな死に方をした事は本当の事だわ。
1人目は私の夫だった。
その人が私の夫に手を出して…。
仕返しってわけよね。
自分の亭主を盗まれて…。
今度は私の亭主を盗んで愛人に納まって…。
それで復讐したつもり?かわいそうな人ねあなたって。
3度も結婚したのに3度ともご主人におかしな死に方されるなんて。
4度目はないといいけど。
彼女の言った事だったら本当の事よ。
私が彼女のご主人を奪って結婚した事も本当。
少し詳しくお話し願えませんか?2度の結婚とそれから保険の事も。
いくらかけてらっしゃるんですか?藤崎さんに。
2億ですけど。
私は主人と共同経営で社員10人ほどの小さな不動産会社をやってます。
もし代表である主人の身に何かあれば10人の社員とその家族はたちまち路頭に迷う事になるわけです。
保険はまさにそのための保険であってやましい事は何もありません。
ねえ刑事さん。
早く犯人を捕まえてくださいね。
2人だっていろいろ言われるのに3人ともなれば必ず言われるでしょうね。
保険金を目的に3人の夫を殺した悪魔のような女だって。
モーさん。
秘書の杉村さんに来てもらった。
(杉村隆)杉村です。
10年前に正明社長が亡くなった時に何度か。
その節は…。
どうぞ。
はい。
社長です。
間違いありません。
まさか自殺だなんて…。
本当はおつらかったんじゃないでしょうか。
疑惑の女黒い未亡人なんて呼ばれて…。
通報者に?直接会ってどんな状況だったのか詳しく話を聞いてみたいんです。
それがわからんのだよどこの誰だか。
わからない?通報はしたものの関わり合いになるのが面倒だったんだろう。
名前も住所も言わずに電話を切ってしまったそうなんだ。
ですが携帯でしたら…。
公衆電話だったんですか?課長これはおかしいです。
ちゃんと調べるべきです。
自殺でない可能性も…。
(大上)課長遺書出ました。
正確には遺書らしき走り書きですが。
自宅の書斎のゴミ箱の中にありました。
ゴミ箱に?筆跡は鑑定したんだな?
(西谷刑事)本人の字に間違いないようです。
(山路)「なにもかも全部終りにしたい楽になりたい」…。
決まりだなこれで。
(緒方浩平)「疑惑を残したまま自ら命を絶つ!」…。
これはまた騒ぐだろうね冴子の奴は。
なんつっても名付け親だからな「黒い未亡人疑惑の女」の。
(川村冴子)あり得ない…。
あり得ないわよ。
もう絶対にあり得ない。
自殺なんて…!だって私会ったんですよ!藤崎さんに。
亡くなる3日前。
それもあのビルの屋上で。
あの時藤崎さんすごく元気ですごく楽しそうで…。
そんな人が…。
どういったいきさつで会ったんですか?
(冴子の声)1週間ほど前に電話がかかってきたんです。
「ちょっと会えないかしら」って…。
藤崎さん…?10年ぶりね。
私が若返ってきれいになっちゃったんでびっくりした?お直ししました?してないわよそんな事。
ここよここ。
女はねいくつになっても恋をしなきゃいけないの。
疑惑の女黒い未亡人。
私あなたに感謝してるのよ。
いい冠をつけてくれたって。
あの記事の中では私はイニシャルになってるけど私を知ってる人はみんな気づいたわ。
3回結婚して3回夫を殺した女だって…。
殺したとは書いてませんよ。
でも疑惑の女でしょ?それはまあ…。
10年前あなたがつけてくれた冠のおかげでみんな私の事がすごく怖いみたいで仕事が実にスムーズにいくの。
おかげで会社も随分大きくなったわ。
社員も増えたし私もお金持ちになった。
このビルもこの前買ったのよ。
それもこれもみんなあなたのあの記事のおかげ。
(車のブレーキ音)あっ!ジロさん!ここここ!ちょっと待ってて!すぐに行くから。
いい男でしょ。
あの人が恋のお相手ですか?まあ介護されてるようなもんだけど。
じゃあ。
ねえ川村さん。
うん?私3回じゃなくて本当は4回なの。
「3回じゃなくて本当は4回」…。
そう言ってたんです藤崎さん。
3回じゃなくて本当は4回だって。
私その時思ったんですけど藤崎さんは3回結婚して3回ご主人を不審死で亡くして3回保険金を受け取ってるわけですよね。
でも本当は…。
もう一人不審な死に方をした人物がいる…。
そういう事ですか?保険?終生保険とは縁が切れなかったようだ藤崎こうは。
4度目ですか?えっ?誰にかけたんですか?4回目は。
いや。
今度は逆だ。
かけてたんじゃなくてかけられてたんだ。
かけられた?しかも1億。
誰です?誰にかけられたんですか?藤崎正明の愛人その1だった咲田早苗。
かわいそうな人ねあなたって。
4度目はないといいけど。
(坂本)保険に加入したのは平成18年12月20日。
藤崎正明が殺された直後だ。
(山路)まあ咲田早苗にしてみれば亭主を寝取られ保険をかけられて殺されたという恨みがある上に愛人だった藤崎まで殺されたわけだから藤崎こうに保険をかけたのは一種の意趣返しってとこなんじゃないですかね?課長。
西伊豆へ行かせて頂けませんか?西伊豆?西伊豆の松崎は藤崎こうと咲田早苗の郷里で咲田早苗は現在松崎に居住してます。
行かせて頂けませんか?松崎へ。
(牛尾澄枝)でもあの人が自殺するなんてね。
(澄枝)10年前の事件の時あなたものすごく気にしてたでしょ?この人の事。
冴子さんが書いた記事読んだ時私びっくりしたもの。
3度も結婚して3度ともご主人が不審な死を遂げて3度も保険金もらって。
そんな人間っているのかなって。
あっねえ。
子供の写真握って飛び降りたって書いてあるけどこの人お子さんいたの?1億の保険…。
3回じゃなくて本当は4回…。
姿を消した通報者…。
翌日私は藤崎こうと咲田早苗の郷里である西伊豆の松崎町へ向かいました

(沢村圭子)お見えになりました。
(早苗)どうぞ。
失礼します。
咲田早苗さんですか?はい。
突然申し訳ありません。
新宿西署の牛尾です。
10年前に藤崎正明さんの事件を…。
覚えてるわ。
結局犯人を捕まえられなかった無能な刑事の一人。
その事については本当に申し訳ないと思ってます。
ですが我々としても犯人逮捕を諦めたわけじゃありません。
必ず逮捕をと思ってます。
どうぞ。
それにおかしな言い方になるかもしれませんが藤崎こうさんの死が10年前の事件に光を当ててくれる可能性も…。
どういう事?何か言い残して死んだの?あの人。
藤崎こうさんの死には疑問があるそう思ってます。
自殺なんかじゃなく殺された。
そういう事?その可能性もあると…。
そうなの。
殺されたのあの人。
よかった。
えっ?自殺じゃ保険が下りないんじゃないかと思って心配してたの。
でも殺されたんだったら間違いなく下りるわよね?保険。
こうさんに保険をかけてらっしゃったんですか?かけてたわよ1億円。
その事はこうさんはご存じだったんですか?もちろん知ってたわ。
あの人に私ちゃんと聞いたもの。
あなたに1億の保険をかけるけどいいかしらって。
そしたらあの人好きにすればって。
だから好きにさせてもらいました。
自殺なんかじゃなくて殺されたんだあの人。
だから刑事さんがこんなところまでわざわざ私に会いに来たってわけだ。
1億の保険金を狙って私があの人を殺したとそう疑って…。
そうなんでしょう?咲田さんは11月15日おとといですが夜7時頃から9時頃までの間どちらにいらっしゃいましたか?丸の内にいたけど。
丸の内?東京の丸の内よ。
あそこのクリスマスイルミネーションを見に行ってたの。
咲田さんは藤崎正明さんが亡くなられた時にこうさんにおっしゃいましたね。
4度目はないといいけど。
あの言葉はどういう意味でおっしゃったんですか?どういう意味って言葉どおりの意味よ。
あの人は3回結婚して3回とも夫をああいう形で亡くしたわけだからもう一回そんな事が起きないようにっていう意味。
でもなんで?こうさんは亡くなる3日前に…。
私3回じゃなくて本当は4回なの。
3回じゃなくて本当は4回…?ですから4度という言葉が気になったものですから…。
心当たりはないけどあの人の事だもの本当は4回結婚してたのかもしれないわね。
だとするとその人ももう…。
本当怖い人…。
はい…。
牛尾さん。
咲田早苗さんに会いにいらしたんですか?冴子さんはどうして…?黒い未亡人の特集編集長のオッケー出たんです。
でもう一度藤崎こうという人の人生をたどってみようと思って…。
それで咲田さんにインタビューを申し込んだんです。
そうですか。
牛尾さんは今晩はこちらへお泊まりですか?いえ所轄に顔を出したら帰ります。
じゃあ私もそこまでご一緒します。
インタビューの時間までまだ時間あるし私も街で聞き込みしますから。
牛尾さん咲田さんは容疑者なんですか?いえいえ。
まだ殺しと決まったわけじゃありませんから。
何言ってるんですよ?牛尾さん。

(ジロ)長年の念願がようやくかなったわけだ。
保険の1億円。
でいくらもらえるんですか?僕は。
(水谷刑事)咲田早苗さんと藤崎こうは幼なじみで小さい頃からとても仲が良かったそうです。
その仲の良かった友人に亭主を寝取られるという一番手ひどい裏切りを受けたわけですから早苗さんの怒りとショックは大きかったと思いますよ。
当時よく早苗さんと藤崎こうがつかみ合いの喧嘩をして早苗さんにはまだ1歳になるやならずのお子さんがいたのでこの子のためにも絶対に主人とは別れないって言ってたらしいんですが結局は泣く泣く…。
それにしてもつくづく怖い女だと思いました。
早苗さんが離婚届に判をついた翌日に自分たちの婚姻届を出しそれからひと月も経たないうちだったんですから。
ご主人の石川さんがあんな死に方をしたのは…。
(水谷)最初は不運な事故そう思ったんですが調べてみたら石川さんに1億もの保険がかけられている事が判明したもんですから受取人であるこうを署に呼んで何度も何度も取り調べたんです。
ですが決定的な証拠がなくて結局事故という結論になってしまって…。
やはりDNAですかね。
DNA?藤崎こうの父親というのはどうしようもない男だったそうなんです。
(こうの父親)うるせえ!
