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字幕書き起こし ハートネットTV「一枚の紙から幸せを パーチメントクラフト作家 松尾悠さん」 2017.01.18

ひと針ひと針。
まだ動いてくれる指先が一枚の紙にやわらかな絵模様を浮かび上がらせていきます。
松尾悠さんは8歳の時に進行性筋ジストロフィーを発症しました。
(取材者)パーチのリフレッシュは何でやってるんですか?今悠さんのパーチメントクラフトが周りの人たち一人一人に幸せの時を運んでいます。
福岡市の南大野城市。
筋肉が萎縮し筋力の低下が進行していく筋ジストロフィー。
悠さんの毎日の暮らしにリハビリは欠かせません。
いきま〜す。
今悠さんは自分で立つ事ができず思うように腕も上がりません。
このリハビリは垂直に立つ事で心肺の機能を保つため。
そして関節の変形を防ぐためのものです。
一日3回1回のリハビリは1時間。
リハビリの間もパーチメントクラフトができるように専用の台を作ってもらいました。
OKです。
パソ?パーチ?パーチ。

 

 

 


18年前19歳で始めたパーチメントクラフト。
細かい手作業で一枚の紙に色をつけたり凹凸をつけたりなどの加工を施していきます。
握力が弱い悠さんは左手を添えなければなりません。
繰り返し繰り返し行う根気がいる作業です。
次に自分で描いたデザインに針で細かい穴を開けていきます。
1ミリ単位の繊細さ。
失敗すると一からやり直しです。
集中力が求められます。
多い日は一日12時間以上作品作りに没頭します。
そうですかね?
(取材者)何かあるのかな?いっぱいしてるから何かあるのかなっていつも思ってて。
好きなんですよ。
パーチって結構手元の作業なので指先だけはちょっとはね。
あと何もしないので。
ここぐらいはこだわろうかなと。
ありますよ。
言わないでいい。
こっちがねこれがパパの愛情。
これがママの愛情。
あとは自分で買ったやつで。
初めて気に入ったの買ったんだよね。
これからパーチでいこうかなって思い立った時に買ったやつです。
パーチメントクラフトはヨーロッパで本の表紙の飾りなどから始まりました。
その繊細さと美しいレース模様は女性を中心に人気を呼び20年ほど前から日本に広がってきました。
悠さんの作品…春の心地よい風の中悠さんの心は作品の中を自由に飛び回ります。
幼い頃海辺で遊んだ家族の思い出。
母親の奈保子さんの温かな愛情が浮かび上がってくるようです。
悠さんは10年前自宅で教室も開きました。
7歳から70代まで。
30人の生徒さんが通ってきています。
その花びらが…。
こっちもこうですね。
そうそうそうそう。
この教室は好きな時に来て好きな時間だけやる事ができるとても自由な教室です。
教室の名前はGOODTIME。
悠さんの周りに笑顔と穏やかな時間が広がっていきます。
体もだよ!足もだよ手もだよ!藤野悦子さんは2年前から通ってくるようになりました。
悠さんとの出会いが藤野さんの暮らしを大きく変えてくれたといいます。
2年前のある日立ち寄った近所の銀行でふと目にした壁掛け。
見た事もない繊細さと美しさ。
銀行の人に聞いてみると松尾悠さんという人のペーパーアートでした。
おはようございます。
どうぞ。
(取材者)よろしくお願いします。
寒いですね。
(取材者)お邪魔します。
藤野悦子さんは20年前がんを宣告されました。
手術を何度も繰り返した藤野さん。
心の支えになってくれたのは母親でした。
そんな母が2年前に亡くなりました。
いつも笑顔を絶やさなかった母。
闘病中も藤野さんを優しく見守ってくれていました。
生きる目標をなくし悲嘆に暮れる日々。
そんな時に出会ったのが悠さんの作品だったのです。
一つ一つが全部…悠さんの手を借りながら3か月かけて完成させた作品。
今パーチメントクラフトが藤野さんのよりどころです。
松尾悠さんの37年の人生。
パーチメントクラフトと出会うまでつらい日々の連続でした。
幼い頃科学者になりたいという夢を持っていた悠さん。
しかし8歳の時に筋ジストロフィーと診断されました。
中学では病気のせいでひどいいじめを受けたといいます。
その時から悠さんは心に壁を作るようになりました。
人と関わらなくても大学に行けば道は開けると信じていた悠さん。
しかし症状の進行もあり受験は失敗。
絶望のふちに立たされました。
医師からは余命半年と宣告されました。
そんな時近くに住む工芸家の先生にパーチメントクラフトの存在を教えてもらいました。
細かい指先の動きが生み出すアート。
これなら私もできるという思い。
更に悠さんを勇気づけてくれたのは中学3年の時いじめから守ってくれた友人たちでした。
気持ちがどんどん前向きになり寝たきりの状態から車椅子に乗れるほどになりました。
自分の中だけなのに。
3人は絶対思ってなかったと思うんですけどね。
