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字幕書き起こし NHKスペシャル MEGA CRISIS 巨大危機3「ウイルス“大感染時代”」 2017.01.14

大丈夫ですか?今、流行しているインフルエンザ。
これが、もし毒性の強い新型ウイルスだったら数週間後には…。
街から人が消えやがて社会機能は麻痺。
しっかりしろ!しっかりしろよ!最悪、数十万の死者が出る未曽有の事態に陥る可能性があります。
20世紀以降、人類の命を最も多く奪ってきたものそれは戦争でも自然災害でもありません。
ウイルスの感染爆発パンデミック。
新たな危機の可能性が年々、高まっています。
その一つが強い毒性と感染力を兼ね備えた新型インフルエンザウイルス。

 

 

 


最先端の研究はその最悪のウイルスがヒトからヒトヘと感染を広げる能力を持ちつつあることを突き止めました。
さらに未知のウイルスを世界中に拡散させる新たなリスクも浮かび上がっています。
交通網の発展や地球規模で進行する温暖化が拍車をかけているのです。
危機を乗り越えるための闘いが今、始まっています。
アフリカの奥地で自然界に潜む未知のウイルスを探り続ける研究者たち。
従来の200倍以上のスピードでワクチンを製造する技術の開発も進んでいます。
人類がこれまで経験したことがない大感染時代。
ウイルスとの果てしなき攻防に迫ります。
シリーズ「MEGACRISIS巨大危機」。
私たちの生活を脅かす巨大な危機をどう乗り越えればいいのか?その最前線に迫ります。
第3回、今回のテーマは「ウイルス感染症との闘い」です。
この冬もインフルエンザですとかノロウイルスなど、さまざまな感染症が流行しています。
ただ、きょう、お伝えするのはぜひ、皆さんに知っておいていただきたいんですけれどもそうした感染症とは全くレベルの違う死に至る可能性の高いウイルス感染症。
その爆発的流行が間近に迫っているというんです。
今、ヒトへの感染が恐れられているのが鳥インフルエンザウイルスです。
全国各地で相次いで検出。
防護服に身を固めた自衛隊員や自治体職員などが対応に当たりました。
感染が明らかになった鳥はこの農場では数十羽。
しかし、感染拡大を防ぐためすべての鳥が処分されました。
鳥は袋詰めにされ地中深くに埋められました。
その数、100万羽に上ります。
これまでに鳥インフルエンザが検出された農場は7か所。
野鳥からの検出は165件。
過去最悪の広がりを見せています。
この感染の拡大を引き起こしたのが鳥インフルエンザの中でも最も毒性が強いといわれるH5型と呼ばれるウイルスです。
本来鳥インフルエンザウイルスは鳥と鳥の間でしか、うつりません。
しかし鳥からヒトに感染するケースが世界で相次いで報告されています。
エジプトではここ数年、感染者が急激に増加。
死者は2015年には39人に上りました。
鳥インフルエンザウイルスが人間にうつると…。
重篤な肺炎が引き起こされ呼吸困難に陥ります。
さらに肝臓や脳なども侵され多臓器不全に陥り死に至ります。
今、最も恐れられているのはこのウイルスがヒトからヒトへ感染を拡大させていく事態。
その日が刻一刻と近づいているのではないかという危惧が最先端の研究現場で広がっています。
東南アジアで家畜の体内にいるウイルスを調査している竹前喜洋さんたちの研究チームです。
世界で初めてインフルエンザウイルスがブタの体内で頻繁に変化することを遺伝子レベルで突き止めました。
鳥インフルエンザが種の違いを超えてヒトの間で感染を広げるにはいくつか壁があります。
その一つがウイルスの増殖に適した温度です。
鳥インフルエンザウイルスは鳥の体温に近い42度で増殖します。
一方、ヒトの体温は36度。
そのため仮に1人の人に感染したとしてもほかの人には感染が広がりにくいのです。