(水谷)働こうともせず朝から酒を飲んで飲む打つ買う。
(水谷)おまけに女房や一人娘のこうにまでひどい暴力を振るってたっていうんですから。
その父親が夜釣りに出掛け酔って岸壁から海へ転落して死亡したそうなんです。
もしかしたらその父親にも保険が…?そうなんです。
母親がかけてたそうです。
父親が亡くなった時彼女は中学校の2年14歳だったそうですがその保険金で高校大学と進学出来たそうですから。
父親が亡くなった現場その場所を教えて頂けませんか?
藤崎こうの言葉を思い出していました
3回じゃなく本当は4回なのと言ったあの言葉を…
4度目はないといいけど。
私3回じゃなくて本当は4回なの。
(携帯電話の着信音)牛尾です。
(海野鑑識係)昨日牛尾さんに頼まれたもの手に入りました。
今聞く事は可能ですか?いいですよ。
いきますよ。
ありがとうございました。
戻り次第すぐに取りに行きます。
それじゃ。
逃げた?自宅にもいないし逃げたとしか思えないわ。
やっぱりホンボシなのよ。
咲田早苗が姿を消したのは牛尾さんに会った直後だもの。
やばいと思ってそれで逃げたのよきっと。
じゃあとっとと捜しに行けよ。
何のんびり飯なんか食ってるんだよ!ったく…。

(男性の声)「あの僕今西新宿にある芦川神社の境内にいるんですけど」「酔っ払いが喧嘩してて…」「若いほうの人が年配の人を階段から突き飛ばしてその人頭から血出して階段の下で動かなくなってしまってるんです」
(警察官の声)「西新宿芦川神社の境内ですね」
(男性の声)「そうです階段の下です」
(警察官の声)「あなたのお名前と住所を」「
(電話の切れる音)」
(警察官の声)「もしもし?もしもし?」モーさんこれ確か10年前の…。
そうです。
藤崎正明さんが殺された時の通報者の声です。
それからこっちも聞いてください。
(男性の声)「あの私今西新宿9丁目のビルの前にいるんですけど屋上からいきなり女の人が飛び降りてきて倒れたまんま全く動かないんです」「すぐ来てください」モーさんまさか…。
2つの声はよく似ています。
もしも同一人物の声だとしたら…。
大上声紋鑑定大至急。
(大上)はい。
善意の第三者が10年経ったとはいえ2人の人間の死にそれも一組の夫婦の死に偶然遭遇するなんて事はまず考えられない。
もしも同一人物だとしたらこいつの目的はただ一つだ。
我々の捜査の目を別の方向へ向かわせるため。
まんまと引っかかったってわけですね俺たちは10年前。
あの時の犯人の唯一の手掛かりは争った形跡のある25センチのスニーカーのゲソ痕だけ。
いくら捜したっていなかったわけですよそんな男は。
とりあえず藤崎正明とこう夫婦の周囲にいる20代後半から40代半ばまでの男を全て洗い出してくれ。
2つの声の主が同一人物であると判明次第ただちに捜査本部を設置する。
かかってくれ。
(一同)はい。
なんだよじゃあ行方がわかんねえのかよ?咲田早苗。
アパートの隣の人に帰ってきたら知らせてくれるよう頼んできたけどどこへ行ったんだかまったく…。
息子さんが東京にいるみたいだから午後にでも行って聞いてみようとは思ってるんだけど。
出た出た出た。
美奈子先生!美奈子先生?
(寺田美奈子)「民族がまとまった1つの国とは程遠いものがあります」ああ最近よく見るわねこの人。
それにしてもすげえよな。
32歳で教授だぞ。
おまけに美人でしかも独身だ。
浩平さんって本当に節操のない生き物でございますわね。
ちょっときれいな女の人だったら誰でもいいんかい!あら?何お前知らないの?何を?彼女今お前さんが追っかけてる事件と無関係じゃねえぞ。
無関係じゃねえぞって…どういう事よ?実は彼女10年前に殺された藤崎正明の娘なんだよ。
えっ?藤崎こうが追い出したって言われてる前妻保子との娘なの。
本当!?
(美奈子)「でも本場のイギリスではあまり盛り上がってませんよ」
(男性)「そうなんですか?」いける!ん?今を時めく大学教授で美人コメンテーターの寺田美奈子と疑惑の女黒い未亡人との意外な関係。
ハハッ…。
来週の特集はこれでいける!頂き!ハハッ…。
おい!ありがとう!あ〜あ…かわいちょうな美奈子先生。
あのスッポン女にかみつかれちゃうのね〜。
(美奈子)じゃあ10年前のあの記事はあなたがお書きになったの?そうなんです。
先生は藤崎こうさんをご存じですよね?ええ知ってますけど。
でしたら先日こうさんが殺された事ももう…。
殺された?自殺したんじゃないの?あの女。
いえ…正式発表はまだですが新宿西署は殺人の線で動いています。
そう殺されたの…。
それでなんですが…藤崎こうという一人の女性を先生はどう見られていたのかそういう事を少しお話し頂けたらと思いまして。
そういう取材ならお断りします。
あの女の事は思い出すのも嫌なの私。
あの女が父の前に現れてからは嫌な事悲しい事つらい事ばかりでしたから。
そういう事で結構なんです。
ぜひそういうお話を。
今も言いました。
思い出すのも嫌だって。
これ以上お話しする事はありません。
失礼します。
思い出すのも嫌か…。
声紋鑑識の結果2つの通報者の声は同一人物の声であると判明しただちに捜査本部が設置されました
声の主の該当者は今のところ28名です。
ほとんどが藤崎夫妻が経営している不動産会社藤崎商事の社員及びその関連会社の社員ですが社員以外の人物が3名います。
その3名ですが1人は咲田早苗と石川和正の息子咲田透33歳。
2人目は藤崎正明の前妻寺田保子との息子寺田正彦31歳。
ちなみに寺田正彦の姉は今テレビ等で活躍中の大学教授寺田美奈子です。
(捜査員たち)へえ〜。
(大上)3人目がちょっと厄介です。
(坂本)厄介?藤崎こうが2番目に結婚した谷口修司との間に出来た息子谷口誠一郎。
藤崎こうが死亡時に握っていたこの写真の人物ですが。
父親の谷口修司が交通事故で死亡後母親のこうが谷口家を出たためしばらくは祖母に育てられていたそうなんですが10歳の時に福岡市内の養護施設に預けられたそうです。
ですが誠一郎は15の時にその養護施設を飛び出してしまい以降行方がわかっていません。
生きていれば現在30歳です。
声のとれる者から絞り込んでくれ。
この通報者と同じ文言をしゃべらせて録音する。
ただし無断で声を録音する事は違法だ。
録音する際は必ず本人の了解を取る事。
本日より本件は自殺ではなく他殺。
全力を挙げて捜査にあたってくれ。
以上だ。
(捜査員たち)はい!