そういうのがあって。
3か月に一度悠さんが楽しみにしている日がやって来ました。
向かったのは福岡市内にある居酒屋。
よろしくお願いします!お願いします。
悠さんを中心にした集まり…集まっているのはパーチメントやリハビリを通して知り合った人同級生などさまざま。
2人で始まったハルカ会は3年で10人以上になりました。
あ〜ん。
こういうの好きかも。
ですよね。
私もチーズの中でカマンベールチーズ一番好きです。
おいしい。
あっ新也が来た!お〜っす!お疲れ〜!同級生の島田新也さん。
悠さんがパーチメントに打ち込むきっかけをくれた3人のうちの一人です。
とりあえず説教。
あ〜怒られる。
バイオリンが作品の中で弾むような音を奏でています。
悠さんの作品は全て自分で書き上げたオリジナルデザインです。
周りの人たちとの壁を取り除き解き放たれた悠さんの気持ちが表れているようです。
藤田康平さん碧さん夫婦です。
2人は5年の交際を経て去年1月婚姻届を出しました。
そして秋に念願の結婚式を挙げる事になっていました。
2人はその大切な結婚式の披露宴を彩ってくれるウェルカムボードを悠さんに依頼しました。
テレビで悠さんの作品を目にした碧さんがその温かいデザインに感動したからです。
ウェルカムボードにはどうしてもウサギを描いてほしいとお願いしました。
碧さんは熊本の高校を出て長崎で1人暮らしを始めました。
その寂しさを癒やしてくれたのがウサギのローズでした。
康平さんは碧さんにとってローズが欠かせない存在である事を知っていました。
ローズが死んでしまった時2代目を贈りました。
2人から依頼されたウェルカムボード。
悠さんは動物をデザインした事はほとんどありません。
しかし2人の思いに応えるために1か月かけてデザインし制作を始めました。
時には食事もとらずパーチメントクラフトに没頭してしまう悠さん。
症状の進行もあって最近飲み込む力が低下してきた事も母の奈保子さんの気がかりです。
平たい骨ね。
平骨が。
いよいよ結婚式が近づきました。
もうすぐ長崎から藤田さん夫婦がウェルカムボードを受け取りにやって来ます。
デザインに1か月制作に2か月を費やしています。
(取材者)喜んでもらえるといいですけどね。
それは思ってます。
長崎から藤田さん夫婦がウェルカムボードを受け取りに来ました。
お久しぶりです。
楽しみにしてました!ハルはねドッキドキしてる。
あっ本当ですか?こんにちはよろしくお願いします。
楽しみにしてました。
出してきます。
果たして喜んでもらえるのでしょうか。
開けて下さい。
じゃあ開けます。
うわ〜!わ〜すごい!かわいい!すごい!え〜かわいい!
(碧)ローズとアイちゃんそっくり。
かわいい!すごい!完成したウェルカムボード。
音楽と花に囲まれて2匹のウサギがいます。
碧さんと康平さんの思いがいっぱい詰まっています。
本当この辺にあるものと思っとったけんここにおると。
(奈保子)よかったねハルね。
一安心。
今すごい肩の荷が下りた感じ。
いや〜すごい!想像以上だね。
いや〜すごい。
(奈保子)泣きそうになってる。
一安心すぎ。
(碧)すご〜い。
ありがとうございました。
よかったです。
(碧)いや〜すご〜い。
ありがとうございました〜。
気を付けて。
(取材者)あんなに喜んでもらえて本当よかったですよね。
何だろう今すごい…もうちょっとかっこいい事言いたいんですけどそんな事ないです。
もうそれだけです。
(鐘の音)
(拍手)おめでとうございます!ありがとう。
(笑い声)ありがとうございます。
碧さん康平さんの結婚披露宴。
入り口で訪れた人たちをウェルカムボードが迎えていました。
何?何だろう…?それぐらいな感じです。
悠さんの人生を変えてくれたパーチメントクラフト。
今そのパーチメントクラフトが周りの人たちに幸せを運んでいます。
2017/01/18(水) 20:00〜20:30
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV「一枚の紙から幸せを パーチメントクラフト作家 松尾悠さん」[字]

1枚の紙からレースのように繊細な作品が生まれる。筋ジストロフィーの症状が進行する中、素晴らしい作品を作り続けるパーチメントクラフト作家・松尾悠さんの世界を描く。

詳細情報
番組内容
1枚の紙からレースのように繊細な造形が生まれる。福岡県大野城市在住の松尾悠さんは、20年ほど前からペーパーアート「パーチメントクラフト」に取り組み、今では教室も開く作家だ。悠さんは8歳の時に筋ジストロフィーを発症。手足の自由がきかなくなっていく中でこのアートと出会った。現在自由に動くのは手首から先だけだが、人々に感動を与える作品を作り続けている。「白い紙の上は自由」という悠さんの世界を見つめる。
出演者
【出演】パーチメントクラフト作家…松尾悠,【語り】近江友里恵