その体温の壁を乗り越える場として注目されているのが鳥とヒトの中間の体温を持つ動物。
ブタです。
体温は39度。
鳥とヒト、両方のウイルスにかかりやすい性質があります。
ブタが同時に2つのインフルエンザウイルスに感染したとき遺伝子が混ざり合います。
このとき、ヒトの体温でも増殖しやすい性質を獲得するおそれがあるのです。
これまでの調査でブタから見つかったウイルスはおよそ400。
その8割近くに、鳥やヒトのインフルエンザウイルスの遺伝子が混ざっていることが分かりました。
実は温度の壁がすでに突破されたと危惧されるケースが見つかっています。
死者が増加しているエジプトです。
エジプトで流行した鳥インフルエンザウイルスを解析した東京大学・河岡義裕教授です。
ウイルスに深刻な変異が起きていることを突き止めました。
解析したのはウイルスの遺伝子。
増殖温度に関わる部分が変異していました。
42度から33度の間の幅広い温度で増殖しやすくなっていたのです。
ヒトの体温でも増殖。
ヒトからヒトへの感染が広がりやすい状況が生まれているのです。
しかし、エジプトではまだ、ヒトの間での感染爆発は起きていません。
残された壁は、なんなのか河岡さんはさらに解析を進めました。
注目したのはウイルスの突起。
ヒトの細胞と結合する部分です。
ウイルスがヒトに感染するには体内に入ったあと、ヒトの細胞と結合しなければなりません。
ウイルスの突起とヒトの受容体の形が合わないため結合しにくいのです。
これは河岡さんが解析したウイルスの突起の詳細な構造です。
結合に関する遺伝子は僅か4つであることが分かりました。
この遺伝子が変異すると…。
ヒトからヒトへの感染能力が一気に高まります。
このとき新型インフルエンザウイルスが誕生し、感染爆発が起きるおそれがあるのです。
ヒトの間での感染拡大を防ぐ残された壁は受容体だけなのかほかにもあるのか。
河岡さんは分析を続けています。
スタジオにはウイルス学がご専門の東北大学の押谷仁教授にお越しいただきました。
よろしくお願いします。
押谷さん、今の見てますと本当に最悪のウイルスがヒトからヒトに感染するのは間近なんですか?もしかするとことし起こるかもしれないし10年後であるかもしれないし20年後であるかもしれない。
いつ起こるかということは正確に予測することはできませんけれども恐らく確実に起きてくるだろうということだけは間違いないと思います。
今、出てきたのはH5N1というウイルスなんですけれどもこれ以外にもパンデミックを起こす可能性のあるウイルスというのはいくつも存在していて例えば、H7N9という中国から出てきたウイルスとかもある程度、ヒトへの適応性を獲得しつつあるんじゃないかといわれているようなウイルスがあったりとかですねそういうことを考えると今、考えられているうちのどれかのウイルスがパンデミックを起こしてくるということは確実なんだと思います。
今、見たものだけでもすごく怖くなったんですけど今までも何度かいろんなインフルエンザが冬に、はやって体が慣れてるだろうということで新型インフルエンザがきてもそんなに、ちょっと熱が出て少し会社休むぐらいじゃないの?というのとは全く違う?季節性インフルエンザは爆発的な流行になるというようなことはなくてしかも、多くの人にとっては2〜3日寝ていれば治るというようなものということになりますけれどももし病原性の高いウイルスがそういうことを起こすとですね1日から3日ぐらいで発症してきて、それからそれもウイルスがどんなウイルスかということにもよりますけれども4日から5日、あるいは1週間から2週間ぐらいで多くの人が亡くなっていくというふうに考えられてます。
国と国立感染症研究所の予測をもとに専門家の想定を加えた最悪のシナリオを映像化しました。
想定したのは東京都内で新型インフルエンザの感染者が1人、出たケースです。
大丈夫ですか?
