皆さん、突然ですがここで一句。
きょう発表されたサラリーマン川柳のベスト100。
おなじみ、世相を映した句や会社、家庭での不満ことしは、女性や若者の投稿も増えました。
サラリーマンの悲哀を描かせたら、この人。
人気漫画家の田中光さん。
独自の視点で作品を漫画化してもらいました。
サラリーマン川柳はことしで、なんと30年。
日本社会が厳しさを増していった時代と重なります。
今回、私たちは作者を直接取材。
たった17文字で人生が変わったなんて人も。
ぜひ皆さんもご一緒に。
「五七五つらい現実笑っちゃえ」
どうも、こんばんは。
サラリーマンが忘れ物を取りに帰るとき。
じゃあ行ってきます。
あっ、忘れ物。
せやせや。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
びっくりしましたね。
もともとサラリーマン経験があるという2人ときょうはサラリーマン川柳、見ていくわけなんですけれども。
よろしくお願いします。
斬新なオープニングで驚きましたけれども。
ありがとうございます。
こちらに並んでいますのが、今回の優秀作なんですね。
寄せられた5万5000句の中から、主催する会社の社内選考で選ばれました。
お2人からすると、このサラリーマン川柳、どんなイメージ、どんな見方をしてますか?
どうですか?
切なさ、あと情けなさ、それがてってきますよね。
そのあとにちょっと笑えるという、これがやっぱりポイントですよね。
そんなたくさんの川柳の中から、まずは今の世相を映し出す作品を見ていきます。
時間外労働の限度は何時間なのか、具体的に定め…。
皆さんの職場でも進んでいるんではないでしょうか。
働き方改革。
でも、こんな現実も。
そろそろ帰れよ。
残業はだめだぞ。
えー?じゃあ、仕事を半分に減らしてくださいよ。
定時で帰るなんて無理ですよ。
はっ!おもしろいこと言うね。
部下が自分の愚痴を詠んだ川柳かと思いきや…実は、作者は管理職の男性でした。
サラリーマンの懐具合も絶好のネタに。
マイナス金利という金利面での緩和を…。
日本経済復活の切り札として導入されたマイナス金利政策。
しかし、景気の回復が実感できない中、こんな悲劇が。
今回は女性からの応募が急増。
仕事と子育てに追われる女性の嘆きが、さく裂しました。
ここからは、森永卓郎さん、そして横澤夏子さんにも加わっていただきます。
よろしくお願いします。
お願いします。
今、あーっていうことばもスタジオでたくさん聞かれましたけれども、森永さん、毎回、このサラリーマン川柳、注目してらっしゃるということですけれども。
ラジオやってることもあって、毎年毎年、やっぱりね、社会の縮図というのか、その時代、時代の悩みっていうのが表れてくるので、盛り上がるんですよね。
社会の縮図?今回、気になるものはありましたか?
私は書きたいな扶養控除に猫と犬。
サラリーマン川柳が始まった30年前は標準家族って、お父さんと専業主婦のお母さんと子ども2人、これが主流だったんですけど、今はもう、子どもの数が減っちゃって、ペット飼っている家のほうが多いんで。
この扶養控除に書きたいって気持ちはよく分かるんで。
犬と猫を。
今回、女性からの句が全体の3分の1以上を占めたということなんですけれども、横澤さんは、この中で。
一番端っこのハロウィンに何故か溶け込むノーメイクってね。
ノーメイクが一番お化けに近いじゃないですか。
まあまあ。
個人差ありますけども。
絶対に私、来年、ノーメイクでチャレンジしたいなって。
ハロウィンを。
ゾンビになんかメークしなくてもね。
ちょっと怖いよね。
ちょっと怖いときありますね。
シンプルでいいのかもしれないなと。
男性からはなかなか突っ込み入れづらいですね。
これ、突っ込み入れづらいですね。
横澤が一生懸命言うてるんですけど、なんかフォローせなあかんなと思ったんですけど、家で嫁が見てると思ったら。
そんなことない。
そしてサラリーマン川柳の王道と言えばこちらです。
サラリーマン川柳の応募を呼びかけた動画。
♪「YoYo!部下」♪「何故このタイミングで言ってきたんだ?」♪「連絡ぐらいスグできるだろいつもお前は」♪「問題がこじれた頃に報連相」
いつの時代でも上司や部下への不満が鉄板ネタのようで。
まずは、部下の代表名古屋市の会社で事務をしている高木尚美さんです。
川柳を詠んだきっかけは以前、上司に言われたひと言。
同僚たちと、ひとくくりに役に立たないゆとり世代だとばかにされたんだそうです。
その悔しさを込めて一句。
指示がないと何もできないのか。
これだから、ゆとりはよお。
ぶ、部長その派手なスーツの肩パッドありえないっしょ!
