18年前オリンピックが長野県にやって来た。
この大会で正式種目となった…
(実況)アメリカが勝った!日本敗れました。
熱戦を目の当たりにした少年は夢を見た。
その少年は夢をかなえた。
チームワークを武器に世界の強豪を次々と撃破。
ふるさと長野から2年後のピョンチャンオリンピックを目指しています。
どんなに強い相手でも。
もううちのチームが…絶妙のコントロール。
大量点を狙う攻撃的な戦略。
4人のメンバーがそれぞれの強みを生かし世界のトップを狙います。
金メダルを目指してます。
しかし立ちはだかる強豪国の壁。
今取り組むのはカーリングの常識を覆す新しい技。
求められるのは固いチームワーク。
改めて4人の絆が試されています。
勝てるように。
支えてくれるのはふるさとの人々の応援。
ふるさとの絆を力に戦うSC軽井沢クラブ。
世界の頂への挑戦を追いました。
(雄たけび)朝9時半。
おはようございます。
日本選手権を1か月後に控え強化練習が始まりました。
4人はチームを結成して9年目。
メンバーの入れ代わりが多いカーリングの世界では異例の長さです。
早速始めたのは重さ20キロのストーンを投げる練習。
幅30センチの間隔で置かれたストーンの間を通り体の軸がぶれないようにして投げ込みます。
徹底した練習で身につけた正確なショットがチームの持ち味です。
こんにちは。
4人はお昼ごはんも一緒です。
チームの中心両角友佑選手。
戦略を立てて指示を出すスキップです。
両角公佑選手。
友佑選手の弟でチーム最年少。
チーム1のパワーの持ち主…そしていつも冷静沈着な…ありがとうございます。
いつもすみません。
マスターはいつもおかずを1品サービスしてくれます。
是非これからも頑張って頂きたいという意味で一生懸命サービスしようかなと思ってやるようにはしてますね。
午後からは実戦形式の練習です。
スキップの友佑選手が立てた戦略を基にストーンを狙う位置をブラシで示します。
そこを目がけて1人が投げ残り2人はスイープ。
ブラシを使って氷を平らにしストーンの距離を伸ばすのです。
ストーンの動きを見極めて掃き方を指示します。
カーリングは1チーム4人。
敵味方が交互に投げ全員が投げ終わった時のストーンの配置で得点が決まります。
ハウスと呼ばれる円の中心に最も近いチームが得点。
この場合は赤。
点数は中心に一番近い相手のストーンよりも内側にある味方のストーンを数えます。
この場合は2点です。
これで1エンド。
試合は10エンドまで行われます。
実戦練習では徹底的に意見を出し合います。
ていうか多分もうここにこれで来るしかないんじゃない?もしかして。
それか3から6でとりあえず5だけ出しとく。
これ意外といい。
でもこれだって1/3見えてないよ。
大切なのはチーム全員が戦略の意図を共有する事だといいます。
SC軽井沢が注目を集めたのはおととしの世界選手権。
当時世界ランキング1位のカナダをはじめ強豪国を次々と撃破。
男子日本代表として史上初めて5位に入賞しました。
武器は正確なショットが生み出す攻撃的なカーリングです。
その進化が発揮されたのがアジアナンバーワン中国との試合。
1点を追う第2エンド。
絶妙のコントロール。
力強いスイープ。
ハウスの中に次々とストーンをためていきます。
最後に投げるのはスキップ友佑選手。
この時ハウスの中心に一番近いのは中国の赤いストーン。
普通ならより中心に近い位置に置いて着実に1点を取りに行く場面でした。
しかし友佑選手は一気に逆転を狙いました。
速いショットで中国のストーンを2つもはじき出しました。
一番下の中国のストーンは2つのストーンを介してはじく難しいショット。
リスクが高くてもあえて大量点を狙うのがSC軽井沢の攻撃的な戦略です。
試合する以上負けたくないんでどんなに強い相手でも。
とにかく勝って…何だか男子のカーリングって超面白いじゃんみたいな。
みんなが思ってくれるように頑張りたいと思いますね。
この日はスキップの友佑選手の誕生日パーティー。
誕生日おめでとう…ございました。
アンド日本選手権4連覇目指して頑張りましょう!乾杯!