(せき)ウイルスはせきや、くしゃみなどの飛まつや空気を通じて拡散。
(せき)感染した人は数日後にせきや高熱などを発症します。
感染は人の密集する場で瞬く間に広がります。
病院には患者が殺到。
入院に必要なベッドが不足します。
症状は一気に深刻化します。
毒性が最も強いとされるタイプの場合感染が特に集中するのは肺です。
24時間でウイルスはおよそ100万倍に増殖。
次々に細胞を死滅させます。
さらにウイルスは全身に広がっていきます。
肝臓や脳などの細胞も死滅。
多臓器不全に陥り死に至るのです。
国立感染症研究所の試算では新型インフルエンザは東京の1人の感染者からたった2週間で全国35万人に拡大していきます。
(アナウンス)政府は緊急事態宣言を出しました。
自治体は住民に外出自粛を要請。
街から人の姿が消えます。
やがて生活を支える社会機能は麻痺。
ドライバーの感染などにより物流が停止します。
食料品の入手も困難となります。
外国からの支援は期待できません。
世界中で感染拡大が起きている可能性が高いからです。
最悪の場合、日本人の4人に1人3200万人が感染。
医療関係者も感染し治療現場は崩壊。
死者が続出します。
火葬が追いつかず遺体は空き地や公園などに埋葬されます。
国は20世紀初頭に起きたインフルエンザの大流行をもとに致死率を最大2%と想定。
死者は64万人に達すると推定しています。
非常に恐ろしい想定なんですけれども本当に、ここまでになる可能性もあるんですか?パンデミックが起こるとその感染拡大を抑えることはできないと。
多くの人が免疫を持っていないということを考えるとですね病原性が仮にある程度、低かったとしても仮に、致死率が0.1%ぐらいだったとしても数万人の人が亡くなるという計算になりますのでそれが少しでも病原性がそれよりも高くなるとですねさらにその被害が大きくなっていくと。
ワクチンって、インフルエンザがはやる前に打ちますよね。
ワクチンがあったとしてパンデミック始まっちゃったら効くんですか?パンデミックのワクチンというのは新たに、そのウイルスに対してワクチンを開発して製造しないといけないということになります。
パンデミックが始まってから開発・製造すると、どうしても数か月はかかってしまう。
そうすると初期の段階の流行には間に合わないということがワクチンの最大の問題で抗インフルエンザ薬もある程度は重症化を防げる。
亡くなる人の数を減らすことができるだろうというデータは出てきているんですがこれもゼロにはできないと。
例えば、仮にこの冬に、それが起こったときに本来なら、どうすべきですか?国全体。
私たち個人含めて。
感染拡大を完全に抑えることはできないんですがただ、ある程度感染拡大のスピードをコントロールすることは一人一人の人が、いろんなことに気をつけることによってできるだろうというふうには考えられてます。
それはですね、皆さんこういう事態になったときに自分が感染しないにはどうしたらいいだろうっていうことに、非常に気を遣うんだと思うんですけれど手洗いをするとかそれだけでは不十分で感染した人たちがいかにして、ほかの人にうつさないかということに気をつけてもらうということも必要です。
日本の社会では、なかなか熱が出たり、インフルエンザの症状があったりしてもですね会社に行ってしまうというような風潮がありますけれどもそういうことは、感染を周りに広げることになるのでそういうことを、いかにして少なくしていくのかということが必要になってきます。
国の、その対策は十分なんですか?新型インフルエンザ等対策特別措置法というのができてより病原性が高い、被害が…相当な被害が見込まれて急速に感染が拡大していくような状況では国が非常事態宣言というのを出せるように、今法律の枠組みではなっています。
ただし、必ずしも十分ではなくていろんな対策をする実施主体は都道府県になります。
そうすると地域で、どうやって非常に難しい政策判断をしなきゃいけないことになりますので。
例えば、どんな判断を?外出の自粛要請をするというのは非常に大きなインパクトのある対策になりますので本当に大変な事態になったときにどういうふうに意思決定をしていってどういう対策をするのかと。
そのためにはどういう専門家が必要でっていうようなことをきちんと考えておくということが必要なんだと思います。