一方、上司の代表は運送会社の営業所長八木澤英次さんです。
若い人たちの仕事に向き合う姿勢が、理解できないといいます。
川柳を詠んだきっかけは偶然耳にした、この曲でした。
曲名の「トリセツ」取り扱い説明書ということばと理解不能の若者をかけて一句。
上司と部下の愚痴。
やっぱりね、いろいろ出てきますけれども。
出ますね、やっぱりね。
こちらにある句が、上司の小言、部下の不満。
なるほど。
気になるものは、剛さん、いかがですか。
これなんかそうですよね。
もうですね、まさしく。
新人はペンを取らずに写メを撮る。
私、撮っちゃう。
撮るの?
メモとか全部撮っちゃいます、ネタとかも、全部写真で撮っちゃう。
覚えなあかんの。
最近はね、うちの学生もノート取らずに、黒板、写メ撮ります。
うわー。
簡単ですもんね、そっちのほうが。
みんな、それで慣れてますしね。
確かにね。
写メ撮って、その写真を口で説明するっていうことはしないんですね。
なんでも見せて終わる。
ほなあれどうなってんねん?どうなってんねんって、あっ、こういう。
お前がいわんかいって、われわれ世代はね。
これで完結しちゃうってことなんですね。
そうですね。
礼二さんはいかがですか?
これ、どきっとするんですよね、部下のあれなんですけれども、ちょっといい上司手招きちょっと嫌。
ちょっといいって、いろんなちょっといいがあるじゃないですか。
ちょっといい?のなんとなくね、あっ、別になんもないかなと思いますけど、ちょっと、とかってなると、俺、なんかやったかなとか、どきどきするでしょ。
ちょっといいでいろいろ考えるんですよね、言われたほうは。
これはなかなかぞっとしますよね。
ちょっといいや。
さあ、若者や女性にも最近、人気が高まっているサラリーマン川柳なんですが、その背景を、主催する会社のエコノミストが分析しています。
若者を中心にSNSやツイッターを使って、短い文章で自分を表現する短文文化が浸透してきたことが背景にあるのではないかということなんですけれども、横澤さんからすると、これは?
私、本当に長い文章、読んでられないんですよね。
だからブログとかでも長いって思っちゃうぐらいなんで、本当、ツイッターとか、友達の愚痴とかも手短にしてほしいぐらい。
そうなんや。
本当に長い話、読んでもいられないし、聞いてもられないという。
せっかちなのもあるんやろうけど。
自分の話は長いのに、人の話は聞いてらんないんですよね。
五七五のほうがまとまってていいと。
本当に。
見るほうはそうなんですけれども、実際に作るほうっていうのは、考えて考えて、ぎゅーっと五七五に凝縮していかないといけないので、若者はまだ、全員が作れるっていうふうには、私はなってないと思います。
なるほどね。
センスも入りますもんね。
そして今回の特徴なんですけれども、森永さん、全体を見て、どういうことが言えますか?
やっぱり多様化が進んだなっていうのは、すごく思うんですね。
昔はサラリーマンの上司の悪口と部下の愚痴みたいな形で、決まりきったパターンがあったんですけど、最近は女の人も働くようになってきて、いろいろ不満も出てきたし、そのはけ口になってきているので、パターンが多様化してますよね。
そのサラリーマン川柳なんですけれども、ことしで30年です。
これまでに集まった川柳は、110万句にも上るんです。
すごい。
サラリーマン川柳の始まりは実は、主催する生命保険会社の社内広報誌の企画。
「朝起きて休む理由が見つからず」
社員から寄せられた川柳が予想以上におもしろかったため一般から募集することにしたのです。
時代は空前のバブル景気。
しかし、程なくバブルは崩壊。
金融危機やリーマンショックなど先の見通せない厳しい時代に突入しました。
サラリーマン川柳の歩みは日本の失われた時代とちょうど重なるのです。
こちらには、過去30年間の日経平均株価の推移と、その時期に詠まれた川柳を並べてみました。
まずは、バブルの時代です。
こんな川柳が詠まれています。
こちらですね。
CMは疲れた中年狙い打ち。
これ、どんなことかイメージできますか?