(4人)乾杯!メンバーの誕生日には必ず食事会を開きます。
おかしいですよね?はい確かに。
はい!チームワークでは誰にも負けない。
その絆はふるさと軽井沢が育ててくれました。
18年前の…軽井沢町はカーリングの会場に選ばれ大いに盛り上がりました。
両角兄弟の家族も総出で応援に出かけました。
町役場に勤める父親の尚男さんは大会の運営に携わっていました。
こっちで軽井沢でカーリングというのはもうすばらしい事だなと思って。
私も役所で警備担当で全部みんな海外の選手ボディーチェックしてました。
当時2人は中学1年生と小学2年生。
初めて世界レベルのカーリングを目の当たりにしました。
知恵と技術の限りを尽くした戦いに魅了されました。
(実況)どうだ?どうだ?アメリカが勝った。
日本敗れました。
日本僅かの差。
友佑選手は野球部をやめカーリング部に入部。
スキップとして作戦を立てる事に夢中になりました。
兄の背中を追うように弟の公佑選手もカーリングを始めました。
リードは大事でしょ。
あそこに止めるっていうのは。
お前な〜!今度チェンジしてみろ。
今度チェンジしてやってみろ1回。
2007年大学を卒業した友佑選手は国内トップクラスの実力を持つ3人と共に現在のチームを結成しました。
チームの活動は町の人々が支えています。
公佑選手は地元の建築資材の販売会社で働いています。
柱と一緒って事ですか?そうそうそう。
これはいいって事ですね。
あっいらないいらない。
それはバツ。
はい分かりました。
会社の壁には公佑選手の予定表が貼ってあります。
遠征や合宿などのため1月の出勤は僅か1日だけでした。
抜けてしまうのは非常に痛いんですが社員一同彼が抜けた穴をフォローしながらやっておりますのでその分カーリングに専念して頂くような事で応援しております。
ほかの選手たちもカーリングを優先してくれる会社で働いています。
清水選手は地元の鉄工所。
友佑選手と山口選手は地元のスポーツクラブのコーチです。
じゃあ次インターンね。
8個。
8個入れたら試合やります。
8個。
地元のスーパーマーケットも。
じゃあまた勝てるようにいろんな商品選んでって。
よろしくお願いします。
遠征先で食べる食材や栄養補給食を提供してくれています。
選手コーチがね不自由なく好きな物食べてチームがどんどんね世界に行って通用するようになってほしいんで。
そういう意味ではもっと買っていってくれと。
まあ僕が払ってるんだけどね。
4人はチームを支えてくれる地元の人たちのために世界での活躍を誓っています。
期待にも応えたいですし。
やっぱり恩返しじゃないですけどそれって結果でしか出せないので僕らは。
そういうふうに思ってます。
選手たちは平日も仕事が終わると個人練習に打ち込みます。
友佑選手はコーチを相手にショットの練習を繰り返します。
一日2時間週5日に上ります。
厳しい練習に駆り立てるのは個々の力が弱いとチームワークは機能しないという思いです。
それを痛感したのは4人で初めて出場した7年前の世界選手権。
ショットの精度で強豪国に後れをとり得意の戦略を仕掛ける前に敗れ去りました。
ミス一つで一気に試合の展開が変わってそのまま普通に負けちゃうっていう事は何度もありますしこれを決めないと本当にただ負けるみたいなショットをプレッシャーをかけられながら決めて勝ち上がってくるから強豪になってると思うんですよね。
以来選手たちは個人練習に力を入れるようになりました。
清水選手は正確なショットを更に磨くため仕事帰りに必ず2時間練習しています。
山口選手は得意の力強いスイープを更に強化するため週4回の筋力トレーニングを行うようになりました。
チームではショットの精度を更に上げる方法を模索していました。
曲げたい時はこう斜めに掃くんだよね。
公佑選手が提案したのは海外の強豪国が取り入れた最先端のスイープの技術でした。
これまで2人で行うのが常識だったスイープを1人で行っています。
完全に掃かない。
休んでる。
しかも距離を伸ばす事しかできないと思われていたスイープでストーンの軌道を曲げる事ができるというのです。
相当こっちに行ってるように見えるよね。
公佑選手はこの1人スイープを是非チームに導入したいと伝えました。
しかし友佑選手はこの技術に懐疑的でした。