そういうことを考えられる専門家というのは日本では非常に少ないというのが今の現状。
でも一刻も早くしていただかないと。
いつ起こるか分からない。
一刻も早く、そういう体制を日本の国内全体で作っていくということが必要なんだと思います。
ここまで新型インフルエンザについて見てきましたけれども人類にとって脅威となるこのウイルスというのは新型インフルエンザだけではないんですね。
さまざまなウイルスの感染症の脅威が加速して、しかも拡散しようとしているんです。
重症の呼吸器疾患を引き起こし致死率40%ともいわれるMERS。
初めて確認されたのは2012年。
中東から始まり、韓国など26か国に拡大しました。
1万1000人以上が死亡したエボラ出血熱。
2014年、アフリカからアメリカやヨーロッパなどに広がりました。
今、こうしたウイルス拡散のリスクをこれまでになく高めている要因が浮かび上がっています。
地球規模で進む温暖化です。
中でも、気温上昇が進む北極圏で危機が進行しています。
シベリアの永久凍土。
温暖化によって凍土が急速に解けむき出しになった地層から未知のウイルスが放出される危険性が高まっています。
フランス国立科学研究所などのチームが3万年前の地層から発見したモリウイルス。
新種のウイルスです。
モリウイルスを発見したシャンタル・アベルジェル博士はその増殖能力に驚きました。
アメーバの細胞内に入ると12時間で1000倍に増殖。
アメーバを死滅させさらに細胞膜を突き破って周りに広がり、ひしめいています。
温暖化によって深刻化するのは封じ込められていたウイルスが解き放たれるリスクだけではありません。
温暖化がウイルスの拡散を加速させるおそれがあることも分かってきました。
その一つがここ数年で急速に世界に広がったジカウイルスです。
ジカウイルスに感染し脳が小さい状態で生まれた小頭症の子どもたち。
母親の体内で感染し脳の細胞が成長しなくなったと考えられています。
知的障害などを引き起こし死に至ることも少なくありません。
ジカウイルスの人への感染が最初に確認されたのは1952年アフリカ・ウガンダでした。
その後、感染は世界中に拡大。
2015年にはブラジルで大流行を起こしました。
さらに、その後アメリカ・フロリダ州や東南アジアにも感染が広がりました。
ウイルスを媒介したのは熱帯地域に生息するネッタイシマカです。
蚊が感染した人を刺すと…。
ウイルスが蚊の体内に取り込まれて増殖。
その蚊がウイルスを運びほかの人に感染を広げます。
これまで感染が拡大した地域は赤道付近に限られていました。
ネッタイシマカが生息しているとみられる地域を重ねると、ほぼ一致します。
ところがネッタイシマカが生息しない日本でも温暖化の影響で感染リスクが高まっていることが分かってきました。
感染症を媒介する蚊について研究している国立感染症研究所の小林睦生さんです。
注目しているのはネッタイシマカと同じようにジカウイルスを媒介するヒトスジシマカです。
今、温暖化でヒトスジシマカの生息域は広がり続けています。
青い印は生息が確認された場所。
1950年は栃木県まででした。
黄色で示したのはヒトスジシマカが生息できる年平均気温が11度以上の地域です。
黄色のエリアが年々、広がるとともに生息域も北へと拡大しているのです。
ヒトスジシマカはネッタイシマカに比べてジカウイルスを増殖する能力は低いとされます。
そのため、感染を広げるリスクはそれほど高いとは考えられてきませんでした。
しかし、小林さんは温暖化によってヒトスジシマカの個体数が増加するとヒトがウイルスに接触する機会が増えるため感染のリスクが高まると考えています。
気温が上昇すると蚊の成長は早まります。
羽化するまでの日数は温度が20度では、およそ30日。
それが30度に上昇すると半分の14日と短くなります。
理論上、蚊の個体数は数十倍になる可能性があります。
温暖化がもたらす脅威に立ち向かう取り組みはまだ始まったばかりです。
アメリカで検討されているのはウイルスを媒介する蚊を絶滅させる方法。
用いるのは最新の遺伝子組み換え技術です。
この研究所で育てられている大量のオスの蚊の幼虫。
遺伝子を組み換えることによって寿命が短くなるよう操作されています。
この蚊を自然界に放出。
メスと交尾してできた幼虫は寿命が短くなる遺伝子を引き継ぎます。
そのため、次の世代を残す前に死んでしまいます。
