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字幕書き起こし 地球ドラマチック「生命進化の謎 巨大昆虫はなぜ絶滅したのか」 2017.02.13

今からおよそ3億6,000万年前から3億年前まで地球は「石炭紀」と呼ばれる時代でした。
石炭紀の間に大気の酸素レベルは現在と同程度の21%から35%に上昇しました。
地球上には初めて巨大な樹木が茂り二酸化炭素を吸収して大量の酸素を放出していました。
人間には生きる事ができないほど高い酸素濃度です。
しかしそれが理想の環境だった生き物もいました。
「アースロプレウラ」は節足動物ムカデの遠い親戚で大きいものでは3メートルもありました。
「メガネウラ」はトンボの仲間で羽を広げると最大でおよそ65センチ。

 

 


空中を飛ぶ昆虫としてはこれまでに見つかった中で最大です。
鳥も翼竜もまだ存在しない時代です。
しかしこれらの巨大昆虫やその仲間たちはやがて小型化するか絶滅しました。
彼らはなぜ地球の歴史から姿を消したのでしょうか。
石炭紀後期の空は大気の酸素濃度が高かったため独特なセピア色をしていました。
また高い酸素濃度のせいで火事が発生しやすく火が燃え広がりやすい環境でした。
ひとたび雷が落ちればたちまち大きな森林火災が発生しました。

(雷の音)今では想像もできないほど過酷な環境で巨大昆虫は繁栄していたのです。
地球の大気の酸素濃度が低くなると巨大昆虫も姿を消しました。
科学者たちは巨大昆虫絶滅の謎を解き明かそうとしています。
原因は一つとは限りません。
おそらく複数あるはずです。
私たちの仕事は今ある手がかりを生かし更に研究を進めて最も妥当な絶滅のシナリオを見つける事です。
巨大昆虫の存在は19世紀から知られていましたが絶滅の原因は正確には突きとめられていませんでした。
大気の組成が変わったためというのが唯一の説明でしたが21世紀の初めに発見された化石によって新たな可能性が浮かび上がってきました。
巨大昆虫を食べる生物は確かにいましたがそれが絶滅の決定的要因だとは断言できません。
今世界中の科学者が新たに発見された化石を最先端の技術で分析し巨大昆虫の絶滅の謎に迫ろうとしています。
最も初期の巨大昆虫の化石は1880年にフランスで見つかりました。
この沼の底で3億5,000万年前の石炭紀前期のメガネウラの化石が発見されたのです。
メガネウラは空中を飛ぶ昆虫としては史上最大です。
19世紀コマントリーという町の近くの炭鉱で石炭の採掘中に化石が見つかりました。
古生物学者のアンドレ・ネルが貴重な化石を管理しています。
炭鉱で働く人々がある日作業中にこの化石を見つけました。
残念ながら掘り出す際ツルハシで割ってしまったため頭の部分はなくなっています。
メガネウラはすぐれたハンターで獲物になった昆虫もかなり大きなものでした。
コマントリーでは他にも巨大昆虫の化石が数多く見つかっていますがメガネウラの化石は5つだけです。
メガネウラは他の昆虫と同じように羽が胸の左右に2枚ずつ計4枚ついていました。
目が大きいのは今のトンボと同じで獲物を捕まえるためです。
大きな目で360度周囲を見回す事ができました。
メガネウラの生態はどのようなものだったのでしょうか。
3億5,000万年前に戻ってみましょう。
当時コマントリーの一帯はイトスギが点在する巨大な沼地でした。
メガネウラは獲物を求めて沼地の上を飛び回っていました。
羽を1枚ずつ別々に動かし機敏に飛ぶ事ができる一方で羽を畳む事はできませんでした。
メガネウラの飛行速度は推定で時速65キロ以上。
頭が体の他の部分から独立していたため飛行中も頭を動かさずにいる事が可能でした。
そのため視覚をフルに活用して獲物を捕らえていました。
食欲も旺盛で自分の体重に匹敵する重さの食料を30分ごとに食べていたと考えられています。
大量の食料を得るためハンターとしてのすぐれた特長を数多く備えていました。
メガネウラはなぜこんなにも巨大になったのでしょうか。
パリにある国立自然史博物館の保管庫にはメガネウラとその獲物になった昆虫の化石が収められています。
どちらも非常に巨大です。
こちらはメガネウラの化石です。
下の方に羽と胴体が見えます。
しかし最も目を引くのは脚です。