ある意味…1人スイープは本当に曲がるのか。
検証する事にしました。
まずスイープをせずに投げます。
止まったのはこの位置。
次に1人スイープをしてみます。
曲げたい方向にブラシを向けて斜めに掃いていきます。
スイープをしなかった場合と比べると…。
1人スイープをしたストーンはおよそ15cm曲がった事が分かりました。
こうコースを変えるっていう効果はかなりありましたね。
実際に使えると思います。
なぜ1人でスイープすると曲がるのか。
曲げたい方向に向けて斜めに掃き続ける事で氷に道筋がつくからだとされています。
2人では同じ方向に掃く事は困難です。
1人だからこそできる特殊な技なのです。
チームは1人スイープの練習を始めました。
友佑選手は指示の出し方を探りました。
ストーンの行方を見ながら1人で掃くのか2人で掃くのか。
更にそのタイミングも瞬時に決めなければなりません。
1人スイープをさせたい時は名前を呼ぶ事にしました。
公佑公佑公佑!徹っちゃんだよ。
練習を繰り返し呼吸を合わせます。
ちょっと速めだよ。
友佑選手以外の3人はどこをどんな角度で掃けばどの程度曲がるのか探っていきます。
惜しい!最も苦労していたのは提案した公佑選手でした。
1人スイープは2人の時よりも強い力が必要だと分かりました。
しかし公佑選手のスイープの姿勢を見てみると腰が上下に揺れていてブラシに十分に力が伝わっていませんでした。
公佑!なかなかうまく曲がりません。
兄の友佑選手はあえて公佑選手に声をかけません。
個の力を上げるには自分を追い込む事が不可欠だと考えていたのです。
いい時もあれば悪い時もあってっていうのを繰り返している状態。
その中でもっと突き詰めて…公佑選手は練習が終わると一人ある場所へ通い始めました。
やって来たのはトレーニングジム。
バランスボールを使った体幹トレーニング。
体の軸を鍛えて腰がぶれないようにするためです。
これでラスト。
はい123456789はいオーケー。
めっちゃきてる。
カーリングの試合は長ければ3時間。
スイープで掃く距離は2キロ以上に及びます。
1人スイープが加われば疲労度は更に高まります。
8910。
自分の役割を果たしチームに貢献したい。
その一心でした。
今のよくなかったですか?見てなかったんですか!?日本選手権の舞台青森。
優勝したチームは4月の世界選手権に出場できます。
各地域を勝ち抜いた9チームによる戦いが始まりました。
ところが公佑選手の調子が上がりません。
友佑選手の指示はここ。
狙いを大きくオーバーしてしまいました。
更に課題の1人スイープでも…。
狙いはこの赤いストーンの前。
しかし曲げる事ができず横を通過してしまいました。
フォームが安定していません。
チームは決勝進出を決めたものの公佑選手は課題を抱えたままでした。
そして決勝戦。
相手はチーム東京。
ここ数年優勝を争ってきた強豪です。
思わぬ戦略をとってきました。
赤いストーンのチーム東京。
SC軽井沢がハウスに入れたストーンを次々とはじき出していきます。
SC軽井沢にストーンをハウスにためる得意の戦略をとらせません。
0対0で迎えた第3エンド。
最初に投げるのはこれまで調子の上がらない公佑選手。
なんとか得点したい友佑選手は攻撃的なショットを指示しました。
狙う場所はここ。
相手のストーンに当てて手前の黄色いストーンの真後ろに置きます。
こうすれば手前のストーンが邪魔になって相手にはじかれにくくなるのです。
ところが…。
僅かにショットが狂いました。
指示とは逆の方向へ。
相手に狙われやすい位置につけてしまいました。
プレッシャーが微妙なコントロールを失わせていました。
これをチーム東京につかれます。
味方のストーンが無くなり苦しい展開に追い込まれます。
それでも続く選手たちが役割を果たします。
絶妙のスピード。
これを清水選手が1人スイープ。
(実況)この辺SC軽井沢うまいですね。
微妙に進路を曲げました。
相手をはじき出しながら自分のストーンを見事ハウスに残しました。
更に山口選手の2投目。
再び清水選手の1人スイープ。
軌道を曲げて味方のストーンの真後ろ狙われにくい位置でチャンスをうかがいます。
しかし東京も意地を見せます。
(実況)ラインはよさそう!伸ばして…2個出た!
