そういう状況の中で、日本はではトランプ氏のアメリカと、どう今後、向き合っていくのか。
日本とすれば、1月フランスで世界が注目する大晩餐会が開かれた。
最も権威ある料理コンクールが主催する特別なディナーだ。
世界中から1,500人の美食家や一流シェフが集う。
なみいる海外シェフを押しのけ魚料理を任されたのは若き日本人。
世界から熱い視線が注がれるフレンチシェフ。
シイタケやコイなど通常では使われない素材を最高級の料理に変える魔法使い。
しかし常にこうつぶやく。
(主題歌)ジャパン!世界的コンクールで日本人初のメダルを獲得した浜田。
独創的な食材の組み合わせを次々生み出してきた。
誰からも期待されずエリートとは真逆の道を歩んできた。
よし!この冬挑んだのは前代未聞魚だけのフルコース。
誰も食べた事のない料理を生み出せるか。
しかし。
うっ!ハハハハハッ!あ〜!すっげえこれ。
愚直な若き料理人。
道なき道に挑む。
東京のオフィス街。
(扉が開く音)全国に展開する有名リゾートグループが半年前にオープンした最高級の日本旅館だ。
浜田はそのレストランの初代料理長。
その腕に旅館の未来がかかっている。
率いるのは13人の若き精鋭たち。
浜田はスタッフたちに指示を出しながら自らも料理をし味を仕上げる。
日本旅館にもかかわらず料理はフレンチのフルコース。
しかしそこにはフォアグラやキャビアといったフレンチの高級食材は一切並ばない。
ここに浜田の大きなこだわりがある。
浜田はいかにして日本独自の食材をフレンチに組み込むのか。
例えば5つの石の上にのせられたアミューズ。
この小さな料理だけで13種類の和の食材が使われている。
豚の血の濃厚なソーセージであるブーダンノワールにはサンマを組み合わせた。
サンマの身と肝を使い濃厚さに苦みを加えた繊細な味わいだ。
これは牛肉のコロッケ。
衣の緑は通常フレンチでは使われない「春菊」だ。
コロッケのしっかりとした味わいを薫り高く演出する。
浜田独自の食材の生かし方には本場フランスの一流シェフも舌を巻く。
浜田がリンゴの料理に取りかかった。
3年かけて細部まで突き詰めた代表作「リンゴのシャルロット」だ。
そうそう。
浜田は繊細な技でいつもは脇役のリンゴを主役に仕上げていく。
リンゴと組み合わせるのは大葉やミョウガをあえた毛蟹。
ほのかな苦みと塩気が主役であるリンゴの酸味と甘みを極限まで引き立たせる。
更にウニなど14種類の食材を積み重ねる。
これをオーブンで人肌に温め香りをたたせた。
この料理は天才的なひらめきから生まれたものではない。
たどりつけた一つの理由がある。
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浜田はフレンチシェフとして決して王道を歩いてきたわけではない。
星を獲得する有名店にいたわけでもなければ本場フランスでの修業経験もない。
手間を惜しまずあらゆる食材の組み合わせを試し何百回も作り直す事で自分の料理を生み出してきた。
最後の仕上げ。
くりぬいたリンゴで蓋をし香りと温度を閉じ込めた。
(客)お〜!あ〜!へえ〜!独創的な料理を生み出し続ける浜田さん。
そのためのこだわりがある。
この日目を留めたのはなんとだしをとったあとのアンコウの身。
いわゆる出がらしだ。
食感を生かすためきのこやタマネギと合わせテリーヌにする。
3時間後。
肝をのせて食べてみる。
出がらしが生まれ変わった。
今回は客には出せない。
でもこうした積み重ねが新たな料理を生み出していく。
12月。
浜田は長野を訪れていた。
山を登り探すのは天然のきのこ。
うっ!ハハハハハッ!危ない。
大丈夫大丈夫大丈夫。
浜田は休みの度に産地に出向き食材がどう育っているかを見る。
山に入って40分。
現れたのは地元でもめったに見ない巨大なヒラタケだ。
(浜田)すごいなこれ。