頑丈そうなトゲが付いています。
獲物を捕らえる時に役立った事でしょう。
一方メガネウラの獲物もかなり大きなものでした。
例えばこのパレオディクティオプテラです。
羽1枚がここからここまでありますから全体の大きさが想像できます。
つまり大きな獲物を大きなハンターが追いかけていた訳です。
こういう場合両者の間にはより大きくなる事で強くなろうとする競争が起こります。
しかしこの巨大化競争には生物学的な限界があったようです。
そうでなければもっと巨大な昆虫の化石が見つかっていた事でしょう。
メガネウラは多くのエネルギーを必要とするため一日の大半を食料探しに費やしました。
石炭紀の昆虫が巨大化できたのは大気の酸素濃度が高かったためだと科学者たちは考えています。
昆虫には哺乳類のような肺はありません。
体じゅうに張り巡らされた気管を利用して体内の各組織に直接空気を送り込む仕組みです。
この仕組みの欠点は効率が悪い事です。
空気は気体のまま各組織に運ばれ大きな昆虫になるほど多くの酸素を必要とします。
昆虫がなぜこれほど大きくなったのか不思議です。
今はこんなに大きな昆虫は存在しません。
巨大な脊椎動物である恐竜がいた時代でも昆虫はこれよりはるかに小型でした。
石炭紀後期には大気の酸素濃度は今よりもずっと高かったんです。
その事が巨大昆虫のような生き物の発達を促したと考えられています。
メガネウラは現代の大気中では生きられないでしょう。
体じゅうに行き届くだけの酸素がないからです。
脳に酸素が届かなければすぐに動けなくなってしまいます。
昆虫の大きさは酸素濃度と関係があるという仮説は20世紀の初めから唱えられていました。
それが実験によって証明されたのは2007年の事です。
シカゴの郊外にあるアルゴンヌ国立研究所にはアメリカで最も強力なシンクロトロンがあります。
シンクロトロンは非常に強力なX線を作り出しスキャナーの役割を果たす事ができます。
それによって生きた昆虫をスキャンするのです。
シンクロトロンを使って呼吸している昆虫の気管の様子を調べます。
昆虫の大きさは大気中の酸素濃度によって決まるという昔からの仮説を検証するのが目的です。
その仮説によれば空気中の酸素濃度が高くなれば昆虫は大きくなり酸素濃度が低くなれば小さくなります。
その相関関係を現代の昆虫で調べる事ができれば絶滅した昆虫に当てはめて考える事が可能になります。
シンクロトロンが作り出す強力なX線が昆虫の体をスキャンします。
私たちの目的は昆虫が生きている状態で非常に細い気管も含めて実際に動いている様子を見る事です。
それができるのはこの装置だけです。
この方法によって昆虫が呼吸する様子を初めて詳しく見る事ができました。
実験の結果コオロギは空気を各組織に届けるため体全体を使っている事が分かりました。
消化器官の中の泡が頭の方へ向かって進みそして戻っています。
この動きは呼吸によって気管が圧縮されるたびに起こっています。
受動的な現象ではなく能動的なものです。
つまり筋肉の収縮によって昆虫自らがこのような動きを生み出しているんです。
コオロギが消化器官を収縮させ体内の各組織に空気を送り込むようにメガネウラも腹部を収縮させて酸素濃度が高い石炭紀の空気を吸い込んでいたのでしょう。
ジェイク・ソウカにとってこうした動き以上に興味深かったのは昆虫の体内で気管が占めているスペースです。
彼は昆虫の体の大きさと気管の関連について調べました。
体内で気管が占めるスペースを調べてみると体の大きさが増すより大きな割合で気管の割合が増す事が分かりました。
そこから昆虫の巨大化はある程度のところで限界がくる事が分かります。
巨大化しすぎると気管のスペースの割合も大きくなりすぎて体内に収まりきらなくなるためです。
体には他のものも必要です。
生きていくためには筋肉神経消化器官など全てが必要です。
気管だけ大きければいい訳ではありません。
石炭紀には酸素濃度が高かったため気管が少なくて済みました。
その分体全体を大きくする事が可能でした。
やがて大気の酸素濃度が低くなると昆虫は少しずつ体を小さくするよう進化しました。
しかしそのような変化に対応できなかった種もいます。
2億9,000万年前のペルム紀初期から2億5,000万年前のペルム紀の終わりまでに大気の酸素濃度は35%から23%に下がりました。