本格的な捜査がようやく始まりました
(社員)「あの私今西新宿9丁目のビルの前にいるんですけど屋上からいきなり女の人が飛び降りてきて倒れたまんま全く動かないんです」「すぐ来てください」もう一度ゆっくり読んで頂けますか?
(社員)あっはい。
「あの私今西新宿9丁目のビルの前にいるんですけど…」
(チャイム)留守みたいですね。
姉の寺田美奈子が503号室に住んでるそうですからそっちに聞いてみますか?
(大上)牛尾さん…。
失礼ですが寺田美奈子さんですね?そうですけど…。
突然申し訳ありません。
新宿西署の牛尾と申します。
大上です。
殺されたんですってねあの女。
はい?父の後妻です。
どうしてそれを?まだ正式発表はしてませんが…。
『週刊トピックス』の記者から聞きました。
新宿西署は自殺ではなく殺人の線で動いてるって。
実はその事で弟さんにお願いがあって伺ったんですが。
正彦だったら当分帰ってきませんけど。
チリに行きましたから。
チリ?ええ南米のチリです。
多分これから先は向こうで暮らす事になると思います。
いついらっしゃったんですか?
(美奈子)水曜日の夕方ですけど…。
水曜日の夕方?今週のですか?
(美奈子)そうですけど。
それは前から予定されてたんですか?それとも…。
どうしてそんな事をお聞きになるんですか?あの女が殺された事と正彦が何か関係があるとでもおっしゃるんですか?いえそういうわけでは…。
お父さんを殺した犯人は必ず逮捕する。
そう思っております。
申し訳ありませんでしたお時間を取らせて。
失礼します。
失礼ですが咲田透さんですか?
(咲田透)そうですけど…。
新宿西署の牛尾と申します。
大上です。
ちょっとお聞きしたい事があるんで少しお時間頂けませんか?ああ…。
歩きながらにしてもらえるんでしたら。
今失業中でこれから面接に行かなければならないんです。
結構です。
咲田さんは藤崎こうという女性ご存じですか?
(咲田)知ってます。
その人の事でしたら母から聞かされてきましたから。
どのようにお聞きになってるんですか?お父さんとお母さんを離婚させた女。
お前からお父さんを奪った女。
あんなに優しかったお父さんを変えてしまった女。
いろいろです。
お会いになった事ありますか?藤崎こうさんに。
ありませんよ。
会いたくもないですからその人には。
そのこうさんが亡くなられた事はもうご存じですよね?びっくりしました自殺だなんて。
こうさんの死は自殺ではなく殺人我々はそう考えています。
殺人…。
実はその事で咲田さんに協力して頂きたい事があるんですが。
あの人…。
どうでしょう?協力して頂けませんか?断ったら逮捕されるんですか?いえそんな事はありません。
でしたら断ります。
犯人扱いされてるみたいで不愉快ですから。
そうですか…。
申し訳ありませんもう一つだけ。
11月15日の夜午後7時頃から9時頃までの間どちらにいらっしゃいましたか?多分自宅にいました。
でも一人暮らしですから証明してくれる人はいません。
いいですか?もう。
結構です。
お時間を取らせました。
母親ともどもアリバイなし。
牛尾さん!牛尾さん!さすが牛尾さん早いですね。
はい?だってもう見つけちゃったじゃないですか。
藤崎こうの謎の恋人ジロさん。
ジロさん?だって今話してたでしょ?ジロさんと。
いえあの人は咲田さんですよ。
咲田早苗さんの息子の咲田透さん。
えっ?
(大上)人違いですよ絶対。
第一おかしいじゃないですか。
咲田早苗の息子が藤崎こうの恋人だなんて。
それはそうですけど…でも…。
お忙しいところ申し訳ありません。
改めて指紋の採取をしたいもので。
びっくりしました。
自殺だと思ってたら他殺だなんて…。
あっ…どうぞ。

(海野)ああ…素人ですねこの荒らし方は。
大上他の部屋の確認を。
はい。
なくなったものの確認をお願いしたいんですが。
警察の調べが終わったら片付けてもいいそうだから若い子4〜5人よこしてよ。
きれいに片付けてから社長の祭壇設置するから。

(大上)こっちもです。
何かを捜し回ってますね。
それほど大きくないものだ。
ポケットに入るぐらいのもの…。
単なる泥棒ではなくうちのヤマに関係ある人物恐らくホンボシの仕業…そういう事だな?犯人にとっては何か重大なもの証拠とも思えるものが自宅に残されておりそれを捜し回った…そんな感じです。
窓の鍵は全て内側から施錠されてましたし玄関や裏口それに門の錠前も壊されてませんでしたので鍵を所持している人物と見て間違いないと思います。
いえそれはまだ…。
わかり次第また連絡します。
(大上)牛尾さん声とれます。
ん?もしかしたら咲田透の声をとれます。
出前ですよ出前。
ジロが透だったとしたらここで出前を取った可能性もありますよね?そうか…間違いのないように客の注文を録音する店も多いな。
調べてみます。
(海野)牛尾さんこっちも出ました。
このパネルに付着していた咲田透の指紋とソファやテーブルなどに付着をしていた指紋とが一致を致しました。
(海野)これで咲田透はジロと名乗る人物と見て間違いないかと思います。
それからもう一つ。
これもかなりあちこちで付着していた指紋があるんですが誰の指紋か全くわかっておりません。
念のため調べておきます。
指紋の一致及び出前を頼んだ咲田透の声が入手出来た事もあって私たちは咲田透の事情聴取に踏み切りました
(山路)じゃあジロと名乗って藤崎こうに近づいた事は認めるわけだな?なんのために近づいたんだ?何か目的があったんだろう?殺すつもりでした。
(山路)殺すつもりだった!?
(咲田)子供の頃からあの人の事は母からよく聞かされて知っていましたし母があの人に1億もの保険をかけている事も知っていました。
そんな母を軽蔑すると同時になんか…母が哀れに見えて。
あの女にだまされて…。
母の一生はあの人を憎み恨む事だけで終わってしまうんだってそう…。
その頃僕自身もリストラされるわ失恋するわで…。
それもこれもみんななんかあの女のせいだって思うようになってしまって…。
あの女を殺したらどんなにせいせいするだろう…。
その上母に1億の金をあげられるんだって…。
それで半年前の夜あの人の家に忍び込んだんです。
そうしたらあの人が死んでて…。
(物音)死に神…。
死に神?死に神を待ってたんですあの人。
ありがとう…迎えに来てくれて…。
あの子に会わせてくれるんでしょ?
(咲田)うわっ…。
誠一郎に…会えるんでしょ?
(咲田の声)死にたいんだ…そう思いました。
悪魔みたいな女が今死を望んでる。
すぐに訪れるだろう安らかで穏やかで幸せな死を待ってるって…。
でもその時なんだかものすごく腹が立って…。
ただ金のためだけに何人もの人を殺しその何倍もの人の人生をめちゃめちゃにしておいて自分だけは安らかに死ぬ?ふざけるな!そう思ったんです。
それで…決心したんです。
殺すのはこの女が一番幸せだと思った時一番生きたいと願ったその時だって…。
それで…。
(せき込み)ほらだから言ったろ?
(咲田の声)それからはあの家に泊まり込んでお粥を作り風呂に入れ洗濯して掃除して…。
あなた名前は?
