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字幕書き起こし NHKスペシャル「森の王者 ツキノワグマ〜母と子の知られざる物語〜」 2017.01.15

じゃれ合う2頭の子グマ。
こちらは親子。
最近人里に出没しニュースにもなっていますが実はその姿を…警戒心が強くふだんは森の奥深くに暮らしているからです。
ベテランハンターは…。
クマを山へ行って見つけようっつったらばほとんど不可能に近い。
それくらい見つからないです。
クマの研究者も…。
行動とか追跡するのは難しいですね。

 

 


そんなツキノワグマの知られざる生態を撮影し続けている人がいます。
28年もの長い間誰も見た事がないクマたちのドラマをカメラで捉えてきました。
春生まれたばかりの子グマをかわいがる母グマのほほ笑ましい姿。
初夏食べ物を探している時に起きた…そんな横田さんが見守り続けた一頭のメスグマがいます。
名前はメスなのに次郎。
初めて出会ったのは生まれて間もない子グマの頃でした。
やがて母となり子どもを育てる様子をつぶさに見つめてきました。
愛する子を守るための…そしてその…森の王者ツキノワグマ。
誰も知らなかったその真の姿今明らかになります。
栃木県足尾山地。
懐深い山々が続きます。
その山奥に向かって林道をひた走る一台の車があります。
この山で猛獣といわれるツキノワグマを追い続けて28年。
足尾の山で横田さんを知らない人はいません。
人呼んで…急に車を止めました。
あそこ向こうに…。
この画面の中にクマがいるというんですが分かります?あっいた!望遠レンズを使えばクマと分かりますがこれが肉眼で見えるなんて信じられません。
撮影開始。
まああそこにいる事は間違いないからそんなに慌てなくてもいいんだね。
ツキノワグマは子育て中のメス以外こんなふうに一頭だけで暮らしています。
おや草を食べていますね。
「ツキノワグマって肉食動物じゃないの?」ってお思いかもしれません。
でも実は食べ物の9割以上が植物なんです。
だからふだんは至って穏やかな生き物です。
大人の体重は40キロから120キロ。
まれに150キロを超すものもいます。
九州では既に絶滅したといわれ今は本州と四国だけに生息しています。
あれあれこんなに近くに来ちゃいました。
大丈夫?どんどん近づいてきますよ。
とうとう画面からはみ出すほど近くに来ました!軽く声をかけると…いちもくさんに逃げていきます。
クマが近づいてきた時は早くこちらに気付かせる事。
クマを知り尽くした横田さんならではの対応です。
そんな横田さんのクマとの最初の出会いは28年前に遡ります。
おっこれは…少しまた奥へ入ってきたらば…クマってどういう動物ですか?どういう動物ですか?私はあれだよ。
足尾の山には横田さんがクマを撮影するのにとっておきの場所があります。
それがこの安蘇沢と呼ばれる谷です。
ここは時に数頭のクマが同時に見られるいわばクマ銀座。
垂直に近い断崖ではクマの姿が丸見えになります。
それを横田さんはこんな具合に向かいの山から狙います。
そうすればクマから全く警戒されません。
それではまずここで撮影された貴重な映像をご覧に入れましょう。
親子です。
安蘇沢では観察が困難なクマの子育てを手に取るように見る事ができます。
母グマが座り込みました。
授乳が始まるんです。
2頭の子グマは夢中で飲み始めました。
子グマを優しくなでる母グマ。
警戒心が強い母グマがこんな無防備な姿を見せるなんて安蘇沢以外まずありえません。
母グマは子どもが独り立ちするまでおよそ1年半かけて大切に育てます。
子グマが親のそばを離れました。
木登りをして遊びます。
もう一頭の兄弟も木に登り始めました。
こんなやんちゃぶりもかわいいですね〜。
横田さんが撮りためた1,000時間を超す映像にはこのようなクマの自然な姿がたくさん記録されています。
安蘇沢の急斜面。
ここならではの大変珍しいシーンもあります。
岩場に現れたのは若いクマです。
大きな岩を剥がそうとしています。
いくら何でも無理でしょう?岩が落ちた!重さは100キロ以上。
急斜面をうまく利用したんですね。
でも何のためでしょう?こちらでも別のクマが大きな岩を動かそうとしています。
岩の下をなめ始めました。
なめているのはこれ。
アリの巣です。
アリやサナギは栄養満点。
春から夏にかけて足尾のクマたちは一日中このアリなめに熱中します。
かつて横田さんはアリなめ中のクマのとんでもない出来事を記録しました。
2007年6月の事。