パンゲアと呼ばれる巨大な大陸が形成され地域によって極端な気候の差ができました。
大陸中央部は砂漠になっていましたが一方で赤道地域は雨量が多かったため石炭紀の大森林が生き残りました。
雨が多く気温も高かったため森林の気候は大きく変化。
木々の表面に小さなキノコなどの菌類が生息するようになりました。
菌類は酵素を使って木を分解します。
そのため死んだ木は腐敗するようになり地面に積み上がって石炭を形成する事はなくなりました。
こうした環境の変化によって酸素の濃度は次第に低くなっていきました。
この時期にムカデの遠い親戚にあたるアースロプレウラが姿を消しました。
石炭紀に栄えたアースロプレウラはどのような理由で絶滅したのでしょうか。
1977年節足動物アースロプレウラの化石がフランスのオータンで見つかりました。
オータンはかつて鉱山の町として栄えました。
地元の自然史博物館は作業中に化石を発見した鉱山労働者たちに感謝をささげています。
これはアースロプレウラの足跡の化石です。
節足動物の専門家であるシルヴァン・シャルボニエがこの貴重な化石を調べています。
ここに筋が平行して2本走っています。
体長90センチくらいのアースロプレウラの足跡です。
これはごく一部なので実際はもっとずっと大きかったはずです。
小さなものでは体全体の化石も見つかっています。
まだ子どもでとても小さいですがこれが成長していれば巨大な足跡を残したでしょう。
大きなものになると体長が3メートルにも達したとされるアースロプレウラ。
食料を探して地面や木の上をはい回っていました。
ペルム紀初期の熱帯雨林は石炭紀とよく似ていました。
大気中にはアースロプレウラが生きていくのに十分な酸素もありました。
しかし石炭紀にはいなかった捕食動物が現れました。
両生類のエリオプスです。
木の幹の震動を感知してアースロプレウラの居場所を突き止める事ができました。
しかしアースロプレウラも負けてはいません。
足の先に付いたかぎ爪で木をガッチリつかみ硬い外骨格で大抵の攻撃を跳ね返します。
アースロプレウラの絶滅の原因は捕食動物の出現ではなかったようです。
では何だったのでしょうか。
アースロプレウラの食料が減ってしまったのでしょうか。
アースロプレウラは植物食ですがペルム紀の初期にはまだ植物の種類も量も豊富でした。
そうした植物が石炭の元にもなっています。
しかし気候の変化とともに石炭紀と同じ森林環境は次第に姿を消していきました。
ペルム紀になると気候が次第に変化しそれまで繁栄していた植物が消えていきました。
食料を失った事がアースロプレウラ絶滅の原因の一つになったと思います。
1,000万年の間に大気と気候は変化しアースロプレウラは絶滅しました。
化石は2億8,000万年前で途絶えています。
これまで巨大昆虫やその仲間は環境の変化に適応してより小さくエネルギー効率の良い方向に進化したと考えられていました。
ところが2009年ペルム紀末期の地層からメガネウラの新たな化石が発見された事で定説が覆されました。
メガネウラは酸素濃度が低くなった時代も生き延びていた事が判明したのです。
酸素濃度の減少だけではこうした生物の絶滅の謎が解けない事が明らかになりました。
フランス南部地中海の沿岸でアンドレ・ネルが発掘調査を行っています。
赤い石が特徴的な極めて珍しい地層がありこうした地層は世界でも15か所ほどしか見つかっていません。
これは2億5,000万年前ペルム紀末期の地層です。
赤いのは鉄の成分です。
酸化して赤くなっているんです。
多くの生物がいたはずでその痕跡は残されていますが目立った化石は見つかっていません。
しかしこことよく似た他の地層で重要な化石が見つかっています。
2009年フランス南部モンペリエの近くでメガネウラの化石が見つかりました。
メガネウラはペルム紀の初期には絶滅したと考えられていました。
ですからもっと新しい時代の地層から同じ大きさのトンボが見つかったのには驚きました。
かつては酸素濃度の低下によって巨大昆虫は全て絶滅したと考えられていました。
アンドレ・ネルの研究室に並ぶ化石はその説が間違いだった事を物語っています。
メガネウラにも種類があり羽がとても小さいものもいます。
これは今のトンボと同じぐらいのサイズです。