(咲田)えっ?名前あなたの。
どうしてこの家にいたの?泥棒にでも入ったの?まあそんなところです…。
だったらジロさんだわねあなたは。
(咲田)ジロ?盗みに入ったけど人を…それも人の命を助けちゃったねずみ小僧ジロさん。
(山路)もうそれぐらいで結構だ。
あんたの手厚い介護で藤崎こうは瞬く間に元気になりおまけにきれいにもなった。
60近い女が息子みたいな若い男に恋をしたんだ。
きれいにもなるわなあ。
ジロさんという男を手に入れて藤崎こうは幸せになったっていうわけだ。
ジロさんと一緒に生きたいと心から願った。
だから殺した。
そういう事だよな!?いや僕は…。
そして彼女の死を自殺と思わせるためにあんな通報を警察にし証拠が残っているんじゃないかと不安になって家中を引っかき回した。
そうだよな?僕は…あの人を殺したりなんかしていません!まだでしたから。
(山路)まだ?あの人が一番幸せだと思う時一番生きたいと願う時は生き別れた息子さんと会えた時です。
谷口誠一郎の事か?
(咲田)会いたがってましたからその息子さんに。
あのな…。
(ノック)牛尾さん山さんすいません。
一致したんだろ?通報者の声と咲田透の声。
それが…違うっていうんです。
(山路)違う!?似てるけど別人の声だって…。
ええ〜!?
(食器を洗う音)母さん。
(早苗)ん?あの人は母さんが思ってるほど悪い人じゃないと思う僕は。
最初は僕もそう思った。
母さんや世間の人が言うようにお金のために次々と平気で人を殺していった悪魔みたいな女だって。
だけど何度か会ったり話したりしているうちにこの人はそんなに悪い人じゃないんじゃないかって…。
(早苗)透はあの人の何を知ってるっていうの?何をって…。
(早苗)何も知らないからそんな事が言えるのよ。
でも…。
あなたがあの人を悪い人じゃないって思うんだったらそう思えばいい。
でも母さんは…。
母さんじゃないよね…?
(緒方)えっ?何?じゃあ咲田透じゃなかったって事か…。
ジロと名乗ってこうさんに近づいた事は認めたけど犯行は否認してるし殺したという証拠もないから釈放せざるを得なかったってそう言ってた牛尾さん。
となると…やっぱり母親のほうか?咲田早苗。
動機は十分にあるわよね。
長年の恨みつらみ。
アリバイもないしやっぱり彼女しか考えられないわホンボシは。
まあ保険の事もあるしな。
保険?あれ?俺言ってなかったっけか?ほらいつもはさ保険を誰かにかけてた藤崎こうが今回は逆にかけられたって話だよ。
かけられたって…誰かにかけていたんじゃなくてかけられていたの?そういう事だ。
しかも1億だぞ1億!誰よ?ねえ誰がかけてたの!?知りたい?うん!
(たたく音)イテッ…。
咲田早苗?
(海野)ええ。
前にお話ししたガイシャの自宅から出たもう一つの指紋です。
(坂本)その指紋の主が咲田早苗だったのか?
(海野)とにかくあっちからもこっちからもガイシャの所持品全てに付着していたと言っても過言ではないです。
それじゃあ…。
あの家で何かを捜し回っていたのは咲田透ではなく母親の咲田早苗そう考えて間違いないと思います。

(殴る音)
(杉村)ああっ!ああっ…。

(水谷)死亡推定時刻は昨日11月21日の夜午後9時頃から11時頃までの間。
死因は詳しい事は解剖の結果待ちですがあそこで後頭部を石で殴られ突き落とされたものと思われます。
崖の上に凶器に使ったと思われる石それにガイシャのカバンが放置してありました。
牛尾さん…。
(水谷)ズボンの尻ポケットも裏返ってますしカバンの中のものも全て引っ張り出されて地面に散乱してました。

(携帯電話の着信音)牛尾です。
10年前と今回2件の110番通報者の声と杉村隆の声が一致した。
「その杉村が殺されたとなると杉村殺しはうちのヤマと無関係ではない…そういう事だな?」こちらでも犯人は何かを捜してます。
となると…咲田早苗か?わかりませんまだ…。
ですがその可能性は強いと思います。
出掛けた?はい。
どこへ出掛けたかわかりますか?さあ?少し歩いてくるとおっしゃっただけですから。
そうですか…。
牛尾さんが2度も現れるのを見るといよいよホンボシみたいですね咲田早苗。
何か証拠出たんですか?いえ…話を聞きに来ただけですから。
牛尾さんお一人だから今日逮捕って事はないですよね?だったら牛尾さんが話を聞き終えたら彼女に取材させてもらいます。
咲田さんこうさんに保険をかけていたそうですね?1億の。
さすがに早耳ですね冴子さんは。
そりゃあ事件記者・冴子ですもの。
それぐらいの情報網は。
今日は逃げられないようにしっかり見張ってなきゃ。
あら…。
先日は失礼しました。
こちらこそ失礼しました。
お知り合いなんですか?お二人は。
結構長いんです私たち。
もちろん警察官と記者として…ですけど。
先生はどうしてこちらに?ここでテレビ局のスタッフの方たちと一緒にささやかな慰労会をやったんです。
久しぶりにのんびりと楽しい時間を過ごしました。
そうですか。
でもちょっと意外です。
先生がこの街にいらっしゃるなんて。
どうしてです?あっ…私が嫌いなのはあの女たちであってこの街とは関係ありませんから。
じゃあ私はこれで。
執念深いタイプだわねあの先生。
今度は「あの女たち」だって。
この間こうさんの事でインタビューを申し込んだんです。
そうしたらあの女の事は思い出すのも嫌だって断られて。
そういえば私が会った時もそうでしたね。
やはり「あの女」って言ってました。
それだけつらい思いをしたんだろうけどでももう何十年も…。
恨みではもっとすごい人がいましたよね。
咲田早苗。
ご主人をこうさんに取られたのはもう30年も前の事だっていうのにいまだに…。
まあそれだけご主人の事を愛していたって事なんでしょうけど。
もうお帰りになると思うんですけど…。
ありがとうございます。
どうぞ。
頂きます。
それにしてもこんな事になるなんて思ってもみませんでした。
藤崎様があんな形で亡くなるなんて…。
女将さんこうさんをご存じなんですか?藤崎様は私どものお客様でしたから。
客って…こうさんこちらへ来た事があるんですか?ここ15年は藤崎様は1年に1回だけ毎年12月5日には必ずお一人で当館の特別室をご利用になってたんです。
えっ?来年の12月5日も予約お願いね女将さん。
(圭子)かしこまりました。
去年いらした時もいつものように今年のご予約を頂いていたんですけどあんな事になってしまわれて…。
今年はお部屋にお花でも飾ってと思ってたんですが12月5日はその部屋にどうしても泊まりたいとおっしゃるお客様がいらして…。
もしかして咲田早苗さんですか?その部屋に泊まりたいって言ったのは。
ええそうです。
咲田様です。
えっ?お断りするのもおかしいしお受けはしたんですけど…。
私もこの街で生まれ育ちましたし藤崎様と咲田様の昔のいきさつは多少…。
ですからなんだかちょっと複雑というか…。
申し訳ありませんつまらない事を耳に入れて…。
失礼します。
なんだか意地の悪い意趣返しって感じ。
長年の憎き天敵はもう死んだんだからこれからは私の天下よって宣言してるみたいな感じじゃないですか。
同じ日にしかもわざわざ同じ部屋を指定して泊まるなんて。
それに保険金をあてにしてるんだろうけどこうさんが亡くなった直後からここに連泊してお金使って…。
うーん…もうなんだか頭にきた私!インタビューではこの辺りをスパッと…。
悪口言ってたら帰ってきましたよあの人。
最初は私で次は息子。
今度はまた私に逆戻り。
証拠でも見つかったのかしら?私があの人を殺したっていう証拠。
それほど大きくないものですよね?女性のコートのポケットにも男性のズボンのポケットにも入るぐらいのもの。
こうさんの自宅でも捜してこちらでも捜したもの。
バッグの中を探りズボンのポケットを探って…。
そうですよね?こうさんの秘書をしていた杉村さんが昨日の夜こちらで殺された事はもうご存じですよね?見つかったんですか?それは。
やっぱり無能な刑事だわねあなた。
私があの人の家からその小さな何かを捜したって言うんだったらそれがなんなのかちゃんと説明しなきゃ。
そうでしょ?咲田さんもう本当の事を…。
(早苗)私がこうさんや杉村さんを殺したって言うんなら証拠を突きつけなきゃ。
もう行ってもいいかしら?じゃあ。
どうしたんですか?牛尾さん。
大丈夫ですか?行っちゃいますよ!あの人。
いいんですか!?ちょっと…。
あっ…。
ホンボシの咲田早苗行っちゃいますよ!あの人…あの女…。
12月5日…。
ちょっと…。
ちょっと待ってくださいよ牛尾さん。
牛尾さん!