仕事にも遊びにも疲れてたんじゃないですか?
ああ、なるほど。
その時代、そうやったと思います。
バブル期は。
確かに。
でも仕事にもとても打ち込む姿、これ、24時間タタカエマスカっていうCMがありましたよね。
あった、あった。
私、バブルにどっぷりつかった世代なんで、もう栄養ドリンク飲んで、200時間ぐらい残業したこともありますから。
だから、どれだけ忙しいか自慢みたいなことをね、その当時は、みんなね。
でもそのときは、本当に給料もどんどん入ってきてですね。
私、ほっておいても貯金ができちゃって、このバブルのピークのときに、3万6000円の日経平均に連動する投資信託買ったんですよ。
それ、損切りしたときは、4分の1になってましたね。
うわー。
すごい。
そういう方もたくさんいたわけですよね。
中川家のお2人は、ちょうどこの時期に、サラリーマンとして働いてらした?
やってましたね、ちょうどその時期ですね。
だから、よう言うのは、一戸建て手が出る土地は熊も出るという。
もう今の時代はその辺が街になってるでしょう。
都会というか。
今、若者はもっと都心にも住むようになっていて、わりと郊外はちょっと人気がなくなってきて、中高年ばっかりになってるんですよね。
なるほどね。
そして森永さんのお話にもあった、バブル崩壊のころですね、1990年代に入りますと、こういった句が出てきます。
あの時に売ればこの株このマンション。
なんか言うてた、上司がよう言うてた。
口癖のように。
十二支がねーリストラに聞こえたり。
ねうしとら。
リストラだとか窓際ってことばも増えてきましたね。
変化が見えますよね。
この97年から日本はデフレに入るんですよね。
だからもう、この時代から失われた15年と言われて、みんな物価が下がるのが当たり前っていう中で、生活するようになったんで、たぶん横澤さんの世代だと、バブルっていうのが全く。
全然分からないです。
もう平野ノラさんでしか分からない。
本当にあのネタを見て学んでる感じですもん。
そんな2000年代後半、デフレが定着してしまった時代なんですけれども、ちょうど横澤さんがデビューなさったころに詠まれたのが。
2010年。
これです。
何になる?子どもの答えは○○○。
なんでしょうか。
大統領とか?違う?
大きな夢ですね。
子どもの答えは、お金持ち。
小銭持ち。
うーん、ちょうどリーマンショックがあって、派遣切り、非正規雇用の従業員のリストラとかが問題になったころなんですが。
なんになる?子どもの答えは。
公務員じゃないでしょうか。
あっ、公務員?
惜しい。
正社員。
そんな。
えっ?