でっか。
うんおいしい。
帰り道浜田は懇意にしている地元の料理店を訪ねた。
あそうかい!厨房を借り取れたてのヒラタケを調理してみる。
これやばいっす。
余計な手を加えずとも十分の味わいだった。
食材の力をシンプルに引き出すのは料理の基本。
だが浜田のフレンチシェフとしての矜持はその先にある。
翌日。
浜田はヒラタケに何を足し算するか。
ヒラタケの山から持ち帰った落ち葉。
洗浄した落ち葉で挟み込む事でヒラタケにほのかに甘く清らかな香りをまとわせる。
大丈夫ですか。
(客)ドキドキしちゃう。
(客)うわ〜。
すごい〜。
なんか怖いようなヒラタケですね。
厚さもしっかりありますね。
(浜田)全部なんでこれ。
味付けは塩と山椒のみ。
滋味あふれるヒラタケが森の香りと共に皿に盛られた。
おはようございます。
休日のこの日。
浜田さんは取引先の鮮魚店を訪れた。
仕入れ先に来るとその技術に驚かされる事が多いという。
絶妙な塩加減で細胞を僅かに収縮させ鮮度を保つ熟練の技だ。
食材をとことん追求し「ここ」にしかない料理を作り出してきた浜田さん。
その姿勢は自分のコンプレックスと向き合う中から生まれた。
浜田さんは鳥取県の小さな総菜店の息子として生まれた。
初めに入ったのはイタリアン。
フレンチのレストランに飛び込んだのは24歳という遅さだった。
周りは年下ばかり。
腕もアイデアもなく誰からも期待されない。
料理を作っても全て目の前で捨てられた。
才能もキャリアもない自分は雑草。
まずは一流の技をまねるところから始めるしかない。
休みの日には他の有名レストランで皿洗いをさせてもらった。
残ったソースをなめて味を盗んだ。
火入れのタイミング。
食材の組み合わせ方。
一心不乱に王道のフランス料理を身につけた。
4年がたったころチャンスが訪れた。
フランス料理最高峰の国際コンクール…その予選を勝ち抜き日本代表に大抜擢されたのだ。
作ったのはフランスの伝統的な料理…しかし結果は24か国中12位。
上位の料理はみな見た事もない新作の料理だった。
このままでは一生勝てない。
悩む浜田さんに新たな仕事の誘いが来た。
軽井沢のリゾートホテルで腕を振るってみないか。
着任すると浜田さんはホテルが取り引きしている近所の農園を訪ねた。
そこで見た光景に驚かされた。
なじみのある野菜に交じって見た事もない伝統野菜や使った事のない素材がたくさんあった。
浜田さんは見知らぬ食材を食べて思った。
この素材でフランス料理を作ったらどんなものが生まれるだろう。
これまでは高級な食材ばかりに目が行っていた。
その発想が180度変わった瞬間だった。
浜田さんはフレンチでは見向きもされなかった地元食材を盛んに取り入れた。
泥臭いイメージが一般的なコイ。
塩と熱湯で何度も洗い丹念にこす事で澄み切った味を生み出した。
どんな食材でも諦めず何度も試作を繰り返す。
そうしていくつもの斬新な料理を作り出した。
そして6年後。
かつて敗れ去ったフレンチの国際コンクール。
浜田さんはもう誰のまねもしなかった。
あと5分!あと5分!シイタケや柚子といった和食の素材を使って独創的な一皿を生み出した。
結果は3位。
日本人初の表彰台を勝ち取った。
雑草だった浜田さんがついに世界に認められた。
世界が注目するフレンチシェフ浜田統之の次なる闘い!挑んだのは前代未聞魚だけのフルコース。
しかし。
浜田が待ち望んでいた食材が届いた。
北海道産のエイ。
カスベと呼ばれる。
浜田はこの魚で前代未聞の挑戦をしようと考えていた。
浜田が料理長を務めるのは日本の伝統文化を現代的に進化させた旅館。
もし和食の中心である魚だけでコースができれば新しい旅館にふさわしい斬新なフレンチになる。
浜田は肉の代わりとなるメインにカスベを据えようと考えていた。
カスベはフランスでは香味野菜などで下ゆでするのが一般的だ。