アリの巣を探す親子がいました。
母グマはアリなめに夢中で子グマはほったらかし。
母グマが大きな岩を剥がします。
あっ!剥がした岩が子グマに…。
子グマはどうした?ああなんとか無事でした。
その4日後再び同じ親子を発見。
あっまた!角のとがった岩がものすごい勢いで子グマを直撃!岩もろとも転げ落ちていきます。
子グマはなんとか自力ではい上がってきました。
しかし右の前足がひどく傷ついています。
大丈夫でしょうか?それから1時間後。
子グマは元気に歩いていました。
たくましいですね。
横田さんが長年撮影してきた足尾の山々。
今この地域にクマの研究者も注目し横田さんの協力を得ながら調査を行っています。
わなを仕掛けてクマを捕獲。
GPS装置をつけて再び山に戻します。
この調査から足尾のツキノワグマの行動範囲が分かってきました。
これはあるメスグマの一年の足取り。
食べ物を求めて広大な山々を時には数十キロも動き回っていたのです。
そんなに広く動き回るクマを横田さんどうやって見つけるのでしょうか。
横田さんの撮影はまず徹底した観察から始まります。
これ開けたとこで食ってないか?何かを見つけて車を降りました。
ドングリの木の枝です。
クマの大好物。
これを口から放り出すんだ。
熟し具合を確かめます。
渋くないこれは。
クマには食べ頃のようです。
なかなか上手なんだ。
突然木に登り始めました。
この木にクマが来そうかどうか実のなり加減を確かめます。
ところが…。
ドングリは既にきれいに食べ尽くされていました。
こうなるともう絶対にクマは来ないといいます。
今度は道端に何か見つけました。
ウワミズだ。
ほらほら。
クマのふんです。
中にあるのはウワミズザクラの種。
間違いなくどこかでクマがこの実を食べています。
そのウワミズザクラの木がありました。
クマが食べるにはちょうどよい熟れ具合です。
そこで横田さんはウワミズザクラに来るクマを狙います。
目をつけたのはこの木。
枝が折れています。
明らかに最近クマが来た証拠です。
100メートルほど離れた場所で待つ事にしました。
ここぞと思う場所で辛抱強く待つのもクマを見つける秘けつ。
待って3時間。
本当に来るんですか?その時木の枝が大きく揺れ始めました。
クマが来ました。
こうした観察の積み重ねの末に撮影された数々の映像。
謎の多いツキノワグマの生態を初めて解き明かしたものも少なくありません。
例えばこの映像。
クマがカラマツの樹皮を剥いでいます。
クマ剥ぎと呼ばれる行動です。
ツキノワグマは何のために皮を剥ぐのでしょうか?繁殖期のにおいづけという説樹皮の一部を食べているという説などさまざまありましたが真相は分かりませんでした。
しかし横田さんが初めて撮影に成功したこの映像を見ると…。
剥いだ部分をしきりになめています。
後でその部分を見てみると幹には樹液が染み出していました。
クマは糖分いっぱいの樹液をなめていたのです。
子グマがなめている映像もあります。
これによって繁殖期のにおいづけという説は否定されました。
28年にわたって足尾の山々でツキノワグマを追い続けてきた横田さん。
横田さんには特別な思いを寄せる一頭のクマがいます。
4月横田さんは安蘇沢でそのクマを待っていました。
カメラを向けていたのは急斜面にある小さな穴。
そのクマが冬眠から覚め出てくる様子を記録しようとしていたのです。
横田さんはこれまで12年にわたってその一頭を追い続けてきました。
最初の出会いは…まだ生まれたばかりでした。
母グマの背中に乗っているこの子グマ一目で分かる特徴がありました。
胸の月の輪模様がよだれ掛けのように下の方までのびているのです。
個体が識別できる初めてのクマでした。
横田さんは子グマのやんちゃな様子からオスと推定し次郎と名付けて見守る事にしました。
しかしツキノワグマの子どもが大人になれるのは半数にも満たないといわれます。
そして3年後。
横田さんが撮影したこの映像。
月の輪模様がよだれ掛けのようになったクマ。
成長した3歳の次郎でした。
母グマから離れ無事に独り立ちを果たしていたのです。
この時横田さんは次郎の生涯を記録しようと決意しました。
一頭のクマの一生を撮り続ける壮大な挑戦の始まりです。
その時以来毎年毎年横田さんは次郎の姿を足尾の山に追い続けます。
4歳の次郎。
一年でぐっと大きくなっていました。
この年は次郎の大変珍しい姿が捉えられました。
この映像です。
なめているのは赤土。
恐らくミネラル分を補給しているものと思われますがこうした行動は研究者にすら知られていませんでした。
なめ終わると鼻先が真っ赤。