ちょっと切なくなるような句なんですが。
私、学生と話してて、今学生がこれ、普通においしいよねっていうのは、とってもおいしいっていうことなんですよ。
だからこう、普通っていうのがすごく上位に位置するようになっちゃった。
そっか。
最近ですと、本物のビール3本わが爆買い。
酔ったお父さんやな、これ。
いわなしょうがないっていうね。
やっぱりこう見ていきますと、苦しい時代だからこそ、みんな、川柳に気持ちを託したくなるということなんでしょうね。
それをこう、なんとか笑い飛ばして生きていこうっていう、ある意味で庶民のたくましさも感じますね。
前向きですよね。
だんだんと開き直りだとか、いろいろ笑いに変える力が出てきてるってことですかね。
最初のころは、一戸建てとか、マンションとかだったのにね、どんどん。
ビール3本。
すごい。
変化が見えました。
さあ、実は今回、過去の作品の中から、作者のその後というのを取材したんです。
人生、悪いことばかりではないようです。
16年前に詠んだその句が今、全く別の意味を持ってきたと語る人がいます。
38歳のときにサラリーマン川柳に入選した寄鑓福男さんです。
当時、仕事と幼い2人の娘の子育てに追われていた寄鑓さん。
自分ひとりの時間や居場所が持てない嘆きを川柳に込めました。
それから16年。
ことしの7月長女の東加さんが結婚することに。
なんか取り乱すようなね。
うれしさ、そしてさみしさ。
子育てに追われたあのころが実は掛けがえのない時間だったと気付かされました。
そんな心境を川柳に込めて。
「居場所なしそれでもあった充実感」
川柳が夫婦の関係を劇的に変えた人も。
2001年にはやっていたiモードにかけて。
作者を訪ねてやって来たのは青森県弘前市。
ごめんください。
齋藤厚さんです。
かつて教師だった厚さん。
妻の笑子さんも元教師で共働きの夫婦でした。
当時は、お互いに忙しくすれ違いの日々。
笑子さんに構ってもらえないさみしさを厚さんは川柳に詠みました。
厚さんの気持ちを笑子さんが知ったことで、2人は互いの関係を見つめ直すことに。
始めたのが手作りの誕生日カードです。
なかなかことばにできない気持ちをつづり送り合うことにしたのです。
あの川柳から16年。
厚さん、今の心境は?
どうでしょう。
「Youがいて笑顔あふれるIが居る」
iモードから16年?
お粗末。
結構でございます。
すてき。
いいですね。
憧れますね。
ほっこり。
横澤さん、特に表情が緩んでらっしゃいましたけど。
本当に、なんかちくっと刺すような川柳だったじゃないですか、でもなんだ結局、奥さんのこと、ずっと考えてるじゃんみたいな、ちょっとのろけも入ってたんじゃないかなと。
女の人って、ひと言で済ますよね、お見事って。
奥さん笑ってへんかった。
愛情なんでしょうけどね、ひと言で終わらすという。
川柳をきっかけにこんなふうに人生が変わった方たちもいるということで。
きょうここまで見てきましたけれども、皆さんに最後、一つずつお聞きしたいんです。
サラリーマン川柳とは、皆さんが考える。
サラリーマン川柳とは?
横澤さん、いかがですか?
すごいなんか、ストレス発散みたいな、なんかずっとそのことを考えて、こうやって笑い飛ばせたら、なんか、私も考えてみようかなって、ただの悪口だけじゃなくなる気がするんで。
そうね、うまく五七五にまとめてね。
中川家のお2人はいかがですか?
どうですか?
サラリーマンの休憩所、憩いの広場。
これを書いてるときだけは、ちょっとお父さん、そっとしておいてあげてくださいって感じですよね。
なんか人生の休憩みたいな感じで。
笑わしにかかるっていうね、すごいいいことやなと思いますけどね。
もしかしてこの中の一句が、中川家さんの今後のネタになったりとか?
これね、意外とやっぱり、このままはないですけど、参考になるんですよ。
やっぱり今、世の中のことがいえば簡単に見れるっていう。
サラリーマンだけじゃなしに、女の人もいてますし。
そういうの見てると。
ペンを取らずに写メ撮るなんか、もうできるもんね、これは。
やろう思うたら。
さっきできてましたもんね。
今ね。
出来てましたから。
そして森永さんからすると、サラリーマン川柳とは。
やっぱり庶民のことば遊びなんだと思うんです。
同じ五七五でも俳句だとちょっと高尚な感じがあるんですけれども、庶民のそのまんまストレートなことばで、気持ちを書けるので、やっぱりこれはすごくストレス発散2017/02/13(月) 22:00〜22:25
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代+「五七五 つらい現実 笑っちゃえ〜サラリーマン川柳30年」[字]
上司の愚痴、社会への皮肉などを詠む「サラリーマン川柳」。今年のベスト100から日本社会の今を読み解くとともに、過去の入賞作品からこの30年を面白おかしく振り返る
詳細情報
番組内容
【ゲスト】経済アナリスト…森永卓郎,お笑い芸人…中川家(中川剛,中川礼二),横澤夏子,【キャスター】松村正代
出演者
【ゲスト】経済アナリスト…森永卓郎,お笑い芸人…中川家(中川剛,中川礼二),横澤夏子,【キャスター】松村正代