こういう大きなものもいます。
こちらはまた別の種類のメガネウラのもので後ろの羽です。
巨大なものから小さなものまでさまざまな種類のメガネウラが栄えていました。
酸素濃度が低くなっていたペルム紀は特に多様です。
つまり「酸素濃度の低下による絶滅」というシナリオは成り立たないという事です。
1937年にアメリカカンザスシティーの近くでメガネウラの一種「メガネウロプシス」の化石が見つかりました。
化石昆虫学者のマイケル・エンゲルは20年間カンザス大学で研究を続けています。
これは現在生息する大型昆虫の標本です。
ガナナフシカブトムシトンボ。
かなりの大きさですがどれも昔の巨大昆虫とは比べものになりません。
メガネウラが酸素濃度が低いペルム紀に生き残る事ができたのは飛ぶために羽を動かしていたからではないかとエンゲルは考えています。
羽を動かすために筋肉が収縮すると気管を刺激して空気が体内を通りやすくなり酸素が重要な組織に送り届けられます。
羽のない昆虫やムカデなどの節足動物にはできない事です。
これがメガネウラが生き残った秘密かもしれません。
羽の動きによって気管に素早く空気が送り込まれ全身に酸素が供給されるのです。
アースロプレウラのような飛ばない節足動物が絶滅する一方でメガネウラはペルム紀も生き残り沼地の食物連鎖の頂点に君臨しました。
両生類のディプロカウルスはメガネウラに気付かれないようできるだけ水中を進みます。
しかしメガネウラはすぐれた視力によって水中にいる獲物の存在も感知します。
メガネウラは極めて強力な捕食者でした。
ではなぜその後絶滅したのでしょうか。
巨大昆虫メガネウラの正確な絶滅時期は分かっていませんが化石はペルム紀で途絶えています。
他のトンボは更に1億3,000万年生き延びました。
絶滅の原因として科学者たちはそれまでにない新たな捕食動物の出現に目を向けています。
空中は長い間飛ぶ昆虫だけが支配する世界でしたがペルム紀の後半になると他にも飛ぶ生物が現れたのです。
およそ2億5,000万年前のちにヨーロッパになる地域での事です。
古生物学者のジャン・セバスチャン・ステイヤーは初期の脊椎動物の専門家です。
彼が調べている化石は巨大昆虫の生存を脅かしたと考えられる生物のものです。
体はそれほど大きくないものの昆虫にはない強みを備えていました。
これはおよそ2億5,000万年前の化石です。
この生物の名はセルロソラヴァス。
は虫類でグライダーのように滑空する事ができました。
滑空する事によりセルロソラヴァスは獲物を空中で捕らえる事ができました。
その獲物の一つが巨大昆虫です。
ペルム紀末期地球の気温は上昇し続け沼地ではよどんだ水の中に水生植物が生えていました。
一部のは虫類は石炭紀の昆虫のように木に登り宙を飛ぶすべを身につけ始めていました。
特にセルロソラヴァスは折り畳める翼のおかげで有能な昆虫ハンターになろうとしていました。
非常に興味深い体をしています。
頭はとても小さく三角形です。
歯は円すい形で先がとがっていました。
それで昆虫の硬い体もかみ砕いたんでしょう。
もちろん滑空するための大きな特徴もありました。
体から複数の骨が伸びていてその間に皮膜があり翼のようになっていたんです。
想像してみて下さい。
例えばこの顕微鏡にちょっと登りジャンプする。
それからかぎ爪でよじ登り羽を広げて滑空。
セルロソラヴァスと飛ぶ昆虫との対決も想像できます。
体長40センチのセルロソラヴァスは巨大なメガネウラを捕らえる事はできません。
しかし共通の獲物である昆虫パレオディクティオプテラをめぐってメガネウラのライバルになりました。
セルロソラヴァスは羽ばたく事はできません。
しかし不意打ち戦法とすぐれた滑空能力によってそれを補っていました。
失敗する事もあったでしょうが昆虫にとっては大きな脅威になりつつありました。
滑空するは虫類の出現は巨大昆虫絶滅の原因の一つでしょう。
飛ぶ昆虫を脅かす有能なハンターが初めて現れたんです。
それが巨大昆虫が減っていった理由の一つだと推測できます。
滑空するは虫類セルロソラヴァスが唯一の原因ではないにせよ最初に巨大昆虫の敵となりその生存を脅かした事は確かなようです。
ドイツのカールスルーエ博物館では翼竜のレプリカや化石を見る事ができます。