愛きょうたっぷりの次郎です。
そして横田さんが驚きの映像を撮影したのが3年後の2012年でした。
7歳になった次郎。
更に体が大きくなり貫禄が出てきました。
そしてその脇に…。
なんと子グマがいたのです。
横田さんは初めて次郎がメスだという事を知りました。
この時から次郎の子育てを記録する事が大きなテーマとなったのです。
子グマは1頭。
随分次郎に甘えていますね。
鼻を擦り寄せ子グマをあやす次郎。
親子のスキンシップです。
こちらでは子グマが前足をペロペロなめています。
それを次郎がじっと見守ります。
次郎が子グマを連れて移動します。
次郎が草を食べ始めました。
そのすぐ鼻先に子グマがいます。
なんと子グマが同じ草を食べ始めました。
母グマ次郎は離乳をさせるため食べ物を教えていたのでしょうか。
この年は秋になるまで次郎が子育てをする様子が目撃されました。
そしてその翌年の6月。
横田さんが見つけた8歳の次郎です。
そのそばに子グマの姿はありませんでした。
どうやら子グマを無事独り立ちさせたようです。
次郎は母親としての最初の務めを立派に果たしました。
その2年後の2015年。
再び子どもを連れている次郎が見つかりました。
子育てに慣れてきたのか授乳も板についています。
ところが数日後。
横田さんは目の前で衝撃的な事件を見る事になります。
その日次郎親子を発見したのはカラマツの木の上。
次郎は子グマを背中に乗せてじっと固まっています。
いつものじゃれ合いとは様子が違います。
するとその木に別のクマが登り始めました。
次郎は子グマを残してそのクマの方へ下りていきます。
次の瞬間2頭がもつれ合いながら斜面を転げ落ちました。
先にはい上がってきたのは相手のクマ。
一回り大きなオスグマです。
オスは子グマが残っている木に登っていきます。
子グマを狙っているのです。
そのあとを追う次郎。
2頭はもつれ合いながらまた地上へ。
この時オスの口元には子グマがくわえられていました。
次郎はオスの背後から攻撃。
オスが子グマの所へ行くのを必死で止めようとしています。
しかしオスが振り切りました。
あっ子グマを捕らえた!子グマはオスグマの手にかかってしまいました。
いわゆる野生動物の子殺しです。
この行動がツキノワグマで確認されたのは初めての事でした。
10年前に…子殺し。
それはオスが自分の子孫を残そうとするがゆえの行動です。
これは繁殖期のツキノワグマ。
春から夏にかけてオスは広い範囲を移動し交尾相手を探します。
ところが子どもを持っているメスは発情しません。
そんな時オスが子どもを殺して発情を促す。
それが子殺しです。
子殺しの直後の次郎とオス。
子どもを失うとやがてメスはお乳が止まります。
それから間もなく発情が始まりオスを受け入れるようになると考えられています。
このあと次郎がどうなるのか。
次郎は間もなく横田さんの前から姿を消してしまいました。
再びその姿が捉えられたのはその年の冬でした。
次郎は草をかき集め冬眠の準備をしていました。
首についているのはGPS装置。
研究者が調査のために取り付けたものですが故障し機能はしていません。
間もなく次郎は冬眠に入りました。
子殺しのあと次郎はオスを受け入れたのでしょうか?冬眠明けの次郎を待つ横田さんです。
既にカメラを構えて20日が過ぎていました。
お弁当を食べている間でさえ穴から目を離しません。
標高1,000メートル以上もある足尾の山奥ではこの時期でもしばしば小雪がちらつきます。
0度近い寒さの中で横田さんは次郎をじっと待ち続けました。
それはもう駄目かと思い始めた4月下旬の事でした。
次郎が姿を現しました。
とうとう出ちゃった。
そして次郎の左下に何か動くものが…。
子グマが2頭。
次郎は冬眠中に無事出産していたのです。
産んだのは恐らく1月ごろ。
ツキノワグマは未熟な状態で出産し冬眠の穴の中でしばらく子どもを育てます。
子グマが動き回れるようになってから外の世界に出てくるのです。
穴から出た直後の次郎親子。
あれ!?うわ〜落っこってっちゃった!どうした?子グマ同士で遊んでるうちにハプニングが起きたんです。
あっ岩にぶつかりました!次郎が駆け寄ります。
50メートルは落ちたでしょう。
次郎は子グマを口にくわえて穴に連れ帰ります。
大丈夫でしょうか?落ちた子を穴の中に入れる次郎。
いや〜すごい。
すぐに子グマがまた出てきました。
ケガもなく無事だったようです。
ハハハハハッ!ハハハハハッ!まあこれでね…5月になりました。
岩場でくつろぐ次郎親子。
子育ては順調のようです。