その時になって私は初めてこの事件の奥底には大きな謎が隠されていた事に気づいたのです
咲田早苗の元の嫁ぎ先へ行き役所で調べ咲田早苗の勤め先で聞き咲田早苗の中学の同級生に会い街を歩き人に話を聞く度に私の中に生じた謎は一つずつ氷解していきました
そして…
ええこうちゃんと早苗ちゃんはいっつも2人きりで海岸で話し込んでいました。
そこを…そこの場所を教えて頂けませんか?
全てはここから始まったのだそう思いました
45年前の12月5日その日から…
弟ならまだ…。
いえ今日は寺田さんにお聞きしたい事があって参りました。
私に?はい。
どういう事でしょうか?寺田さんは11月15日の夜…藤崎こうさんが亡くなられた日の夜ですが午後7時頃から9時頃までの間どちらにいらっしゃいましたか?どちらに…いらっしゃいましたか?
(坂本)寺田美奈子?咲田早苗透親子が容疑者である事に変わりはありません。
ですが寺田美奈子も容疑者の一人に加えるべきだと思います。
根拠は?「あの女」です。
「あの女」?寺田美奈子は藤崎こうの事を終始「あの女」と呼び捨てます。
両親を離婚に追いやり幸せだった家庭をめちゃめちゃにしたあの女。
優しかった母親につらい思いをさせ苦しめたあの女。
これは殺すつもりだったと供述した咲田透と同じ怒りや恨みの感情を寺田美奈子もまた持っている。
そう考えていいんじゃないかと思います。
けどモーさん寺田美奈子の父親正明が藤崎こうと結婚するために前妻の保子と離婚したのは彼女が確か…。
15歳の時です。
だとするともう20年近く経ってるわけだ。
いくら恨んでいたとはいっても20年もそんな感情が持続するとは…。
ですがもしも最近寺田美奈子と藤崎こうが会っていたとしたら…あるいは顔を合わせてしまったとしたら寺田美奈子の中にあった怒りと憎しみの感情が再燃してしまうという事も考えられるんじゃないでしょうか?裏は取れているのか?2人が会ったとか顔を合わせたとかの。
いえ…それはまだ。
アリバイはどうなんだ?走ってたそうです。
マンションの玄関の防犯カメラは午後7時28分にマンションを出て午後9時11分に帰宅している寺田美奈子の姿を捉えています。
ですがその間約1時間半ほど寺田美奈子がどこにいたのかの確認は取れていません。
寺田美奈子の自宅は代々木6丁目にあり西新宿の現場ビルまでは歩いて15分ほどで行けます。
1時間半あれば十分に犯行は可能です。
とりあえず裏を取ろう山さん。
(山路)わかりました!大上は寺田美奈子の写真を用意してくれ。
はい。
(携帯電話の着信音)
(携帯電話の着信音)牛尾です。
(水谷)「牛尾さん」「寺田美奈子ですが事件当夜は慰労会を抜け出してジョギングに出てます。
時間は…」そうですか…はいわかりました。
ホテルを出たのが午後9時21分で戻ってきたのは約1時間後の10時34分。
杉村隆の死亡推定時刻が午後9時頃から11時頃までの間ですから時間的には一致します。
咲田早苗のほうのアリバイはどうなんだ?自宅に1人でいたと言ってるそうですが証人はいないそうです。
2人ともアリバイなしか…。
しかし気になるなあ寺田美奈子。
寺田美奈子の写真です。
激怒りしてましたよ冴子の奴。
そうですか…。
ホンボシと対峙してるのにおかしな顔して突っ立ってるしなんか訳のわかんない事話し始めたと思ったら突然走ったまんま帰ってこないし藤崎こうの秘書が殺された事も全く教えてくれないし…。
おまけにまた咲田早苗にも逃げられちゃったの!もうキーッ!っつって。
ハハハハ…。
あの時はちょっと事情があったものですから。
冴子さん今どうしてます?べったり張りついてますよ咲田早苗に。
そうですか。
咲田早苗は今東京の息子のとこにいるらしいんですけど何がなんでも彼女の独占インタビューを取るの!って言って息巻いてましたよ。
いずれ彼女が逮捕されれば逮捕直前のインタビューは大スクープになるの!とか言って。
ハハハハ…。
で…なんなんですか?俺に調べてもらいたい事って。
(くしゃみ)取るわよ…もう絶対取るわよ大スクープ。
ああ…でも寒い…。
取るわよ…もう絶対取るわよインタビュー…!
(牛尾の声)咲田早苗寺田美奈子2人が捜したもの…。
問題はそれが何かだ。
それほど大きくないものだ。
女性のコートのポケットにも入り男性のズボンのポケットにも入るもの。
恐らく…片手で握れるぐらいのものだ。
なんなんだろう一体…。
ハンカチにティッシュ。
ポケットに入れるものでしょ?えー…鍵でしょ携帯電話あと定期。
それから最近は防災用に小さいラジオを入れてる人も多いわね。
他に何かないかな?うーん…さあなんだろう?あっ!あれ。
音楽が聴けるような小さなカセット。
古いなカセットとは。
今だったらレコーダーだろ。
ボイスレコーダーとかICとか…。
憎き天敵はもう死んだんだからこれからは私の天下よ…。
(坂本)ボイスレコーダー?藤崎こうは以前は手帳を使っていたそうですが書くより声を吹き込んでしまうほうが早いし楽だという事でスケジュールとかその時思った事なんかを日記代わりメモ代わりにして利用してたそうです。
常日頃使っていたガイシャのそのレコーダーがガイシャの身辺からなくなっている。
そういう事だな?どこにも見当たりません。
(坂本)だとすると咲田早苗と寺田美奈子の2人が捜したのは恐らくそのレコーダーだろう。
日記代わりメモ代わりに使っていたんだとしたら殺された日の事も吹き込まれていたはずだ。
11月15日何時にどこで誰と会う…というふうに。
必死に捜すわけですよ。
そんなものが我々の手に入ったらそれこそ一巻の終わりですからね。
問題はどっちがそれを所持しているかだ。
咲田早苗なのか寺田美奈子なのか…。
(携帯電話の着信音)すいません。
(携帯電話の着信音)
(携帯電話の着信音)牛尾です。
(緒方)緒方です。
牛尾さんのおっしゃるとおりでしたよ。
そういうエッセーも見つけましたよ。
そうですか。
で調査費用なんですけど今回は特別におまけしときま〜す。
そいじゃ。
ありがとうございます。
モーさんやはり顔を合わせてる。
藤崎こうと寺田美奈子。
こっちは9月18日に鎌倉で行われた寺田美奈子の講演会で主催者が撮った写真なんだがここに藤崎こうが写ってる。
(西谷)1回だけじゃないんです。
こっちは10月2日に京都で行われた講演会なんですがこっちにも。
課長。
もう…寺田美奈子一本に絞っていいかと思います。
藤崎こうを殺害したのは寺田美奈子であり10年前藤崎正明を殺害したのも恐らく寺田美奈子だと思います。
10年前我々に残された犯人の唯一の手掛かりは争った形跡のある25センチのスニーカーのゲソ痕だけでした。
じゃあモーさん寺田美奈子の足のサイズはもしかして…。
25センチです。
だいぶ前ですが女性誌に『夢の靴』というタイトルで自分の足は25センチなのでなかなか合う靴がないというエッセーを書いています。
ホンボシは寺田美奈子。
とすると藤崎こうのボイスレコーダーは美奈子が持っている!いえそれはわかりません。
咲田早苗の可能性もあると思います。
おかしいじゃないか!咲田早苗がホンボシじゃないんならなぜ彼女がそんなもの持ってる必要があるんだ?咲田早苗と藤崎こう…。
2人は14歳の時に殺人を犯しています。
うわーっ!全てはその日から始まったんだと思います。
45年前の12月5日から…。
(電話)はい寺田研究室です。
(美奈子)「もしもし?」
(ボタンを押す音)もしもし。
(こうの声)「11月15日夜8時に美奈子さんと会う事になった」この声の続き聞きたくない?聞くべきだと思うわ私は。
あなたが殺したあの人がこの世に残した最後の言葉を。
(早苗)「それにあなたに見せたいものがあるんだけど」「2人だけで会わない?」「どう?会う?」それとも…。

(携帯電話の着信音)はい川村です。
(早苗)「負けたわあなたには。
話してあげる本当の事」本当ですか?「ただし1時間だけよ」「それ以上は駄目。
いいわね?」これで頂き大スクープ!粘ってみるもんですね。
(チャイム)冴子さん!どうか…。
牛尾さん!あの人逃げたのよ!咲田早苗。
私をだまして逃げたのよ!