(解説)すばらしいナイスショット。
(実況)ナイスショットになりました岩永。
SC軽井沢は一気に3つのストーンをはじき出され一転してピンチを迎えました。
友佑選手はここでも攻撃的な指示。
相手ストーンの裏を狙わせます。
投げるのは清水選手。
スピードが遅く距離が伸びません。
必死のスイープ。
(実況)スイープ力には力を持っているSC軽井沢。
伸ばす伸ばす伸ばす。
見事ハウスに届きました。
最後はスキップ友佑選手です。
(実況)伸ばす!ハウスにかかれば2点。
かかりました。
確実なショットで2対0と先制。
仲間が力を合わせて公佑選手のミスを挽回しました。
そして第4エンド。
友佑選手の指示で1人スイープ。
(実況)曲げてくる!ついた!
(解説)う〜んナイスですね。
ぶれない腰。
ブラシにしっかり体重をかけて軌道を修正しました。
徐々に体の使い方をつかんできました。
更に1点差に詰め寄られて迎えた第6エンド。
相手を突き放したい友佑選手。
狙いはここ。
手前の2つのストーンの間をくぐり抜け相手のストーンを押し出そうという攻撃的な戦略です。
高い精度が求められます。
投げるのは山口選手。
公佑選手の力強いフォーム。
軌道を徐々に右寄りに曲げました。
ここで友佑選手はすかさず指示を出します。
1人スイープを清水選手にバトンタッチ。
軌道を反対向きに戻しストーンの間を抜けました。
相手のストーンを押し出し投げたストーンはハウスの中に見事に止めました。
このエンド1点を追加。
4人が心を一つにしてつないだショットでした。
そして…。
(実況)テイクアウト!王者SC軽井沢クラブ!日本選手権4連覇!それぞれが個々の力を引き上げチームワークでつかんだ勝利でした。
(拍手)おめでとう!おめでとう!ありがとう〜!スキップの指示に従ってなるべく自分のできる範囲でですけど全力で掃くだけなのでこの大会中少しずつよくなってきた部分が決勝でも同じようにできたんじゃないかなと思ってます。
うちのチームの何て言うんですか?コミュニケーションができてるからこそその指示だけで僕が何をやりたいのかちゃんと分かってもらえるっていうのにつながってますしチームワークとかは大事ですよね。
大会後地元に戻った選手たち。
友佑選手は勤め先のスポーツクラブで子どもたちを指導していました。
世界選手権は4月。
子どもたちの未来のためにも世界のトップを目指す覚悟です。
しっかり結果残さなければそういうふうにはならないと思いますし日本代表で世界に出ていっている僕たちの責任じゃないかなっていうふうに思ってますね。
ふるさとの絆を力に変えて世界と戦い続けてきたSC軽井沢クラブ。
4人で力を合わせて世界の頂点に挑みます。
2017/01/16(月) 00:10〜00:55
NHK総合1・神戸
アスリートの魂・選「ふるさとの絆を力に カーリング SC軽井沢クラブ」[字]
男子カーリング・SC軽井沢クラブ。長野五輪をきっかけに誕生し、地域の人たちに支えられ日本選手権4連覇の強豪に成長。地域との絆を武器に世界を目指す奮闘の日々に密着
詳細情報
番組内容
長野五輪でカーリングの開催地となった軽井沢。その地で育った男子チームがSC軽井沢クラブだ。チームの4人のうち3人は軽井沢出身。少年の時、長野五輪の舞台を見て世界への夢を抱いた。地元の人たちの支援で大きく成長。日本選手権4連覇、2014年の世界選手権では5位に。今、メンバーは「攻めのカーリング」に磨きをかけレベルアップを図る。「応援してくれるふるさとのためにも世界のトップを」。チームの戦いを追った。
出演者
【語り】杉本哲太