行動範囲も少しずつ広がってきました。
そんな時でした。
一頭のオスグマが現れました。
ひときわ大きな体格のオスです。
少し離れた所で次郎たちを見ています。
警戒する次郎。
しかし間もなくオスは姿を消しました。
ところがその翌日。
あのオスがまた姿を現しました。
次郎が奇襲をかけました。
もつれ合いながら斜面を転げ落ちていきます。
オスグマの反撃が始まりました。
にらみ合いが続きます。
果敢に戦う次郎ですが…。
オスグマの行く手には子グマがいます。
次郎の捨て身の攻撃!怒ったオスグマ!全く…ドジだなあ。
子グマに迫るオス!その時子グマの一頭が岩から転げ落ちました。
もう一度見てみましょう。
オスが子グマをくわえた!必死で取り戻そうとする次郎。
この時です。
もう一頭の子グマがうまく抜け出したんです。
子グマは無事。
さあ今のうちに早く逃げなさい!オスは1頭の子グマをしとめたようです。
逃げた方の子グマを追います。
あっやられちゃう!ほら!あ〜ほらやられちゃった!ほらほらやられちゃった。
子グマが捕まりました。
もう次郎はどうする事もできません。
次郎は2年続けて子グマを失いました。
オスとの戦いに力を使い尽くした次郎。
うずくまって動こうとしません。
そんな次郎に向かってオスグマは求愛のためゆっくり近づきます。
もはや次郎は抵抗する事も逃げる事もしません。
このオスには明らかな特徴がありました。
右目の古傷。
前の年のオスとは別のクマでした。
次郎はようやく立ち上がりました。
ゆっくりと森の奥へと向かいます。
そのあとを追うオスグマ。
この日を境に次郎は安蘇沢から姿を消しました。
前の年に続いてオスグマに子どもを殺されてしまった次郎。
次郎を捜して横田さんは足尾の山々を回ります。
来る日も来る日もその姿を捜し続ける横田さん。
しかし春が過ぎ夏が過ぎても次郎の姿は見つけられませんでした。
横田さんには一つ気がかりな事がありました。
この年クマの最も重要な食べ物であるドングリの実りが悪いのです。
もしかすると雨が多くて…。
当然雨が多かった訳だから日照時間が短いんでドングリの実なりが極端に悪いと。
この時期十分に栄養をつけないとクマは子を宿せません。
10月横田さんはある場所に向かいます。
まずとりあえずはここは…。
次郎は毎年この赤いズミの実を食べてから冬眠に入ります。
ちょうど食べ頃のようですが…。
次郎はここにも現れませんでした。
ひとつき後。
足尾は燃えるような紅葉の真っ盛りとなりました。
同時にこれはクマたちが冬眠に入る時が目前に迫っている事も意味します。
最後の望みをかけて向かったのは安蘇沢。
次郎は毎年必ずこの斜面のどこかで冬眠しています。
次郎が過去に冬眠した穴を一つ一つチェックしていきます。
穴のそばにやって来た形跡がないか必死に捜します。
横田さんが急に走りだしました。
何かを見つけたようです。
1頭だよ。
この中のどこか。
あそこの白い岩とかあるじゃない右側に。
あそこの白いの。
ついたてみたいの。
あのこっち側沢の中に入ってる。
どこでしょう?あっクマがいました。
しかし次郎ではありません。
あ〜息が切れる。
安蘇沢ではほかのクマたちが冬眠の準備を始めていました。
こうして枯れ草を集め穴の中に暖かく柔らかい寝床を作るんです。
しかし次郎の姿を見る事は最後までかないませんでした。
でもそううまくいけばいいけども…12月クマたちが冬眠した山に雪が降り始めました。
足尾の長い冬の始まりです。
次郎はこの山のどこかで眠りについているに違いありません。
春にはまた元気に子どもを連れて現れ今度こそは無事育て上げてほしい。
横田さんは心から願っています。
2017/01/15(日) 21:00〜21:50
NHK総合1・神戸
NHKスペシャル「森の王者 ツキノワグマ〜母と子の知られざる物語〜」[字]

森の奥で暮らすツキノワグマ、未知の生態が明らかに。冬眠の巣穴から幼い子グマを連れて出てくる母グマや、授乳する姿など貴重な映像が続々。密着28年のカメラマンが迫る

詳細情報
番組内容
森の王者ツキノワグマ。警戒心が強く鬱蒼(そう)とした森の奥深くで暮らしているため、生態はほとんど知られていなかった。動物カメラマン横田博さんは28年に渡りクマの撮影を行ってきた。1000時間を超える映像には、春、冬眠の巣穴から生まれてまもない子グマをつれて出てくる母グマの姿や、2頭の子グマに同時に授乳する微笑ましい姿などがある。さらにオスの“子殺し”という研究者さえ見ていなかった驚きの生態を捉えた
出演者
【出演】動物カメラマン…横田博,【語り】八嶋智人