(携帯電話の着信音)
(携帯電話の着信音)いないのか?寺田美奈子。
寺田美奈子?ええっ!そっちもか?2人でどこかで会う可能性がある。
会うとしたら恐らく…。
なんで咲田早苗と寺田美奈子…。
ちょ…ちょっと!あの黒パト追いかけて!急いで!急いで!外国?少し前にタクシー呼んで大きなトランク引っ張って出掛けたって言うんだ。
管理人が言うには外国へ行ったんじゃないかって。
外国…。
正彦だったらチリに行きましたけど。
チリ…。
南米のチリ!?
(西谷)ありがとうございました。
タクシー会社わかりました。
どこ?帝国交通です。
タクシー会社に問い合わせて成田に向かってる車だと言えばわかるはずだ。
いや我々は現場へ行ってみる。
そこにいる可能性も考えられるから。
また連絡する。
あの古いビルですね。
見失わないでよ。
絶対に見失わないでよ!大スクープがかかってるんだから…!帝国交通の1986だ。
(西谷)はい。
(サイレン)いくら待っても寺田美奈子はここには来ません。
寺田美奈子は今成田へ向かってます。
行き先は恐らくチリです。
日本とは犯罪者引渡条約のない国です。
藤崎こうさんのボイスレコーダーを持ってらっしゃいますよね。
渡して頂けませんか?我々に。
今ならまだ間に合います。
ボイスレコーダー渡してください。
成田へ行くおつもりですか?チリまで行くおつもりですか?この前松崎へ行って参りました。
あの場所に立った時思いました。
全てはここから始まったんだと。
45年前の12月5日から始まったんだと…。
違いますか?無能な刑事さんじゃなかったみたいだわね。
ごめんなさい。
11月15日夜8時に美奈子さんに会う事になった。
そう言ってるわあの人。
本部に連絡入れます。
どこにあったんですか?これは。
昨日もう一度あの人の家に行ってみたの。
彼女がそういうものを使ってたのは知ってたし殺されたあの時も必ず何か吹き込まれてるそう思ってたから。
刑事さん私もう一つ盗んだものがあるの。
(早苗)それを美奈子さんに突きつけてあの人がこの世に残した最後の言葉を聞かせてやりたかった…。
(パトカーのサイレン)
(山路)帝国交通1986の車両ただちに車を止めなさい。
(山路)1986の車両ただちに路肩に車を止めなさい。
(パトカーのサイレン)
(パトカーのサイレン)窓開けてもらえますか?寺田美奈子だね。
藤崎こうさん並びに藤崎正明さん殺害の件で聞きたい事がある。
降りてくれるね。
(飛行音)
(美奈子)私の家はごく普通の幸せな家庭でした。
あの女が父の前に現れるまでは。
それからは…。
(寺田保子)あの女のどこがいいのよ!?両親が離婚したのは私が15歳の時です。
離婚後父はあの女の言いなりで私たちにはほとんど生活費を出してくれませんでした。
それで10年前のあの日の夜…。
父が金曜日の夜はいつも愛人の店へ飲みに行き神社の境内を抜けて帰っていく事を母から聞いて知ってましたから。
お金ないの。
100万出してくれない?
(藤崎正明)また金か…。
ついこの前もお前たちを外国に出してやりたいからって300万もの金をこうから…。
嘘よ!そんなお金もらってない!どうしてそんな嘘…。
嘘じゃない。
こうが保子に渡したって…。
嘘!あの女がお母さんを悪者にするために嘘ついてるに決まってるじゃない!落ち着け!離せ…!お願いお父さん!離して…ああっ!
(美奈子)あっ…!お父さん!お父さん!お父さん!ねえ…!
(美奈子の声)救急車をと思いました。
でも怖かった。
このまま死んじゃったらって。
怖くて怖くてたまらなかった。
それで私…。
次の日に新聞を読んでホッとしました。
父を殺したのは私じゃなかったんだって。
あの時は気を失っただけで父はまた歩き出しそれで犯人と喧嘩になって殺されたんだって…。
ずーっとそう信じてきました。
なのに今頃になってあの女が…。
世界地図が入ってきて初めて世界を見た日本人が一番驚いたのはなんだと思いますか?
(美奈子の声)なんであの女が…。
そう思いました。
でも無視すればいいと思って…。
それはイギリスの小ささです。
(美奈子の声)でも無視する事は出来なかった。
何かたくらんでると思った。
それで…。
一体なんなの?何度も何度も。
(美奈子)今度は私に保険をかけて殺すつもりなの?ねえ美奈子さん。
世間のみんなはあなたのお父様を殺したのは私だと思ってる。
でも私じゃないわ。
私はお父様を殺してなんかいない。
警察が調べた足のサイズ25センチの酔っ払った通行人でもないわ。
だったら…。
知ってる人よ。
あの人が金曜日の夜は必ず早苗さんの店へ行きあの神社を抜けて帰っていく事を知ってた人。
その事を知ってる人は多くはないわ。
私早苗さん秘書の杉村さんそれからもう一人いるわよね。
もう一人…。
(こう)わかったみたいだわね。
でも大丈夫。
警察になんか話したりなんかしないし他の人にも話すつもりはないから。
それも含めてあなたと2人だけでこれからの事もじっくり話し合いたいんだけどいいでしょ?わかりました。
冗談じゃない。
そう思いました。
あんな女にこれから先の私の人生をめちゃめちゃにされてたまるかって…。
それであの日の夜…。

(殴る音)
(こう)あっ…!死んじゃえばいいのよあんたなんて!死んじゃえばいいのよ!
(衝撃音)そのあなたの前にこのボイスレコーダーを持った杉村さんが現れた。
そういう事ですね?
(こうの声)「11月15日夜8時に美奈子さんと会う事になった」「私はお昼でも食べながらと思っていたけど彼女が夜がいいと言うので…」
(ボタンを押す音)
(杉村)あの夜社長に言われてビルの下で待機してたんです私。
いやびっくりしましたよあの時は。
いきなり屋上から社長が降ってきたんですから。
10年前もびっくりしましたけど。
(杉村の声)お父様が亡くなった夜ですよ。
(杉村の声)酔っ払いが喧嘩をしてるって嘘の110番通報したのは実は私なんです。
でも大正解でしたよね。
私がああいう通報をしていなかったら大学教授の寺田美奈子もコメンテーターの寺田美奈子もエッセイストの寺田美奈子もこの世に生まれてなかったわけですから。
(杉村)いまだに親殺しの罪で刑務所の中。
つまり私は今のあなたの生みの親っていうわけだ。
ですよね?だったら今度は何をしてくれるの?私のために。
せっかくね自殺だって通報したのに警察が他殺を疑い出し始めてるみたいなんです。
ですから出来るだけ早く犯人を作ってその犯人に自殺してもらおうと思ってます。
うってつけの人物がいるんですよ。
正明社長の愛人その1だった咲田早苗。
警察も疑ってるようだしちょうどいいと思うんです。
(美奈子の声)その時に思いました。
殺すべきなのはこの男だって。
杉村の魂胆は見え見えでしたから。
それであの日の夜松崎に呼び出しました。
(杉村)うわあ…よくこんな場所見つけましたね。
(杉村)ここだったら完璧だ。
いかにも自殺の名所って感じで。
あとは本番の決行日をいつにするかと遺書を用意しなきゃいけないんですがまあこれはなんとか僕のほうで。
(殴る音)
(杉村)うわあっ!ああーっ!