世代を重ねると自然界の蚊の個体数を劇的に減らせるというのです。
しかし、この方法を本当に実施してよいのか疑問の声も上がっています。
世界中のウイルスが日本にやってくる…。
…かもしれない。
なんかどうすればいいんだろうとただただ不安になるんですけれども。
例えばジカウイルス感染症が今、南米で去年から非常に大きな問題になってますけれどもあんなことが起こるということはたぶん、多くの専門家が予測できなかったと。
そういう予測不能なことがたくさんあって今後も予期できないようなこといわゆる想定外の事態が今後も起きてくる可能性があるんで。
過去と比べても感染症に関していうと、今それから、これからっていうのはまた違ったフェーズに入ってくるんですか?90年代まではですね新たな感染症ができてきてそれが航空機に乗って世界中に広がってしまうということがあまり起こらなくて新たな感染症は出てくるけれども限定された地域だけで起きてきたということがあります。
2000年以降ですね特に2003年にSARSというウイルスの流行がありましたけれどもこれは中国南部から始まったウイルスが瞬く間に航空機を介してですね世界中に広がってしまったと。
航空機を介して1年間に移動する人は35億人。
この15年で2倍に急増しています。
青い線は世界を飛び交う飛行機の実際の航空路を示したものです。
これまで特定の地域だけで広がっていた感染症が国境を越えて世界中に拡散するリスクが急速に高まっているのです。
でも、検疫とかありますよね?日本からもですね、多くの人が住んでいるような地域には72時間ぐらいあると飛行機に乗っていけば行けるというふうにいわれてます。
あー…世界中どこでも。
感染症の多くは、いわゆる潜伏期間というのがあります。
感染してから発症するまでの間の時間があって72時間以内に人が移動してしまうということは多くの感染症にとってですね潜伏期間の中要するに感染してから発症していない人たちが日本に入ってきてしまうそういうリスクがあるということになりますんで水際対策を、いかにやってもそういう人たちは、必ずしも日本に入ってくることを防げないということになります。
それ伺うまで、一度もそんなことを考えたことがなかったんですけども相当、甘いですかね。
新しいウイルスが出現してさらに、そういったウイルスが拡散していくリスクというのが爆発的に増えてきていると。
そういう時代ウイルス大感染時代といってもいいような、そういう時代にわれわれ人類は生きているんだということになるんだと思います。
押谷さんは研究者としてどうすれば被害を最小限に食い止めることができるというふうに?どんな研究が進めば…。
予測をするというような研究もいろいろ進んでいますけれども恐らくわれわれの知らないウイルスもたくさん存在していてその中に、どういうリスクを持つ人類にとってどういうリスクを持つウイルスが存在しているのかということも正確には分かっていないです。
まだ、未知のウイルスが数多く潜んでいるとみられるアフリカ。
ここで対策のための挑戦が始まっています。
10年前からアフリカ・ザンビアで未知のウイルスを調査している澤洋文教授です。
ウイルスの膨大な遺伝子情報を蓄積し病原性をいち早く解明しようとしています。
澤さんたちの研究チームが調べているのは生物の体内に宿るウイルスです。
その一つが牛などの家畜です。
黒く見えるのは牛の皮膚に付着したダニ。
自然界に潜むウイルスを人間社会に持ち込むおそれがあります。
そして、蚊などの昆虫です。
これまでに蚊やネズミサルなどから発見した新種のウイルスは20種類に上ります。
澤さんたちは見つかったウイルスの性質を明らかにするため遺伝子などの解析を行っています。
解析したデータは世界の研究者と共有しています。
ジェンバンクと呼ばれるデータベースに登録されたウイルスは16万種類。
一つ一つ、病原性を解明し免疫力をつけるワクチン開発などにつなげようとしているのです。
感染爆発の脅威が迫りつつある新型インフルエンザでも対策が進展しようとしています。
東京大学の河岡義裕教授はより効き目の高いワクチンの大量生産を可能にする技術を2015年世界で初めて開発しました。
現在、ワクチンの製造は主にニワトリの卵を使って行われています。
しかしワクチンの質に、ばらつきが出て効き目の弱いものができてしまうことが課題でした。
これに対し、河岡さんはイヌやサルの腎臓の細胞を培養して効率よくワクチンを製造する技術を開発。