空飛ぶは虫類である翼竜は2億3,000万年前に現れました。
これまでに翼竜の化石はおよそ100種見つかっています。
翼竜の出現も巨大昆虫の絶滅に関係しているのでしょうか。
エバーハルト・フレイは翼竜の世界的な権威です。
翼竜は空飛ぶは虫類です。
大きな特徴は前足の指の先から後ろ足首にかけて張られている皮膜です。
翼竜で興味深い点は体の大きさが実にさまざまな事です。
翼を広げた長さが20センチほどの小さなものから14メートルもある大きなものまでいます。
科学者たちは昆虫を食べる翼竜は極めて体が小さいごく一部の種類だけだったと考えています。
こうした翼竜が食べた昆虫は化石にならないような小さなものだったと考えられます。
小さな昆虫は巨大昆虫の獲物でもあったため小さな翼竜と巨大昆虫は同じ獲物をめぐって競い合っていたと思われます。
とはいえほとんどの翼竜は昆虫ではなく他のものを食べていました。
つまり翼竜と巨大昆虫は決定的なライバル関係にはなかったと考えた方が良いでしょう。
2億3,000万年前。
ペルム紀が終わり三畳紀に入ったころのちにヨーロッパやアジア南米になる地域で翼竜が栄えていました。
翼竜は滑空するだけでなく羽ばたいて飛ぶ事もできました。
地球の歴史上初めて本格的に空を飛ぶ脊椎動物が出現したのです。
バトラコグナトゥスは小型の翼竜です。
夜行性で昆虫を獲物にしていました。
一体どのようにして昆虫を捕らえていたのでしょうか。
エバーハルト・フレイは流体力学研究所と共同で実験を行いました。
この風洞は通常航空機の飛行能力を空気力学的にテストするためのものです。
これを使って翼竜の飛行能力をテストします。
翼竜の模型が風洞の中に置かれています。
これまでに分かっている範囲では翼竜の飛ぶスピードは非常に遅かったようです。
ですから風速が11メートルを超えると風に立ち向かえなくなり空中にとどまるためには羽ばたく必要があったと考えられます。
翼竜は滑空はあまりうまくありませんでした。
しかし羽ばたく事で滑空よりも自由に飛び回る事ができます。
羽ばたく能力は昆虫を追いかける上で大いに役立ったはずです。
翼竜の登場により羽ばたいて飛ぶ動物は昆虫だけではなくなりました。
バトラコグナトゥスは羽ばたけるため昆虫を追うために木々に止まる必要がなくなり開けた場所まで行けるようになりました。
先に出現した滑空するだけのセルロソラヴァスにはできなかった事です。
翼竜の一部は巨大昆虫と獲物を争う関係にありました。
それが巨大昆虫の絶滅に影響を与えた可能性はありますが決定的な原因ではなさそうです。
では他にどんな原因が考えられるのでしょうか。
2012年アメリカの古生物学者が巨大昆虫の絶滅についてある仮説を発表しました。
カリフォルニア大学サンタクルーズ校のマシュー・クラッパムは2億5,000万年前のペルム紀の末に起きた大量絶滅を専門に研究しています。
発掘するよりコンピューターに向かう事が多いマシュー・クラッパムは昆虫の羽の大きさについてあらゆるデータを収集しました。
過去の論文から1万種近い昆虫のデータをまとめました。
古生物学者による化石発見の記録その昆虫の説明つけた名前などが書かれた論文です。
クラッパムの分析によれば昆虫の大きさは初期のころは大気中の酸素濃度に比例していました。
しかしある時期からそれが当てはまらなくなりました。
昆虫が出現してから2億年ほどはこのパターンが当てはまります。
しかしおよそ1億5,000万年前のジュラ紀の末になると酸素濃度は低いながらも上昇期にありましたが昆虫は小さくなっていきました。
これは鳥の祖先が出現した時期とほぼ重なっています。
鳥の祖先が最初に現れたのは1億6,000万年前のジュラ紀後期でした。
最古の化石は中国で見つかっています。
その時代大型針葉樹の森は飛ぶ生物の格好の踏切台になっていました。
飛ぶ能力を得た新しい生物は生態系の中で有利な地位を獲得していました。
このアンキオルニスのような小さな恐竜が腕と脚に羽を生やし翼として使いました。
かぎ爪によって高いところに登る事もできました。
アンキオルニスが獲物にしていたのは昆虫でした。
飛び立てばすぐアンキオルニスに見つかり食べられてしまいます。
翼竜で昆虫を食べる種はごく一部だけでしたが鳥の祖先は皆昆虫を食料としていました。