(美奈子の声)嘘をついたんですあの男。
ボイスレコーダーは持ってきたって言ったのになのにどこにも…。
藤崎こう…。
何もかも全部あの女のせいよ。
父があの女にさえ会わなければ私だってこんな事には…。
(ボタンを押す音)
(こうの声)「11月15日夜8時に美奈子さんと会う事になった」やめて!もう聞きたくない!あの女の声なんて。
いや…あなたは自分の耳で最後までしっかり聞くべきです。
あなたが殺してしまった人が何を考え何をしようとしてたのかを。
(こうの声)「さてと…」「問題は美奈子さんにどう切り出すかだけどあれこれ言うより直接見せちゃったほうがいいわねこの遺言書」遺言書…?
(ボタンを押す音)これが…その遺言書。
藤崎こうさんの遺言書です。
この遺言書はボイスレコーダーと一緒に杉村さんがこうさんの骨箱の中に隠してたものを咲田早苗さんが見つけてどうしてもあなたに見せたいと思って所持してたそうです。
どうして私にそんなものを…。
遺言書の内容ですが自分が死亡した場合自分が残す全ての財産動産不動産等々合わせて約14億は寺田美奈子さんと弟の正彦さんに残すそう書かれています。
えっ…?藤崎正明さんと一緒に築いてきた財産なのだから正明さんのお子さんであるお二人に返すのが自分の当然の義務だと思うとそう…。
じゃああの時2人で話し合いたいって言ったのは…。
恐らくこの遺言書の事…そう思います。
だったらなんで?なんであんな事…。
お父様を殺したのはお父様が神社の境内を抜けて帰っていく事を知っていた人物そうでしたね。
その事を知ってるのはあの女と早苗さんと杉村とそれからもう一人いるって言ったのよ!意味深に私だって言ったの!だから私…。
さっき…寺田さんはおっしゃいましたね。
お父様があの境内から帰っていく事をどなたからか聞いて知っていたと。
母よ。
母から聞いて…。
母の事言ったの?もう一人って母の事…?お金持ってきてくれた?お母様はよくあそこでお父様の帰りを待ってお金を無心してたそうです。
こうさんも早苗さんもその事は知っていたそうです。
それでもしかしたらお母様がと思ったそうです。
こうさんも誤解されたけれどもあなたも大きな誤解をなさったんです。
「もう一人」という言葉の意味を…。
それだけじゃない。
あなたはもっと大きな誤解をなさったんです。
あなたはさっきおっしゃいましたね。
お父様はこうさんの言いなりで生活費をほとんど出してくれなかったって。
違うの…?違うんですか?お父様が亡くなるまではお父様が亡くなられたあとはこうさんがあなたのお母様にかなりの経済的な援助をなさってたそうです。
去年お母様が亡くなるまでずっと…。
こうさんはあなたが大学教授になりマスコミで活躍する事をとても喜んでおられました。
(ボタンを押す音)
(こうの声)「ねえワイン買ってあるわよね?杉村くん」
(杉村の声)「はい」
(こうの声)「それからと…。
白いバラも生けたし」「この前の講演会であの子白いバラが一番好きだって言ってたの」「だから…」フフッ…嫌だ私ったら「あの子」だって。
まるで母親みたい。
フフフ…!でも考えてみたら我が子みたいなもんよね美奈子さんは。
(こうの声)「正明さんの娘なんだもんね」「さてと…これで準備万端整った」「美奈子さん喜んでくれればいいけど」「杉村くんそろそろ…」「あっ嫌だ。
スイッチ入れたままになってる」「まあいいか。
残しておきましょうこれは」「今日はきっといい日になるから」
(ボタンを押す音)私の…。
私のせいです…。
気づくべきでした…。
父の事もそれから…あの人の事も。

少しホッとしていました
「あの女」としか言わなかった寺田美奈子が「あの人」と言った事に…
その日私は冴子さんを誘って再び西伊豆を訪れました
ここってこの前牛尾さんが言ってた場所ですよね?全てが始まった場所…。
全てはここから始まったんだからここで終わらせるのが一番いいそう思って…。
終わらせるって事件はもう終わったんじゃ…。
まだ終わってないんですか?咲田さん…。
やっぱりいらっしゃいましたね。
必ずいらっしゃるそう思ってました。
12月5日…。
今日は命日ですよねこうさんのお父さんの。
1本目はこうさんのお父さんのため。
2本目はお二人のご主人でもあった石川和正さんのため。
3本目はこうさんの2番目のご主人谷口修司さんのため。
4本目は藤崎正明さんのため。
今年は2本増えました。
あの人と杉村さん…。
毎年そうしてらしたんですね2人で。
2人…?45年前の冬ここで14歳の2人の少女が1つの殺人計画を立てたんです。
それが全ての始まりだったんです。
45年前って…2人って…。
こうさんのお父さんを殺したの…。
父親に暴力を振るわれ学校にも来れなくなっていた少女に同情したんですもう一人の少女は。
(こう)死んじゃえばいいんだあんな奴…。
死んじゃえばいい…。
殺しちゃえばいいんだそんな奴。
こうちゃんがそうしてほしいなら私やってあげる。
(早苗)殺してあげる。
そして実行したんです。
うわーっ!父親の死は結局事故という結論になり14歳の2人の少女を疑う者は一人もいませんでした。
2人の少女はそれぞれの人生を歩み出し始めました。
中学高校一人は父親の残した保険金で大学へ行き一人は地元の銀行に就職し上司にすすめられた人と結婚したんです。
結婚相手は旧家の長男で1年後には長男も誕生し幸せになるはずでした…。
(泣き声)
(石川和正)うるせえオラ!!毎日毎日ギャーギャーギャーギャーいい加減に寝ろ!何してるのよ!やめてよ!やめて!家業が傾けば傾くほどご主人の暴力はエスカレートしていったそうです。
(早苗)もうどうしていいかわからない…。
(早苗のすすり泣き)
(早苗)わかんない…。
殺しちゃえばいいんだそんな奴。
(こう)私は早苗ちゃんに大きな借りがある。
13年前の借り…。
こうちゃん…?早苗ちゃんがそうしてほしいなら私やってあげる。
殺してあげる。
そして2人は計画を立て始めたんです。
2つ目の殺人計画を。
その時は2人はもう14歳の少女ではありません。
27歳の大人です。
疑われる可能性は十分に考えられます。
だから2人は細かく綿密に計画を立てたんです。
そんなに私の事好き?ああ大好き。
ちょっと!どういう事よ!そんな事言ったって仕方がないじゃないの。
好きになっちゃったんだもんね〜。
何してんのよ!亭主の面倒もまともに見られない女が何偉そうな事言ってんのよ!
(早苗の声)夫を寝取られた妻と夫を寝取った愛人。
その2人が共謀してるなんて誰が考える?そんな…。
街の人たちには私たちの最悪な関係を印象づけるために顔を合わせればののしり合ってつかみ合いの喧嘩をして…。
誰一人私たちを疑わなかった。
そしてようやく…。
どうしてそこまでする必要があったんですか?どうしてこうさんがご主人と正式に結婚する必要が…。
透よ。
息子さん…?主人も主人の一族も跡取りである透をどうしても私には渡してくれなかったの。
こうちゃんと正式に結婚してこうちゃんが石川家の跡取りとして透を育てるという条件でようやく私との離婚を認めてくれたのよ。
でもご主人を殺す必要が…しかも保険までかけて殺す必要があったんですか?早苗さんに向けられていた暴力が今度はこうさんと透くんそれに実のご両親にまで向けられるようになった。
そうですね?こうちゃんは何も言わなかった。
でも私にはよくわかった。
こうちゃんも透も彼の両親も今地獄にいるんだって。
そこから抜け出すにはそうするしかないって。
保険をかけたのは店の借金を返すためと彼の両親のために。
私もこうちゃんも1円ももらってない。
でも裏切ったんですねこうさんは。
裏切った?
(石川)ああっ!
(早苗)どうしてよ!?どうして約束破ったのよ!やる時は2人で一緒にって約束だったじゃない。
なのになんで勝手に1人で…。
(こう)早苗ちゃんこの子は大きくなるのよ。
大きくなったら必ずこう聞くわ僕のお父さんは?って。
その時早苗ちゃんなんて答えるの?