従来の方法の200倍以上の速さで品質が一定のワクチンを製造できることを突き止めました。
研究者の方々の積み上げというのは本当に頭が下がるばかりなんですけれどもまず、河岡教授のワクチンの大量生産というのは具体的に今後、どういうことに結びつく可能性があるんですか?流行の初期にはワクチンが全くないという状態になることが想定されてますのでこの時間をいかにして短くするかと。
いかにして早くワクチンを皆さんのもとに届けていくかということが非常に大きな課題になってますんでそういう意味でこういう新しい技術が出てくるとその時間が短縮できる可能性があるということになります。
それから、澤教授の現地での地道な一つ一つ新しいウイルス探してそれを皆さんで共有化していくっていうこの研究は、具体的にはどう役立っていくんですか?恐らく、われわれが知らないウイルスというのはまだまだ、たくさん残っていて全体像を把握するということはこれは非常に難しいということになるんだと思います。
でも、そういう一つ一つを探していくっていうことをやめてしまうと、これは何も分からないままになってしまう。
全体像が分からない。
そうなると全く分からない未知のウイルスがヒトに感染してヒトで流行するっていうような事態になるとですねどうしても対応が遅れるということになりますんでそういう迅速な対応をするためにも事前に、そのリスクをいかに把握していくかということは重要だと思います。
でも、こうやって見てきますと本当に、もうウイルスとの追いかけっこで、これから何をどうやっていけばいいのかって途方に暮れるんですけれども。
特に日本では、何かが起こるとみんな、いったんは大騒ぎするんですけれどもエボラが起こるとかですねMERSが起こる。
韓国でMERSがありましたけどそういうことに対してはかなり過剰に反応するんですけれども、それがいったん終わってしまうとみんな、忘れてしまうと。
1か月たつとみんな、忘れてしまうというようなことがあって。
本来は、もっと長い目でですね10年、20年というようなスパンで見るとですね当然、日本にも、こういうウイルスの新たな脅威というのが上陸してくる可能性は十分、考えられてちゃんとリスクを理解したうえで対策を考えていくというようなことが必要なんだと思います。
新型インフルエンザの脅威はどこまで迫っているのか。
山口大学の前田健教授はアライグマを手がかりにそのリスクを明らかにしようとしています。
野鳥を好んで食べるアライグマ。
捨てられたペットが野生化するなどして近年、全国で急増しています。
血液を調べたところアライグマがH5型の鳥インフルエンザに感染していた割合は多いところで6%。
前田さんは、この割合から現在、明らかになっている数十倍もの鳥が感染しているとみています。
今後、各地で調査を行い感染の広がりの実態を明らかにしたいと考えています。
これまでにない新たな手法で感染拡大のリスクを明らかにしようとする研究も進んでいます。
北海道大学の西浦博教授は感染発生国と日本との人の行き来を表す航空データに着目。
独自の数理モデルで感染リスクの数値化に取り組んでいます。
ことし、日本でジカウイルスの感染が広がる確率は8%と、はじき出しました。
かつて経験したことのないウイルス大感染時代。
避けることのできない感染爆発にどう備えるのか。
その脅威から目を背けることはできません。
♪〜2017/01/14(土) 21:00〜21:50
NHK総合1・神戸
NHKスペシャル MEGA CRISIS 巨大危機3「ウイルス“大感染時代”」[字]

新型インフルエンザウイルスが出現した時、国内では最悪64万人が死亡する。アフリカや北極圏では、未知のウイルスが次々と出現、日本に脅威が迫る。対策の最前線を追う。

詳細情報
番組内容
この冬、日本でH5型鳥インフルエンザウイルスが相次いで確認された。最も恐れられているのは、鳥のウイルスが変異して、ヒトからヒトへの強い感染力をもつ新型インフルエンザウイルスが出現すること。国の想定では感染爆発が起きた場合、国内で最悪64万人が死亡する。さらに、アフリカや北極圏では、「未知のウイルス」が次々と見つかっている。日本に迫るウイルスの脅威、リスクを洗い出し対策を探る最前線を追う。
出演者
【ゲスト】東北大学教授…押谷仁,【司会】有働由美子,【語り】武田真一