臭みを抜き軟骨にも火を通す。
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それを浜田は更にブイヨンなどで煮込み日本の煮つけに近い感覚に仕上げようと考えていた。
翌日。
魚のコースメニューの検討会が開かれた。
グループ全体の料理統括に意見を聞く。
メインのカスベの前に置くのは…クリームソースを用いしっかりとした味付けにした。
そしていよいよメインのカスベ。
アマダイとの違いを明確にするためシンプルな煮込みで勝負する。
う〜ん。
味は悪くない。
しかしシンプルすぎてメインとしてのインパクトがない。
また一から試作に取りかかった。
どうすれば強いインパクトを打ち出せるか。
味を際立たせるためズワイ蟹と合わせる。
カニはカスベの主食。
相性がいいはずだとにらんだ。
更にキャベツで包み焼きにしそれぞれのうまみを凝縮した。
カニの味が勝ちすぎてカスベの存在感が弱まってしまった。
5日後。
浜田はカスベという素材をゼロから突き詰めようとしていた。
フランス流の下ゆでをやめて生でさばく。
白身魚の定番であるムニエルにする。
取り外した軟骨は付け合わせにしようと考えた。
アイデアがあふれだす。
通常ムニエルにはクリームなどの濃厚なソースを合わせる。
しかしそれでは1つ前に出すアマダイの味と近い。
さまざまな調味料や付け合わせを試していく。
試作から2時間。
いやあ…。
どうしてもソースが決まらない。
2日後の休日浜田は沖縄にいた。
(浜田)こんにちは〜。
よろしくお願いします。
ここにしかない伝統食材から何かヒントを探す。
あ〜!すっげえこれ。
その夜。
浜田は系列店の厨房にいた。
カスベに見立てた白身魚と沖縄の食材を試す。
自分もかつて誰からも期待されない雑草だった。
価値が低いと言われる食材にも花を開く方法がきっとある。
何度失敗してもそう信じ続ける。
沖縄から帰って1週間。
浜田はあるアイデアをひらめいた。
酸味の強いソースですっきりとした味わいを目指す。
カスベには合う。
しかしメインにするにはまだ深みが足りない。
年の瀬となった。
この日出来なければ新年のメニューには間に合わない。
まず全体をふっくら焼いたあと軟骨の部分だけをカリッとあぶる。
そして問題のソース。
酸味のあるソースだけでは足りない味の深みをどうするか。
フレンチでは全く使われないのりのつくだ煮。
のりのコクでカスベのうまみを引き出せないか。
手応えを感じた。
次々と微調整を行っていく。
メインの料理が決まった。
(主題歌)3週間後「魚のフルコース」が始まった。
オォー!メインはあのカスベ。
ウーン。
フホホホホ…。
フレンチシェフ浜田統之。
誰も見た事のない料理を生み出す闘いはこれからも続いていく。
自分の心に正直に素直な心で物事を捉えてそれに地道に常に前向きにトライしていく人がプロフェッショナルだと僕は思います。
2017/02/20(月) 22:25〜23:15
NHK総合1・神戸
プロフェッショナル 仕事の流儀「フレンチシェフ・浜田統之」[解][字]
世界最高峰の国際コンクールで日本人初の3位に輝いたフレンチシェフ浜田統之(41)。王道とはかけ離れた食材を高級フレンチに仕上げてしまう独創的な料理の秘密に迫る。
詳細情報
番組内容
去年、東京のど真ん中にオープンした高級日本旅館。そのレストランシェフとして、“日本発”のフランス料理を振る舞うのが、浜田統之(41)だ。世界最高峰の国際コンクールで、日本人初の3位に輝き、一躍注目を集めた。浜田が使うのは、王道とはかけ離れた食材や、時には捨てられる食材たち。それを高級料理へ生まれ変わらせる。この冬、前代未聞の魚だけのフルコースに挑む浜田に密着。独創的な料理を生み出す秘密に迫る。
出演者
【出演】フレンチシェフ…浜田統之,【語り】橋本さとし,貫地谷しほり