(早苗)それは…。
(こう)あなたのお父さんは暴力を振るう怖い人だったから友達と一緒に殺しちゃったのってそう言うの?早苗ちゃんはこう答えなきゃいけないの。
あなたのお父さんは優しい人であなたをとてもかわいがってくれたのよって。
でも悪い女の人にだまされてお母さんと離婚させられて殺されちゃったのって。
こうちゃん…。
お母さんはその女の人を恨んでるって。
一生許さないって。
そう言ってこの子を育てていくの。
それがこの子にとって一番いいと思う。
いい?必ずそうするのよ。
約束よ。
(早苗の声)会うのはもう今日で終わりにしようこうちゃんそう言った。
私は透を連れて東京へ出てこうちゃんがどこでどうしてたかは全く知らなかった。
もうこうちゃんには会えない。
一生会えない。
そう思ってた。
(早苗の声)だからびっくりしたわあの時は。
(早苗の声)本当にびっくりした。
いらっしゃいませ。
はい。
(早苗の声)懐かしかった。
飛びつきたかった。
でも…。
まさかあんただったとは…。
こう…。
藤崎正明の家内です私。
(早苗の声)ショックだった。
藤崎さんがこうちゃんのご主人だったなんて事知らなかったから。
私たち話し合う必要がありそうだわね。
(早苗の声)次の日私は15年ぶりで松崎へ来た。
(こう)早苗ちゃん!
(早苗の声)嬉しかった。
もう死ぬまで会えないと思っていたから本当に…本当に嬉しかった。
でも…。
(早苗)私知らなかったの。
あの人がこうちゃんのご主人だったなんて私全然…。
すぐ別れる今日で終わりにするからだからごめん本当にごめん。
終わりにする事なんてない。
むしろ絶好のチャンスだと思う私は。
絶好のチャンス?私が昔早苗ちゃんの亭主を寝取ったから今度は早苗ちゃんがその復讐で私の亭主を寝取った。
こうなったら私たちの事疑う人は一人もいないと思う。
そうでしょ?
(早苗の声)私もそう思った。
私たちの罪を知られないためにそうする事が一番いいって。
私たちは1年に1度だけ私たちが初めて罪を犯したあの日こうちゃんのお父さんの命日でもある12月5日に2人だけでここで会う約束をしたの。
(早苗の声)その日だけは敵じゃなく親友に。
仮面をかぶった私たちじゃなく本当の私たちに戻るために。
あとの事はもうご存じですよね。
藤崎さんが殺されてあの記事が出て私たちは人前では前以上に憎み合わなければならなくなった。
でも1年に1度だけのその日があったからなんとか…。
でも透があんな事してたなんて…。
ジロさんの事ですか?死に神に間違えたのよってこうちゃんそう言って笑ってた。
でもすぐにわかった透くんだって事。
だってあの子が作ってくれたお粥早苗ちゃんが作ってくれたお粥と同じなんだもん。
ウフフ…。
じゃあどうしてですか?早苗さんとこうさんは本当は憎み合ってはいなかったんですよね?だったらどうして早苗さんはこうさんにあんなに高額な保険をかけたりなんかしたんですか?こうちゃんに頼まれてたの。
自分が死んだら誠一郎くんに渡してやってほしいって。
(こう)自分が勝手に置いて出てきたんだから今さら会いたいもないんだけど。
でも…。
捜したの?こうちゃん。
怖くて…。
もし調べて死んでるなんて事がわかったら私…。
それに元気でいてくれたとしても自分を捨てた母親になんか会いたくなんかないだろうし。
会う事はもう諦めてる。
でもせめてそれくらいの事はしてやりたいの。
それしかしてやれる事はないから私には。
(早苗の声)口ではそう言ってたけど誠一郎くんに会いたがってたこうちゃん。
私も会わせてあげたくて捜してみたんだけど見つからなかった。
我々も捜したんですがわかりませんでした。
谷口誠一郎さんの行方は。
そうですか…。
今日はお渡ししたいものがありまして…。
こうさんはこの写真を握り締めたまま亡くなっていました。
あなたに持って頂くのがこうさんにとっても一番嬉しいんじゃないかと思いまして…それで…。
(泣き声)どんなに会いたかっただろう…こうちゃん。
牛尾さん。
牛尾さんがなぜ今日私をここに誘ってくださったのかようやくわかりました。
本当の事を全て教えてやる。
だけど記事にはするな。
そういう事ですよね?記事にするしないは冴子さんの自由です。
私にあれこれ指図する権限はありませんから。
私ね牛尾さんきれいな女の人に目がないおかしな記者仲間が1人いるんです。
彼絶対に事件ネタを追わないんです。
なぜなら自分が書いた記事を読んで1人でもつらい思いや悲しい思い傷ついたりするのは耐えられないって。
だから追うのは政治ネタだけ。
いいか総理と官房長官がツーショットで…。
政治ネタには怒りこそあれ悲しみなんかはないからって。
ジャーナリストとしてはどうかと思いますけどでも結構いい奴なんです。
私が今聞いた事を記事にしてしまったら苦しむ人悲しむ人傷つく人がそれこそ山ほど。
奴から絶交を食らう事は間違いなしです。
いい加減な奴だけど絶交を食らうのは私としてはちょっと。
ですから今聞いた事はこの場で封印します。
約束します。
こうさんが殺したのはお父さんと石川さんの2人だけであって2度目のご主人の谷口さんは殺してはなかったんですよね。
間違いなく交通事故だったと思います。
今になって考えてみるとこうさんはこういう結果になる事を予測して私にあの言葉を投げかけたんじゃないかって。
「3回じゃなくて本当は4回」。
ああいう謎めいた言葉を投げかけたら私がその言葉に飛びついてがむしゃらになって調べ回ってもしかしたら真実にたどり着くかもしれない。
そう思って私にあの言葉を投げかけたんじゃないかって。
私もなんだかそんな気がします。
「なにもかも全部終りにしたい楽になりたい」。
あれはこうさんの遺書ではありませんでしたが本音だったんだと思います。
殺人という大きな秘密を抱え仮面をかぶって生きていく事がつらく苦しかったんだと思います。
でも自分からその仮面を脱ぐ事は出来ない。
だから誰かに…。
これから先つらいでしょうね早苗さん。
今までは罪を分かち合えるこうさんという人がいたけどこれから先はもう何もかも全部一人で背負っていかなければいけないんだもの。
仮面を着けてたった一人で。

藤崎こうがこの世に残した最後の言葉を思い出していました
今日はきっといい日になるから。
「今日はきっといい日になるから」その言葉を咲田早苗はどんな思いで聞いたのでしょうか
そしてまた思っていました
咲田早苗が今日はきっといい日になるからと笑顔でその言葉を言える日は来るのだろうかと
(こうの声)待ってよ早苗ちゃん。
(早苗の声)何してるのよこうちゃん。
早くしないとお日様沈んじゃうよ。
よかった!間に合った!間に合った!ねえ早苗ちゃん。
10年後は私たちどこで何してるかな?決まってるじゃない!東京のテレビ局の美人アナウンサー!
(こうの声)じゃあ20年後は?
(早苗の声)決まってるじゃない!美人のお母さん!フフフ…。
(こうの声)じゃあ思い切って50年後!
(2人の声)決まってるじゃない!きれいなおばあさん!
(2人の笑い声)こうちゃん…。
2017/01/07(土) 21:00〜23:21
ABCテレビ1
土曜ワイド劇場 新春特別企画「終着駅の牛尾刑事vs事件記者・冴子」[デ][字]

“ラストファミリー”三度結婚し、三度保険金を受け取った疑惑の女!!死神が運ぶ連続殺人

詳細情報
◇番組内容
大好評“牛尾vs冴子”シリーズ第16弾が新春特別企画として登場!3度結婚し、3度とも保険金を受け取った疑惑の女が転落死!愛憎渦巻く女たちの裏側に潜む、謎の関係とは…!?
◇出演者
片岡鶴太郎、水野真紀、岡江久美子、船越英一郎、多岐川裕美、夏樹陽子、高橋かおり、秋野太作、東根作寿英、徳井優
◇スタッフ
【原作】森村誠一
【脚本】橋本綾
【音楽】大野克夫
【監督】池広一夫