昆虫にとってかつてないほど強力な捕食者が出現したのです。
巨大昆虫は鳥の祖先に食べられる危険がありました。
また獲物となる小型昆虫を奪われ食料が乏しくなっていきました。
これらは昆虫のサイズが次第に小さくなっていった要因だと考えられます。
鳥と昆虫の競争関係は今日まで続いています。
鳥の祖先の出現は翼竜と同様巨大昆虫に影響を与えたはずです。
しかしなぜ巨大昆虫は絶滅し小さな昆虫は生き残ったのでしょうか。
巨大昆虫絶滅の最後の手がかりはアンキオルニスの発掘地点に近い場所で見つかりました。
2002年中国遼寧省で1億2,500万年前の白亜紀前期の植物の一部が火山灰の中から発見されました。
そこには被子植物の祖先が含まれていました。
古植物学者の孫革が発見したその植物は巨大昆虫の絶滅に意外な影響を及ぼしたと考えられています。
この遼寧省西部で私たちはこれまでで最も古い被子植物の化石を発見しアルカエフルクトゥスと名付けました。
アルカエフルクトゥスは地球上に現れた最初の花です。
顕微鏡で見ると雄しべと雌しべが確認できます。
これは被子植物に見られる特徴です。
被子植物は針葉樹と違い種が果実の内部に収まっています。
孫革によるとアルカエフルクトゥスは水生植物で沼や湖に生えていました。
この被子植物の登場と巨大昆虫の絶滅にどのような関係があるというのでしょうか。
被子植物は急速に広がり今とあまり変わらない森を作るようになりました。
その時代にさまざまな昆虫が姿を消しました。
巨大なトンボも大きな影響を受けたはずです。
空中を飛ぶトンボですが幼虫は水の中で育ちます。
いわゆる「ヤゴ」です。
最初の数年間は水中で他の昆虫の幼虫を食べて生きています。
地上や空中だけでなく水中環境の変化もトンボにとって大きな影響があるという事です。
1億2,500万年前アルカエフルクトゥスのような被子植物が出現すると水中の環境が変化しました。
それらの植物は浅い水辺に根を張りますが花は水面より上で咲きます。
しおれると花びらや葉は水に落ち微生物によって分解されます。
その際微生物は水中の酸素を消費します。
被子植物の繁栄によってヤゴに必要な水中の酸素が減少したのです。
巨大なトンボの幼虫は水中環境の変化に適応できず姿を消したのかもしれません。
そして他のトンボに取って代わられたんです。
被子植物の出現で水辺の生態系は一変し巨大昆虫絶滅の最後の引き金になったのではないかと考えられています。
巨大昆虫の絶滅は多くの要因によって引き起こされたものである事が分かりました。
大気中の酸素濃度の低下。
飛ぶは虫類など新たな捕食者の出現。
翼竜と鳥の祖先。
そして花の出現。
かつてのような巨大昆虫は全て姿を消し小型化した昆虫だけが生き残りました。
今日では最大級の昆虫でもこのキリギリス程度の大きさしかありません。
しかも人類が引き起こした環境破壊によって多くの大型昆虫は絶滅の危機にひんしています。
現在大型昆虫のほとんどは熱帯地域に生息していますが危険な状態です。
生息地が破壊されているからです。
住みかの森が消えれば大きなナナフシなど大型の昆虫は絶滅してしまいます。
大型昆虫の生息地は人類の手によって次々と破壊されています。
かつての巨大昆虫と同じ道をたどらせたくはありません。
この先も長く生き残ってほしいと思います。
太古の地球に君臨しやがて姿を消した巨大昆虫とその仲間たち。
彼らは人類に何を語りかけているのでしょうか。
2017/02/13(月) 00:00〜00:45
NHKEテレ1大阪
地球ドラマチック「生命進化の謎 巨大昆虫はなぜ絶滅したのか」[二][字][再]

太古の地球で優れたハンターとして繁栄を極めていた昆虫だが、巨大なものは姿を消し、小型化していった。巨大昆虫はなぜ絶滅?最新の研究から、意外な原因が明らかに!

詳細情報
番組内容
3億5千万年前の地球には巨大な昆虫が飛び交っていた。巨大化の鍵を握るのは酸素濃度。現在は21%だが当時は35%あった。酸素濃度の高さは昆虫の体にどのような影響を与えるのか?強力なX線でスキャンし、呼吸の様子を調べると、気管に秘密が隠されていることがわかる。さらに、滑空するは虫類や鳥の祖先などのライバルや捕食者の登場も打撃に。しかし、最後の引き金となったのは花だった…!?(2015年フランス)再放送
出演者
【語り】渡辺徹